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2025年の広島県の公示地価データが明らかになり、注目すべき変化が見られています。令和7年の公示地価では、広島県の住宅地平均が1.3%(前年1.0%)上昇、商業地が2.7%(2.4%)上昇といずれも前年より上昇幅を拡大しました。特に広島市中心部では再開発の進展により地価上昇が顕著である一方、県北部や島嶼部では人口減少と高齢化の影響で下落が続いています。
本記事では、2025年の広島県の公示地価の動向を詳しく分析し、エリア別・用途別の特徴や今後の見通しを解説します。都市中心部への人口集中と再開発効果が地価を押し上げる広島市内と、課題を抱える周辺部との格差拡大など、不動産市場の最新トレンドをお届けします。
広島県の2025年公示地価の全体動向
地価公示は、国土交通省が毎年1月1日時点の標準地の価格を調査し、3月に公表する制度です。広島県では53市区町村、1,238地点が調査対象となっており、各標準地について1㎡あたりの「正常な価格」が公示されています。この価格は、実際の取引価格の指標となり、適正な地価形成に貢献しています。
広島県の地価公示概要
令和7年の公示地価データによると、広島県全体では住宅地、商業地、工業地のいずれも上昇傾向を示しており、前年より上昇幅を拡大しています。この動向の背景には、低金利環境の継続や広島市中心部への人口集中、再開発事業の影響があります。
一方で、県北部の山間部や島嶼部では人口減少と高齢化の影響により地価下落が続き、県内での二極化が進行しています。
用途区分 | 変動率 | 前年変動率 |
---|---|---|
住宅地 | +1.3% | 前年より上昇幅拡大 |
商業地 | +2.7% | 前年より上昇幅拡大 |
工業地 | +2.2% | 前年より上昇幅拡大 |
広島県の地価動向の特徴
広島県の平均地価は、首都圏や近畿圏に比べると依然として手ごろな水準にありますが、中四国エリアでは最も高い部類です。近年は緩やかな回復基調が続いており、再開発や産業投資の集中的なエリアでは県平均を上回る上昇が見られます。
とりわけ再開発が進む広島市中心部、半導体投資が集中する東広島市、交通利便性に優れた府中町では上昇率が高く、一方で県北部や島嶼部では人口減少の影響により横ばい〜小幅下落が続いており、県内の二極化が鮮明です。
広島市内8区の地価変動の特徴
広島市内8区の地価変動を詳しく見ると、住宅地においてすべての区で上昇率が加速していることがわかります。中でも中区が+4.6%、南区が+3.4%と特に高い上昇率を示しており、これらの区が広島市全体の地価上昇を牽引しています。
中区・南区の高い上昇率の背景
中区と南区で地価が大きく上昇している理由には、いくつかの要因があります。まず中区では、紙屋町・八丁堀エリアの再開発計画が進展しており、将来的な収益期待が地価に織り込まれています。特に八丁堀地区では高層ビルの建設計画が次々と発表され、不動産投資家の関心を集めています。
南区では広島駅前の大規模再開発が地価上昇の主な要因となっています。広島駅新ビル(2025年3月開業予定)の建設が進み、周辺エリアへの波及効果が顕著です。エールエールA館周辺では前年比9.8%という高い上昇率を記録しており、駅前再開発によって生まれる新たな人の流れが周辺の不動産価値を高めていることがわかります。
両区ともに、再開発による都市機能の強化と利便性の向上が評価され、住居としても商業地としても需要が高まっています。オフィスや商業施設、高級マンションなどの複合開発が進むことで、都市としての魅力が増し、さらなる投資を呼び込む好循環が生まれています。
その他の区の状況
西区や安佐南区などその他の区でも地価は上昇傾向にありますが、上昇率は中区・南区と比べると緩やかです。産業地において、西区ではJR西広島駅北口の再開発が進行中で、駅前エリアを中心に地価上昇がみられます。
安佐南区や安佐北区などの郊外エリアでは、駅に近い平地の住宅地で需要が堅調である一方、傾斜地の住宅団地では需要が弱く、地価の二極化が進んでいます。特に高度経済成長期に開発された丘陵地の大規模団地では、高齢化や空き家の増加などの課題が顕在化しています。
東区や佐伯区では、交通アクセスが良好なエリアを中心に緩やかな上昇が続いています。広島高速道路のインターチェンジ近接地などでは、アクセス性の良さが評価され、住宅需要が安定しています。
隣接都市と周辺地域の地価動向
広島市に隣接する都市や周辺地域の地価動向も注目すべきポイントです。福山市や東広島市などの主要都市では駅前再開発や人口流入の効果で地価が底堅く推移している一方、呉市や江田島市などの湾岸・島嶼部では利便性の格差が顕在化し、地価下落が続いています。
福山市・東広島市の地価状況
県東部の中核都市である福山市では、住宅地が+1.6%、商業地が+4.5%と上昇しています。特に福山駅周辺では再開発事業が進行中で、商業地を中心に地価上昇が顕著です。また、JR福山駅前の大型再開発「福山駅前再生プロジェクト」が地価を押し上げる要因となっています。
東広島市も住宅地、商業地ともに地価は上昇傾向にあります。特に注目すべきは、東広島吉川地区における外資系半導体工場の立地です。半導体関連産業の集積が進むことで雇用が創出され、それに伴う住宅需要が地価を下支えしています。
また、広島大学のある西条駅周辺では学生向けマンションの需要が安定しており、駅前の商業地では堅調な地価上昇が続いています。研究機関や企業の進出も相まって、人口増加が見込まれるエリアでは不動産需要が拡大しているのが特徴です。
呉市・江田島市等の湾岸・島嶼部の課題
一方、呉市や江田島市などの湾岸・島嶼部では、地価下落が続いています。これらの地域では若年層の流出による人口減少と高齢化が進行し、不動産需要の縮小が慢性化しています。
呉市では中心部の商業地でも横ばいとなっており、空き店舗の増加や商業施設の撤退などが課題となっています。また、海上交通に依存する江田島市では、アクセスの制約から通勤・通学の利便性で不利な面があり、若年層の流出に歯止めがかかっていません。
これらの地域では、観光資源の活用や移住促進策などで地域活性化を図る取り組みが行われていますが、地価下落の流れを反転させるには至っていません。利便性の低さや産業基盤の弱さが不動産需要を抑制し、地価下落の長期化を招いていると言えるでしょう。
県北部の郡部の状況
県北部の郡部では、地価の減価が常態化し、需要の二極化が進行しています。三次市や庄原市などの中山間地域では、人口減少と高齢化がさらに進み、不動産需要の低迷が続いています。
特に中心市街地から離れた農村部では、空き家の増加が顕著であり、地価の下落が止まる気配はありません。一部では移住者向けの空き家バンク制度などを活用した定住促進策も実施されていますが、地価動向を反転させるほどの効果は現れていません。
これらの地域では、地域の核となる都市機能の維持・強化と交通アクセスの改善が地価下落に歯止めをかける鍵となりそうです。しかし、人口減少の流れを短期間で反転させることは難しく、地価の二極化傾向はさらに強まる可能性があります。
用途別の地価動向詳細分析
広島県内の地価動向をより詳しく理解するために、住宅地、商業地、工業地の各用途別に詳細な分析を行います。それぞれの用途によって上昇要因や下落要因が異なり、エリアごとの特性も見られます。
住宅地の地価動向
住宅地の地価は全体として上昇傾向にありますが、エリアによって大きな差があります。都心アクセスが良好な平地エリアや駅近の住宅地では顕著な上昇が見られる一方、郊外の傾斜団地では下落や横ばいにとどまっています。
市町村 | 2025年上昇率 | 2024年上昇率 | 特徴 |
---|---|---|---|
府中町 | +4.5% | +3.4% | 広島市隣接、区画整理事業による住環境向上で高評価 |
広島市 | +2.4% | +2.0% | 都心アクセス良好、平坦地中心に需要堅調 |
福山市 | +1.6% | +1.3% | 緩やかな上昇傾向、エリアにより需要差あり |
住宅地の価格動向を左右する最大の要因は「利便性」と「平坦性」です。交通アクセスが良く平地に位置する住宅地では需要が堅調で、子育て環境や教育施設へのアクセスの良さが評価され、地価上昇を支えています。
一方、高度経済成長期に開発された郊外の大規模団地、特に傾斜地の住宅団地では高齢化や空き家増加に伴い需要低迷が続き、住宅地の二極化が鮮明になっています。
商業地の地価動向
商業地の地価は全体で+2.7%と、住宅地や工業地に比べて高い上昇率を示しています。特に広島駅前、紙屋町・八丁堀エリア、JR西広島駅北口など再開発が進む地域で将来への期待感が高まり、顕著な上昇を記録しています。
市町村名 | 2025年上昇率 | 2024年上昇率 | 特徴・背景 |
---|---|---|---|
府中町 | +5.8% | +4.3% | 再開発進行による都市機能強化と集客力向上で投資需要が活発化 |
広島市 | +4.6% | +4.2% | 中区中心に再開発が進み、商業地の価値上昇が続く |
福山市 | +4.5% | +4.2% | 再開発や商業施設の充実が地価上昇を支える |
一方、県北部や島嶼部の中心街では人口減少と高齢化が進み、商業需要の縮小に伴い地価が下落しています。空き店舗の増加や商業施設の撤退が進み、これら地域の商業地の魅力低下が地価に反映されている状況です。
工業地の地価動向
工業地の地価は+2.2%と上昇しており、特に物流施設や製造業の拠点として需要が高まっているエリアで上昇が顕著です。広島県内では東広島市の吉川地区や広島西部湾岸エリアなどで工業用地への需要が高まっています。
工業地の地価を押し上げる要因として、半導体産業の集積と物流需要の拡大が大きく影響しています。特に半導体は国家戦略物資として重要性が増しており、関連産業の集積地では今後も地価上昇が続く可能性が高いと考えられます。
一方で、老朽化した工業団地や交通アクセスが不便な工業地では需要が低迷し、地価も横ばいから微減の傾向にあります。製造業のグローバル競争が激化する中、立地条件による選別がさらに進むことが予想されます。
2025年広島県地価上昇を加速させる要因
広島県の地価、特に上昇地域の動向を加速させている主な要因を分析します。これらの要因は相互に関連しており、複合的に地価上昇を促進しています。
大型再開発の進展
広島県内、特に広島市中心部では複数の大型再開発プロジェクトが進行中です。広島駅新ビル(2025年3月開業予定)の建設が最終段階を迎えており、駅前エリアの利便性と集客力が大幅に向上することが期待されています。
また、紙屋町・八丁堀エリアでは3街区の高層化計画が進行中で、オフィス、商業施設、高級マンションなどの複合開発が進められています。こうした再開発は単に建物を更新するだけでなく、都市機能を高度化し、新たな人の流れを創出します。
大型再開発は周辺エリアの不動産価値にも波及効果をもたらし、広範囲での地価上昇を促進しています。特にこれまで低未利用だった土地の再評価が進み、都心部全体の地価水準を押し上げる効果が生まれているのです。
交通インフラの強化
交通インフラの強化も地価上昇を促進する重要な要因となっています。広島駅の橋上化や路面電車の駅構内乗り入れなど、交通結節点としての機能強化が進められています。
また、広島南道路の整備や高速道路のインターチェンジ新設なども地価に好影響を与えています。こうした交通インフラの整備により、これまでアクセスに難があったエリアの利便性が向上し、不動産価値の再評価が進んでいます。
特に注目すべきは、交通インフラの整備が住宅地と商業地、そして工業地のすべてに好影響を与えている点です。通勤・通学のアクセス改善は住宅需要を喚起し、商業施設への集客向上は商業地の価値を高め、物流効率の向上は工業地の魅力を増しています。
半導体投資と物流需要
広島県の地価上昇を支える産業面での要因として、半導体関連投資と物流需要の拡大が挙げられます。東広島市吉川地区では外資系半導体メーカーの工場立地が進み、関連企業の集積も進んでいます。
また、電子商取引の拡大に伴い、広島西部湾岸エリアを中心に物流施設の需要が高まっています。高速道路網へのアクセスが良好なエリアでは、大型物流施設の建設が相次いでおり、産業系用地の価値が上昇しています。
半導体産業と物流業は、デジタル経済の進展とともにさらに重要性を増しており、関連用地への需要は今後も堅調に推移すると見られています。特に国家戦略として半導体産業の強化が図られる中、関連用地の地価上昇傾向は中長期的に続く可能性が高いでしょう。
低金利と賃金上昇のサイクル
マクロ経済環境も地価上昇を後押ししています。マイナス金利解除後も住宅ローン金利は歴史的に見れば低水準で推移しており、住宅取得のハードルは依然として低い状態が続いています。
また、企業収益の改善に伴う賃金上昇も住宅需要を下支えしています。特に若い世代のファミリー層では住宅取得意欲が高まっており、良好な住環境を求めて都心近接地や交通利便性の高いエリアでの住宅需要が増加しています。
経済環境の改善が住宅取得マインドを高め、それが地価上昇につながるという好循環が生まれているのが現状です。ただし、建築コストの高騰や金利の上昇傾向など、今後の不確定要素にも注意が必要でしょう。
広島県地価の下振れリスク要因
広島県の地価動向について、上昇要因だけでなく、潜在的な下振れリスクについても検討する必要があります。これらのリスク要因は、短期的または中長期的に地価に影響を与える可能性があります。
人口流出エリアの需要空洞化
広島県内でも県北部や島嶼部では若年層の流出が続いており、住宅・商業需要の縮小が慢性化しています。こうしたエリアでは高齢化も進行しており、将来的な不動産需要の減少が避けられない状況です。
人口減少が進むエリアでは空き家・空き店舗の増加が顕著であり、これが地価の下落圧力となっています。特に中山間地域や離島では、若年層の流出に歯止めがかからず、不動産市場の縮小が続いています。
人口動態は地価形成の最も基本的な要素であり、人口減少地域では不動産需要の構造的な低下は避けられません。こうした地域では、インフラの維持コスト増大や税収減少など、自治体財政の悪化も地価下落を加速させる要因となりうるでしょう。
建築コストの高止まり
建築資材価格の高騰や人手不足による建築コストの上昇は、不動産開発の採算性を圧迫し、地価にも影響を与えています。特にマンション開発では、建築コストの上昇が販売価格に転嫁せざるを得ない状況となっています。
建築コストの高止まりは、マンション用地需要の天井を形成する恐れがあります。開発業者は採算性を確保するために土地取得費を抑える傾向があり、これが地価上昇の抑制要因となる可能性があります。
また、建築コストの上昇は新規供給を減少させる効果もあります。供給減少は短期的には既存物件の価値を高める効果がありますが、中長期的には市場の流動性低下や住宅取得機会の減少につながる恐れもあります。
建築コストと販売価格のバランスが崩れると、不動産開発の停滞を招き、地価の下落リスクとなる可能性があります。特に地価が高騰した都心部では、この影響が顕著に表れる可能性があるでしょう。
金利反転の影響
長期金利が想定以上に上昇すれば、住宅ローン金利の上昇を通じて住宅需要が冷え込む可能性があります。特に高額な住宅ローンを組む必要がある都心部の物件では、金利上昇の影響が大きく表れる恐れがあります。
日本銀行のマイナス金利政策解除後も、金融政策の正常化は段階的に進められると見られていますが、インフレ圧力が高まれば、想定以上の利上げが行われる可能性もあります。
住宅ローン金利の上昇は借入可能額を減少させ、需要者の購買力を低下させます。これにより、特に高額物件を中心に需要が減少し、地価下落の圧力となる可能性があるため、注視が必要です。
ただし、緩やかな金利上昇であれば、駆け込み需要を喚起する効果もあり、短期的には地価を押し上げる要因ともなり得ます。金利動向と地価の関係は複雑であり、上昇スピードや経済環境によって影響が異なることに留意すべきでしょう。
半導体市況サイクルの影響
半導体市況は周期的な変動があり、投資計画の遅延・縮小が工業地需要を揺るがすリスクがあります。東広島市を中心に半導体関連の工場立地が進んでいますが、世界的な半導体需給の変動によって投資計画が変更される可能性も否定できません。
半導体産業は設備投資規模が大きく、一度計画が変更されると地域経済への影響も大きくなります。投資計画の縮小は雇用創出効果を減少させ、住宅需要や商業需要にも波及する恐れがあります。
また、半導体産業は国際競争が激しく、技術革新や競合国の政策などによって投資環境が大きく変化する可能性があります。こうした不確実性は、工業地価格の変動リスクとなり得ます。
半導体関連投資に過度に依存したエリアでは、市況サイクルによる影響を受けやすく、地価の変動リスクが高まる可能性があります。産業構造の多様化や研究開発機能の強化など、リスク分散の取り組みが重要となるでしょう。
広島地価の将来展望と市場予測
これまでの分析を踏まえ、広島県の地価の将来展望と市場予測について考察します。エリアごとの特性や用途別の動向を踏まえ、今後の地価動向を予測します。
「駅前シナジー」の連鎖的波及
広島駅前の再開発効果は、紙屋町・八丁堀エリアや西広島駅周辺など、他の主要拠点にも波及することが予想されます。このような駅を中心とした再開発が周辺地域に良い影響を与える「駅前シナジー」は連鎖的に広がり、都市構造を変えていく可能性があります。
広島駅新ビルの開業(2025年3月予定)は、単に駅前の開発にとどまらず、周辺エリアへの波及効果や来訪者の動線変化を通じて、広島市全体の都市構造に影響を与えるでしょう。
駅を中心とした再開発は、交通結節点としての機能強化と商業・業務機能の集積を促進し、周辺地域の地価上昇をけん引します。特に駅前から徒歩圏内のエリアでは、利便性の向上による地価上昇が続くと予想されます。
平地と傾斜地の二極化の進行
住宅地では、平地と傾斜地の二極化がさらに進行することが予想されます。平地の住宅地、特に交通アクセスが良好なエリアでは需要が堅調で、地価上昇が続く見込みです。
一方、高度経済成長期に開発された郊外の傾斜地の住宅団地では、高齢化や空き家の増加が進み、需要低迷と地価下落が続く可能性が高いでしょう。これらの地域では、若年層のファミリー世帯の流入が少なく、世代交代が進まないことが課題となっています。
この二極化は同一市区内でも顕著に表れており、例えば広島市安佐南区内でも、平地の住宅地と丘陵地の大規模団地では地価の動向が大きく異なっています。平地の住宅地では今後も緩やかな上昇が続く一方、傾斜地の団地では下落傾向が続くと予想されます。
半導体クラスターと物流ハブの相乗効果
東広島市を中心とする半導体産業の集積と、広島西部湾岸エリアの物流ハブ機能の強化は、相互に関連しながら地域経済と地価を押し上げる効果が期待されます。
また、電子商取引の拡大に伴う物流ハブ機能の強化は、広島西部湾岸エリアの工業地需要を高めています。高速道路網へのアクセスが良好なエリアでは、大型物流施設の建設が相次いでおり、産業系用地の価値上昇が続くと予想されます。
半導体産業と物流業は、デジタル経済の基盤となる産業であり、今後も成長が期待される分野です。これらの産業集積地では、関連産業の発展と雇用創出が地域経済を活性化し、不動産需要を喚起する好循環が期待できるでしょう。
人口動態に逆行する地価上昇の条件
広島県内でも府中町や廿日市市など、人口動態に逆行して地価が上昇しているエリアがあります。これらの地域の特徴を分析することで、人口減少地域が地価を反転させるための条件を考えることができます。
府中町では広島市への近接性と交通利便性の高さが評価され、若年層のファミリー世帯の流入が続いています。また、区画整理事業などによる住環境の整備も進み、住宅地としての魅力が高まっています。
廿日市市では宮島口周辺の整備や商業施設の充実などにより、利便性と観光資源の両面で評価が高まっています。また、広島市中心部へのアクセスの良さも住宅需要を支える要因となっています。
これらの事例から、人口減少地域でも交通アクセスの改善や特色ある地域資源の活用、住環境の整備などによって、地価を反転させる可能性があることがわかります。特に若年層が住みたいと思える環境づくりが、人口動態に逆行する地価上昇の鍵となるでしょう。
まとめ
2025年の広島県公示地価データから見えてきたのは、地域による明確な二極化の進行です。広島市中心部や主要駅周辺では再開発効果と都市中心部への人口集中の流れを受けて地価上昇が続く一方、県北部や島嶼部では人口減少と高齢化の影響で地価下落が続いています。
特に注目すべきは広島駅前の大規模再開発の影響です。2025年3月に開業予定の広島駅新ビルを中心とした開発効果は、南区のエールエールA館周辺で前年比9.8%という高い上昇率をもたらしました。この再開発効果は今後、紙屋町・八丁堀エリアや西広島駅周辺にも波及していくことが予想されます。
一方で、建築コストの高止まりや金利上昇の可能性、半導体投資の変動リスクなど、地価の下振れ要因にも注意が必要です。特に人口減少地域では、交通アクセスの改善や地域資源の活用、住環境の整備など、若年層を呼び込む取り組みが地価下落に歯止めをかける鍵となるでしょう。
広島県の不動産市場に関心をお持ちの方は、今回ご紹介した地価動向とともに、住宅着工数や求人倍率、空室率などの指標にも注目して、地域の将来性を見極めることをお勧めします。再開発が進む都心部と課題を抱える周辺部、それぞれの特性を理解した上での判断が重要です。