
目次
大阪の都市としての魅力と将来性は
大阪は日本でも有数の大都市で人口や経済なども大きな規模となっています。
再開発や新線計画も進み、大都市としての機能も発展してきています。2025年には大阪・関西万博の開催により「大阪」への来訪者が増加し世界的にも知名度が上がりました。
大阪の経済力は世界的に見てもその規模は大きく、大阪府のGDPは世界第25位でノルウェーと同じ位の規模となります。
森記念財団「都市戦略研究所」が発表した「日本の都市特性評価2025」では大阪は4年連続の1位となりました。経済・ビジネスと文化・交流の両分野で高い評価を維持していると分析されています。オフィス需要も高い水準が続くと考えられます。
大阪府へのインバウンドは2024年に1463万人と過去最高を記録し、さらに2025年1~6月には847万人となりこの期間として過去最高となりました。こうした事からホテルや商業施設の需要も多く、特に商業地の地価にも影響を与えています。
大阪・関西万博、新線・再開発の影響は?
大阪市中心部では「キタ」「ミナミ」などで大規模な再開発が進んでいます。大阪市内を縦断する「なにわ筋線」を始め新線計画も多く、さらに今後は「リニア中央新幹線」の開業も予定されていますので利便性の大きな向上が期待されます。東京では地価の大幅な上昇の要因として「鉄道交通網の発展」が挙げられています。大阪でも近年「おおさか東線全線開業」「北大阪急行電鉄南北線の延伸」「大阪メトロ中央線の延伸」など新たな鉄道ネットワークが開業しています。鉄道交通網の発展により大阪市における中心部と言えるエリアが拡大していく可能性を秘めています。
大阪・関西万博は2025年10月13日で閉会します。東京五輪の際には終了後に地価が下がるのではないかという憶測が巷間流れていましたが、実際には終了後も地価・不動産価格はさらに上昇しています。関西万博の終了後には、万博会場となった夢洲でIR(統合型リゾート)の建設が進んでいます。夢洲への鉄道は大阪メトロ中央線が直通運転を開始しましたが、近鉄など他路線もIR直通路線・延伸などの計画を検討しています。今後は長期的には「キタ」「ミナミ」に加え湾岸エリアの発展も期待できると考えられます。
今回の万博で大阪の知名度が世界的に広まり、これを見た世界の子供たちが「将来大阪に行きたい」と考える潜在的な需要が形成されます。
全国及び三大都市圏の地価動向は
まず全国の地価は全用途・住宅地・商業共に4年連続の上昇となりました。
三大都市圏では全用途平均・住宅地・商業地ともに上昇となりました。東京圏及び大阪圏は上昇率が拡大しましたが、名古屋圏は上昇率がやや縮小しました。
大阪圏では住宅地で2.2%の上昇、商業地では6.4%、工業地が6.8%の上昇となりました。特に工業地の地価上昇率は東京圏を超えており、湾間エリアの再開発、物流関連などの土地・不動産需要から地価が上昇していると考えられます。
圏域別対前年地価変動率の推移(単位:%)
| 住宅地 | 商業地 | 工業地 | |||
| 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 |
東京圏 | 3.6 | 3.9 | 7.0 | 8.7 | 6.6 | 6.7 |
大阪圏 | 1.7 | 2.2 | 6.0 | 6.4 | 6.3 | 6.8 |
名古屋圏 | 2.5 | 1.7 | 3.8 | 2.8 | 3.5 | 2.5 |
<国土交通省「令和7年都道府県地価調査」>
大阪市の地価の動向は
大阪府の地価も上昇傾向にあり、住宅地で2.7%、商業地で7.9%の上昇となり、それぞれ上昇率が拡大しました。
大阪市では住宅地で6.1%、商業地で11.1%と高い上昇率となりました。都心6区では住宅地で7.7%、商業地で14.3%とさらに上昇率が高くなっています。
また大阪市以外のエリアでも地価が上昇傾向にあり、大阪府全体に地価の上昇が波及している事が分かります。
この背景には再開発等が都心エリアだけではなく郊外における主要拠点にも波及している事がその理由と考えられます。
大阪府の地域別対前年平均変動率(単位:%)
| 住宅地 | 商業地 | ||
| 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 |
大阪府 | 2.0 | 2.7 | 7.3 | 7.9 |
大阪市 | 4.5 | 6.1 | 10.6 | 11.1 |
中心6区 | 6.6 | 7.7 | 13.7 | 14.3 |
北大阪 | 2.4 | 3.4 | 5.5 | 6.4 |
東大阪 | 1.9 | 1.9 | 2.5 | 3.0 |
南大阪 | 0.7 | 1.0 | 2.8 | 3.2 |
堺市 | 2.3 | 2.6 | 3.5 | 4.3 |
中心6区:北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区
北大阪:豊中市、池田市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市、摂津市、島本町、豊能町、能勢町
東大阪:守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、門真市、東大阪市、四條畷市、交野市
南大阪:大阪市、北大阪、東大阪を除くその他の大阪府
<国土交通省「令和7年都道府県地価調査」>
大阪市の区別の地価上昇率ランキング
大阪市の地価動向を区別に見てみましょう。
住宅地で最も上昇率が高かったのは浪速区で9.9%の上昇、2位は東淀川区で8.3%の上昇、3位は城東区で8.3%の上昇となりました。大阪市でも中心は地価が高騰し住宅・マンション価格も上昇しているので、大阪市中心部に隣接しているエリアで地価上昇が波及していると考えられます。東京においても都心6区に近い、浅草のある台東区や再開発が著しい中野区においても高い地価上昇の傾向が見られます。
さらに大阪では民泊特区として民泊の認可が取りやすく、民泊用の住宅の需要が増えている事も地価上昇の要因の一つと考えられます。しかし今後大阪市では新規の民泊申請の受付を停止する事を発表していますので、先々の地価への影響が注目されます。
2025年基準地価
大阪市の区別 地価上昇率ランキング<住宅地>(単位:%)
順位 | 区 | 上昇率 |
1 | 浪速区 | 9.9 |
2 | 東淀川区 | 8.3 |
3 | 城東区 | 8.3 |
4 | 淀川区 | 8.0 |
5 | 鶴見区 | 8.0 |
6 | 福島区 | 7.8 |
7 | 都島区 | 7.6 |
8 | 天王寺区 | 7.6 |
9 | 東成区 | 7.4 |
10 | 北区 | 7.4 |
<国土交通省「令和7年都道府県地価調査」>
商業地では西区の地価上昇率が最も高く平均で16.3%と高い上昇率となりました。2024年の18.3%からは上昇率が少し縮小しましたが昨年に引き続き1位となっています。
西区は「キタ」「ミナミ」の両方に近い立地で利便性の良さや「なにわ筋線」の開業期待などから地価が上昇していると考えられます。オフィス需要の増加も地価上昇の要因と考えられます。
2位の浪速区は難波や日本橋など多くの商業施設があり、歴史と大阪文化を象徴するエリアです。国土交通省では「ミナミの商店街・飲食街などのインバウンド需要の大きい地域では、店舗・ホテルの用地需要が高まっており、浪速区、中央区などでは上昇幅が拡大した。」と分析しています。
3位の福島区は「うめきた」のある北区の西側に接するエリアです。こうした都心部を中心にその周辺の地価が大きく上昇してきています。同省では「うめきた2期の開発による効果や観光客の増加により、マンションやホテルの用地の需要が増加し、北区、西区、福島区などは上昇幅が大きい。」と分析しています。
2025年基準地価
大阪市の区別 地価上昇率ランキング<商業地>(単位:%)
順位 | 区 | 上昇率 |
1 | 西区 | 16.3 |
2 | 浪速区 | 15.8 |
3 | 福島区 | 15.1 |
4 | 中央区 | 14.5 |
5 | 北区 | 14.2 |
6 | 西成区 | 12.0 |
7 | 東成区 | 10.0 |
8 | 淀川区 | 9.3 |
9 | 東淀川区 | 8.8 |
10 | 城東区 | 8.8 |
<国土交通省「令和7年都道府県地価調査」>
大阪市の地価が高い地点は
大阪府の地価が高い地点を見ると、住宅地では天王寺区の「真法院町10-6」の地点で1㎡あたり78万6千円で1位となりました。この地点は大阪府の住宅地では25年連続で価格が1位となりました。四天王寺に近く、「天王寺前夕陽ヶ丘」駅や「桃谷」駅などが利用できるエリアです。寺社仏閣が多い点では浅草と共通点があると言えます。
2位も天王寺区の「堀越町1-8」の地点です。四天王寺の北側に位置し、1位の真法院町よりも「天王寺駅前」や「大阪阿倍野橋」駅よりです。
3位も天王寺区で「清水谷町4-6」は「谷町六丁目」駅と「玉造」駅の間に位置します。大阪城周辺のビジネス・官庁街や「ミナミ」にもアクセスしやすいエリアです・
2025年基準地価 大阪府 高価格ランキング<住宅地>
順位 | 所在地 | 価格 (円/㎡) | 変動率(%) |
1 | 大阪市天王寺区真法院町117番3 「真法院町10-6」 | 786,000 | 8.4 |
2 | 大阪市天王寺区堀越町1番8 「堀越町1-8」 | 627,000 | 6.8 |
3 | 大阪市天王寺区清水谷町9番6 「清水谷町4-6」 | 608,000 | 7.6 |
4 | 大阪市中央区玉造1丁目10番18外 「玉造1-10-1」 | 602,000 | 7.5 |
5 | 大阪市北区長柄中1丁目3番15 「長柄中1-6-5」 | 585,000 | 7.9 |
<大阪府「令和7年大阪府基準地価格調査」>
商業地では北区の大深町4丁目の「グランフロント大阪 南館」の地点が1㎡あたり2,450万円と最も価格が高い地点となりました。
開発の進む「うめきたで」は「うめきた2期」となる「グラングリーン大阪」が開業するなど2024年9月に先行まちびらきとなり、2027年度に全体まちびらきを予定しています。
さらに「なにわ筋線」の開業やそれに続く「なにわ筋連絡線」などの開業も予定されており、うめきたの将来性は極めて高いと考えられます。
東京では最も地価が高いのはブランドエリアでもある「銀座」ですが、大阪でも梅田周辺はブランドエリアとして定着しており、うめきたの開発によりさらに北側エリアの地価も上昇する可能性もあります。
2位は「ミナミ」の「宗右衛門町7-2」の地点です。ミナミの戎橋に近い地点で周辺にはグリコの看板などがあり大阪でも大変有名な観光スポットです。心斎橋筋も近く、インバウンドを始め多くの人が訪れるエリアです。
3位は「梅田1-8-17」で梅田の大阪第一生命ビルディングの地点です。梅田では大阪駅の北側・南側ともに地価が高いエリアとなっている事が分かます。
2025年基準地価 大阪府 高価格ランキング<商業地>
順位 | 所在地 | 価格 (円/㎡) | 変動率(%) |
1 | 大阪市北区大深町207番外 「大深町4-20」 (グランフロント大阪 南館) | 24,500,000 | 2.5 |
2 | 大阪市中央区宗右衛門町46番1外 「宗右衛門町7-2」 (デカ戎橋ビル) | 24,100,000 | 7.6 |
3 | 大阪市北区梅田1丁目2番 「梅田1-8-17」 (大阪第一生命ビルディング) | 19,300,000 | 3.2 |
4 | 大阪市中央区南船場3丁目12番9外 「南船場3-5-11」 (心斎橋フロントビル) | 10,300,000 | 14.8 |
5 | 大阪市中央区南久宝寺町3丁目39番1外 「南久宝寺町3-6-6」 (御堂筋センタービル) | 8,820,000 | 13.8 |
<大阪府「令和7年大阪府基準地価格調査」>
大阪府の地価上昇率の高い地点は
大阪府で最も地価の上昇率が最も高かったのは、住宅地では浪速区の「塩草2-3-20」の地点で前年比9.9%の上昇となりました。「芦原橋」駅に近いですが、JR「難波」駅なども徒歩圏のエリアです。
2位は港区「波除5-3-27」の地点で9.0%の上昇。大阪環状線「弁天町」駅に近いエリアです。大阪のキタとミナミ・湾岸エリアの中間に位置します。
3位は東淀川区の「豊里7-28-15」で大阪メトロ今里筋線「だいどう豊里」駅が近いエリアです。大阪の北東部にあたり、中心部からは少し離れていますが、大阪の地価上昇が周辺部に波及してきている事が分かります。
2025年基準地価 大阪府 上昇率ランキング<住宅地>
順位 | 所在地 | 上昇率(%) |
1 | 大阪市浪速区塩草2丁目3番15 「塩草2-3-20」 | 9.9 |
2 | 大阪市港区波除5丁目3番10 「波除5-3-27」 | 9.0 |
3 | 大阪市東淀川区豊里7丁目28番38 「豊里7-28-15」 | 8.9 |
4 | 大阪市東淀川区下新庄1丁目62番2 「下新庄1-10-2」 | 8.9 |
5 | 大阪市城東区関目2丁目6番9 「関目2-9-32」 | 8.6 |
<大阪府「令和7年大阪府基準地価格調査」>
商業地では浪速区の「日本橋3-6-2」の地点が21.4%の上昇と上昇率トップとなりました。近鉄なんば駅や近鉄日本橋駅、黒門市場や千日前道具屋筋商店街なども近いエリアです。ミナミの中心部に近く利便性の高いエリアです。
2位は福島区の「福島6-20-2」で18.4%の上昇です。再開発の進むうめきたの西側で住宅需要も極めて多いエリアです。うめきたへも徒歩圏です。
3位は北区「天満2-1-29」で17.8%の上昇です。京阪本線の「天満橋」駅から天満橋を渡った先のエリアです。大阪天満宮や造幣局が近くにあります。天満橋では日本経済新聞社の旧大阪本社ビルの跡地やテレビ大阪旧社屋跡地などの再開発が進んでいます。天満橋周辺はビジネス街として今後も発展が期待できるエリアです。
2025年基準地価 大阪府 上昇率ランキング<商業地>
順位 | 所在地 | 上昇率(%) |
1 | 大阪市浪速区日本橋3丁目34番5 「日本橋3-6-2」 | 21.4 |
2 | 大阪市福島区福島6丁目20番2 「福島6-20-2」 | 18.4 |
3 | 大阪市北区天満2丁目66番外 「天満2-1-29」 | 17.8 |
4 | 大阪市北区野崎町39番外 「野崎町9-13」 | 17.5 |
5 | 大阪市浪速区幸町2丁目9番14 「幸町2-2-20」 | 17.3 |
<まとめ>
2025年10月4日の総裁選において初の女性総裁として高市氏が第29代総裁に選出されました。高市総裁はアベノミクスの後継者とも言われ早速日経平均株価も史上最高値を更新するなどの動きが出ています。
不動産業界にとっては金融政策・財政出動など景気を後押しする政策が期待されます。当然の事ながら金融政策においては日銀との綱引きが予想されますが、このような背景から東京・名古屋・大阪などの大都市圏、特に商業地の地価は株高などの資産効果も相まってさらに海外からの投資、国内における新線・再開発の効果から地価はさらに上昇する可能性を帯びています。
但し同じエリアでも駅までの距離や地形、道路付など個別要因も当然の事ながら影響が及びます。端的に言うとその土地が欲しいというプレーヤーの数が増えれば増える程、地価は上昇する訳です。一つの土地にマンション業界、ビル業界、ホテル業界、メディカル業界などが競合すればするほど地価が上昇する訳です。
今回述べた事を今後の皆様の不動産投資の参考にして頂ければ幸いです。