2024年春以降、どうなる経済・金融・不動産投資系ローン

最近のビッグニュースとしては日経平均株価が34年ぶりに3万9,000円を超え過去最高値を更新した事が挙げられます。 今回のコラムでは気になる今後の経済・金融情勢、さらに不動産投資業界がそれらの動きからどのような影響を受けるのかを検証してみたいと思います。

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政策金利の推移とは

近年の政策金利の動向について見てみましょう。かつて金利は日銀による「公定歩合」によって変動していました。「公定歩合」と金融機関による預金や融資などの金利は連動したものとなっていました。

<1994年>には金利自由化により公定歩合と預金金利などの連動はなくなり、現在は日銀の市場操作によって金利が変動しています。

<1999年から2000年>にかけては、バブル崩壊以降に「デフレ経済」が続いたため、景気回復のために「ゼロ金利政策」が実施されました。

<2001年>には「量的緩和政策」が実施されましたが、その後も金融緩和政策は続きました。

<2013年>からは「量的・質的金融緩和」が開始となりマネタリーベースによる金融市場調整となりました。マネタリーベースとは市中に供給するお金の量であり、これを調整する事で景気をコントロールします。

<2016年>には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」とされ、銀行など金融機関が日銀に預ける預金にマイナス金利が適用となりました。金融機関は日銀に預けずに融資に回すようになり、景気の活性化を狙います。現在もこうした政策が継続されています。

「金融緩和政策」とは

日本では長らく「デフレからの脱却」を目指して「低金利政策」が続けられてきました。いわゆる「金融緩和」とは「低金利政策」の事を指します。逆に「金融引き締め」となると金利を引き上げる事を意味します。

金利を低くすると企業などが融資を受けたり社債を発行したりして資金調達をしやすくなり、設備投資や不動産などへの投資が増え経済が活性します。また個人においても住宅ローンを組みやすくなるので住宅の売り上げが増え不動産市場も活性するなど景気回復の手助けとなります。

低金利にはデメリットもある

但し低金利を続けすぎるとデメリットもあります。私達が銀行に貯金をしていても低金利なので利息は非常に少なく、例えば100万円を普通預金に1年預けても金利が0.001%とすると利息はわずか10円で、さらに税金が約20%かかります。また銀行は融資をしても低金利のため利益が少ない事、海外では金利上昇が続いますが日本は金利が低く円安の要因の一つになっている事など様々です。

このため景気上昇のタイミングを見計らって低金利政策は終了する必要がある訳です。日銀では金融緩和の目的として「物価の安定」を上げており、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率2%と2013年に定めています。

長期金利は若干上昇傾向に

金利には大きく分けて「短期金利」と「長期金利」があります。短期金利は日銀によって決められるので「政策金利」とも呼ばれています。マイナス金利となっているのは「短期金利」です。長期金利は日銀により2016年から長期金利を誘導する「長期金利操作付き金融緩和政策」が開始されています。当初は長期金利が0%となるように-0.10%~0.10%に目標が置かれましたが、その後も段階的に引き上げられ、2023年には1%が許容範囲となっており、現在は0.7%前後で推移しています。

金融緩和は出口が近いのか

前述したように日銀の物価安定目標として消費者物価2%を掲げています。では最近の消費者物価の動向はどうなっているのかを見てみましょう。

総務省が発表した2023年12月の消費者物価(総合)は前年同月比で2.6%の上昇となり、2023年の平均(総合)では前年比3.5%と大きく上昇しています。2024年1月には2.2%の上昇となりました。

消費者物価指数の推移(前年比)

2019

2020

2021

2022

2023

前年比

0.5%

0.0%

-0.2%

2.5%

3.2%

<総務省「2020年基準 消費者物価指数」>

つまり日銀の定める物価上昇率を超えている訳です。ではすぐに金融緩和は解除されるかというと、実はそうではありません。1月に開催された日銀の金融政策決定会合では大規模金融緩和の継続を決めていますが、これはなぜでしょうか。日銀の植田総裁は2024年2月には日本経済が「インフレ」状態となっていると明言していますが、現在進行している物価上昇の要因が「安定的な経済成長」から来るものではなく外的要因によるものが多く、例えば新型コロナによるサプライチェーンの乱れによる物流の乱れや生産の減少からの物価高、世界的な紛争によるインフレ、さらに日本では円安による輸入物価上昇からの商品やエネルギー価格の上昇などで、日本経済の完全な復活とは言えない可能性があるからです。

給与水準の動向は

そこでキーワードとなるのは「給与水準の動向」です。

厚生労働省が発表した2023年の実質賃金は前年比2.5%の減少となりました。2020年を100とする指数で97.1となり1990年以降で最も低くなっています。実際に支払われた賃金は増加していますが、物価上昇率の方が高いので実質的にはマイナスとなりました。

岸田総理は給与水準の上昇を呼び掛けていますので、大企業などを中心に給与水準は上昇しました。厚生労働省が発表した2023年「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によると2023年の賃上げ率は3.6%となり1994年以来の3%台となりました。この数値は主要企業ですので中小企業を含めた平均では1.2%の上昇となっており、まだ物価上昇率には届いていないのが現状です。

実質賃金の推移(対前年比)

 

2019

2020

2021

2022

2023

前年比

△1.0%

△1.2

0.6%

△1.0%

△2.5%

<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報」>

※実質賃金の物価上昇率は総合(帰属家賃を除く)3.8%が基準

2024年の給与水準と金利の関係は

2024年には一層の賃上げを目指し岸田総理も呼びかけを行っています。2024年の春闘では、相場の牽引役と言われる製造業などの要求が表明され、電気、自動車、造船、鉄鋼などの各業界では過去最高となるベースアップなど高水準な要求が多くなっています。日本最大の労働組合の組織である連合では、2024年度の春闘で定昇分を含めて5%以上の賃上げ要求を決定しています。東京商工リサーチの調べによると、2024年に賃上げ予定の企業は85.6%と調査開始の2016年以降では最高とななり、中でも大企業では93.1%とその割合も高くなっています。

ホンダ、マツダなど大手自動車メーカーは2月後半には早くも満額回答を発表しています。こうした流れが他業界を始め中小企業などにも向かうかも注目を集めています。

給与水準の上昇が進み、物価上昇分よりも高くなれば実質賃金がプラスに転化し、デフレからの脱却に近づく可能性も高いと言えます。つまり賃金水準の上昇が続けば金利上昇の可能性も高くなると言えます。

株価の上昇と金利の関係は

2024年に入り株価の上昇が続いています。2月22日には過去最高(終値)である3万8,915円を上回り3万9,098円になり、その後もさらに上昇する動きもあります。

日経平均株価の主な動き

 

今までの過去最高値

(終値)

バブル後の最低値

(終値)

最高値を更新

(終値)

日付

1989年12月29日

2008年10月27日

2024年2月22日

株価

3万8,915円

7,162円

3万9,098円

既にお気づきの方も多いと思いますが1989年から2024年までの日経平均株価の推移のグラフを見てみると、左右がほぼ対称となっています。改めてその株価の動きに驚かされると共に、とても不思議な感じがします。

こうした株価場の要因として、円安による海外からの資金の流入や輸出企業の収益の増加、またコロナ5類移行により国内の景況感も上昇、人流も増加してきている事、新型NISAにより多くの投資資金が株式市場に流入している事など様々な要因が挙げられます。また米国の金利動向や中国への投資資金が日本に流入している事など海外の要因からの影響も見られています。しかし「低金利」による企業収益の下支えも大きな要因と考えられます。

日経平均株価の推移(イメージ図)

※イメージのため実際とは異なります。

金利の引き上げは行われるのか

住宅ローンや不動産投資ローンなどの金利は、固定型は長期金利に、変動型は短期金利に連動する傾向があります。

長期金利は市場の需要などによって変動しますが、日銀によって変動幅が調整されており、その変動幅は年々大きくなってきています。このため固定型の住宅ローン金利は若干の上昇傾向が見られています。

短期金利は現在マイナス金利となっており歴史的にも非常に低い水準となっています。現在はこの短期金利の引き合げについて注目が集まっている状態です。

今後給与水準の上昇が物価上昇幅を超える状態となると金利の見直しが行われる可能性もあります。但し急激な金利引き上げはデメリットも多く、回復の兆しが見える日本経済を腰折れさせる事にもなりかねませんので、金利の上昇は慎重に見極められるのではないでしょうか。 

金利動向とマンション投資の関係は

低金利は不動産市場にも大きな影響を与えます。特に大都心圏の都心部などでは低金利によりマンションの需要が拡大し、地価・建築費の上昇も加わってマンション価格が上昇しています。

マンション投資は一般的に不動産投資ローンを利用して行います。不動産投資ローン金利の中には固定金利もありますが、その多くが変動型となっています。変動型の金利は短期金利に各金融機関が上乗せした金利に基づいて決まります。また金融機関の間でも金利の競争原理が働いていますので金融機関によって差が生じる訳です。

今後、短期金利の引き上げが行われるとしてもローン金利は「超低金利圏」が「低金利圏」に移行し、「低金利」である状態は維持されると考えられますので、マンション投資に与える影響は少ないと言えるのではないでしょうか。

今後もマンション投資の好機が続くのか

日本経済の回復の期待は株価にも表れており賃上げも進む可能性があります。賃上げなどの人件費の上昇は商品価格やサービス価格にも転嫁が進んでおり、物価上昇もさらに進む可能性があります。こうしたインフレが続く中では長く安定してきたマンションの「賃料相場」も上昇の素地も作られてきていると考えられます。

インフレにより現金の価値は実質的に減少しますが、不動産などの現物資産の価値は上昇する傾向にあるので不動産投資市場は今後も安定的に推移すると考えられます。

世界的なインフレにより現物資産の投資も多くなっています。金を始めロレックスなどの高級時計や日本製のウイスキーなどの価格も上昇しています。また今後は世界的な突発的なリスクも発生する可能性もあり世界経済も今後大きく変わっていく可能性もありますが、国内の不動産投資はこうした外的要因の影響を比較的受けづらい投資であり、リスクヘッジとしても優れています。こうした中で大都市圏などの住宅投資は今後も将来性が高く将来のための資産運用先としても有望なのではないでしょうか。

インフレにも強い大都市圏の住宅投資

今後の経済の好転やインフレにより株価及び不動産などの価格もさらに上昇する可能性を秘めています。しかし注意すべき点は、例えば株式市場で見るとこれだけ株価が上がっている中で実際に株価上昇を牽引しているのはプライム市場の約2割と言われています。不動産においても地価やマンションもすべてが上がっている訳ではなく、東京・名古屋・大阪などにおいて都心あるいは都心に近い所、駅に近い所、優良な建物など限られた条件をクリアしている物件が上がっている訳です。投資用の不動産も住宅として要求される基準も上がってきており、今後の資産形成においては、より厳しい選択眼が求められる時代となるのではないでしょうか。

※文章中の株価、金利等の数値は2024年2月29日現在の情報です。