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発展が続く大阪 ~地価上昇の要因~
大阪万博がいよいよ開幕
2025年4月13日から「大阪・関西万博」が開催となりました。来場者の累計は4月28日現在で早くも約138万となりました。大阪万博では経済効果も見込める他、大阪のイメージアップにも繋がります。
大阪市内にはいたるところに万博公式キャラクター「ミャクミャク」の姿も見かけます。開催直後は多くの人が訪れ混乱する場面も見られましたが、「火星の石」が展示されたり「空飛ぶクルマ」のデモなども行われたりして来場者の方の目を引いていました。
会場の夢洲ではITリゾートの建設も計画されており、一部工事も始まっています。
大阪では「キタ」「ミナミ」に続く「湾岸エリア」の発展が期待されます。湾岸エリアなどの地価も上昇傾向がみられ、大阪全体の発展につながる事も期待されます。
大阪エリアで進む再開発と地価の関係
大阪「キタ」エリアはオフィス街が集積した大阪ビジネスの中心地でもあります。「うめきた」には「グラングリーン大阪」が2024年9月に先行開業しています。「グラングリーン大阪」に開園した「うめきた公園」は都心部の駅前としては世界最大級の都市公園です。近年は世界的に都市の緑化を評価する傾向にあり、ESG(環境・社会・企業統治)などの観点からも大阪の評価は高まるのではないでしょうか。
また「グラングリーン大阪」にはオフィスやホテルなどの他にタワーマンションも建設されますが、何と25億を超える超高級マンションもあるという事です。こうした高額マンションの出現は周辺のマンションの資産価値を引き上げる事にもなります。
「グラングリーン大阪」は2027年に全体開業が予定されています。梅田駅南側や天満橋、中之島を始め周辺エリアの開発も進んでおり、今後も周辺のエリアの地価上昇が続く可能性もあります。また「ミナミ」などでも多くの開発が進み大阪全体の地価の上昇につながっています。
鉄道の発展が中期的にも地価上昇に影響
大阪市の中心部では「なにわ筋線」の開業が2031年に予定されています。また「なにわ筋線」から「新大阪」駅へつながる阪急の「新大阪連絡線」も予定されています。
「うめきた」の発展と共に「なにわ筋線」を中心として大阪市内の交通網が一段と利便性を増し、都市としての機能もますます上昇します。
さらに今後「リニア中央新幹線」も開業が予定されています。2037年を予定しています。今後10年以上も間があり、その間もリニア期待から新大阪周辺や新大阪にアクセスしやすい沿線の地価も上昇する可能性があります。
2024年に北大阪急行電鉄が延伸され、「箕面萱野」駅及び「箕面船場阪大前」駅が新たに開業した際には、新駅が御堂筋線に直通となり交通利便性が向上した事から、2024年の基準地価では住宅地の地価上昇率の1位と2位が箕面市となるなど地価も上昇しました。
なにわ筋線の開業予定が地価上昇にも寄与していると考えられ、また今後も新線が地価に与える影響は大きいと言えます。
大阪府へのインバウンドが大幅に増加
大阪府へのインバウンド(訪日外国人)が増加しており、大阪観光局の発表によると昨年2024年の1年間に大阪を訪れた数は1463万9000人となり前年より47%も増加しました。新型コロナ発生前の2019年と比べても19%多くなっており過去最高を記録しています。2025年は1600万人を目標としており、今後も多くの来訪者が大阪を訪れる事が予想されます。こうしたインバウンドの状況は地価にも大きく影響を与えます。現在大阪府広域的にホテル不足問題がクローズアップされており、インバウンドの増加→ホテル需要の増大→周辺の地価上昇に影響、という構図ができつつあります。
2025年公示地価
大阪府の地価は上昇傾向に
国土交通省から2025年の公示地が発表されました。公示地価は毎年3月の終わり頃に、前年1年間の地価動向が発表されます。公示地価は全国の地価動向を表す代表的な指標となっています。
マンション価格に占める土地代の割合も大きいものがあり、地価の動向はマンション価格にも影響を与えます。
大阪府の地価は住宅地で2.3%の上昇と前年2024年の1.6%から上昇率が拡大、4年連続の上昇となりました。商業地では7.6%の上昇と3年連続の上昇となり前年の6.0%から上昇率が拡大しています。
大阪市や大阪市中心部などの高い上昇率に押上げられ、大阪府全体の地価上昇が進んでいます。新型コロナの影響で調整局面となった2020年頃から地価が回復している様子が窺えます。
【2025年公示地価】大阪府の対前年地価変動率の推移
| 2020年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
住宅地 | △ 0.5% | 0.1% | 0.7% | 1.6% | 2.3% |
商業地 | △ 2.1% | △0.2% | 2.5% | 6.0% | 7.6% |
<大阪府「令和7年地価公示結果の概要」>
大阪市の地価は都心部などを中心に大きく上昇
大阪府の地価を地域別に見ると大阪市の地価上昇率が最も高く住宅地で5.8%、商業地では11.6%と大きく上昇しました。中でも中心6区は平均で(北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区)住宅地では7.4%、商業地では13.6%となっており、大阪市中心部が大阪市全体の地価を押し上げている事が分かります。
また大阪市以外の市でも地価は上昇傾向にあり、大阪府全体の地価が上昇傾向となっています。
【2025年公示地価】大阪エリアの地域別対前年変動率の推移
| 住宅地 | 商業地 | ||
| 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 |
大阪市 | 3.7% | 5.8% | 9.4% | 11.6% |
中心6区 | 5.5% | 7.4% | 11.6% | 13.6% |
北大阪 | 2.0% | 3.0% | 4.0% | 6.0% |
東大阪 | 1.2% | 1.6% | 2.6% | 3.3% |
南大阪 | 0.6% | 0.8% | 2.5% | 3.2% |
堺市 | 2.1% | 2.5% | 4.4% | 5.3% |
大阪市の中心6区:北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区
北大阪:豊中市、池田市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市、摂津市、島本町、豊能町、能勢町
東大阪:守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、門真市、東大阪市、四條畷市、交野市
南大阪:大阪市、北大阪、東大阪を除くその他の大阪府
<国土交通省「令和7年地価公示」>
大阪市の区別の地価上昇率は
地価上昇率の高い大阪市ですが、地価の動向を区別に見てみましょう。
大阪市の住宅地・商業地の両方で上昇率トップとなったのは「浪速区」で、住宅地で9.7%、商業地で14.3%の上昇です。
浪速区は「JRなんば」駅や南海「なんば」駅などがある「ミナミ」のエリアです。南海「なんば」駅周辺では南海鉄道による「グレーターなんば構想」など再開発の計画が進み、2023年には「なんばパークス サウス」が開業しました。また2024年には「Osaka Metroなんばビル」が開業しています。南海線で関西国際空港へもアクセスしやすく、今後も国際都市として発展する可能性もあります。
住宅地の2位は「城東区」となりました。
城東区では住宅地で地価上昇率が大阪で最も高い地点があるなど地価上昇が進んでいます。発展著しい梅田・天満橋エリアなどにアクセスしやすく交通利便性が高い事が住宅地としての人気も高まっています。
住宅地では「西区」が3位となりました。西区は「キタ」「ミナミ」「ベイエリア」に行きやすいエリアです。こうした都心に隣接した交通利便性の高いエリアの住宅需要が高まっていると考えられます。
大阪市の商業地は6つの区で地価が10%以上上昇しました。中心地の再開発や賑わいなどが周辺にも波及し、地価の上昇につながっています。
商業地の1位は先ほど述べた「浪速区」ですが、2位は道頓堀などのある「ミナミ」の「中央区」となりました。ミナミでは多くの観光客が訪れる商業エリアであり、かつてコロナ発生前30%近く地価が上昇していた地点も多くありました。地価が大きく上昇した分、新型コロナの影響でその反動があったエリアも多くありましたが、再び回復基調にあると考えられます。インバウンドも多く訪れるエリアであり、今後もインバウンドの増加に伴い地価の上昇の可能性のあるエリアです。
3位は「西区」です。住宅地でも3位となり、利便性の高さから商業地域でも地価が大きく上昇しています。
【2025年公示地価】大阪市の区別地価上昇率ランキング<住宅地>
順位 | 区 | 2025年 |
1 | 浪速区 | 9.7% |
2 | 城東区 | 8.6% |
3 | 西区 | 8.4% |
4 | 鶴見区 | 8.2% |
5 | 東成区 | 7.9% |
5 | 北区 | 7.9% |
<国土交通省「令和7年地価公示」より作成>
【2025年公示地価】大阪市の区別地価上昇率ランキング<商業地>
順位 | 区 | 2025年 |
1 | 浪速区 | 14.3% |
2 | 中央区 | 14.2% |
3 | 西区 | 13.9% |
4 | 北区 | 13.4% |
5 | 福島区 | 12.5% |
6 | 東成区 | 10.1% |
<国土交通省「令和7年地価公示」より作成>
住宅地・商業地共に地価上昇率1位となった浪速区
<資料:大阪市浪速区役所>
https://www.city.osaka.lg.jp/naniwa/page/0000000923.html
大阪府の地価の高いエリアは
大阪府の土地の価格を見てみると、住宅地で最も価格が高かったのは「福島区福島3丁目」の地点となりました。「中之島」駅と堂島川をはさんだ対岸に位置します。福島エリアは前年の公示地価でも高価格となりました。
2位は天王寺区の「上汐4丁目」の地点です。「谷町九丁目」駅や「四天王寺前夕陽ヶ丘」駅などに近いエリアです。谷町線・千日前線を始め近鉄難波線などが利用できる利便性の高いエリアです。日本橋やなんばに近く、また「キタ」エリアにも行きやすいエリアです。
【2025年公示地価】価格高順位表<住宅地>(大阪府域)
| 所在地「住居表示」 | 2024年 価格(㎡/円) | 2025年 価格(㎡/円) | 変動率 |
1 | 大阪市福島区福島3丁目13番2 「福島3-1-55」 | 1,250,000 | 1,350,000 | 8.0% |
2 | 大阪市天王寺区上汐4丁目4番2 「上汐4-4-25」 | 954,000 | 1,000,000 | 4.8% |
3 | 大阪市北区紅梅町125番 「紅梅町6-6」 | 835,000 | 920,000 | 10.2% |
4 | 大阪市中央区上町1丁目15番2 「上町1-15-15」 | 865,000 | 920,000 | 6.4% |
5 | 大阪市西区北堀江4丁目7番 「北堀江4-13-5」 | 798,000 | 865,000 | 8.4% |
<大阪市「令和7年地価公示結果について」>
商業地では北区の「大深町4丁目」最も価格が高い地点となりました。「うめきた」の「グランフロント大阪南館」の地点です。「キタ」の中でも最も開発の進むエリアであり、今後の新線計画も進み将来性の高いエリアです。
「グラングリーン大阪」の開業により今後も価格が上昇する可能性もあります。
2位はミナミの「宗右衛門町7」の地点です。かつて宗右衛門町は2017年には地価上昇率が29.1%となるなど大きく地価が上昇しました。インバウンドなどの影響が大きく、今後インバウンドの増加が見込まれる中で再び大きな地価上昇となる可能性もあります。
商業地の価格上位の地点は3位は梅田、4位は心斎橋、5位も梅田付近、同5位が西心斎橋と「キタ」と「ミナミ」が上位を占め、こうした大阪中心地の地価が高い事が分かります。
【2025年公示地価】価格高順位表<商業地>(大阪府域)
順位 | 所在地「住居表示」 | 2024年 価格(㎡/円) | 2025年 価格(㎡/円) | 変動率 |
1 | 大阪市北区大深町207番外 「大深町4-20」(グランフロント大阪 南館) | 23,600,000 | 24,300,000 | 3.0% |
2 | 大阪市中央区宗右衛門町46番1外 「宗右衛門町7-2」(デカ戎橋ビル) | 21,400,000 | 23,500,000 | 9.8% |
3 | 大阪市北区梅田1丁目2番 「梅田1-8-17」(大阪第一生命ビルディング) | 17,800,000 | 19,000,000 | 6.7% |
4 | 大阪市中央区心斎橋筋2丁目39番1 「心斎橋筋2-8-5」(サンドラッグ心斎橋中央店 | 15,400,000 | 17,600,000 | 14.3% |
5 | 3 大阪市北区角田町12番1外 「角田町7-10」(ヘップナビオ) | 12,700,000 | 13,500,000 | 6.3% |
5 | 大阪市中央区西心斎橋1丁目8番 「西心斎橋1-4-5」(御堂筋ビル) | 12,100,000 | 13,500,000 | 11.6% |
<大阪市「令和7年地価公示結果について」>
大阪府で地価上昇率の高いエリアは
地価の上昇率の高い地点を見てみると、住宅地では「城東区中央2丁目」の地点で10.5%の上昇となりました。「JR野江」駅や「蒲生四丁目」駅、通称「がもよん」に近いエリアです。交通利便性が高くマンション需要も多いので住宅地の価格が上昇しています。
商業地では道頓堀、福島など「キタ」「ミナミ」などで地価が大きく上昇しています。1位の道頓堀では地価が前年比22.6%の上昇となるなど高い上昇率となりました。
大阪の主要部では地価の回復基調が見られており、新型コロナによる調整局面から大きく回復していると言えます。
【2025年公示地価】上昇率順位表<住宅地>(⼤阪府域)
順位 | 所在地「住居表示」 | 変動率 |
1 | 大阪市城東区中央2丁目12番1 「中央2-9-19」 | 10.5% |
2 | 大阪市北区紅梅町125番 「紅梅町6-6」 | 10.2% |
3 | 大阪市浪速区桜川1丁目4番7 「桜川1-4-12」 | 9.7% |
4 | 大阪市中央区森ノ宮中央1丁目25番7 「森ノ宮中央1-25-5」 | 9.5% |
5 | 箕面市今宮4丁目1番12 「今宮4-17-20」 | 9.5% |
【2025年公示地価】上昇率順位表<商業地>(⼤阪府域)
順位 | 所在地「住居表示」 | 変動率 |
1 | 大阪市中央区道頓堀1丁目37番外 「道頓堀1-6-10」 (新世界串カツいっとく道頓堀戎橋店) | 22.6% |
2 | 大阪市福島区福島6丁目20番2 「福島6-20-2」 (チェリーヒルビルパート2) | 18.8% |
3 | 大阪市浪速区元町3丁目1番4外 「元町3-1-4」 (なんばAKビル) | 18.6% |
4 | 大阪市西区西本町2丁目111番外 「西本町2-1-34」 (SONO西本町ビル) | 18.4% |
5 | 4 大阪市浪速区桜川2丁目11番18 「桜川2-11-20」 (根来ビル) | 18.4% |
<大阪市「令和7年地価公示結果について」>
大阪万博と湾岸エリアの地価動向の関係は
大阪万博による地価への影響はどうでしょうか。万博やIRの会場となる「夢洲」のある此花区の地価を見てみると、住宅地で3.2%、商業地で8.2%の上昇です。これを見るとそれほど大きく上昇していないと感じるかもしれませんが、実は此花区では工業地が17.1%も上昇しています。前年も17.5%と大きく上昇しています。実これには理由があり、此花区は用途地域の半分以上が工業地だからです。つまり区の半分以上の土地は平均で17%も上昇している訳です。工業地といってもマンションが建設できるエリアもあります。こうした湾岸エリアの工業地が徐々に人気の住宅地となってきた例として千葉県の浦安市が挙げられます。浦安市には大型テーマパークがあり周辺には高級ホテルを始めリゾート施設や大型商業施設、多くの高級マンションなどが建設されています。
浦安市は東京都ではなく千葉県ですが、東京駅などへのアクセスが良い事、商業施設が多くある事、駅から離れていてもバス便が充実している事などから住宅地としての人気も高く、マンションの需要も高いエリアです。
大きく変貌した浦安同様に、夢洲においてもIRの建設も進められており、今後は大きく発展する可能性があると考えられます。
【2025年公示地価】此花区の地価動向
| 住宅地 | 商業地 | 工業地 | |||
| 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 | 2024年 | 2025年 |
地価上昇率 | 2.1% | 3.2% | 4.0% | 8.2% | 17.5% | 17.1% |
<大阪市「令和7年地価公示結果について」>
発展著しい大阪は日本のみならず世界からも注目が集まっています。
再開発や新線計画などにより将来性の高い大阪エリアは今後も地価・不動産の資産価値が上昇していく可能性もあります。
特に新型コロナ発生前はインバウンドの増加により大きく地価が上昇していました。2025年の公示地価でも同じように地価が上昇してきているに事が分かります。
今後も大阪は不動産投資の立地としても適していると考えます。