競売物件を利用した不動産投資のメリット・デメリット

競売物件を利用して不動産投資をする場合、メリット・デメリットともに理解しておくことが大切です。注意点を押さえて競売物件を利用すれば、メリットを最大化できるかもしれません。 今回は、競売物件を使った不動産投資について解説します。購入時の大まかな流れにも触れるので、検討中の方は参考にしてみてください。

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相場より安い競売物件とは

競売物件とは、所有者の債務不履行により差し押さえられた物件です。地方裁判所によって競売にかけられている状態なので、不動産投資家はもちろん、自分が住む家を探している人や不動産会社も購入できます。

なかには、マンション・戸建てなど居住用不動産だけでなく、事務所・ビルなど商業用不動産もあるのでチェックしてみましょう。

なお、購入権は入札期間内に最高額を提示して落札した人に与えられます。物件価格は相場の3割程度安くなるのでお得に購入でき、場合によっては5割~7割以上の価格差が出る物件もあります。安く不動産投資を始めたい人にとって、非常にメリットのある手法といえるでしょう。

競売物件の購入時の大まかな流れ

競売物件を購入するときの流れは、居住用か不動産投資用かなど用途を問わず、基本的には同じです。管轄の裁判所によって多少異なるケースもありますが、大まかな流れは下記となります。

1.競売物件を探す

2.現地調査する

3.入札する

4.開札

5.売却許可決定

6.代金の納付

7.所有権移転登記

8.引き渡し

競売物件は「公告」として裁判所・新聞・Webサイト上で公開されるので、掲載情報をもとに購入したい物件を選定します。特に、物件目録・物件明細書・鑑定評価書・現況調査報告書などを参考にする人が多いです。

気になった物件があれば現地調査もできますが、外観しかチェックできない点に注意しておきましょう。

入札期間はあらかじめ告知されているので、期間内に最低売却金額以上の額を提示します。裁判所で開札されるのを待ち、自分が落札者になれば代金の振り込みに進みます。なお、代金に関する詳細は裁判所から届く通知書を確認しましょう。

代金納付後は固定資産税評価証明書や登記簿謄本を提出し、手続きを進めます。所有権移転登記済証が送付されれば、物件の所有者となり不動産投資が開始するのです。

競売物件で不動産投資するメリット

ここでは、競売物件を利用した不動産投資のメリットを解説します。下記に十分な魅力を感じられる場合は、競売物件の利用を検討して良いでしょう。

掘り出しものの物件が見つかることがある

競売物件には、立地・築年数・物件の状態が優良な「掘り出しもの物件」が含まれていることがあります。多様性があるので、珍しい条件の物件が見つかるかもしれません。

不動産会社の場合、常連やセミナー参加者向けに優良物件の情報を非公開にしているケースがあります。しかし、競売物件の場合は裁判所による公告が行われれば誰でも情報にアクセス可能です。不動産投資の初心者でも優良物件を見つけられることが大きなメリットとなっています。

初心者でも安心して権利手続きできる

裁判所主体の手続きなので、法律に詳しくない人や契約トラブルに巻き込まれたくない人でも安心です。所有権移転登記や抵当権抹消登記など複雑な手続きも、誠実に対応してくれる担当者がいるので相談してみましょう。

一方、不動産会社を挟む場合は、優良業者と悪徳業者を見分けることが必要です。自分に不利な契約とならないよう、不動産投資の知識が求められます。

公平に作成された調査報告書を確認できる

競売物件の情報を公告するとき、下記3種類の調査報告書が閲覧可能となります。裁判所書記官・執行官・不動産鑑定士などが公平な観点で作成しているので、信頼性が高いことも特徴です。

・物件明細書

・評価書

・現況調査報告書

なかには、落札時に引き継ぐ賃借権の有無・関係人の陳述・執行官の意見など、物件そのものの情報以外を閲覧できることもあります。評価額や写真も掲載されるので、複数の視点から物件選びをしたい人にもおすすめです。

魅力的な物件を安く購入できることがある

競売物件は、魅力的な築年数・立地でもお得になっていることがほとんどです。一般的には相場より3割程度安いことが多く、例えば3,000万円の物件であれば相場より900万円も安く入手できます。

なかには相場と同じくらいの物件や大幅に安くなっている物件もあるので、比較・検討してみましょう。

競売物件での不動産投資にまつわるリスク

競売物件での不動産投資には多くのメリットがありますが、一方でデメリットやリスクも存在します。

ここでは、あらかじめ知っておきたい競売物件特有のリスクを解説します。

物件情報の細部は把握できない

落札して所有権を得るまでは物件の外観・周辺の住環境しかチェックできず、細部の把握はほぼ不可能です。設備状況も確認できないので、落札後に設備の交換・リフォーム・特殊清掃などが必要になるケースもあります。

物件を安く購入できたとしても、その後に多額な費用がかかってしまうおそれがあるので、注意しておきましょう。

立ち退きトラブルが生じることがある

競売物件を投資に運用するには、まず現在の居住者に立ち退いてもらう必要があります。ただし、債務不履行により競売にかけられている物件の居住者は、金銭的余裕がなく、立ち退きがスムーズにいかないケースも多いのです。

立ち退きトラブルに発展した場合、物件の購入とは別に入居者を法的に追い出す手続きを踏む必要が生じます。また、スムーズに立ち退いてくれた場合でも、家財や荷物を置いて行かれて処分にコストがかかることも多いです。

トラブル時の損害賠償や契約解除が難しい

競売物件は宅地建物取引業法にもとづいた売買ではないので、トラブル時の損害賠償や契約解除が難しくなります。例えば、通常の取引であれば適用される瑕疵担保責任が生じません。瑕疵があっても、購入者が自己負担で解決しなくてはいけないことがあるのです。

同様に、瑕疵を理由にした契約解除もできないため注意しておきましょう。

金融機関からの融資を受けにくい

前項までのトラブルを抱えるリスクがあることから、競売物件購入を目的にしたローンは審査が厳しくなることが多いです。借入できる金額が大幅に少なくなったり、借入そのものができなかったりするケースも出てきます。

その場合は自己資金で賄うので、十分な資金計画が立てられるか事前の検討が必要です。

入札期限があり取り消しもできない

競売物件には入札期限が設けられています。期間入札という方法で競売にかけられており、通常8日間の期限内にしか入札を受け付けていません。

期間内にもっとも高い入札をした方に物件が明け渡される形となり、一度入札したら原則取り消しは認められていません。

そのため、「良さそうだから入札してみるか」と安易な気持ちで入札してしまった場合、何らかの事情で購入をやめたくても取り消しができず、契約を余儀なくされてしまうでしょう。

また、入札する際には保証金の支払いが必要です。

保証金の金額は一般的に売却基準価格の20%ですが、物件によっては高額になるケースも珍しくありません。公告書に記載された保証金の金額を必ず確認するようにしましょう。

なお、競売物件を落札できなかった場合は、保証金が全額返還されるため、経済的なリスクは心配ありません。一方、落札者は代金納付期限までに支払いが完了しなかった場合は、保証金が没取されてしまうため注意してください。

競売物件で不動産投資を始める際の注意点

競売物件は、一般的な市場の相場よりも安い価格で購入できる可能性があるため、初期費用を抑えて高い利回りでの不動産投資が可能になります。

しかし、競売物件で購入したとしても不動産投資が必ず成功する保証はありません。失敗を防ぐためにも基本的な注意点を把握しておくことが大切です。

ここでは、競売物件で不動産を始める際の注意点について詳しく解説します。

情報確認のために必ず3点セットを確認する

競売物件の情報を確認するためには、現況調査報告書・評価書・物件明細書の3点セットと呼ばれる書類が重要です。基本的に競売物件は内覧などができないため、3点セットの情報をもとに入札額を検討します。

現地調査報告書とは、土地の現況地目、建物の種類や構造、所有者の氏名や権限についてがまとめられた書類です。住居用もしくは店舗用の建物なのか、構造は木造なのか鉄筋コンクリートなのかなどが分かります。現在の所有者の氏名や権限についての記載もあるため、立ち退きリスクがあるかどうかも判断できるでしょう。

評価書には、不動産の図面や周辺環境、評価額についてが記載されています。不動産投資を始めるうえで間取りや周辺環境は重要な指標となるため、入札額を決める重要な書類となるでしょう。

物件明細書は、落札者が引き継がなければいけない権利関係についての明細が記載された書類です。賃貸物件として運用されていて入居者がいる場合はそのまま引き継がなければいけないのか、建物だけを落札した場合は底地を使用する権利があるかどうかなど、1冊のファイルにまとめられています。落札後のトラブルを避けるためには、物件明細書のすみずみまで確認しておきましょう。

また、現況調査報告書・評価書・物件明細書の3点セットはBIT(不動産競売物件情報サイト)で公開されています。閲覧には資格や登録の必要もないため、気になる競売物件があれば自由に確認可能です。

できる限り現地確認を行う

競売物件で不動産投資を始める場合、できる限り現地確認を行いましょう。

3点セットの評価書には、図面や周辺環境についてが記載されているものの、書類だけでは分からない部分が数多くあります。建物の間取りや周辺環境は、不動産投資を始めるうえでも入居率に直結する重要な指標となるため、不要なリスクを避ける意味合いでも現地に訪れておくとよいでしょう。

ただし、競売物件は基本的に内覧ができません。外観や周辺環境のみのチェックとなりますが、修繕の有無や周辺の治安についてはある程度理解を深められるため、不動産投資が失敗するリスクを抑えられます。

不明点があれば専門家へ相談する

競売物件は、通常の物件とは異なる部分が多岐にわたります。とくに内覧ができない競売物件は、入札の可否を決めるのも容易ではありません。家賃収入(インカムゲイン)、売却益(キャピタルゲイン)のどちらを目的とする場合でも、状況にあわせた入札の判断はとても重要です。

競売物件に関する理解がないまま、「収益性が高そうだから入札してみるか」と安易な気持ちで検討してしまうのは失敗する原因となります。

そのため、不明な点があれば競売物件に強い専門家へ相談するとよいでしょう。立ち退きリスクが発生する可能性はあるのかなど、競売物件ならではの不明点を確認してください。

専門家へ相談を仰ぐ場合、相談費用が発生するケースもありますが、収益性を望めない物件を購入してしまうリスクを防げます。

競売物件の不動産投資でありがちなトラブル

競売物件で不動産投資を始める場合、不動産会社から購入する通常の物件とは異なる失敗が目立ちます。通常の物件同様のつもりで検討せず、競売物件ならではのトラブルを把握したうえでの検討が大切です。

ここでは、競売物件の不動産投資でありがちなトラブルについて解説します。

想定以上の修繕費が発生

競売物件を購入したところ、想定以上の修繕費用が発生し、結果的に利回りが低下して不動産投資に失敗したというケースが見受けられます。

一般的な不動産会社の物件であれば、内覧によって購入の可否を決定します。しかし、競売物件は内覧ができず、外観や周辺環境の確認しかできません。

そのため、落札後に訪れると、建物内の老朽化が発覚し、多額の修繕費が必要になるケースも珍しくありません。想定以上の修繕費用はキャッシュフローの圧迫だけではなく、不動産投資を運用するうえでの利回り低下も懸念されるでしょう。

競売物件において、修繕費用の発生はつきものです。入札額だけで不動産投資を始められるとは考えず、修繕費用の発生をあらかじめ視野にいれておきましょう。

残置物の撤去ができない

残置物の撤去ができないことも競売物件でありがちなトラブルです。

基本的に競売によって得られる権利は、あくまでも不動産となるため、建物内に残された元所有者の残置物は勝手に撤去ができません

撤去するためには、元所有者と連絡を取り、許可を得る必要があります。

ただし、元所有者の連絡先が分からない場合は、強制執行を行うための手続きが必要です。手続きには専門的な知識が必要となり、費用も自己負担となってしまいます。

債務者が立ち退きに応じない

競売物件を落札し、不動産の権利を取得したものの、債務者が居住を続け、立ち退きに応じない場合があります。

債務者は住宅ローンの滞納などによって物件が競売にかけられているため、経済的な資産が残っていないケースも少なくありません。「引っ越しする費用がない」「ここを出たら住む場所がない」などの理由で立ち退かない場合もあります。

しかし、元所有者には居住する権利はなく、落札者は立ち退きを命じる権利を有してします。そのため、物件の所有者として元所有者に対して立ち退きを要求しましょう。

なお、立ち退きに応じない場合は、裁判所に申し立てを行い、引渡命令および強制執行の手続きが必要です。手続きには2ヶ月程度の期間が必要となり、その間は賃貸物件としての運用もできなくなってしまいます。

長期間立ち退きに応じてくれないと今後の収益性にも大きな影響を与えるため、元所有者が居住している場合は、早急な対応を心がけてください。

賃貸物件として使われており入居者を強制退去できない

競売物件が賃貸物件として運用されていた場合、入居者がいる可能性があります。

競売物件に居住する入居者には、6ヶ月間の建物明渡猶予制度が設けられているため、物件を落札したからといって強制退去を命じられません。

この制度の期間中であれば、入居者は賃料を支払い続ければ居住が可能ですが、期間後は退去を命じることが可能となります。

なお、入居者の状況は、3点セットのうちの現況調査報告書や物件明細書に記載があるため、事前に確認しておきましょう

元所有者の滞納金が負担になる

競売物件の種別によっては、元所有者の滞納金を負担しなければいけないケースがあります。例えば、元所有者がマンションを保有して管理費などを滞納していた場合、その滞納金も落札者が負担しなければいけません。

少額であれば問題はありませんが、長期滞納によって滞納金が膨らんでいた場合、不動産投資を始めるうえでの出費となるため注意が必要です。

なお、滞納状況については3点セットに記載されています。

競売物件での不動産投資は慎重に検討すべき

競売物件での不動産投資は、購入までは比較的スムーズに進むものの、その後の運用時にリスクが生じることが多いです。瑕疵担保責任が適用されない、立ち退きトラブルが生じやすいなど、前述のデメリットが投資をするうえで重大なリスクになるかもしれません。

競売物件での不動産投資は、慎重に検討することをおすすめします。物件の安さだけでなくその後の収益性まで考慮しながら、長期的な計画を立てるのが重要です。

まとめ

競売物件は通常物件よりも安く購入ができ、手続きも比較的スムーズに行えるため、場合によっては不動産投資において有利な物件となります。

しかし、競売物件は購入後に想定以上の修繕費が発生したり、立ち退きのトラブルが発生したりとリスクがつきものです。初期費用を抑えられたとしても、物件取得後に手間や多額の費用が発生してしまえば意味がありません。発生する費用によっては、利回りの低下だけでなく損失を被るリスクも考えられるでしょう。

通常物件とは異なるリスクを把握し、3点セットをすみずみまで確認するなどをして万が一の事態に備えてください。

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