目次
- 1 マンション管理会社変更のよくある8つの失敗例
- 1.1 変更失敗ケース1|新管理会社の契約範囲外の業務が発覚!無駄に出費も手間も増えた
- 1.2 変更失敗ケース2|引き継ぎミスにより入居者からクレームを受けた
- 1.3 変更失敗ケース3|いざ変更したのに新管理会社の管理がずさんだった
- 1.4 変更失敗ケース4|新マンション管理会社の工事費用が高額すぎる!内容も不明瞭だった
- 1.5 変更失敗ケース5|旧マンション管理会社の対応がずさんになる
- 1.6 変更失敗ケース6|マンション管理会社変更に必要な書類が揃わない!変更に時間がかかった
- 1.7 変更失敗ケース7|入居者へ管理会社変更の連絡を忘れてトラブルになった
- 1.8 変更失敗ケース8|全入居者から書類への署名捺印がもらえず新管理会社へ移行できない
- 2 9.まともなマンション管理会社を選び変更失敗を防ごう
- 3 マンション管理会社を変更するメリット
- 4 マンション管理会社を変更するデメリット
- 5 マンション管理会社変更の流れ
- 6 STEP3|マンションの全組合員向けに重要事項説明会を開催する
- 7 マンション管理会社変更を失敗させないためのポイント
- 8 まとめ
マンション管理会社の変更は、適切に行えば管理の質向上や費用削減につながる重要な決断です。
しかし、管理会社を変えたいもののどうすればよいか分からない、変更して失敗しないか不安と悩む方も少なくないでしょう。
この記事では、管理会社変更の失敗例とトラブル防止策を徹底解説します。メリットとデメリットを理解し変更のポイントを押さえれば、成功への道筋が見えてきます。
管理会社変更を検討中の方はもちろん、将来の参考にしたい方もぜひ最後までお読みください。具体的な失敗例と対策を知り、自信を持って管理会社変更に臨みましょう。
マンション管理会社変更のよくある8つの失敗例
マンション管理会社変更にはさまざまな失敗例があります。新管理会社の契約範囲外の業務が発覚し出費や手間が増えてしまうケースや、引継ぎミスにより入居者からクレームを受けうるケース、いざ変更したのに新管理会社の管理がずさんだったケースなど、さまざまです。
ここでは、マンション管理会社変更のよくある8つの失敗例を紹介します。
変更失敗ケース1|新管理会社の契約範囲外の業務が発覚!無駄に出費も手間も増えた
旧マンション管理会社に含まれていた管理業務が、新しいマンション管理会社の基本的な契約に含まれておらず、オプション料金や別途契約が必要になるというケースがあります。
マンション管理会社によって、管理業務の範囲が異なり、提供しているサービスも違います。
変更後に手間も増え、無駄な出費もかかってしまうことは避けたいですよね。
解決策:契約前に新旧のマンション管理会社の「管理委託契約書」を確認し、業務範囲を比較・確認をする
契約前に旧マンション管理会社と新しい管理会社の管理委託契約書を比較し、業務範囲の違いを洗い出した上で、お願いしたい管理業務に対応してもらえるのかを確認しましょう。
管理委託契約書は、管理組合がマンション管理会社へ依頼した管理業務の内容をすべて記した書類です。
マンション管理会社は、その契約書で締結した範囲内のサービス提供しかしません。
旧マンション管理会社と新しいマンション管理会社の管理委託契約書内容を照らし合わせ、必要な業務を担ってくれるか確認しましょう。
マンション管理会社の契約書にある管理業務の範囲が妥当かも一緒に確認しよう! |
マンション管理会社の中には、あなたにとって不利な契約内容を書き込んでいる会社もあります。 悪いマンション管理会社に騙されないようにするためには、国土交通省HPにある「マンション標準管理委託契約書」の指針と比較し、国が定める内容に準拠しているかも確認しておくと安心です。 |
変更失敗ケース2|引き継ぎミスにより入居者からクレームを受けた
入居者がいる状況でマンション管理会社を変更する場合、旧管理会社からの引き継ぎを確実に行わなければ、入居者からのクレームにつながる可能性があります。
そのため、マンション管理会社の変更引き継ぎする場合は、新旧のマンション管理会社から引き継ぎ状況を共有してもらい、管理組合で引き継ぎ漏れがないかを確認することが大切です。
解決策:マンション管理会社変更の引き継ぎで確認すべき点を把握して「新旧管理会社の双方」から引き継ぎの報告を受ける
マンション管理会社を変更すると、引き継ぎは新旧の管理会社同士で行われますが、次の項目は、あなた(管理組合)でも確認しましょう。
上記の3つは、入居者に対してさらなる迷惑や不便をかけてしまうものばかりです。
特に、入居者クレームは、引き継ぎ漏れによる対応漏れがあると、いつまで経っても対応してくれないことから、不満が溜まり、退去されてしまうかもしれません。
また、管理組合の運営・取り組みも、これまでペット可だったのに、管理会社の変更でペット不可になったとなると、旧入居者と新しい入居者でルールが変わってしまいますよね。
これでは、住人同士のトラブルに発展してしまうだけです。
管理会社同士で引き継ぎをしてくれますが、担当者はあなたのマンション1つを担当しているわけではありません。
また、現在契約中の管理会社を解約するまでの限られた時間の中で引き継ぎする必要があり、焦りや準備不足から人的ミスが起こる可能性もあります。
マンション管理会社の変更によるトラブルを防ぎ、今後の管理組合や入居者の生活を維持していくためにも、あなた自身も引き継ぎに関与し、必要な引き継ぎを確実に行わせるようにしましょう。
変更失敗ケース3|いざ変更したのに新管理会社の管理がずさんだった
新しいマンション管理会社へ変更すれば、管理も経営もうまくいくとは限りません。
新しいマンション管理会社へ変更したのに、ずさんな管理をされてしまう変更失敗ケースもあるからです。
解決策:管理状況や行政処分の経験がないかを確認する
新しいマンション管理会社へ変更する前に、必ず管理委託を依頼しようと思っている管理会社の管理実績や行政処分の経験について確認することが大切です。
・管理実績を確認する方法①:一般社団法人 マンション管理業協会
管理委託先の管理会社が、「マンション管理業協会」の会員である場合、「キーワード検索」で社名を入力すれば、以下のような情報を確認できます。 ・設立年月日 ・登録番号(更新回数) ・主要株主 ・管理実績(総合管理、部分管理、管理戸数、管理組合数など) ・資格保有者情報(区分所有管理士、マンション管理士、管理業務主任者など) |
・管理実績を確認する方法②:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
「マンション管理業協会」で情報が確認できない場合は、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索をしましょう。 「マンション管理業者」もしくは「賃貸住宅管理業者」で検索をすると、以下の内容を確認できます。
|
※現在、5年に一度のペースで免許の更新が行われており、免許証番号の横にある( )の数字は、更新するほど大きくなります。
※数字が大きい=歴史があり、多くの人に支持されている一つの指標になります。
行政処分経験の有無:国土交通省ネガティブ情報等検索システム<マンション管理業者>で調査
国土交通省ネガティブ情報等検索システム<マンション管理業者>は、マンション管理業者に対する行政処分の情報をまとめた公的なサイトです。 更新頻度は、月1回程度となっており、タイムラグがありますが、最近5年分の情報が公開されているので、管理委託先を決める前に必ず確認しましょう。 |
万が一、管理委託の候補管理会社が行政処分を受けていた事実が発覚した場合は、別のマンション管理会社を検討しましょう。
新しい管理会社と契約後にずさんな管理をする会社だと発覚した場合の相談先 |
新しい管理会社と契約をした後に、適当に管理・運営をする管理会社だと分かったときは、1人で抱え込まず、以下のような機関へ相談してください。 公平かつ中立な立場でアドバイスをしてくれるため、第三者の意見も聞きたいという場合に、ぜひご活用ください。 |
変更失敗ケース4|新マンション管理会社の工事費用が高額すぎる!内容も不明瞭だった
マンションの場合、10〜15年くらいに一度、大規模修繕工事が行われますが、マンション管理会社任せにして、内容がはっきりとしない高額な工事費用を請求された失敗をしている人がいます。
初めての大掛かりな工事でわからないことも多く、「任せておけば安心」と思いがちですよね。
しかし、任せっぱなしにするのではなく、あなた自身も工事費用の相場感を把握し、そのうち内訳比率なども把握しておくことが大切です。
なぜなら、その行動をしているかどうかで、不当な工事を見抜き、数百万円ものコストを削減できる可能性があるからです。
解決策:適切な相場感を把握し、「オーナーまたは管理組合」主導で工事会社を選定する
オーナーまたは管理組合が主導となって、工事会社を選定し、正しい相場感とポイントをおさえて、しっかりと確認してください。
特に、大規模修繕工事は、マンション管理会社に工事会社を紹介してもらうよりも、管理会社から設計書だけを受け取り、オーナーや管理組合が外部の工事会社を探して工事を依頼する方法がおすすめです。
工事費用の相場感は、工事回数によって異なります。ここでは、大規模修繕工事1回目をモデルケースに紹介します。
参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
大規模修繕工事の回数によって若干の違いはありますが、1回目の場合、4,000~6,000万円の工事費用が必要になるケースが最も多くなっています。
その工事費用の中で大きなウエイトを占めるのが「建築系工事」にかかる費用です。「建築系工事」は、外壁塗装や屋根防水・床防水といった、建物躯体の維持管理に必要な工事です。
具体的な数値に置き換えて、相場感を把握すると、以下のようになります。
工事費用が4,000万円だった場合、2,352万円くらいが建築系工事費用になるということです。
建物の状況によって変わりますが、建築系工事の中で最もコストがかかるのが外壁塗装です。工事費用の割合が21.6%なので、工事費用が4,000万円だった場合、およそ510万円が外壁塗装費用となります。
見積もり書を受け取ったら、上記の工事金額割合を参考に、各項目のコストが同じような構成比になっているかを確認しましょう。
もし大きく異なるような割合は、どういう工事なのか、詳しく説明を求めるようにしてください。
なお、国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、全体の平均値や、工事2回目・3回目などの工事費用や工事内訳などの情報が紹介されています。
内訳などを詳しく確認したいという人は、国土交通省が発表している調査結果をご確認ください。
変更失敗ケース5|旧マンション管理会社の対応がずさんになる
マンション管理会社の変更にともない、旧マンション管理会社へ解約の申し入れを行うと、担当者のモチベーションが下がって、管理業務や対応がずさんになる可能性があります。
もし旧マンション管理会社に依頼しても対応をしてもらえないときは、新しいマンション管理会社へ入居者募集の対応を打診しましょう。
解決策:入居者募集などの対応は新しい管理会社に相談して対応を始めてもらう
特に、解約を申し入れた後は、入居者募集をしてもらえなくなるトラブルが起こりやすいです。
旧マンション管理会社が力を入れたところで、解約までの短い期間しか募集できず、旧管理会社の収益にも直結しづらいためです。
入居者募集は、収益に大きく関わる部分なので、旧マンション管理会社に対応してもらえないとわかった時点で、すぐに新しいマンション管理会社へ打診する行動を取りましょう。
変更失敗ケース6|マンション管理会社変更に必要な書類が揃わない!変更に時間がかかった
スムーズかつ確実なマンション管理会社変更を行うためには、旧マンション管理会社の対応履歴や、これまでのマンション管理状況が把握できる書類が欠かせません。
解決策:必要書類を把握し事前に準備をしておく
マンション管理会社変更では、以下のような重要書類が必要です。
- 修繕履歴がわかる書類
- 議事録(過去の総会議事録など)
- 管理図面
- 旧マンション管理会社との契約書(契約内容がわかるもの)
必要な書類が揃わなければ、過去に遡って対応を確認したり、本当は終わっていたはずの点検をもう一度行なったりすることになります。
余計なコストと時間をかけることになり、結果的に管理会社の変更にも時間がかかる可能性があるため、管理会社を変更することを検討し始めた時点で揃っているかを確認しましょう。
変更失敗ケース7|入居者へ管理会社変更の連絡を忘れてトラブルになった
マンションの管理会社が変わった連絡を入居者へ行わなかった場合、以下のようなトラブルにつながる可能性があります。
- 家賃振り込みをしたが、差し戻しになって余計な振込手数料が発生した
- 工事や修理を依頼しようと思ったら、管理会社が変更されていてすぐに対応してもらえずクレームが来た
入居者への連絡を忘れると、最悪の場合退去されてしまう可能性があるため、告知のタイミングを把握して、早めの行動を取ることが大切です。
解決策:変更手順を把握し、1.5~2か月前までに連絡するスケジュールを組む
入居者への連絡は、遅くても解約の1.5〜2ヶ月前までに連絡をするよう行動しましょう。
なお、告知タイミングは、旧マンション管理会社の解約から逆算して行動することになります。
入居者への告知タイミングは、新しいマンション管理会社と契約をした後です。
もし、入居者への告知で困ったことがあれば、新しいマンション管理会社へ相談してください。
オーナーや管理組合に代わって対応してくれるケースや、自分で用意する場合も相談に乗ってくれることがあります。
変更失敗ケース8|全入居者から書類への署名捺印がもらえず新管理会社へ移行できない
マンション管理会社を変更する際に、書類による手続きが必要になるケースがあり、全入居者から署名・捺印がもらえなくて新しいマンション管理会社へ移行できないトラブルが起こりやすいです。
解決策:入居者のメリットを伝えて変更する
入居者が変更を渋るような場合は、「変更したほうがいいんだ」と思ってもらえるように、管理会社の変更で入居者が得られるメリットを根気よく伝えましょう。
【入居者メリットの例】
- 24時間問い合わせができるようになった
- 管理会社変更のタイミングで規約も見直され、ペット可になる
- 旧管理会社と新しい管理会社の変更点をわかりやすく比較表にまとめる
上記のようなメリットを丁寧に伝えることで、協力的になる可能性があります。
9.まともなマンション管理会社を選び変更失敗を防ごう
ここまでマンション管理会社の変更失敗ケースを紹介してきました。
それぞれの解決策もお話ししましたが、同じ轍を踏まないためには、変更失敗ケースを理解した上で、まともなマンション管理会社を選ぶことが重要です。
まともなマンション管理会社に出会うために取るべき行動は、2つあります。
数ある中から厳選する場合は、必ず透明で公平な方法で決めることが大切です。
候補を選定する場合は、2~3社程度の複数のマンション管理会社に相見積もりを依頼し、各社のサービスをより正確に比較できるよう、共通のヒアリング項目を用意しておきましょう。
マンション管理会社を変更するメリット
ここでは、マンション管理会社を変更するメリットを3つ解説します。
管理費用を見直せる
管理会社の変更はマンションの管理費用を見直す最適なタイミングです。分譲時に設定された管理委託費が相場より高めになっている場合は、管理会社を変更することで適切な金額に修正される可能性があります。
管理会社を変更する際は複数の会社から見積もりを取得しましょう。各社の価格競争により、管理委託費が減額される可能性が高まります。また、管理サービスの内容を見直せば、不要なサービスを削減できるほか、コストを抑えられます。
マンション管理会社の委託費については、以下の記事をご覧ください。
→マンション管理会社の委託費は月額15,000円!業務別の内訳とは
マンション管理の質が上がる
管理会社を変更すると、マンションの管理品質が向上する可能性が高まります。新しい管理会社はこれまで以上にきめ細かなサービスを提供するかもしれません。
例えば、共用部分の清掃がより丁寧に行われたり、設備点検の頻度が増えたりするケースが考えられます。また、管理会社の変更を機に、長期修繕計画の見直しや修繕積立金の再算定を行うと、将来的な大規模修繕工事への備えを強化できます。
加えて、新しい管理会社が持つ専門知識や経験を活かし、マンションの資産価値を維持・向上させるための提案を受けられる可能性もあるでしょう。
管理の質が向上すれば、居住環境の改善や住民の満足度向上につながります。
組合員の意識改革につながる
管理会社の変更は、組合員全体の管理意識を向上させる良い機会です。これまでマンションの自治に消極的だった住民も、変更に向けた話し合いや意見集約の過程で、自分たちの住環境に関心を持つようになります。
管理会社の選定や契約内容の検討など、具体的な作業を通じて、マンション管理の重要性を実感できます。また、新しい管理体制への移行に伴い、住民同士のコミュニケーションが活発になり、共同体意識が強まる効果も期待できるでしょう。
マンション管理会社を変更するデメリット
管理会社の変更にはデメリットもあります。適切な管理会社を選択できなければ、かえって管理の質が低下する可能性があります。とくに管理費用の削減のみを重視して選んだ場合、サービスの質が低下する恐れがあります。
また、新旧管理会社間での業務引き継ぎがスムーズに行われないと、管理の継続性が失われ、さまざまな混乱が生じる可能性があります。さらに管理会社の変更によって、住民が不安を感じる場合もあるでしょう。
デメリットを最小限に抑えるためには、慎重な準備と十分な検討が必要です。変更のプロセスを透明化し、住民への丁寧な説明を心がけなければなりません。
ここでは、マンション管理会社を変更するデメリットを3つ解説します。
管理会社選びに失敗してマンション管理の質が下がる
管理会社の変更において避けたいのは管理の質が低下することです。適切な選定を行わずに管理会社を変更すると、以前よりも管理サービスの水準が下がってしまう可能性があります。
例えば、清掃の頻度や丁寧さが低下したり、設備点検が不十分になったりするケースです。とくに管理費用の削減のみを重視して選んだ場合、サービスの質が犠牲になる恐れがあります。
また、新しい管理会社がマンションの特性や歴史を十分に理解していない場合、適切な管理が行われない可能性が高くなるでしょう。
管理の質が低下すると、マンションの資産価値にも悪影響を及ぼします。管理会社の選定では価格だけでなく、提供されるサービスの内容や質、実績などを総合的に評価する意識が必要です。
管理業務の引き継ぎが難しい
管理会社を変更する際に注意したいのは業務の引き継ぎです。引き継ぎが適切に行われないと、さまざまな問題が発生する可能性があります。
例えば、重要書類や共用部分の鍵が紛失したり、進行中のプロジェクトが中断したりするケースです。また、マンションの修繕履歴や特殊な設備の管理方法など、長年蓄積された情報が適切に引き継がれないと、新しい管理会社が適切な管理を行えない可能性があります。
引き継ぎの不備は管理の継続性を損なうため、住民サービスの低下につながります。リスクを回避するためには管理組合が積極的に引き継ぎプロセスに関与し、両方の管理会社が正確に情報を共有できるよう監督しなければなりません。
引き継ぎ期間を十分に設け、チェックリストを活用するなど慎重な対応を心がけましょう。
住民が不安を抱く
管理会社の変更は住民に不安や戸惑いをもたらす可能性があります。長年慣れ親しんだ管理体制が変わることへの不安や、新しい管理会社への不信感が生じる可能性が高まるためです。
とくに高齢の住民や長期居住者にとっては、急激な変化が精神的な負担になる場合もあります。また、管理会社変更の理由や過程が十分に説明されない場合、住民間で意見の対立が生じる可能性もあるでしょう。
さらに新しい管理会社のサービスや対応に不満を感じる住民が出てくる可能性もあります。
さまざまな不安や不満はマンションのコミュニティに悪影響を及ぼし、管理運営の障害になる恐れがあります。管理会社変更のプロセスでは、住民への丁寧な説明と情報共有を欠かさないよう注意しなければなりません。
マンション管理会社変更の流れ
ここでは、入居者アンケートの導入から旧管理会社から新管理会社への引継ぎまでの、具体的なステップについて詳しく解説します。
STEP1|入居者アンケートで管理会社の変更ニーズを把握する
マンション管理会社の変更でまずやるべきことは、入居者アンケートを実施し、管理会社に変更ニーズを把握することです。
マンション管理会社の変更は、入居者にも影響するため、決議の判断は、入居者の過半数以上や3分の2以上など、マンションの規則・細則で定められた賛成を得られないと変更できません。
アンケートの実施は、手間がかかります。
しかし、入居者が抱える不満や管理会社に対する問題点など、新しい管理会社を選ぶ上で参考になる意見の収集ができるため、アンケートを実施して入居者の変更ニーズを把握しましょう。
なお、アンケート内容は、簡単な設問で実施するのがおすすめです。
【入居者アンケートサンプル】
上記を参考に、確認したい内容についてのアンケートを作成しましょう。
STEP2|新しい管理会社を探し、理事会で協議する
アンケートで管理会社における入居者の変更ニーズを把握できたら、現管理会社の課題や問題点をまとめ、入居者の不安や不満を解消できる新しい管理会社を探して、理事会で協議を進めていきます。
新しい管理会社を探すときのポイントは、次の2つです。
これから紹介する、管理会社を選ぶポイントを見れば、失敗することなく組合員が納得できる新しい管理会社を探し、スムーズに理事会で協議できるようになるので、ぜひ参考にしてください。
管理会社は2~3社の複数に見積もりを取る
管理会社は、2~3社ほど候補を挙げ、基本情報を調べたうえで見積もりを取りましょう。
「この管理会社にしよう」と思っていても、管理会社の決定は、先述の通り総会決議が必要です。
1社だけでは、本当にその管理会社にすべきか判断ができないため、必ず複数社に見積もりを取り、比較検討しましょう。
なお、候補を絞る際は以下に注目するのがおすすめです。
確認すべき管理会社の基本項目 | |
会社情報 | ・売上 ・従業員数 |
管理状況・登録回数 | |
行政処分経験の有無 |
例えば、従業員数に対して、管理物件が多い場合、担当者が対応している物件数が多くなり、あなたの不動産管理にかけられる時間が少なくなる可能性が考えられます。
担当者が請け負っているマンションの規模にもよりますが、ひとりで
基本情報を確認することで、管理会社の実績や対応状況などの情報を収集できるため、候補の管理会社が見つかったら、必ず基本情報を調べるようにしましょう。
2-2.共通のヒアリング項目を用意する
候補の基本情報を確認し、管理状況や経営に問題が無ければ、共通のヒアリング書類を用意し、各社へ見積もり依頼をします。
見積もり条件を指定して確認すると、各社を同じ条件で比較できるからです。
新しい管理会社の決定は、各社へ見積もりを依頼し、プレゼンをしてもらって理事会で比較検討するのが一般的なので、同じヒアリング項目を用意することで、比較しやすくなります。
具体的なヒアリング項目は、現管理会社の対する課題や不満で変わってきますが、例えば、以下のような項目が挙げられます。
管理会社候補共通のヒアリング項目 | |
管理業務内容 | ・現在の管理会社と同じ管理業務を行ってくれるか ・オプションサービスを含む詳細な見積もり書を作成してくれるか |
家賃の振込口座 | ・入居者が新規口座開設を行う必要があるか |
近隣の管理物件 | ・近隣エリアの管理物件数は何件くらいあるか ・近隣エリアで管理する物件の規模はどれくらいか(ハイツ、マンション、戸建など) |
担当者・体制 | ・フロント担当者の経歴 ・フロント担当者が関わっている物件数はどれくらいか ・担当者が休みの場合の代理対応は可能か(バックアップ体制) |
理事会運営 | ・3週間前までに議案作成が可能か ・理事長確認後、2週間前までに理事への配布が可能か |
清掃業務 | ・清掃員の属性(社員かアルバイトか/自社関連業者か下請けかなど) ・現在の管理員をそのまま採用できるか(今、管理員が対応している場合) ・巡回頻度はどれくらいか(例:週2回/毎日など) |
トラブル対応の 体制と方法 | ・隣人トラブルが発生したとき、どのような対応・方法で解決するか (実際に起こった具体的なトラブル事例を挙げてヒアリング) |
入居者満足度調査 | ・入居者に対して対応の満足度調査を行ってくれるか (行う場合は、実施方法や回数、ヒアリング対象者などを要確認) |
長期修繕計画 | ・計画の作成は自社か外注か |
大規模修繕工事 | ・工事仕様書や設計明細などの設計書の作成は可能か ・元請けか否か |
【見積依頼時に必要になりやすい主な書類】
- 現管理会社との管理委託契約書
- 現管理会社との重要事項説明書
- 直近の総会資料
- 直近の各業務完了報告書
- マンションの図面
上記の書類を事前に準備したうえで、各社へヒアリングすることをおすすめします。
当社アセットテクノロジーでも、1戸500円からのわかりやすい価格設定と、効率的にマンション管理を行えるアプリを使った不動産管理サポートを行っております。
新しいマンション管理会社をご検討の場合には、ぜひご用命ください。
STEP3|マンションの全組合員向けに重要事項説明会を開催する
マンションの管理会社を変更するときは、重要事項説明会後、総会決議を経て契約締結という流れが一般的です。
法律でも、説明会を開催することが義務付けられています。※マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第72条
そのため、理事会で協議し、新しい管理会社の候補を選考したら、全組合員向けに重要事項説明会を開催しましょう。
以下のように、管理会社都合や管理組合の希望で変更した契約内容が、入居者や管理組合にとって不利な内容の場合は、重要事項説明会が必要です。
重要事項説明会の開催が必要になるケース
- 管理会社の業務範囲の縮小
- 管理にかかる費用の増額
- 管理会社変更にともない、新管理会社への管理費用の支払いが前倒しになる場合
理事長(管理者)や区分所有者(居住者)に対して重要事項説明会を開催する必要があります。
\重要事項説明会を省略できるケースもある/
「契約条件が変わらない=管理組合に不利な内容ではない」場合は、重要事項説明会を省略できることがあります。
例)
- 管理会社が変わっても契約内容に変更がない
- 管理組合に不利な契約・変更内容は含まれていない
ただし、説明会を省略できるだけで、理事長(管理者)や区分所有者(居住者)に対して重要事項説明書の交付は必須である点には注意しましょう。
4.STEP4|臨時総会を開催して決議する
マンション管理会社の変更は、臨時総会を開催し、多数決で決議されます。
管理会社の変更は、普通決議(過半数の賛成)で問題ありません。
総会が成立する定足数(最低限数)は、各マンションの管理規約に規定されているので、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、臨時総会と重要事項説明会をそれぞれ開催する必要がありますが、住人に何度も集まってもらう負担を軽減するため、臨時総会の当日に重要事項説明会を行うケースが一般的です。
ただし、同日開催でも、臨時総会は管理組合、重要事項説明会は管理会社というように主催者が異なります。
臨時総会と重要事項説明会は別ものであるため、同日開催でも「臨時総会開催の案内」と「重要事項説明会開催の案内」、それぞれの案内を作成して配布する必要がある点には注意しましょう。
書類作成で困ったときは管理会社へ相談しよう
臨時総会に向けて議案書を作成する必要があります。
本来であれば現在契約中のマンション管理会社がサポートしてくれますが、「管理会社変更というセンシティブな内容で、今の管理会社へは頼みづらい」という場合は、新しい管理会社へ相談しましょう。
STEP5|現マンション管理会社を解約する
総会でマンション管理会社の変更が決議されたら、すぐに今契約中のマンション管理会社へ解約を申し入れます。
解約をすると、新しい管理会社との引き継ぎや事務的な処理が生じるため、数か月前に解約の申し入れを行うのが一般的です。
特段の取り決めがない限り、3か月程度の猶予期間を設けて契約中の管理会社へ通告するようにしましょう。
STEP6|新マンション管理会社と契約を締結する
原則、マンション管理会社の変更による引き継ぎ業務は、管理会社同士で行われるため、「STEP5|現マンション管理会社を解約する」と同時並行で、新しいマンション管理会社との契約を締結しましょう。
現在の管理会社へ解約の申し入れをした時点で、解約日は確定します。
新しい管理会社との契約締結を早急に進めなければ、引き継ぎが保留となるだけでなく、引き継ぎ業務にかけられる時間も少なくなるため、すぐに契約をしてください。
管理会社の変更による引き継ぎは、適当に行われるケースが意外と多く、新しい管理会社へ情報共有等がされていないことで、後々トラブルになることが少なくありません。
前の管理会社から新しいマンション管理会社への引き継ぎを、スムーズかつトラブルなく行うためには、丁寧に対応できるだけの十分な時間が必要です。
現在のマンション管理会社に解約を申し入れた時点で、すぐに新しいマンション管理会社と契約を締結しましょう。
STEP7|旧管理会社から新管理会社へ引き継ぎがきちんと行われているか確認する
新旧のマンション管理会社で引き継ぎが始まったら、定期的に報告をしてもらい、引き継ぎされているかを確認しましょう。
引き継ぎ漏れを防ぐポイントは、旧管理会社と新管理会社の両方から引き継ぎ状況を報告してもらうことです。
新旧マンション管理会社へ引き継ぎ状況の確認する際のヒアリング項目例
- マンションの管理に関わる書類の受け渡し状況
- 共用部や各部屋のマスターキー、備品類の引き継ぎ
- 入居者からの問い合わせやクレームの対応、設備不具合の共有
- 保証会社との契約の引き継ぎ状況(引き継ぎできる場合)
- 修繕履歴や点検状況の共有
- 設備や建物の老朽化による検討事項
- 大規模修繕などの計画の共有
上記のような内容を、新旧それぞれのマンション管理会社から報告してもらうことで、適当な引き継ぎを回避できます。
必ず両社から引き継ぎ状況を報告してもらい、あなた自身もきちんと引き継ぎが行われているか確認するようにしましょう。
マンション管理会社変更を失敗させないためのポイント
ここでは、マンション管理会社変更を失敗させないためのポイントについて解説します。
現在の問題点を整理する
管理会社の変更を成功させるポイントは、現状の問題点を明確に整理することです。管理組合の役員や住民から広く意見を集め、現在の管理会社に対する不満や改善希望を具体的にリストアップしましょう。
例えば、清掃の質や頻度、設備点検の適切さ、管理事務所の対応、管理費の妥当性などを入念に検討します。
また、将来的な大規模修繕や設備更新に関する計画立案や助言の適切さも評価対象です。問題点を優先順位付けし、どの部分の改善が重要かを明確にします。
問題点を明確にすれば、新しい管理会社に求める要件も具体化され、適切な選定につなげられるでしょう。
現在の管理会社へ相談する
管理会社の変更を検討する際は、まず現在の管理会社に相談しましょう。問題点を明確に伝え、改善の可能性を探ることで、管理会社変更という大きな労力を避けられる可能性があります。
例えば、管理担当者の対応に不満がある場合、担当者の変更を要請すれば解決できるかもしれません。
また、清掃や設備管理の質に関する具体的な要望を伝えると、サービスの改善が期待できます。管理費の妥当性についても内訳の説明を求めたり、コスト削減の提案を求めたりすれば、適正化できる可能性があるでしょう。
管理費用の削減を目的に変更を行わない
管理会社変更を検討する際は、管理費用の削減だけを目的にしないよう注意しましょう。管理費の適正化は重要な課題ですが、安い管理会社を安易に選ぶのはサービスの質の低下につながる可能性があります。
管理費と提供されるサービスの内容は密接に関連しているため、両者のバランスを慎重に検討しなければなりません。例えば、清掃頻度の減少や設備点検の簡略化によって管理費を下げても、長期的にはマンションの資産価値を損なう恐れがあります。
また、人件費の高騰により、質の高い管理サービスを維持するためには、ある程度の費用が必要な現状も考慮すべきです。管理会社の選定ではコスト面だけでなく、提供されるサービスの質、実績、信頼性などを総合的に評価しましょう。
入居者に管理会社変更の理由を正確に伝える
管理会社を変更する際は、入居者全員に変更の理由を正確に伝えましょう。変更の背景や目的を明確に説明すれば、入居者の理解と協力を得やすくなります。
例えば、現在の管理サービスの具体的な問題点や、新しい管理会社に期待する改善点を詳細に説明しましょう。また、管理費用の変更がある場合は理由と影響についても丁寧に説明する必要があります。
説明会の開催や文書の配布など、複数の手段を用いて情報を伝達すると効果的です。さらに質問や意見を受け付ける機会を設ければ、入居者の不安や疑問を解消できます。
変更後は引き継ぎを行って継続性を保つ
管理会社変更後のスムーズな移行には、適切な引き継ぎが不可欠です。新旧管理会社間で確実な情報共有を行い、管理業務の継続性を保ちましょう。
具体的には、マンションの設備情報、修繕履歴、会計データ、入居者情報など、すべての重要書類を確実に引き継ぐ必要があります。また、進行中のプロジェクトや今後の計画についても詳細な情報を共有しましょう。
引き継ぎ期間中は管理組合の役員が立ち会い、プロセスを監督するのが望ましいでしょう。新旧管理会社の担当者間で直接対話の機会を設け、細かな注意点や暗黙知も共有してください。
まとめ
マンション管理会社の変更は管理の質向上や費用の適正化につながる重要な決断です。
メリットは管理費用の見直し、管理品質の向上、組合員の意識改革などが挙げられます。一方で、適切な管理会社選びの失敗や業務引き継ぎの困難さ、住民の不安といったデメリットがあります。
変更を成功させるためには現状の問題点を明確に整理し、現在の管理会社との相談を試みる姿勢が大切です。また、単なる費用削減ではなく、サービスの質とのバランスを考慮しなければなりません。
アセットテクノロジーでは、マンション管理業務全般のサポートはもちろんのこと、入居者様に24時間対応のサポートを付帯し、満足度アップとともに入居率の増加を実現しています。
マンション管理会社変更を視野に入れている方は、ぜひお気軽にご相談ください。