投資用マンション売却で知っておきたい主な税金

投資用マンションの売却時には、さまざまな税金が発生することを理解しておく必要があります。ここでは主な税金について概要を押さえ、どのように対処すべきか一緒に確認していきましょう。

登録免許税と手続きのポイント

投資用マンションに設定された抵当権を抹消する際、抹消登記にかかる税金として登録免許税が課されます。通常は不動産1件あたり1,000円で、建物と土地がそれぞれ別々に扱われる点も覚えておきましょう。報酬相場は3万円程度なので、手間を考慮して司法書士に依頼するケースが多いです。 手続きの際には必要書類を前もって用意し、スムーズに進めることが大切です。なお、抵当権抹消の登記申請は、売却時における融資残高の有無や金融機関との手続き状況によっても段取りが変わることがあります。書類不備や期日ギリギリでの手続きはミスを招きやすいので、時間に余裕を持って準備を進めるようにしましょう。

印紙税の課税方法と注意点

投資用マンションの売買契約書には、印紙を貼付して税金を納める必要があります。売買金額によって税額が異なるため、金額帯ごとの印紙税額をあらかじめ確認しておくことが大切です。印紙税は改正が行われる場合があるので、最新の税率については国税庁の情報をチェックしましょう。 なお、印紙税は売買契約書を作成した枚数などによっても変化する場合があります。複数枚の契約書にそれぞれ印紙を貼る必要があるケースもあるため、早めに書類の枚数や契約条件を確認しましょう。

投資用マンション売却で発生する譲渡所得税

投資用マンションを売却したとき、利益が出れば所得税や住民税(復興特別所得税を含む)が課されます。これらは譲渡所得に着目して計算されるため、まずはどのような仕組みかを理解しておきましょう。

譲渡所得の計算式と所有期間による税率

譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引くことで求められます。具体的には「譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)」という計算式となり、利益が確定すると税率がかかってくる仕組みです。売却までの所有期間が5年以下か、5年超かによって大きく税率が変わるため、売却のタイミングは慎重に検討しましょう。 短期譲渡(5年以下)の場合は約39%、長期譲渡(5年超)の場合は約20%と税率は大きく異なります。譲渡時期を見極めることで納税額に大きな差が生じるため、1月1日時点の所有年数をよく確認すると良いでしょう。 たとえば購入価格2,000万円の投資用マンションを2,100万円で売却し、取得費(減価償却後)が1,760万円、譲渡費用が100万円だった場合、譲渡所得は「2,100万円-(1,760万円+100万円)=240万円」となります。所有期間が5年を超えていれば約20%の税率で税額は約48万円になり、5年以下の場合だと約39%となるため大きく変わってくることが分かります。

消費税課税事業者に該当する場合の確認

課税売上が1,000万円を超えるなどの要件を満たす個人事業主や法人が投資用マンションを売却する場合、建物部分の売却に対して消費税が課される場合があります。個人であっても、過去2年の売上や事業内容によっては課税事業者になる可能性があるため、事前に条件をチェックしましょう。万が一課税事業者に該当しているにもかかわらず申告を怠ると、後日追加の納税やペナルティが発生するリスクがあります。 実際の判定は複雑なケースもあるため、税務署や税理士に相談して正確に把握することが望ましいです。消費税を見落とすと売却後に負担が増える可能性があるので、購入時から事業形態や売上をきちんと整理しておくと安心です。

投資用マンション売却時の取得費と減価償却

投資用マンションを購入した際にかかった費用のうち、建物の減価償却分を差し引いた実質的な取得費は、譲渡所得を計算するうえで欠かせないポイントです。ここでは取得費に含まれる項目と減価償却の考え方について整理します。

取得費に含まれる具体的な項目

取得費とは、マンションの購入代金だけでなく、仲介手数料や印紙税、設備費なども含めた総額を指します。これらの費用が正確に計上されることで、売却時の譲渡所得が適切に算出されるため、書類や領収書はしっかりと保管しておきましょう。万一書類が見つからない場合、取得費が概算5%しか認められず税負担が増える可能性があります。 取得費を正しく算出するためには、購入時に支払ったあらゆる経費を確認する必要があります。必要経費を漏らさず合算することで、実質的なコストを的確に把握でき、後の税金計算もスムーズです。 なお、設備費や整地費などの費用が高額になるほど、取得費として計上できる額も増えます。ただし、この計上には明確な領収書や契約書の証明が必要なので、支出の際には領収書を細かく保管する習慣をつけましょう。

減価償却費計算の重要性

建物は時の経過とともに価値が下がるため、購入代金から経年分を減価償却費として差し引く必要があります。たとえば「減価償却費=建物取得価格×0.9×償却率×経過年数」という計算式が一般的に用いられ、構造や用途によって償却率が異なります。減価償却費を正確に計算しないと、譲渡所得が不当に高くなったり低くなったりすることがあります。 木造やRC(鉄筋コンクリート)などの構造によって耐用年数が異なり、その差が減価償却費の金額に直結します。適切な耐用年数と償却率を使って計算を行わないと、後日税務調査で修正を求められる可能性があるため注意が必要です。 また、減価償却費は年ごとに計算していくため、保有期間中の経費計上が適切でないと売却時に計算が合わなくなる場合があります。とくに投資用の場合は賃料収入との兼ね合いもあり、正確な記録が将来のトラブルを回避する鍵になります。

売却時に注意すべきリスク

投資用マンションを売却するときには、税金だけでなくさまざまなリスクに目を向けておく必要があります。内容を把握して回避策を講じることで、想定外の出費やトラブルを防ぎましょう。

減価償却費をめぐる申告トラブル

マンション取得時に建物比率を高める形で申告している場合、毎年の減価償却費が大きくなる一方で、売却時の譲渡所得額が増えてしまう可能性があります。節税目的で極端に建物価格を設定すると、結果的に売却時の税金が高くなるリスクもあるので、バランスを考慮することが大切です。 また、減価償却と売却益の計算が複雑になるほど、税務署も詳細な書類の提出を求める場合があります。最初に設定した建物と土地の金額配分が不明瞭であればあるほど、後になって根拠を立証するのが難しくなるため十分に注意しましょう。

申告漏れや誤申告による追徴リスク

投資用マンションの売却益を申告しない、または誤って過少申告してしまうと、税務署から追徴課税を受ける可能性があります。申告期限内に正しく手続きを行わない場合、延滞税や加算税などのペナルティが課されることもあります。悪質と判断されると重い加算税や刑事罰が科される可能性もあるため、正確な申告が不可欠です。 売却後にはさまざまな書類や契約書が手元に残りますが、こうした資料をもとに譲渡所得の計算を確実に行う必要があります。小さなミスも積み重なれば大きなトラブルに発展しかねないため、専門家へ相談するのも一つの方法です。 さらに、同一年内に複数の不動産を売却した場合、それぞれの譲渡益や損失が複雑に組み合わさることがあります。申告漏れが起きやすい環境となるため、年間でいくつの不動産取引を行ったかしっかり把握し、計算漏れのないようにしてください。

投資用マンション売却時に活用できる節税のヒント

高額になりがちな売却時の税金を、少しでも抑えるために、所有期間や特例制度を上手に活用することで、支払う税金を軽減できる可能性があります。

長期譲渡所得への切り替えとタイミング

もし所有期間が5年に近い場合、売却を数カ月遅らせるだけで短期譲渡から長期譲渡へ切り替わるケースがあります。長期譲渡の税率は約20%と短期譲渡の約39%に比べて大幅に低いため、譲渡時期を戦略的に選ぶことで節税につながるでしょう。ただし、売却時期を先延ばしにできない事情がある場合は、無理にタイミングを合わせると機会損失を招くこともあります。 自分の所有期間が何年目になるのかは、売却年の1月1日を基準に判断します。長期譲渡の恩恵を得るには計画的に保有年数を確認しながら売却活動を進めることが大切です。 一方で、市場価格の変動が大きいエリアでは、保有期間を延ばす間に売却価格が下がるリスクも考慮しなければなりません。長期譲渡を狙うあまりに高値売却のタイミングを逃してしまう場合もあるため、税金と売買相場を総合的に判断することが重要です。

事業用不動産買換え特例の活用

10年超保有している事業用不動産を売却し、一定期間内に別の事業用不動産を買い換える場合、譲渡益の最大80%まで課税を繰り延べできる特例が存在します。この特例を活用することで、一時的に手元資金を確保しながら投資を継続できるメリットがあります。 ただし、買い換え先の物件条件や経営方針によっては適用が難しい場合もあるため、事前に制度内容を精査する必要があります。たとえば買い換え先として、投資用マンションを別の用途(オフィスや店舗)に変えるケースを検討する場合、用途変更が事業用として認められるかどうかの確認が必要となります。また、買い換え特例の適用期限を過ぎてしまうと、繰り延べが適用されなくなる点にも注意しましょう。

税金以外にかかる費用

投資用マンションを売却する際には、税金の他にもさまざまな費用が発生することがあります。総合的なコストを把握することで、最終的な利益を正確に見積もれるようにしておきましょう。

仲介手数料と登記関係費用

不動産会社に売却を依頼する場合、仲介手数料が発生します。売却価格が400万円を超えると「売却価格×3%+6万円」が上限となり、高額取引では手数料も増額となる点に注意しましょう。仲介会社によっては手数料を若干交渉できる場合もあるため、複数社に問い合わせるのも方法の一つです。 登記関係費用としては、抵当権抹消の登録免許税が1物件あたり1,000円かかるほか、司法書士に依頼する場合の報酬も必要です。契約前に諸費用の明細を提示してもらい、予算オーバーにならないよう管理すると安心でしょう。 なお、所有権移転登記の登録免許税については、通常は買主の負担になることが多いものの、契約内容によっては一部費用を売主が持つ場合があります。契約前にしっかり条文を確認し、予想外の支出を防止してください。

その他のコストとローン関係諸費用

売却前に物件のリフォーム費用やハウスクリーニング費用をかけて、魅力を高めるケースも少なくありません。さらに、住宅ローンを利用している場合は繰上返済の手数料が発生することがあります。これらの費用が予想以上に大きくなると、手元に残る利益を圧迫するリスクがあります。 リフォームやクリーニングを行うかどうかは、物件の状態や不動産会社のアドバイスを踏まえて判断すると良いでしょう。事前に費用対効果を検討し、売却価格とのバランスを見ながら投資額を決めることが重要です。 また、ローンが残っている場合は金融機関への一括返済や抵当権抹消手続きを揃って行う必要があります。事前に残債や手数料の正確な金額を把握することで、売却後の受け取り額をしっかりシミュレーションできるでしょう。

投資用マンション売却後の確定申告手続き

投資用マンションを売却した場合、利益が出たときだけでなく損失が出た場合でも、適切な確定申告を行うことで思わぬメリットが得られることがあります。ここでは申告の有無や手続きの概要を確認しましょう。

確定申告が必要となるケースとメリット

基本的に、売却によって譲渡所得が生じた場合は必ず確定申告が必要です。所得税や住民税の納税を行うほか、復興特別所得税も合わせて計算されるため、早めに準備に取り掛かることが望ましいでしょう。損失が出た場合でも、ほかの譲渡益と相殺できることがあるため、申告するメリットがあります。 サラリーマンなど給与所得がある方も、譲渡所得があれば別途確定申告が必要になります。売却損の繰越控除なども状況によっては適用されるため、専門家に相談して活用できる制度を確認しておくと良いでしょう。 もし年間を通じて複数の物件を売却している場合、それぞれの譲渡損益を通算できる可能性もあります。総合的に見ると大きな節税に結びつくことがあるため、損益通算の制度についてもあわせて確認しておきましょう。

申告期限や必要書類のポイント

確定申告は通常、翌年の2月中旬から3月15日までに行う必要があります。申告を忘れると追徴課税や延滞税がかかるだけでなく、場合によっては脱税とみなされるリスクもあるので、スケジュール管理は欠かせません。売買契約書や領収書、減価償却計算に関する書類などを早めに準備しておくことが大切です。 書類の不備があると申告手続きがスムーズに進まないため、適切な記入やコピーを取る習慣をつけることをおすすめします。必要に応じて税務署に相談し、細かい点を確認しながら進めることでトラブルを防ぐことができます。 また、確定申告書の作成時には電子申告(e-Tax)を利用すると手続きが簡単になるうえ、還付金の受け取りも早くなる傾向にあります。紙ベースで申告する場合に比べて書類の郵送や提出手間が省けるメリットがあり、忙しい方にも便利です。

まとめ

投資用マンションの売却には、複数の税金や費用が関わり、計算や手続きも複雑になりがちです。所有期間や減価償却費、買換え特例などを正しく理解すれば、長期譲渡化によって税率を下げる、あるいは特例を活用して負担を抑えることが可能です。的確な取得費の算出や書類の準備を行い、確定申告を怠らずに手続きを進めましょう。疑問があれば専門家に相談し、スムーズな売却を実現してください。

執筆者

エンマネ編集部

エンマネ編集部

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