既存不適格物件とは。購入するリスクと購入しても良いケース

不動産投資には既存不適格物件といわれる物件があります。これを不動産投資に活用することは可能です。しかし、既存不適格物件には一定のリスクやデメリットがあることを理解しておく必要があります。 メリットとデメリットを天秤にかけ、購入するべきか否か冷静に判断しなければなりません。 今回は、そんな既存不適格物件について解説します。具体的なリスクや購入しても良いケースについても解説するので、今後の不動産投資を始める際の参考にしてみてください。

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既存不適格物件とは

既存不適格物件とは、現在の建築基準法・市区町村独自の条例・地区計画に違反している物件のことです。新築時には適法だったものの、時代の経過や法律の改正に伴い今では不適法になってしまった物件です。

既存不適格物件は、いわゆる「違法建築物」とは異なります。違法建築物は新築時(もしくは改築時)の時点で法律に違反している物件です。場合によっては入居者・利用者の安全を確保することができなかったり、行政の本格的な指導による使用制限がかかったりすることもあり、不動産投資には向かない物件といえます。

既存不適格物件が発生する理由

ここでは既存不適格物件が発生する理由を解説します。なぜ、新築時には適法であった物件が「不適格」とされてしまうのか、主な理由を探っていきましょう。

建ぺい率や容積率が変更となった

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指し、容積率は敷地面積に対する延床面積の割合のことを指します。どちらも建物の大きさを制限するためのルールです。

建築後に建ぺい率や容積率が変更になり、適合しなくなったことが原因で既存不適格物件になるケースがあります。

特に近年は安全性・景観・近隣トラブルに配慮して建ぺい率の見直しが入ることが多く、都市計画法や条例・法令に沿って変更されることも少なくありません。

高さ制限が変更となった

高さ制限が変更となり、既存不適格物件となる場合があります。快適な住環境の確保や城・街並みなど文化財の保護、山や公園などの自然環境の保護を目的としています。

また、高層建築物に隣接する住居は日当たりや風通しが悪くなることから、隣接地の日当たりや風通しを確保するために、綿密な都市計画のもとで高さ制限が見直されることもあるのです。

耐震基準が変更となった

耐震基準は、1981年6月を境に旧耐震基準から新耐震基準へ改正されました。宮城県沖地震による家屋損壊を受けて、地震に強い家づくりを目的としています。その後2000年に、さらに厳しい耐震基準へと改正されています。

中規模の地震(震度5程度)では、ほとんど損傷がない耐震性が求められるようになり、地盤に応じた耐力壁のバランス強化などさまざまな項目が追加されています。

既存不適格物件にまつわる投資リスク

ここでは既存不適格物件を使って不動産投資するリスクを解説します。

既存不適格物件であっても、人が住んだり不動産投資したりするのに直接的な弊害はありません。しかし、既存不適格物件を購入するにあたって、把握しておかなければならないポイントがいくつかあります。確認しておきましょう。

金融機関の融資を受けづらい

既存不適格物件を購入する際は、金融機関から融資を受けづらくなります。現行の建築基準法や耐震基準に適合していない物件を避けようとする人は多く、効果的な空室率対策ができなければ収益化が叶いにくくなるでしょう。

万が一の貸倒リスクを懸念すると、金融機関は融資に対して慎重になり、投資家の条件が良くない限りローン審査を通過させないことがあります。

また、審査に通っても金利が高めに設定されていることがあるので注意しましょう。特にノンバンク系は融資を受けやすい一方で、金利や条件面をしっかりと確認する必要があります。

建て替え・増改築が困難になる

既存不適格物件を購入後、建て替えや増改築をする場合は、当然ながら現行の建築基準法などに従う必要があります。既存の建物と現行の法令との相性が悪い場合、簡易的なリフォームだけでは済まないこともあるでしょう。

土地の広さは変わらないので、建て替えを行うことにより建物の面積が狭くなるなど、不動産投資において不都合が生じやすくなります。

物件の売却価格が安くなりがち

既存不適格物件を売却するとき、売却価格が安くなる可能性があります。建築基準法や耐震基準に適合していないことは住む人や近隣住民にとってリスクであり、その分価格を下げないと売れ残ってしまうかもしれません。

そもそも買いたいと思う人が少なく、ターゲティングが困難なことからも価格を下げなければ売れないケースも多くあります。

既存不適格物件を買っても良いケースとは

既存不適格物件にはデメリットがありつつも、下記に該当する場合は購入を検討するのもおすすめです。

場合によっては、効果的に不動産投資できる可能性もあります。

工事費込みでも相場以下で購入できるケース

工事費やリフォーム代を含めても相場以下で購入できる場合、手元の資産が目減りするのを防ぎながら効率良く不動産投資できる可能性が高いです。

家賃を下げられるので費用面を重視する入居者が集まりやすく、近隣にある同程度の物件と比べて十分な競争力をつけられます。空室率対策の一環としても有効なので検討してみましょう。

金融機関から融資してもらえるケース

金融機関のローン審査に通過しており、かつ金利も許容範囲内であれば、既存不適格物件の取得もひとつの手段です。比較的安く物件を入手できるので、同程度の物件を高額で手に入れるより効率が良いでしょう。

特に、年収が低いなど事情があってローン審査に通過しにくい人にとっては大きなメリットとなります。

更地として高値で売れる見込みがあるケース

不動産投資において、建物自体の売却が難しくとも好立地であれば、更地にしても高値がつく可能性があります。この場合は既存不適格物件であっても取得しておいた方が良いでしょう。

再開発の対象となりそうなエリアや、アクセスに便利なエリアであれば、既存不適格物件を処分しても、土地だけで十分な価値がつくかもしれません。出口戦略を描きやすく、家賃収入だけでなく売却益による収益化も期待できます。

ただし、更地にして高く売れる見込みのある既存不適格物件は非常にレアであり、滅多に見つけることができません。本当に将来的に価値が上がりそうかを十分に検討してから購入することをおすすめします。

下記の記事では、優良物件の探し方について目的別に紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

【不動産投資】優良物件の探し方にはコツがある!目的別のポイントを紹介」

まとめ

既存不適格物件は価格が安く不動産投資向きと思われがちです。しかし、増改築や建て替えがしづらくローン審査も厳しいなど、取得前に把握しておかなければならない点がいくつも存在します。

しかし、工事費込みで相場以下になる場合やローン審査に問題なく通過できる場合は、既存不適格物件を使った不動産投資を前向きに検討できます。

将来的な価格の上昇や空室対策の手法にも目を向けながら、最小限のリスクで運用できそうかシミュレーションしてみましょう。