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地価LOOKレポートはタイムリーな指標を示す
地価の代表的な指標としては国土交通省から発表される毎年1月1日時点の「公示地価」と各都道府県が発表する7月1日時点の「基準地価」があります。またこれとは別に国税庁から発表される「路線価」は相続税の算定に使用されます。
こうした統計は年に1回発表となりますが、さらにタイムリーな地価の動向を把握するために、国土交通省から「地価LOOKレポート」が発表されています。
これは全国の主要都市の主要エリアでオフィスビルやマンション、商業施設など土地が高度利用されている地区の地価動向を年に4回発表するものです。
調査地点は少ないですが、主要スポットを中心に地価動向を知る事ができます。
<大阪>
大阪エリアの地価は上昇傾向に
地価LOOKレポートでの大阪府の調査地点は大阪市で12地区、豊中市が1地区の計13地区となっています。
2025年第3四半期(7/1~10/1)の地価動向を見ると、大阪府の調査地区の全てで地価が上昇となりました。上昇率はいずれも「0%超~3%未満」となりました。
地価LOOKレポートでは大阪府の調査地点の上昇が続いており、2022年第3四半期(7/1~10/1)以降、9四半期連続の全地区上昇です。
これらの地区の動向などに主なエリアについて国土交通省の資料などから見てみましょう。
地価LOOKレポート 大阪府の地価調査地点
<大阪市> 商業:西梅田・茶屋町・北浜・心斎橋・なんば、新大阪・阿倍野 住宅:福島・天王寺・ <豊中市> 住宅:豊中 |
大阪駅周辺エリア
「西梅田」
筆者は2000年以降大阪には何度も訪れていますが、特に梅田の北ヤードエリアは長年巨大な壁に囲まれて再開発が進んできました。そして2024年に第2期「グラングリーン大阪」として遂にそのベールを脱ぎ、まさに劇的に街が進化しました。
西梅田周辺は大阪有数のビジネス街となっており、今後も商業エリアとしての発展が期待されています。2024年には「イノゲート大阪」と、商業施設「KITTE大阪」が開業しJPタワーとの通路も開業し大阪駅周辺の発展につながっています。さらに億ションを超える超スーパー億ションも誕生し東京都心エリアに肩を並べる程のマンション市場となりつつあります。そしてオフィス賃料、店舗尾賃料等も上昇傾向にあり今後の地価動向にも影響を与えます。
「茶屋町」
茶屋町は阪急大阪梅田駅にも近く、阪急阪神ホールディングスによる大規模再開発の計画のあるエリアです。よく言われる言い回しで「東の東急」「西の阪急」というのがありますが、阪急はとても高いブランド力を有します。さらに同社は「梅田ビジョン」を発表しており、大阪梅田駅は2026年1月から大規模リニューアルが予定されています。また阪急ターミナルビルの高層化や新阪急ホテルの建替えなど「芝田1丁目計画」も予定されています。
大阪駅周辺ではこうした一連の再開発による利便性の向上もあり、将来的も期待されます。
阪急阪神ホールディングスによる再開発が進む大阪駅周辺

資料:阪急阪神ホールディングス株式会社 プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001914.000005179.html
「福島(住宅)」
筆者は昨年ある不動産会社から依頼されてJR福島駅近くのタワーマンションのレポートを執筆いたしましたが、その時に福島エリアはとても面白い街だなと感じました。その理由としては梅田駅まで徒歩圏であるにも関わらず今なお下町情緒や人情味に溢れた街だからです。
さらに福島駅北側は開発の進む「うめきたエリア」にも徒歩でアクセス可能であり、利便性も高くマンションなど住宅の建設も多くなっています。マンション賃料も上昇傾向にありビジネス街に近い事もあり法人賃貸の需要も高いようです。うめきたの開発などの進捗により今後ますます土地需要も増加し地価の上昇につながると考えられます。
新大阪エリア
「新大阪」
東海道新幹線の停車する新大阪駅も筆者が頻繁に多く利用する駅ですが、駅自体が巨大なターミナル駅で駅中には様々な大阪の食文化の店が広がっておりとても楽しい雰囲気があります。
新大阪駅周辺は都市再生緊急整備地域にも指定され再開発も進んでおり将来性の高いエリアです。新幹線に加えて、将来的には「なにわ筋線」へつながる新大阪連絡線・なにわ筋連絡線が阪急電鉄において計画されています。
周辺はオフィス街となっており、新幹線が利用できる事から全国展開の企業も多くなっています。今後はリニア中央新幹線の開業も予定されており、十三や淡路など周辺も含め、新大阪エリアは今後大阪エリアのゲートウェイとして大きく発展する可能性があります。
大阪「ミナミ」エリア
「心斎橋」
心斎橋エリアは東京の銀座に匹敵する程の高級ブランドが多く集積し、なんばから続くアーケードがいつも賑わっています。海外からの来客も多くインバウンド増加の恩恵を受けやすいエリアです。
デパート等の業績も好調で店舗需要も高く空室率は低水準で推移しており、ブランド店が集積するという希少性から店舗賃料は上昇傾向にあります。またオフィス需要も高く、多くの投資資金も集中し地価の上昇につながっています。
心斎橋エリアでは大規模再開発である「(仮称)心斎橋プロジェクト」も進行しており2026年完成予定です。4棟のビルを一つに建て替え大型の複合ビルとなります。高級ホテルである「ザ・ゲートホテル」の他、ブランド店などの商業施設やオフィスなどが入る予定で新たな心斎橋のランドマークとなるのではないでしょうか。
ホテル需要も多く、本来であれば投資用のワンルームマンションなどが建設される場所にビジネスホテルなども建設されますので、特に駅近の土地の競合は年々激しくなってきています。
「なんば」
なんばは大阪を代表する繁華街として有名です。「なんばグランド花月」や「大阪松竹座」などのエンターテイメント施設を始め、大阪の食文化を象徴するようなエリアでもあり粉ものの店が多く集積しています。有名な看板のある戎橋付近は多くの人で賑わっています。
関西空港からのアクセスも良くインバウンドの増加から消費も拡大し、店舗需要も多く賃料の上昇につながっています。
ホテル需要も多く、筆者は以前はよくなんば花月の横のなんばオリエンタルホテルに宿泊していましたが、近年ではインバウンドを始めとする方々が多くいらっしゃるようで1泊料金がかなり上昇しました。ホテル料金が上昇するという事は収益力の上昇につながり地価上昇にも波及します。
なんばで周辺はオフィス街も多いエリアです。「なにわ筋線」の開業や、南海電鉄による「グレーターなんば」構想など今後も発展が続き地価の上昇も継続すると考えられます。
今後の大阪マンション市場に与える影響は
日本有数の経済力を持つ大阪エリアは、その将来性も高く地価・不動産価格も上昇傾向となっています。
2025年は関西万博が成功裏に終わり、世界中の人たちが大阪エリアについてインターネットやスマホなどでNSNを通じて広がったと考えられ、そういった方々が2年後、3年後に大阪に訪れる可能性も高い訳です。これがまさに東京五輪後の状況と重なると考えられます。さらにIR構想や新線・新駅の進展など大阪エリアの不動産投資の価値は確実に上昇していくと考えられます。その延長線上に地価の上昇もつながってくると考えられます。
<名古屋>
名古屋エリアの地価は上昇傾向に
地価LOOKレポートでは愛知県の調査地点は全て名古屋市内となり、全8地区となっています。今回の調査では名古屋市の全地区で地価が上昇となりました。
主な地区についてその動向を見てみたいと思います。
地価LOOKレポート 愛知県の地価調査地点
<名古屋市> (商業) 名駅駅前、太閤口、栄南、伏見、久屋大通駅周辺、金山 (住宅) 大曾根、御器所 |
「名駅駅前」「太閤口」
名古屋ではリニア中央新幹線の開業期待から名古屋駅周辺を中心に大規模な再開発が進み、高層ビルの建ち並ぶ近代的なオフィス街が形成されています。こうしたオフィスに多くの企業が入り、空室率も低い水準で推移し賃料も上昇傾向にあります。
さらに名古屋駅前では大規模な再開発である「名古屋駅地区再開発計画」が発表されました。名古屋駅前から「ささしまライブ24」地区の付近までの広大なエリアの再開発が予定されています。2033年度に1期工事が竣工、2040年代前半に2期工事が竣工と全体完成は15年以上先となりますが、それだけ将来的な発展も期待されます。在来新幹線及びリニア中央新幹線の開業により全国的規模の企業の移転なども予想され、リニア開業と合わせて名古屋駅周辺の発展は今後も継続すると考えられます。
太閤口(名古屋駅西側)ではホテルの宿泊需要も多く、また飲食店なども収益の回復が続いています。オフィス賃料や取引価格もリニア中央新幹線の開業期待から上昇となっています。
名古屋駅地区再開発計画

資料:名古屋鉄道株式会社、名鉄都市開発株式会社、日本生命保険相互会社、近畿日本鉄道株式会社、近鉄不動産株式会社「名古屋駅地区再開発計画の事業化決定について」
https://www.meitetsu.co.jp/profile/news/2025/__icsFiles/afieldfile/2025/05/26/25-05-26meieki.pdf
「栄南」「伏見」エリア
栄南エリアは名古屋を代表する商業地域となっています。ブランドショップが多く、さらに出店需要も多く店舗賃料も上昇傾向となっています。オフィス賃料も上昇傾向にあります。インバウンドも多く訪れるエリアであり人流も回復しつつある中、再開発の波及効果も期待されています。
栄地区では41階建ての複合ビル「ザ・ランドマーク名古屋栄」が2026年に竣工予定の他、周辺では「栄トリッドスクエア」や「セントラルパークアネックス」などの再開発が進行しています。
商業施設やオフィスビルなどが多く就業人口が多いエリアであり、マンション用地の需要も多くなってきており地価の上昇も続くと予想されます。
東京や大阪では超高額マンションの発売も多くなってきていますが、名古屋でもリニア中央新幹線の開業時期が近づくと共に更なる発展と地価・マンション価格上昇の可能性もあります。
名古屋の地価上昇は周辺にも波及
名古屋市は中心だけではなく周辺部にも地価の上昇が波及しています。
「金山」
熱田区にある金山駅は名古屋駅に次ぐ乗降客数のあるターミナル駅です。伏見通と大津通の二つの幹線道路もあり車での交通利便性も高いエリアです。
駅周辺の商業・オフィスなどの好立地のエリアは限定的であり、新規供給も少ないエリアですが、不動産需要は多く地価も上昇傾向となっています。熱田区では2025年の基準地価では住宅地の地価上昇率が8.4%と名古屋市で最も高くなりました。
マンションの建設なども見られ、人口の増加から街の発展も期待されます。
「大曾根(住宅)」
東区の「大曾根」駅は名古屋駅までJRで約11分と名古屋中心部への鉄道アクセスが優れた立地であり、なおかつ閑静な住宅街となっています。
東区では人口・世帯数が増加しておりマンション需要も多く、地価も上昇傾向となっています。
「御器所」
御器所も名古屋市中心部へのアクセスが良好なエリアです。特定用途誘導地区に指定されており今後も生活利便施設の集積も見込まれます。マンション価格も上昇しており地価も上昇しています。
優れた交通利便性や住環境などから今後も地価上昇が続くと予想されます。
名古屋周辺エリアの地価動向とアパート投資
以上名古屋エリアの地価LOOKレポートについて述べてきましたが、名古屋周辺エリアは地価LOOKレポートが発表されていませんので、代りに最新の基準地価の動向から述べてみたいと思います。
愛知県の地価を2025年の基準地価から見ると、住宅地で最も地価が上昇したのは大府市で5.3%となりました。以下長久手市、知立市、豊明市、阿久比町などが続きます。
商業地では大府市が9.1%と高い上昇率となりました。以下刈谷市、知立市、安城市、稲沢市などが続きます。
愛知県では名古屋市及び名古屋市中心部以外でも地価が大きく上昇しています。この背景には自動車による移動・通勤が多く、東京、大阪のように鉄道交通による依存が少ない事が考えられます。
愛知県 2025年基準地価 住宅地の平均変動率(上位)
| 市町村名 | 平均変動率 |
1 | 大府市 | 6.4% |
2 | 長久手市 | 4.9% |
3 | 知立市 | 4.4% |
4 | 豊明市 | 4.1% |
5 | 阿久比町 | 3.8% |
<愛知県「令和7年愛知県地価調査」>
愛知県 2025年基準地価 商業地の平均変動率(上位)
| 市町村名 | 平均変動率 |
1 | 大府市 | 9.1% |
2 | 刈谷市 | 6.2% |
3 | 知立市 | 6.2% |
4 | 安城市 | 5.7% |
5 | 稲沢市 | 5.6% |
<愛知県「令和7年愛知県地価調査」>
池の真ん中に石を落とすと新円の輪が拡大していくように、名古屋エリアも都心エリアを中心から周辺部に地価上昇が波及しています。そのため不動産投資において一定の利回りを確保するために周辺エリアのアパート投資も注目度が上昇しています。
もともと地価に割安感があったエリアですので、上昇幅も高くなっています。しかしまだまだ割安感はありますので今後もアパート需要は底堅いと考えられます。