家賃滞納は、賃貸経営において避けて通れないリスクの一つです。滞納が発生した際に適切な対応を取らなければ、回収困難な状態に陥るだけでなく、法的トラブルに発展する可能性もあります。一方で、焦って自力で回収しようとすると、オーナー側が不法行為に問われるケースも少なくありません。本記事では、家賃滞納が発生した際の初期対応から法的手続きまでの流れを段階的に解説します。早期発見と適切な対応により、トラブルを最小限に抑えるための実践的なノウハウをお伝えします。

家賃滞納は早期発見で速やかに対応する

家賃滞納への対応において最も重要なのは、問題を早期に発見し、迅速に行動を起こすことです。滞納期間が長引くほど回収は困難になり、法的手続きに要する時間とコストも増大します。

早期発見・早期対応を実現するためには、日常的な入金管理体制の整備と、滞納発生時の連絡フローを事前に確立しておくことが不可欠です。ここでは、滞納発生時の確認方法から初回連絡のポイント、証拠保管まで解説します。

滞納発生の確認

家賃滞納への対応は、まず滞納の事実を正確に把握することから始まります。口座振替やクレジットカード決済を導入している場合は、金融機関からの入金データを毎月確認し、未入金があれば即座に検知できる仕組みを整えましょう。

滞納が発生した場合は、支払い期日から数日以内に確認作業を行い、入居者の状況把握に努めることが早期解決の鍵となります。特に高齢の入居者の場合は、滞納が安否確認のサインとなることもあるため、単なる督促ではなく入居者の生活状況にも配慮した声かけや確認が求められます。

初回連絡のポイント

滞納を確認したら、速やかに入居者へ連絡を取ります。初回連絡では、まず「うっかり忘れ」や「口座残高不足」などの単純なミスの可能性を考慮し、穏やかな口調で支払い意思を確認することが大切です。

電話連絡は日中の適切な時間帯(8時から20時頃)に行い、入居者のプライバシーに配慮しながら滞納理由と支払い見込みを確認しましょう。この段階で高圧的な態度を取ると、入居者との関係が悪化し、その後の交渉が困難になる可能性があります。

連絡履歴と証拠の保管

家賃滞納への対応では、すべてのやり取りを記録することが極めて重要です。電話連絡の日時・内容・相手の反応、訪問時の状況、送付した書面のコピーなど、あらゆる対応履歴を時系列で整理しておきましょう。

これらの記録は、後に法的手続きへ移行した際の重要な証拠となるだけでなく、督促が適切に行われていたことを証明する材料にもなります。管理会社に委託している場合は、定期的に対応状況の報告を受け、情報を共有しておくことをお勧めします。

家賃滞納は話し合いで解決を図る

滞納が発生した場合、まずは入居者との話し合いによる解決を目指すことが基本です。裁判を経て強制執行に至るまでには、通常6ヶ月から1年程度の期間と、約50万円程度の費用がかかることもあります。

そのため、話し合いによる任意の解決は、時間とコストの両面でオーナーにとって大きなメリットがあります。入居者にとっても、信用情報への悪影響を最小限に抑えられるため、双方にとって望ましい解決方法といえます。

面談で確認すべき事実

入居者との面談では、滞納の原因を正確に把握することが最優先です。失業や病気、家庭の事情など、滞納に至った背景を丁寧に聞き取り、支払い能力と支払い意思の両面を確認しましょう。

面談時には、現在の収入状況や他の債務の有無、今後の見通しについても確認し、実現可能な支払い計画を立てるための情報を収集することが重要です。この際、入居者を追い詰めるような態度は避け、解決に向けた協力姿勢を示すことで、円滑な交渉につなげましょう。

分割払いや支払計画の提案

一括での支払いが困難な場合は、分割払いや支払い猶予を検討することも選択肢の一つです。入居者の収入状況に応じて、毎月の家賃に加えて滞納分を少額ずつ上乗せして支払うなど、現実的な計画を提案しましょう。

分割払いを認める場合は、支払い期日と金額を明確にした合意書を作成し、万が一履行されなかった場合の措置についても事前に取り決めておくことが大切です。甘い条件を提示しすぎると、滞納の常習化を招く恐れがあるため、バランスの取れた対応を心がけてください。

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合意内容の書面化と履行確認

話し合いで合意に達した場合は、必ず書面に残しておきましょう。合意書には、滞納金額、支払い方法、支払い期日、履行されなかった場合の対応(契約解除など)を明記し、双方の署名・押印を得ます。

書面化した後も、支払い期日ごとに入金状況を確認し、約束が守られているかをモニタリングすることが重要です。一度でも支払いが遅れた場合は、すぐに連絡を入れ、状況を確認する姿勢を維持することで、再度の滞納を防ぐことができます。

対応は段階的に法的手続きを検討する

話し合いによる解決が見込めない場合や、入居者と連絡が取れない状況が続く場合は、法的手続きへの移行を検討する必要があります。一般的に、滞納期間が3ヶ月以上に及ぶと、裁判所において「信頼関係の破壊」が認められやすくなります。

法的手続きには段階があり、まずは催告書や内容証明郵便による督促から始め、それでも解決しない場合に訴訟へと進みます。以下では、各手続きの役割と注意点を解説します。

催告書と内容証明の役割

催告書は、滞納している家賃の支払いを正式に求める文書です。支払い期限を明確に指定し、期限までに支払いがなければ法的措置を取る旨を通知します。

内容証明郵便は、郵便局が文書の内容と送付日時を証明してくれるため、後の裁判において「いつ、どのような内容の督促を行ったか」を立証する重要な証拠となります。滞納1ヶ月を経過した時点で内容証明郵便による督促を行うことで、法的手続きへの移行をスムーズに進めることができます。

以下に、催告書に記載すべき主な項目をまとめます。

  • 滞納している家賃の金額と対象期間
  • 支払い期限(具体的な日付)
  • 振込先口座情報
  • 期限までに支払いがない場合の措置(契約解除など)
  • 遅延損害金の発生について

これらの項目を明確に記載することで、入居者に対して支払いの緊急性を伝えるとともに、法的な効力を持つ文書として機能させることができます。

支払督促と訴訟の使い分け

法的手続きには複数の選択肢があり、目的と状況に応じて使い分ける必要があります。支払督促は、簡易裁判所を通じて行う手続きで、相手方の異議がなければ比較的短期間で債務名義を取得できます。

一方、入居者に退去を求める場合は、建物明渡し訴訟を提起する必要があり、判決までに通常6ヶ月程度、費用は約50万円が目安となります。以下の表で、各手続きの特徴を比較します。

手続きの種類 目的 期間の目安 費用の目安
支払督促 滞納家賃の回収 約1〜2ヶ月 数千円〜数万円
少額訴訟 60万円以下の金銭回収 約1〜2ヶ月 数千円〜数万円
建物明渡し訴訟 強制退去 約6ヶ月 約50万円
強制執行 判決後の退去実行 約1〜2ヶ月 数十万円

入居者の支払い能力や退去意思を考慮し、弁護士と相談のうえ最適な手続きを選択しましょう。

強制執行と退去手続きの注意点

建物明渡し訴訟で勝訴判決を得ても、入居者が自主的に退去しない場合は、強制執行の申立てが必要です。裁判所の執行官が現地を訪問し、最終的には入居者の荷物を強制的に搬出することになります。

ただし、オーナーが自ら鍵を交換したり、入居者の荷物を勝手に処分したりすることは「自力救済禁止の原則」に反し、住居侵入罪や窃盗罪に問われる可能性があるため絶対に避けてください。どれだけ滞納期間が長くても、法的手続きを経ずに実力行使を行うことは違法であり、損害賠償請求の対象にもなり得ます。

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対応の負担を減らすために予防策を徹底する

家賃滞納への対応は、発生後の処理よりも未然防止に重点を置くことが最も効果的です。適切な入居審査と保証体制の構築により、滞納リスクを大幅に軽減することができます。

また、契約書の整備や管理体制の強化も、万が一の際の対応をスムーズにするために欠かせません。ここでは、オーナーが実践すべき予防策について解説します。

入居審査と保証人の確認

家賃滞納を防ぐ最も効果的な方法は、入居前の審査を厳格に行うことです。収入証明書や勤務先情報だけでなく、過去の賃貸履歴や預貯金残高なども確認し、支払い能力を多角的に評価しましょう。

可能であれば、ビデオ通話や対面での本人確認を行い、入居希望者の人柄や生活態度を把握することも有効です。また、連帯保証人を設定する場合は、保証人の収入状況や資産状況も確認し、実際に保証能力があるかを見極めることが重要です。

家賃保証会社や保険の活用

近年は、連帯保証人に加えて家賃保証会社への加入を必須とする物件が増えています。保証会社を利用すれば、滞納発生時に代位弁済を受けられるため、オーナーの収入が途絶えるリスクを軽減できます。

保証会社を選ぶ際は、審査基準の厳格さ、代位弁済のスピード、保証範囲(原状回復費用を含むかなど)を比較検討し、自身の物件に適したサービスを選択しましょう。ただし、2024年の最高裁判決で一部の「追い出し条項」が違法と判断されたため、保証会社の契約内容も慎重に確認する必要があります。

以下に、保証会社選びのチェックポイントをまとめます。

  1. 審査基準と通過率のバランスを確認する
  2. 代位弁済の手続きにかかる期間を確認する
  3. 保証対象(家賃、管理費、原状回復費用など)の範囲を確認する
  4. 契約条項に違法性がないか確認する
  5. 滞納発生時の督促方法を確認する

これらのポイントを事前に確認することで、トラブルの少ない保証サービスを選ぶことができます。

契約書や管理体制の整備

賃貸借契約書には、滞納発生時の対応について明確に記載しておくことが重要です。遅延損害金の利率(法定上限は年14.6%)、契約解除の要件、明渡し時の手続きなどを具体的に定めておきましょう。

また、「うっかり忘れ」による滞納を防ぐため、口座振替やクレジットカード決済を導入し、入金を自動化することも効果的です。管理会社に委託している場合は、滞納発生時の報告ルールや対応フローを事前に確認し、迅速な初期対応ができる体制を整えておきましょう。

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まとめ

家賃滞納への対応は、早期発見と段階的なアプローチが鍵となります。滞納を確認したら速やかに連絡を取り、話し合いによる解決を目指しましょう。それでも解決しない場合は、内容証明郵便や訴訟などの法的手続きへと移行しますが、自力での強制的な回収は絶対に避けてください。

最も重要なのは、滞納を未然に防ぐための予防策です。厳格な入居審査、家賃保証会社の活用、契約書の整備を通じて、リスクを最小限に抑える体制を構築しましょう。家賃滞納は賃貸経営において避けられないリスクですが、適切な対応と予防策により、その影響を大幅に軽減することが可能です。

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執筆者

アセットテクノロジー編集部

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