不動産投資の資金は何年で回収できる?目安やシミュレーションの方法を解説

不動産投資では、さまざまな指標を用いて投資の有無を判断します。投資物件の収益性を数値化し比較すれば、より正確で客観的な判断が可能です。今回は、資金回収期間を中心に実質利回りの計算方法にも触れ、回収期間を短くする方法についても解説します。

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不動産投資の資金回収は5〜10年を目安にする!

投資物件を検討する際、投資した資金を何年で回収できるか、回収期間を計算しておく必要があります。このとき、回収期間は5〜10年を見据えるのが一般的です。

不動産投資で利益を出す方法は2種類あります。売却益の『キャピタルゲイン』と、家賃収益の『インカムゲイン』です。短期間で高い利益を出せるキャピタルゲインですが、1〜2年で売却することはおすすめできません。

不動産投資では「物件取得時」「保有時」「売却時」に税金がかかります。不動産の売却による所得は譲渡所得として課税の対象となり、所有期間5年未満の税率より5年超の税率のほうが低いことから、短くても5年を超えた時点で売却するのが一般的です。

短期間の回収が見込めないのはインカムゲインでも同様です。回収期間が短いほど優れた投資物件といえますが、それには家賃や管理費を高めに設定したり、修繕費用などの費用を極力抑えたりする必要があります。

ですが、この方法では物件の集客力低下による空室率上昇が懸念されます。

また、保有期間が長いほど家賃収入を継続して受け取れますが、築年数を重ねると大規模修繕による費用負担が発生する可能性があり、またリフォームや設備改善などの方法はあるものの、家賃は少しずつ低下します。

そのため、物件の保有期間は長期になり過ぎない必要もあります。これらを踏まえると、回収期間は5年から10年を区切りとするのが一般的です。

具体的な回収期間はシミュレーションで算出

回収期間の目安は5年から10年ですが、物件ごとに状況は異なるため、数値化して比較する必要があります。

投資物件の広告などで掲載されている売却価格や表面利回りだけでなく、保有期間によるキャッシュフローの変化などをシミュレーションして、長期的な視野に立った賃貸経営や資金の計画を立てることが大切です。

【算出方法】不動産投資の資金は何年で回収できる?

投資した資金を何年で回収できるかを知ることは大切です。建物は月日が経つほど劣化して修繕費用がかかるので、回収期間は短いほど良いとされています。資金を回収したあとの収入は利益となり、資金繰りは安定します。

ここでは、不動産投資に欠かせない資金回収期間の算出方法について解説します。

1.利回り

物件を比較する際に、利回り(投資額に対する収入の割合)が使用されます。利回りには、購入価格に対する賃貸収入の割合である表面利回りと費用も加味した実質利回りがあります。

ネットや物件一覧など多くの物件情報が掲載されていたり、不特定多数に提示したりする場合には表面利回りが用いられます。表面利回りでは、費用面は考慮されていませんが、大まかな物件の収益性を把握するときには便利な指標です。

一方、実質利回りでは、購入価格から手数料や諸費用などを差し引き、家賃収入についても、管理費用や修繕費用、税金を差し引きます。

表面利回りと比べ、費用を見積もる必要があり、算出に時間がかかります。実質利回りは、最終的に投資物件を絞り込む場合や回収期間を把握する場合など、実態に近い数値が必要な際に使います。

2.CCR

不動産投資で重要なポイントは収益率です。CCR(Cash on Cash Return)は自己資本配当率とも呼ばれ、年間の収益額をもとに収益率を求める指標を示します。

CCRを計算することで、自己資金を全額回収するのにどれくらい年数を要するのかを予測できるのです。

CCRは、「年間収益額÷投資額×100」で算出できます。CCRの数値が高くなるほど短期間での回収が可能となり、効率が良いと判断できます。

回収期間は「投資額÷年間収益」で算出できるので、何年で自分の投資額が回収できるのかが簡単に計算できます。

ただし、物件は家賃の下落や老朽化、修繕の発生などで収益が変動します。投資の初期に算出したCCRの指標のみを利用すると、経営判断のミスにつながるおそれもあります。より正確な数値を見るためにも、CCRの計算は定期的に行うようにしましょう。

3.PB

PB(Pay Back Period)は資金回収期間といわれ、より具体的に回収期間を数値化できる指標です。

PBは「投資額÷(年間収益-諸経費)」で算出でき、導き出された数値が低いほど短期での回収が可能になります。

諸経費を含めた計算になるため、CCRよりもリアルな数値が算出できることがPBの特徴です。しかし、計算に使用する手数料や税金などの諸経費を低く見積もってしまうと、実際の回収期間とのギャップが生じてしまいます。

PBを算出する際は、具体的な数字を落とし込むようにしましょう。また数値が高すぎる場合は、投資額を減らすか年間収益のアップ、諸経費の削減につながる計画が必要です。

4.ROI・ROE

ROI・ROE (Return On Investment)(Return On Equity)は投資収益率と呼ばれ、自己投資額だけでなく借入金まで含めた総投資額に対し、年間収益を知る指標です。

ROI・ROEは「年間収益÷総投資額(自己資金+借入金)×100」で算出できますが、物件購入前で総投資額が決定していない場合は、リアルな数値が算出できません。物件購入後や、借入金の額が決定した時点の予測値として活用しましょう。

ROI・ROEでは、算出された数値が高ければ高いほど回収期間が短く、効率的であるといえます。

資金回収シミュレーションの事例

ここからは、先ほど紹介した利回りやCCR、PB、ROI・ROEを使った資金回収シミュレーションの事例を紹介します。

<新築アパート一棟>

・アパートの価格:7,000万円

・自己資金:500万円

・家賃:12万円/月×10部屋

・借入金:6,500万円/35年ローン=月々の返済215,320円

・固定金利:2%

・諸経費:家賃収入の15%

家賃収入が毎月12万円×10部屋×12か月とすれば、年間で1,440万円になります。空室リスクも考えなければならないので20%を空室とすると1,440万円×0.8=1,152万円が家賃収入として算出できます。

運用にかかる諸経費は15%のため、1,440万円(満室時の家賃収入)×0.15=216万円(諸経費)となります。ここまで計算すると、以下の計算式で利回りやCCR、PB、ROI・ROEがわかります。

・表面利回り

(1,440万円-216万円)÷7,000万円×100=約17%

・実質利回り

(1,152万円-216万円)÷7,000万円×100=約16%

・CCR

1,440万円÷500万円×100=288%

・PB

500万円÷(1,440万円-216万円)=0.4年

・ROI・ROE

1,440万円÷(500万円+6,500万円)×100=20.5%

こちらのシミュレーションはあくまで仮説です。不動産投資には突発的な修繕や、需要低下による空室率増加といったリスクもあります。計算式を用いて算出した結果は、参考程度として捉えましょう。

資金の回収期間を短縮するポイント

不動産投資において、資金回収期間は重要な指標のひとつです。資金回収期間を短縮できれば、早期の収益化を図れます。ここでは、不動産投資のコツともいえる回収期間を短縮するポイントについて解説します。

自己資金を減らす

CCRの計算式から解るように、回収期間を短縮するためには、自己資金を少なくするか、収益額を増やすしかありません。

自己資金を減らすためにはローンを利用します。ローン返済で収益額は減少しますが、自己資金を大きく減らせば、収益率は上がります。

また、収益率の上昇により回収期間は短縮されます。ただ、借りすぎてしまうと賃貸経営が上手くいかなくなったときに返済できなくなりますので、返済可能額を見極める必要があります。

物件を厳選する

金融機関の融資では、物件の耐用年数が審査の対象となります。残存耐用年数の長い物件であれば、返済期間を長くして毎年の返済額を抑え、収益額を増やすことが可能です。

返済期間を延ばせば利息総額が増えますが、「低金利が続いていること」「手持ちの資金が増えること」などを考えると、結果的に回収期間を短縮できることからも、返済期間を長くしたほうがメリットは大きくなります。

具体的な物件の構造として、鉄筋で補強されているRC造であれば、法定耐用年数が47年と長く、築20年以内の物件は長期の融資を受けられる可能性がありますので、返済期間に注目した物件探しは重要です。

まとめ

不動産に投資した資金は、税制や物件の修繕費用を考えると、5〜10年での回収が理想です。家賃収入が増えれば、回収期間は短くなりますが、家賃は安定した収入で、急に増やすことはできません。

今回紹介した自己資金を減らす方法とローン返済期間を延ばす方法でも回収期間を短くできます。一度、シミュレーションをしてみると良いでしょう。