2025年の経済・不動産市場展望と大阪マーケット

今回のコラムでは2025年の経済・不動産市場の展望、そして世界が注目する大阪・関西万博開催の大阪不動産市場動向についても述べてみたいと思います。

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大きく変わる日本経済

~デフレからインフレ社会への転換が始まっている~
本年は2025年巳年ですが、前回の巳年の2013年はアベノミクスが本格始動した年でした。それ以降アベノミクにより株価は上昇しました。しかしデフレ経済からの脱却においては長い道のりが続いてきました。

インフレ進行の中で進む消費の二極化

現在、日本経済においてはまさにあらゆる分野において消費の「二極化現象」が起きています。今年はそれが一段と加速する年となるのではないでしょうか。

私達にとって最も身近かな消費者物価指数においては、例えばキャベツが一玉1,000円近くになるとか、お米の価格も上がっており、その要因の一つとして大量に行先が不明になっている(お米が投機商品化している?)、さらにガソリンや電気代なども高まっていくと予想されます。

一方、デパ地下などでは高級食材や高価な食品もよく売れています。また飲食業界においても日高屋さんのようなリーズナブルな中華店が繁盛している一方、銀座や高級シティホテルのレストランなど中々予約が取れないお店も多いようです。

また航空業界においては格安チケットが売れている反面、ビジネスクラス・ファーストクラスのチケットも好調に売れているようです。またホテル業界も同様で、ビジネスホテルからファイブスターホテルまで多くの需要があるようです。

さらに典型的なのは時計業界で、一般的な数万円の時計も好調に販売が推移しているようですが、一方、1本何百万円もするようなロレックスなども多く売れており、また高級ウイスキーなども需要が拡大しています(高級時計も高級酒も世界的な投資対象となっています)。

経済の動きはあらゆるベクトルが有機的にからみ合って進み、インフレ下においても価格が据え置かる物、一般庶民には程遠い別世界の価格設定など消費の二極化が加速すると考えられます。

後で述べますが、不動産業界においてもその傾向が一段と顕在化する年となるでしょう。

政策金利は0.5%に引き上げが決定

近年、日本では金融緩和政策など低金利政策が続いていました。

しかし2024年には日銀によるマイナス金利の解除など、金利上昇の気配も徐々に感じられてきています。2025年1月23・24日に行われた金融政策決定会合では、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げる決定がされました。これは17年ぶりの水準となります。

政策金利の上昇を受けて、都市銀行では普通預金の金利を引き上げるなどの対応が出始めています。

これからマンションを購入する方、既にお持ちの方にとって住宅ローンや不動産投資ローンの金利の行方は気になる所です。

結論から申し上げますと、日銀の意向にも示されている通り、今後はなだらかな経済成長と給与水準の上昇に伴う金利の上げ幅とスピードに焦点が集まっていくでしょう。

さらに現在では多くの金融プレーヤーが存在しており、預貯金を始め融資における金融機関同士の競争は特に新商品が出る春以降は激化すると考えらえます。

インバウンドとホテル投資の活発化

2024年はインバウンドが大幅に増加、約3860万人と過去最大となりました。観光客の増加から宿泊施設が不足し、ホテルの宿泊費などは観光地や都市部を中心に大きく上昇しました。訪日外国人の中でも割合の多い中国から観光客のビザなども緩和措置が発表された事も影響しています。

ホテルと言うとそのすそ野は広く、特に不動産投資をする方に影響が大きいのは、いわゆるビジネスホテルの動向です。

筆者もよく大阪のホテルに宿泊しますが、以前は1泊10,000円程度だった宿泊料が15,000円から20,000円程度に跳ね上がっています。

2025年は関西大阪万博を始め、沖縄における日本最大のテーマパーク、ジャングリアのオープンなどホテル需要を押し上げる要因がとても多く、インバウンドの過去最高の更新はもとより国内需要の増加も予想され、投資系不動産と立地が共通するホテル用地などの上昇がさらに高まると予想されます。

 

トランプ大統領就任の影響は

トランプ大統領が2025年1月20日に就任し、就任演説を行いました。また多くの大統領令にサインし、今後の政策にも注目が集まっています。このうちいくつかを見てみましょう。

1)関税について

トランプ大統領は外国製品の関税税率の引き上げを表明しています。

これは米国内の雇用・企業を守るためと言われていますが、米国内の物価が上昇する可能性もあります。そうなると米国から日本に輸出する消費・資材・エネルギーなどの価格が上昇し、結果として日本国内の物価上昇につながります。

2)移民政策

トランプ大統領はアメリカファーストの基、移民政策を強化します。その良し悪しは別として、雇用状況がひっ迫するのは明白で、その先には人件費のアップが予想されます。

3)エネルギー政策について

またトランプ大統領は電気自動車などのクリーンエネルギーの推進を縮小し、天然ガスやガソリンなどのエネルギーの推進の表明をしています。まだ就任して間もないので今後の意向についてはまだ確かな事は言えませんが、今後のエネルギー価格にも大きな影響があります。

いずれにしても上記に記したトランプ政策の先にはインフレが見え隠れします。インフレを意識しFRBも金利の引き下げにおいては躊躇している状況となっています。

今後はインフレがさらに加速した場合に、米国経済における消費の低下も予想され、その際には為替状況もドル安に転換する可能性も帯びていますが、その幅は限定的ではないかと推測します。

2025年どうなる給与水準の動向?

日本においては長らく先進諸国と比べて給与水準の上昇に遅れをとっていました。

この背景には日本企業(特に大企業)における内部留保の拡大が一つの要因として挙げられます。

一昨年あたりから潮目が変わってきており、今年は特に経団連の強い働きもあり春闘におけるベースアップが注目されます。

既に新卒の給料が30万円とか会社によっては40万円とかちょっと前までは信じられないような高水準に押しあがっています。

今年は大手企業のみならず、中小企業における給与アップがどの程度実現されるのか、そのキーとなるのが政府の政策です。

つまり給与を上げた企業においては何等かの税務上の恩恵を与える。例えば法人税の減税などです。官民一体となっての動きがなければその実現は難しいですが、石破政権にはその期待が持てるのではないでしょうか。何よりも給与水準が上がるという事は会社員のマインドが上がり消費にも寄与し、巡り巡って企業の業績上昇にもつながる訳です。

マンション価格・賃料は上昇傾向に

2024年は東京都区内において新築マンションの平均価格が1億を超えるなど、驚きの状況となっています。また大阪都心エリアも同様で高額のタワーマンションなどが多く建設されています。2025年の動向については不動産経済研究所の調べによると、昨年より供給が増える見込みとなっています。しかし価格面においては地価の上昇、建築費の高止まりなどを背景にさらに上昇する可能性を帯びています。特に都心に近い駅に近いなどの好立地はその典型となります。またマンションの賃料については投資家の固定資産税・修繕積立金、投資系ローンの金利アップなどで入居者の方に対して「家賃を上げられる明確な根拠」が形成されつつありますので、今年は既存・新築を含め多くのマンションで賃料の上昇が予想されます。上げ幅は筆者の予想では5%から10%程度と推察します。但し立地による優勝劣敗がむしろ加速する事は言うまでもありません。

今後どう動く?大阪マーケット

今大阪が注目を集めています。万博などのビッグイベントを始め、大型の再開発や新線計画など、今後大きな変貌と発展が期待される都市です。筆者は昨年末、大阪駅周辺の再開発を視察してきましたが、その大きな変貌ぶりには驚きと感動を覚えました。

大阪の今後の発展と不動産市場について検証してみましょう。

「うめきた」では「グラングリーン大阪」が先行開業

「うめきた」では「100年に一度」と言われる再開発が進行しています。第1期「グランフロント大阪」が2013年に開業し、続いて第2期の「グラングリーン大阪」が2024年9月に先行開業しました。「うめきた公園」は45,000㎡と駅前としては世界最大級の公園です。また同時に北街区の「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」などが入る複合ビル「北館(ノースタワー)」や文化施設「VS.」などが開業しています。北街区には何と25億円もする住戸のある超高級タワーマンションが建設されます。人気も高く抽選では高倍率となっている事が報道されています。またこうした高額のマンションが発売される事により周辺のマンション相場を引き上げ、周辺の不動産価格も上昇傾向にあります。「うめきた」の再開発はまだ全体の40%と言われており、2027年の全体開業に向けてさらに期待も高まります。

梅田及びその周辺でも再開発が進む

梅田でも再開発が進み、2024年7月には「JPタワー大阪」が開業、「KITTE大阪」や劇場・ホテルなどがオープンしました。大阪駅ビルである「イノゲート大阪」も開業しています。今後は「大阪マルビル」も建て替えが予定されており、高さ192mのビルとして2030年の完成が予定されています。

このように「大阪」駅周辺では「うめきた」「梅田」などを始め、さらに「東梅田」の「阪急大阪梅田」駅周辺などでも開発が進み、まさに大阪「キタ」エリアの大きな変貌へとつながっています。

その他にも淀屋橋では「淀屋橋ステーションワン」が2025年夏に開業を予定し、その道を挟んだ隣側には「淀屋橋駅西地区再開発」のビルのツインタワーを始め、「本町」駅直結の「本町4丁目プロジェクト」なども計画が進んでいます。

「中之島」では2025年4月に水上交通のターミナルともなる「中之島GATEターミナル」が万博開業に合わせて開業を予定している他、「中之島5丁目」でも大規模な再開発が予定されています。

また大阪メトロ中央線で予定されている新駅「(仮称)森之宮新駅」周辺でもアリーナを含めた大規模な再開発が予定されています。

ミナミでは南海「なんば」駅などで再開発が進む

大阪ミナミはインバウンドなど観光客も多く訪れるエリアです。訪日外国人は2024年には過去最高を記録、大阪への訪問客も増加しており今後もミナミなど商業エリアへの大きな発展が期待されます。

南海「なんば」駅周辺では2023年に「なんばパークス サウス」、2024年には「Osaka Metroなんばビル」が開業しました。今後は2025年以降も南海「なんば」駅東側「難波千日前地区」では高層ビルの建設も検討されています。南海グループは「グレーターなんば構想」を発表しており、今後の動向が注目されています。

また大阪メトロ「心斎橋」駅に直結の「心斎橋プロジェクト」では高さ132mの高層ビルが2026年に開業予定です。オフィス、商業施設、ホテルの入る大規模複合開発となり、心斎橋の新たなランドマークとなるのではないでしょうか。

大阪湾岸エリアでは「大阪・関西万博」「IR」

大阪・関西万博がいよいよ2025年4月13日から開催されます。大阪メトロ中央線は2025年1月19日に「コスモスクエア」~「夢洲」間が延伸開業しました。

大阪万博は世界から注目されており、東京五輪と比べて開催期間も長く、その経済効果は大変大きなものとなります。このような大きいイベントは開催終了後もSNSなどを通じて興味関心を持った方々が世界中から訪れ、その経済効果はまさに長期に及びます。

世界的な知名度が上昇する事により大阪不動産の投資関心度もさらに上がる事が期待されます。まさに2025年は大阪が改めて世界から注目される年となるでしょう。

万博終了後もIR(統合型リゾート)の開業も計画されています。IRにより近畿圏で1兆円以上の経済効果や9万人以上の雇用創出などの効果も予想されています。

夢洲への鉄道ルートが開業した事で、万博終了後も夢洲の存在価値は高くなります。

大阪市と大阪府では夢洲の万博会場跡地について、2024年度末までに開発方針を定めたマスタープランを作成すると発表しました。今後の事業計画は第1期としてIR(統合型リゾート)が計画されていますが、さらに「夢洲第2期」として活用が検討されています。2025年1月9日には応募があった事業計画のうち2案が優秀案として公表されました。案にはサーキット場やウォーターパークなどが含まれており、今後のマスタープランへの参考となる予定です。

湾岸エリアには「USJ」や「ユニバーサル・シティウォーク大阪」、「海遊館」や「大観覧車」のある天保山エリア、舞洲には「パームガーデン舞洲」など、また「さきしまコスモタワー」「インテックス大阪」などの多くのレジャー施設・商業施設やオフィスもあり、大阪万博を契機として今後も大きな発展が期待できると考えられます。

「夢洲アクセス鉄道」の検討も

夢洲には大阪メトロ中央線の延伸に引き続き、今後の鉄道のアクセス線の延伸などが検討されています。

大阪府・大阪市では夢洲への鉄道延伸計画の検討会が2024年に開催されました。

検討されているのは3路線で

・〔中之島〜西九条〜新桜島〜舞洲~夢洲〕

・JR桜島線延伸〔桜島〜舞洲~夢洲〕

・京阪中之島線延伸〔中之島〜九条〕

となっています。

IRの開催も実現性が高まる中で、大阪市内からのアクセス鉄道が開業すれば舞洲・夢洲などにも来場者が増加する事も予想されます。

大阪でキタ・ミナミなどが大阪の中心として発展してきましたが、今後は湾岸エリアが第三のエリアとして発展の期待が期待されています。