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不動産投資を始めようとして、住宅ローンを活用した資金調達を検討している方もいるのではないでしょうか。
しかし投資用のマンションやアパートの購入資金には、通常の住宅ローンは利用できません。不動産投資ローンと呼ばれる収益物件専用のローンを使う必要があります。
今回は住宅ローン控除の適用条件や控除シミュレーション、申請に必要な書類、2024年の法改正について説明します。不動産投資で節税する方法も合わせて解説しているため、ぜひご一読ください。
投資用物件は住宅ローン控除の適用を受けられない
投資を目的に購入したマンションやアパートには、住宅ローン控除の適用を受けられないと知っておかねばなりません。物件の購入に利用する不動産投資ローンは住宅ローンとは別物です。
したがって月々の返済額を住宅ローン控除に組み入れる扱いは認められません。住宅ローンの利用条件は自己が居住する物件の購入費用です。
他人に貸し出す収益物件の調達は本来の目的の範疇から外れるため、控除はもとより制度自体が利用できません。
しかし、これはあくまで賃貸マンションやアパートの購入費用に使えないだけで、賃貸経営のオーナーが自己の住む物件の資金調達を目的にする場合は住宅ローンの利用は可能です。
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除とは一定の条件を満たす住宅ローンを活用した際に、年末時点のローン残高に0.7%を乗じた金額を所得税の控除額に計上できる制度です。
適用条件や控除額、控除に必要な手続きを確認しましょう。
適用条件
新築物件を購入した場合の住宅ローン控除の適用条件は次のとおりです。
- 住宅の引き渡し日または工事完了日から6ヵ月以内に居住を開始したこと
- 床面積が50㎡以上、かつ自己の居住に要する床面積が2分の1を超えること
(※控除を受ける年の所得が1,000万円以下の場合は40㎡以上50㎡未満でも可) - 返済期間が10年以上におよぶ割賦償還方式の住宅ローンを利用すること
- 民間の銀行や信用金庫、独立行政法人住宅金融支援機構などの住宅ローンを利用すること
- 控除の適用を受ける年度の課税所得が2,000万円以下であること
- 長期優良住宅建築計画の認定通知書または低炭素建築物新築等計画の認定通知書、および住宅用家屋証明書などで証明を受けた物件であること
省エネ基準適合住宅や買取再販住宅(または買取再販認定住宅)、中古住宅などの物件の種類ごとに住宅ローン控除の適用条件は異なります。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
控除額
住宅性能や住宅の種類ごとに応じた年間最大控除額と、以下の計算式で算出した借入残高の一定割合のいずれか低い金額が控除の対象です。
所得税で控除しきれなかった部分は、97,500円を上限に控除を受けられます。控除の対象となるのは最大で13年間です。
住宅ローン控除額より本来の納税額が少ない場合、すべての控除可能額の利用は認められません。なお年間最大控除額には次の区分が存在します。
- 長期優良住宅(低炭素住宅):年間31.5万円
- ZEH水準省エネ住宅:年間24.5万円
- 省エネ基準適合住宅:年間21万円
- その他の新築住宅:2024年以降は住宅ローンの適用不可
必要な手続き・書類
新たに住宅ローン控除の適用を受けるときは物件を購入した年度内(翌年の2月中旬〜3月中旬)に確定申告が必要です。
一般的に会社から給与が支給されるサラリーマンは勤務先が納税手続きを肩代わりします。したがって本来なら申告の必要はありませんが、住宅ローン控除の適用を受ける際は、職業に関わらず申告をしなくてはいけません。
サラリーマンは初年度に確定申告を済ませれば、2年目以降は年末調整で会社に所定の書類を提出するだけで控除の適用を受けられます。ただしもともと自分で申告する必要がある個人事業主やフリーランスの場合、毎年住宅ローン控除の申請が必要です。
確定申告で住宅ローン控除の適用を受ける際の必要書類は次のとおりです。
- 確定申告書類
- 源泉徴収票
- 住宅ローンの年末残高等証明書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 登記事項証明書
- 不動産売買契約書の写し
- 本人確認書類の写し
確定申告書は最寄りの税務署、源泉徴収票は勤務先、住宅借入金関連の書類は借入した金融機関で取得できます。確定申告書の記入が済んだら、添付書類とともに申請期限内に税務署に提出しなくてはいけません。
提出方法は窓口持参・郵送・e-Taxの3つです。おすすめは手間がかからないうえ、期間中は土日祝日問わず24時間申請できるe-Taxによる電子申告です。
⇒不動産投資の確定申告はe-Taxが便利!具体的な申告方法を解説
住宅ローンの控除額シミュレーション
具体的な事例をもとに住宅ローンでいくら節税になるか計算してみましょう。条件は次のとおりです。
- 長期優良住宅の新築(2024年入居)
- 年末時点における住宅ローンの残高:2,000万円
- 所得税:10万円
- 住民税:18万円
長期優良住宅や低炭素住宅に入居する場合、借入限度額は4,500万円です。4,500×0.7=31.5となり、最大控除可能額は31.5万円だと算出します。
比較対象の住宅ローン残高の一定割合は2,000万円×0.7=14万円です。31.5万円より低いため実際の控除額は14万円だとわかります。
所得税の10万円は控除額の範囲内に収まりました。したがって本年度は所得税を納める必要がなく、控除しきれなかった残額の4万円を翌年に支払う住民税から差し引きます。
しかし住民税の控除額は最大9.75万円のルールがあるため、本事例では控除可能額のすべては利用できません。
【2024年税制】住宅ローン控除の改正点
住宅ローン控除にかかる税制は2024年に大きな改正が行われました。主要な論点は2024年以降に新築物件に入居するケースの適用条件や借入限度額が著しく変化したことです。
住宅ローン控除の法改正で押さえるべきポイントを解説します。
省エネ基準に適合しない新築物件は利用できなくなった
2024年以降に新築物件に居住する場合、次に当てはまる住宅以外は住宅ローン控除の対象から外れます。
- 長期優良住宅
- 低炭素住宅
- 省エネ基準適合住宅
- ZEH水準省エネ住宅
なお上記に該当しなくても中古住宅の場合は引き続き住宅ローン控除の対象です。ただし他の住宅ローンと比べて控除限度額は2,000万円と低く、限度年数も10年と短くなります。
2025年の新築物件では原則、すべての住宅に省エネ基準の適用が義務化されます。低炭素住宅や長期優良住宅、ZEH水準省エネ住宅の条件に当てはまらなくても、住宅ローン控除の適用を受けられます。
したがって新たに住む新築の物件が住宅ローン控除の適用を受けられないのでは?と心配する必要はないでしょう。
ただし減税の申請には建設住宅性能評価書の写し、もしくは住宅省エネルギー性能証明書のいずれかの証明書を提出しなくてはいけません。
確定申告の際に住宅の環境性能を示す書類を提示できなければ、その他の物件だと扱われ、住宅ローン控除の適用を受けられない可能性があります。
子育て世帯や若者世帯を除き、借入限度額が縮小される
2024年以降、新築物件のすべての区分で借入限度額の上限が引き下げられます。
長期優良住宅と低炭素住宅は5,000万円から4,500万円、ZEH水準省エネ住宅は4,500万円から3,500万円、省エネ基準適合住宅は4,000万円から3,000万円に減らされました。
2024年から住宅ローン控除の対象を外れるその他の住宅は0円です。
ただし次の条件に当てはまる適用対象者が2024年内に入居した場合は例外的に限度額が縮小されません。
- 9歳に満たない扶養親族がいる子育て世帯
- 夫婦のいずれかが40歳未満の若年夫婦世帯
具体的には限度額に上乗せ分が課せられ、結果的に2023年以前の水準が維持されます。一方で中古住宅の場合、2024年以降も借入限度額の上限に変化がありません。
不動産投資で節税する方法
不動産投資用の賃貸物件で節税するには住宅ローン以外の方法を検討しなくてはいけません。
利用できる制度は複数あるため、知識を頭に入れて漏れなく申請する必要があります。収益物件の節税に使える具体的な仕組み・ルールを紹介します。
損益通算
損益通算は家賃収入の赤字を他の所得の黒字と相殺する制度です。課税所得が減るため所得税と住民税を減少させる効果が認められます。
損益通算を行うには前提として赤字が生じている必要があります。経費を漏れなく計上して帳簿上の利益がない状態にしなくてはいけません。
重要なのは控除額が大きく、節税のインパクトが大きい減価償却です。減価償却費は原則、取得金額を法定耐用年数で除して算出する仕組みです。
したがって耐用年数が短い中古の物件のほうが多くの経費を計上できます。またRC(鉄骨)造と比べて木造は法定耐用年数が短いため、減価償却の節税パフォーマンスは高くなります。
贈与税や相続税の節税
現金を土地や建物の現物資産にすると相続税評価額が減り、贈与税や相続税の負担を減らせます。1億円の現金で賃貸マンションを調達した場合の評価額は約8,000万円です。
課税対象額が減るため、贈与や相続を受けた親族や第三者が負担する税金を少なくする効果があります。
住宅ローン控除や損益通算と異なり、納税義務者の所得税や住民税に影響は与えません。しかし将来的に購入した収益物件を手放す予定がある人は、贈与税や相続税対策は考えておく必要があります。
法人化して所得税を抑えられる場合あり
個人事業主として不動産投資に励むオーナーは、法人化によって税負担が減る可能性があります。累進課税を採用する日本の所得税制では、課税所得が800万円を超えると法人税に切り替えたほうが税率が減ります。
具体的な計算式による比較は次のとおりです。
- 個人事業主:800万円×23%₋63.6万円=120.4万円
- 株式会社:800万円×15%=120万円
所得額が大きいほど法人化した際の節税メリットも膨れ上がります。
法人化には設立費用の負担や社会保険の負担などのデメリットがあるとはいえ、継続的に個人事業で800万円以上の稼ぎを得ている人は会社の設立を検討しても良いでしょう。
まとめ
今回は住宅ローン控除の適用条件や控除可能額、2024年の法改正について紹介しました。また住宅ローンを使えない賃貸経営の節税方法も合わせて解説しました。
住宅ローン控除関連では2024年以降は省エネ基準を満たす新築物件しか利用できなくなったこと、借入限度額が減らされたことが大きな変更点です。
マンションやアパートの経営者には直接の影響はないとはいえ、プライベートで新居に住もうと検討中の人は押さえておきたい知識です。
不動産投資で節税する方法は赤字が出た際の損益通算や、課税所得が800万円を超えたときの法人化が挙げられます。正しく制度を活用して賢く税金を減らすためにも、賃貸経営で得た収益とコストの正確な把握が必要です。
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