不動産投資物件の原状回復はどっち負担?工事内容や費用相場、よくあるトラブルを解説

目次1 不動産投資物件における原状回復とは?2 よくある原状回復工事の内容や費用相場2.1 ハウスクリーニング2.2 ク … 続きを読む 不動産投資物件の原状回復はどっち負担?工事内容や費用相場、よくあるトラブルを解説

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不動産投資物件の原状回復費用は、貸主と借主のどちらが負担するかで多くのトラブルが起きています。

基本的には賃貸物件の経年劣化や通常使用による損耗は貸主負担、入居者の故意や過失による損傷は借主負担が原則です。ただし、現場では判断が難しいケースもあります。

物件の価値を維持し、次の入居者を確保するためにも、原状回復の基準は正しく理解しなければなりません。

この記事では、不動産投資物件の原状回復工事の具体的な内容から費用相場、トラブル事例と対策を解説します。

不動産投資物件における原状回復とは?

不動産投資物件の原状回復は、入居者が退去する際に物件を契約時の状態に戻すための工事を指します。

賃貸物件は日常的な使用で劣化が進むため、修繕や設備の交換が必要です。

原状回復にはクロスの張り替えやフローリングの補修、キッチンや浴室の修繕など、幅広い工事が含まれます。

費用負担の判断基準は、国土交通省が定める原状回復ガイドラインが参考になります。

経年劣化や通常使用による損耗は貸主が負担し、入居者の故意や過失による損傷は借主が負担するのが基本です。

よくある原状回復工事の内容や費用相場

ここでは、よくある原状回復工事の内容や費用相場について解説します。

ハウスクリーニング

ハウスクリーニングは、原状回復工事の基本となる作業です。次の入居者を迎えるために欠かせません。

ハウスクリーニングには、床のワックスがけや排水管の清掃、エアコンの内部洗浄などが含まれます。費用の相場は物件の広さや汚れの程度によって変わりますが、一般的な賃貸マンションでは数万円前後です。

基本的に専門業者による清掃は貸主負担になりますが、賃貸借契約の特約で借主負担となる事例も増えています。

ただし、特約で借主負担とする場合は、契約時に十分な説明と合意が必要です。退去時のトラブルを防ぐため、負担範囲を明確にしておきましょう。

クロスの補修や交換

クロスの補修や交換は、原状回復工事でもっとも頻度が高く、費用負担の判断が必要な作業です。クロスは通常6年で価値がなくなるとされ、経過年数に応じて費用負担の割合が変化します。

クロスの張り替え費用は、1平方メートルあたり数百円から1,000円以上が相場です。全面張り替えの場合は、数十万円以上かかるケースもあります。

日焼けによる変色や経年劣化は貸主負担ですが、タバコのヤニや落書きなど、入居者の故意や過失による汚損は借主負担です。喫煙によるクロスの変色は、臭いの除去も含めて高額な費用が発生するため、入居時の契約条件を慎重に検討する必要があります。

フローリングの補修や交換

フローリングの補修や交換は、物件の美観と安全性を保つために欠かせない原状回復工事です。

基本的に家具による凹みや日常的な擦り傷は、経年劣化として貸主負担です。しかし、引っ越し時の重量物による破損や、水漏れによる膨張は借主負担になります。

フローリングの修繕費用は、1平方メートルあたり数千円から1万円程度です。部分的な補修から全面張り替えまで、損傷の程度に応じて対応が必要になります。

キッチンの修繕や交換

キッチン設備の修繕や交換は、入居者の生活品質に直結する原状回復工事です。

シンクの交換は数万円から、カウンタートップの交換は数十万円、キッチン全体の交換では数百万円以上の費用が発生する場合があります。

通常の使用による設備の劣化は貸主負担ですが、入居者の不適切な使用による破損は借主負担です。排水管の詰まりや換気扇の故障、キャビネットの破損などは、使用状況によって負担の判断が分かれます。

浴槽設備の修繕や交換

浴室設備の修繕や交換は、衛生面と安全面から欠かせない原状回復工事です。

トイレの修繕費用は1〜5万円程度、交換は10〜20万円以上、バスタブの修繕は1〜5万円程度、交換は15〜30万円以上の費用が発生します。

水回り設備は経年劣化が避けられないため、通常の使用による劣化は貸主負担です。ただし、排水口の詰まりや壁面のカビ、タイルの破損など、日常的なメンテナンス不足による損傷は借主負担となる場合があります。

エアコンや給湯器の交換

エアコンと給湯器は、住居の快適性を左右する重要な設備です。しかし、交換時には高額な費用が発生します。

給湯器の交換費用は10万円程度で、経年劣化による交換は貸主負担です。また、エアコンの設置による壁のビス穴や設置跡は、通常の使用範囲として貸主負担になります。ただし、清掃不足による故障や不適切な使用による破損は借主負担です。

オーナー負担と入居者負担の判断基準

ここでは、オーナー負担と入居者負担の判断基準について解説します。

オーナー負担となるケース

オーナー負担となる原状回復は、経年劣化や通常使用による損耗が対象です。

冷蔵庫やテレビの後部壁面の黒ずみ、家具の設置跡による床のへこみ、壁のポスター跡など、日常生活で避けられない劣化はオーナーの負担になります。

自然災害によるガラスの破損や、鍵の通常交換も同様です。

また、経過年数を考慮する必要があります。例えば、クロスは6年で価値がなくなるため、それ以降の張り替えはオーナー負担です。

入居者の入れ替え時に実施する専門業者によるハウスクリーニングや、床のワックスがけ、排水管の清掃なども、特約がない限りオーナー負担になるため注意しましょう。

入居者負担となるケース

入居者負担となる原状回復は、故意や過失による損傷が対象です。タバコのヤニによるクロスの変色やニオイ、ペットの飼育による壁や柱の傷、薬品の汚れ、設備の故障放置による破損など、通常の使用範囲を超える損傷は入居者負担になります。

壁の釘穴やネジ穴でも、下地ボードの張り替えが必要な程度のものは入居者負担です。

ただし、経過年数を考慮する必要があるほか、設備の価値減少分は差し引かれます。入居時の契約で特約を設ける場合は、入居者の負担が過度にならないよう、正当な範囲内で設定しましょう。

なお、原状回復費用は敷金から精算され、足りない部分を請求する形になります。

原状回復費用の負担でよくあるトラブル

ここでは、原状回復費用の負担でよくあるトラブルを紹介します。

喫煙によって付いたニオイやヤニ

室内喫煙によるニオイやヤニの問題は、高額な原状回復費用が発生する代表的なトラブルです。クロスの変色やニオイの除去には、全面張り替えや特殊清掃が必要になり、下地ボードまで影響が及ぶと費用が膨らみます。

喫煙による損傷は原則として借主負担ですが、クロスの経過年数も考慮されます。ただし、6年以上経過したクロスでも、喫煙による損傷は通常の使用範囲を超えるため、工事費用は借主負担となる場合があります。

トラブルを防ぐには、物件募集時に禁煙物件に設定したり、契約時の特約で喫煙ルールを明確にしたりする取り組みが必要です。

ペット飼育によるニオイやキズ

ペット飼育に起因する損傷は、原状回復費用の負担で判断が分かれやすい問題です。しかし、ペットによる壁や柱の傷、ニオイの付着は、原則として借主負担になります。

例えば、ペット可物件であってもクロスや床材の交換が必要なケースなど、通常の使用範囲を超える損傷は借主負担です。

トラブルを防ぐには敷金を通常より多く設定したり、保証会社の補償範囲を確認するのが効果的です。また、契約時の特約で補修範囲を細かく規定し、退去時のトラブルを未然に防ぎましょう。

ペット可物件で不動産投資を始める際のポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ペット可物件で不動産投資する際のポイントと注意点

責任の所在の分からないキズや汚れ

入居時の物件状態と退去時の状態を比較しても、損傷の原因特定は容易ではありません。壁や床の傷、設備の不具合は入居前からあったものか、入居中に付いたものかの判断は難しく、費用負担をめぐるトラブルになりやすいです。

特に、借主は入居時からの損傷と主張し、貸主は証拠がないとして修繕費用を請求するケースが発生します。

損傷の原因特定が難しい場合は、双方の主張が平行線をたどり、解決に時間がかかる場合もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、入居時のチェックリストや写真記録など、物件状態を証明する手段を有効活用しましょう。

原状回復によるトラブルを防ぐためのポイント

ここでは、原状回復によるトラブルを防ぐためのポイントについて解説します。

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを確認しておく

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインは、貸主と借主の負担区分を明確にする重要な指針です。経年劣化や通常使用による損耗は貸主負担、故意・過失による損傷は借主負担という基本原則のほか、設備の経過年数による価値減少の考え方や、特約の有効性判断基準なども示されています。

ガイドラインに基づく適切な費用負担は、退去時のトラブル防止につながります。また、判例で示された考え方も参考になるでしょう。

入居後に物件の状態を確認してもらう

新しい入居者が入った直後に、物件の状態を詳細に確認してもらう行為は、将来のトラブル防止に効果的です。入居者本人に部屋の状態を確認してもらい、気になる箇所は書面で報告を受けましょう。

壁や床の傷、設備の不具合など、入居時から存在する損傷を明確にしておけば、退去時の責任の所在をめぐるトラブルを防げます。

チェックリストの活用や写真撮影による記録を行ない、双方の認識の違いを防ぎましょう。

原状回復特約があれば双方の負担範囲を明確に説明しておく

原状回復に関するトラブルを防ぐには、契約時の説明と確認が不可欠です。賃貸借契約書には原状回復の範囲や費用負担を明確に記載し、契約時に借主へ十分な説明を行う必要があります。

特に通常使用による損耗と故意・過失による損傷の区別、特約による借主負担の範囲については、具体的な事例を交えて説明しましょう。

また、入居時に物件の状態を詳細に記録し、チェックリストや写真での管理も大切です。

まとめ

不動産投資において原状回復は、次の入居者を迎えるためにも不可欠な工事ですが、退去後の部屋の状態によっては高額な工事費が発生するケースも珍しくありません。

 

しかし、原状回復工事を怠った場合、入居率が下がり収益性の低下につながるケースもあるため、費用の発生は避けられないでしょう。

原状回復費用の負担は原則、経年劣化や通常使用による損耗は貸主負担、故意・過失による損傷は借主負担です。費用負担の範囲を明確化してトラブルのない賃貸経営を目指しましょう。

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