投資用マンション自分で住むの基本

投資用マンションを自分で住むときには、まず居住用としての側面を理解しておくことが大切です。そこで、最初に投資用マンションと居住用マンションとの違い、そして住むまでの手順について整理しておきましょう。

投資用マンションとは

投資用マンションは、資産形成や家賃収入を得ることを目的に購入される物件のことです。家賃収入によってローン返済や維持費をまかなう一方、長期的には売却利益も期待できる点が特徴です。比較的立地の良いエリアに建築されていることが多く、需要が高ければ安定した投資商品となります。 ただし、不動産市況の変動や空室リスクなど、将来的な不確定要素も多いのが現実です。しっかりと市場調査を行い、長期的な利益を見込める物件を選ぶことが投資成功のポイントになります。投資用マンションは、安定収益とリスク対策の両方を慎重に考慮する必要があります。

居住用切り替えの流れ

投資用マンションを自宅として活用する際は、まず予定している入居時期と融資条件を再確認する必要があります。投資用ローンで購入している場合、金融機関との契約で「投資目的以外への使用は禁止」とされているケースもあるためです。 また、現在入居しているテナントがいれば、退去交渉の手順や法律上の条件を満たす必要があります。入居者との契約書の内容を正しく理解し、違法な立ち退きを防ぐことが大切です。もし居住に切り替えられる余地があっても、費用面や手続き面で予想外の負担がかかることも考慮しましょう。

普通のマンションとの違い

通常の分譲マンションは、購入者自身が住むことを前提に設計されているため、収納スペースや防音性、設備面など居住者の利便性に配慮したつくりが一般的です。投資用マンションの場合、狭いワンルームタイプやコンパクトな間取りが多く、居住性よりも賃貸需要を優先している物件が目立ちます。 そのため、自分で住むとなるとキッチンが簡易的だったり、セキュリティが十分でなかったりと、不便を感じる場面が出てくる可能性があります。事前に現地を内覧するなど、設備のチェックを徹底することは欠かせません。設備の改修費やリフォーム代がかさむ可能性がある点も含め、早い段階で検討しておくと安心です。

投資用マンションに自分で住む際の注意点

投資用マンションを居住用に切り替える場合、物件のローン条件や法的な制約を見落としてしまうと大きなトラブルを招きかねません。ここでは、特に重要となる融資の契約内容や入居者との関係、経費計上のルールについて確認しましょう。

ローンに関する制約

投資用マンションを購入する際に組むローンは、不動産投資専用に設計された商品がほとんどです。この投資用ローンは物件から得られる家賃収入を返済原資とする前提があるため、居住用として利用すると金融機関との契約違反に問われる可能性があります。最悪の場合、一括返済を迫られることがあります。 一方、居住用の住宅ローンは自己使用が前提となり、金利や審査基準が異なります。投資用ローンのまま勝手に居住を開始しないよう、まずは金融機関に相談し、条件変更が可能かどうかを確認しましょう。もし契約違反となれば高額な違約金やローン打ち切りのリスクがあるため、安易な考えは禁物です。 以下に代表的なローンの違いを表にまとめました。
項目 投資用ローン 住宅ローン
金利 高め 低め
審査基準 家賃収入や物件評価 個人の収入や信用力
契約用途 投資目的 居住目的

入居者の権利と退去交渉

投資用マンションには、すでに賃借人が居住している場合があります。このとき、オーナーの都合だけで退去を求めるのは法律的に厳しく、借地借家法では正当事由がなければ契約の解除は難しいとされています。正当事由には再開発や自らの居住などが含まれますが、実際には長期にわたる裁判や係争に発展する例も少なくありません。 さらに、移転先の斡旋や退去費用の負担を巡って交渉が長引くことも考えられます。入居者とのトラブルを回避するためには、専門家や弁護士の意見を早い段階で取り入れることが大切です。物件の購入前に既存の賃貸契約を十分確認し、円滑な手続きを進められるかどうかを把握しておく必要があります。

経費計上の制限

投資用として専有部分を賃貸している場合、減価償却費やローン金利の一部などを経費として計上でき、所得税や住民税の軽減につながります。ですが、物件を自分で居住するとなると、これらの税制上の優遇を受けられなくなる点に注意が必要です。賃貸事業として認められるかどうかは、税務署の判断も影響してくるため、事前に確認しましょう。 また、一度でも居住用に転用すると、その後の賃貸計画において経費計上が難しくなる可能性が高まります。最初から居住用に使う期間を想定し、正しい手続きを踏むことはリスクを最小限に抑える上で欠かせません。予想外の税負担や節税効果の低下が将来のキャッシュフローに打撃を与えることを忘れないようにしましょう。

投資用マンションに自分で住むデメリット

投資用マンションに住むこと自体は可能ですが、注意したいデメリットがあります。ここでは家賃収入が得られなくなる点や、サブリースを利用している場合のリスク、居住設備における不便さを掘り下げていきます。

家賃収入の喪失と維持費

投資用マンションは、入居者からの家賃を収益源とすることで、ローン返済や修繕積立金、管理費などをまかなうビジネスモデルです。もし自分で住むとなると、その家賃収入が完全に途絶えるため、毎月のキャッシュフローは一気に悪化します。ローンを完済していても、維持費は引き続き発生するため、収益性の低下が避けられません。 また、賃貸であれば経費として処理できた費用が居住用では経費計上できず、実質的な負担が増加する可能性があります。キャッシュフロー分析を行い、自己居住によるマイナスを事前に試算することが重要です。予想以上に出費が増えてしまうケースもあり、その後の資産形成計画に大きな影響を及ぼすでしょう。

サブリース契約のリスク

投資用マンションの運用方法としてサブリース契約を利用している場合、管理会社が一定の家賃を保証してくれる反面、契約を途中で打ち切られたり、保証賃料が引き下げられたりするリスクがあります。居住用に切り替えたいと思っても、既にサブリース会社が転貸人となっているため、契約上の手続きが非常に複雑になることも珍しくありません。 さらに、サブリース会社が経営破綻する可能性や、一方的に契約条件を改定されるリスクも考えられます。サブリース契約の内容を細部までチェックし、想定外の負担が生じないようにすることが重要です。特に居住目的へ転用する場合は、サブリース会社との合意形成がスムーズに進むかどうかを事前に確認しておきましょう。

設備や間取りの不便

投資用マンションは、一定の賃貸需要を見込んだうえで設計されるため、利回り重視の構造が多く見られます。そのため、居室内の収納スペースが少なかったり、キッチンのサイズが小さかったり、バス・トイレがユニットタイプであるなど、居住空間としての快適性に難がある場合があります。 もう少し広い間取りやファミリー向けの設備を望んでいても、加筆改修には大掛かりなリフォーム費用がかかるかもしれません。物件の特性を理解した上で、自分のライフスタイルに合うかを再検討することが大切です。もしリフォームを行うのであれば、費用対効果を慎重に見極めたうえで計画を立てる必要があります。

投資用マンションに自分で住む前に検討すべきポイント

投資用マンションに居住するデメリットは多岐にわたりますが、ライフステージの変化や急な転勤など、事情によっては住むことを検討せざるを得ないケースもあります。そこで投資用マンションに自分で住む前に検討すべきポイントを説明します。

将来的な資産価値を考慮する

不動産の価値は立地、築年数、設備など複数の要素によって変動します。投資用マンションは賃貸需要が高いエリアに建てられることが多いものの、自分で居住する期間が長くなると賃貸募集へのスピード感が落ち、想定よりも早く資産価値が下がるリスクもあります。 また、居住中にマンションの設備が劣化したり、室内に改造跡が残ったりすれば、次に借り手を見つける際の魅力が下がる可能性があるでしょう。将来の売却や再度の賃貸を視野に入れ、物件のグレードを維持することが結果的には資産を守ることにつながります。短期間だけ住むつもりであっても、メンテナンスを怠ると、大きく評価額が下落するかもしれません。

収益シミュレーションと生活コストの比較

投資用マンションの最大のメリットは、家賃収入からローンや維持費を支払い、長期的に資産を増やせる点です。居住用に転用すれば、家賃収入はゼロになり、その分を給与収入などで補わなければなりません。日々の生活費や教育費、娯楽費などを加味しながら、総合的なキャッシュフローを考えることが重要となります。 具体的には、物件取得時のローン残高や金利、固定資産税、修繕積立金といった要素を表などにまとめ、数年後のシナリオを複数想定してみるのが効果的です。現実的な生活コストと投資リターンを見極め、長期的な視点で判断することが失敗を防ぐカギとなるでしょう。単なる家賃の節約を目指すあまり、本来の投資メリットを失わないように冷静な検討が必要です。

専門家への相談

投資用マンションを居住用に切り替える際は、法律や税制に関するさまざまな知識が必要となります。特にローンの契約内容や賃貸借契約の解除、税務上の扱いなどは専門性が高く、独力で判断すると思わぬリスクを見落とす可能性があります。こうした局面では、不動産会社や弁護士、税理士といった専門家に相談しましょう。 相談費用がかかることを懸念して、独断で手続きを進めてしまう方もいますが、後々のトラブルに比べれば安い投資といえます。不明点や不安要素をプロに確認し、最適な判断を下すことで、長期的な損失を回避できるでしょう。特に金融機関との交渉や契約書の見直しは専門家の助けを得るのが良策です。

まとめ

投資用マンションを自分で住むことは不可能ではありませんが、ローン条件や入居者の権利、税制面での優遇措置の消滅など、多くのデメリットを引き起こす可能性があります。実際に居住を計画する場合は、収益シミュレーションや専門家への相談を行い、思わぬリスクを最小限に抑えることが大切です。投資物件としての魅力を損なわず生活空間を確保するためにも、あらゆる面での検討と準備を怠らないようにしましょう。最終的には自分の目的とライフプランを総合的に評価し、後悔のない選択をすることをおすすめします。

執筆者

エンマネ編集部

エンマネ編集部

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