世界的な観光都市「京都」は 企業・大学も多く新旧の特長を持つ街

2023年年明けの日本経済におきましては電気エネルギー等から一般消費財まで値上げラッシュとなっておりインフレの波が押し寄せています。一方では春闘における一般サラリーマンの賃上げにも期待が高まっています。新型コロナはまだまだ終息には至っていませんが、インバウンドの数も月ごとに増えており日本の各観光地エリアも活況を呈しているようです。今回は国内外においてとりわけ人気の高い京都について述べてみたいと思います。

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歴史のある京都は世界的な知名度・文化庁も移転

京都は794年の「平安京」遷都以来、1000年以上に渡って日本の首都となった都市です。日本の中でも特に訪日外国人に人気のエリアとして有名です。過去にも世界の観光エリアのランキングでトップとなり世界的な人気があります。その理由として、長い歴史の中で趣のある街並みがあり、寺社仏閣なども多く昔ながらの文化遺産が多くある事も挙げられます。

文化庁も京都に移転し2023年3月から業務を開始します。「文化都市・京都」として京都の魅力を高めると共に、世界に向けての情報発信の拠点としても重要性が高まってきています。

https://bunka-iten.kyoto/howtouse/

多くの訪日外国人が訪れる「京都」

京都は日本の観光地の中でも人気が高く、コロナ発生前の2019年には年間約886万人が訪れました。この中でも中国からの訪日客が最も多く約47%を占めました。

2020年以降は国内及び訪日外国人客が大きく減少しましたが、現在は回復傾向にあります。

京都市観光協会の発表したデータによると、2022年11月の京都市の主要ホテルの稼働率は80.2%と3年ぶりに80%を超える高い水準となりました。

また日本人観光客も回復しており、市内の日本人来街者指数は2022年11月には2019年の平均値を100とした指数で146.2となりコロナ禍前の2019年を上回りました。

中国からの来訪者が増加すれば、訪日外国人数がコロナ禍前の水準に近づく事も期待されます。五つ星ホテルなど高級ホテルや外資系ホテルも多く建設されており、インバウンドの回復を見据えた動きも活発となっています。

大阪・東京からもアクセスしやすい立地

京都は全国から多くの方が訪れますが多くの交通ネットワークが発展しており東京からも日帰りができる程です。

「新大阪」駅から「京都」駅まで新幹線でわずか15分です。またJR京都線では新快速で「大阪」駅から3駅約30分、阪急京都線では「阪急大阪梅田」駅から「京都河原町駅」まで43分です。「東京」駅からは「京都」駅まで新幹線で2時間30分弱です。また深夜バスも東京や新宿などから多く運行しています。多くの場所から気軽に訪れることができる場所であると言えます。また京都市内にはバスや地下鉄などの一日乗車券などもあり観光にも役立っています。

京都の夏の風物詩「祇園祭」「大文字焼き」

京都は昔から多くのお祭りがありますが、京都の三大祭りとして葵祭(5月)、祇園祭(7月)、時代祭(10月)などがあります。

京都の祇園祭は毎年7月に1か月に渡って行われます。千年以上の歴史を持ち、大きな山鉾(やまぼこ)巡行が練り歩く17日(前祭)と24日(後祭) や、その前後の宵山(よいやま)には大勢の人々が訪れます。お祭りの前から街中に練習の音などが近づいて季節を感じる事ができます。

また大文字焼きとして有名な「京都五山送り火」はお盆の時期、8月15日前後に行われます。こうした京都の夏の風物詩も有名で京都の魅力の一つとなっています。

また実は「大文字焼き」が京都の不動産の資産価値にも影響を与えています。

さらに嵐山の「トロッコ列車」を始め多くの場所で春には桜を楽しむ事ができます。秋には紅葉、冬は特別拝観や雪景色など京都は四季それぞれに魅力がある街と言えます。

メインストリートだけでない京都と食文化

京都は著名な観光スポットやメインストリートだけでなく、脇道に入った小路などにも古い街並みを見る事ができます。特に祇園などでは入り組んだ小路に趣のある建物が多く保存されており、現在も使用されています。また古くからの民家をカフェなどに使用しているお店も多く「穴場」と呼ばれている名店も数多くあります。

また長い歴史の中で育まれてきた京都独自の食文化も多く、京都野菜を使った「京料理」から「おきまり料理」「おばんざい」など季節の料理を楽しむ事ができる事も魅力です。

また京都は地下水も豊富で「伏見」などでは酒造も盛んに行われており美味しい日本酒を楽しむ事もできます。また全国的な酒造メーカーも多く存在します。

温泉も多い京都・琵琶湖も近い

京都というと歴史のある街並みや寺社などが注目されていますが、実は周辺には温泉も多いエリアです。「嵐山」や「大原」を始め「鞍馬」「久美浜」「天橋立」「福知山」など多くのエリアにも温泉があります。温泉付きのホテルや旅館も多くありますので京都を訪れる方や京都に住んでいる方にも気軽に利用する事ができます。

また滋賀県にある「琵琶湖」は日本最大の湖ですが、実は「京都」駅からJR琵琶湖線・湖西線などでわずか約10分で到着します。「びわ湖テラス」「浮御堂」などの観光スポットやマリンスポーツなども楽しむ事ができます。

京都だけでなくその周辺にも魅力的なエリアが多くあります。

京都市は大企業も多く経済規模が大きい

京都は経済的にも発展しているエリアです。京都市の市民総生産(名目)は全国の政令指定都市の中で7番目の規模を持っています。また京都市内には「京セラ」「任天堂」「宝ホールディングス」「オムロン」「ワコールホールディングス」などを始め著名な大企業も多くあります。こうした事から就業人口も多く、住宅需要も多いエリアと言えます。

<京都市「京都市の経済 2021年版」>

https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000294/294340/05_graph2021.pdf

大学の数も多い京都府

京都市には大学が多い事も特長です。令和3年度学校基本調査によると京都市内には37の大学・大学院・短期大学が存在しています。学生数は約15万人で政令指定都市の中では最も多く、教員数も約1万人になります。こうした学生が多い事は単身者用の住宅需要も多いと考えられます。京都市では大学と京都市の連携を画策しており、「大学のまち京都・学生のまち京都推進計画」などが推進されています。このように京都は多くの企業や大学が連携する事で先端的な技術やテクノロジーが生まれる土壌のある、新旧の特長を併せ持つエリアと言えます。

京都市内の大学(2021年度)

大学・大学院

短期大学

合計

学生数

教員数

29校

8校

37校

148,218人

10,022人

<京都市「令和3年度学校基本調査の集計結果」より作成>

京都の景観条例とは

京都には全国でも厳しい「景観条例」が施行されており、街の景観が保たれています。このためカフェや飲食店なども落ち着いたカラーの外観が多く街並みと合っている建物を見かけます。また「眺望景観保全地域」など高さ制限もあり、これは数多くの史跡などの景観を損ねないだけではなく「視点場」からの「大文字焼き」の景観を妨げない高さ規制であったりと厳しい建築規制となっています。また屋外の広告なども規制されています。

このように建物の規制があり特に京都の中心部では大型・高層のマンション等は建設が難しい状況にあります。

京都の田の字エリアとは

京都には「田の字エリア」と呼ばれるエリアがあります。

このエリアは京都の中心とも言え、超高級マンションが立ち並ぶため、人気が高いですがエリアが限定されていますので希少性も高いエリアとなっています。

特に京都には昔ながらの街並みや老舗も多くありますので新規のマンション用地の供給はそれほど多くない状況です。

このため新規に供給されるマンション人気が高いですが、海外を含めて需要が多いので希少性も高くなっています。

堀川通り

烏丸通り

御池通り

四条通り

五条通り

河原町通り

河原町

四条・烏丸

五条

烏丸御池

二条城前

京都市役所

京都駅

京都の人口動向

京都の人口動態を見ると、世帯数は増加、人口は減少傾向となっています。これは世帯における人員が減少している事を意味しますので、単身世帯が増加している傾向にあると言えます。京都市の単身世帯は約35万世帯あり、全世帯の約48%が単身世帯となっています。京都市では未婚率が高く、男性が39.6%、女性が32.3%で総合で35.7%となっています。今後はさらに単身者向けの住宅の需要が高まる可能性があります。

京都市 世帯数と人口の推移

 

世帯数

人口

2023年1月1日

739,522

1,447,051

2022年1月1日

730,410

1,450,660

2021年1月1日

730,057

1,462,579

<京都市「推計人口」>

京都市の単身世帯数と割合

世帯種類

世帯総数

単身世帯

単身世帯率

世帯数

728,744世帯

350,775世帯

48.1%

<京都市「令和2(2020)年国勢調査」より作成>

京都市の未婚率

 

未婚率

総合

35.7%

男性

39.6%

女性

32.3%

<京都市「令和2(2020)年国勢調査」より作成>

京都の地価動向

京都市の地価動向を国土交通省の発表した基準地価から見てみると、新型コロナ発生前の2020年頃までは商業地では大きな地価の上昇が見られました。特に2017年から2019年にかけては10%を超える高い上昇率となりました。

ちなみに2018年の圏域別地価上昇ランキングでは大阪圏の商業地の上位1~4位、またトップ10の中の8カ所が京都市内の地点となりました。この時の1位は京都市東山区の祇園の地点で地価上昇率はなんと29.2%にもなっています。この要因としてインバウンドの増加や世界的な知名度のある京都の不動産需要の増加などが挙げられます。

しかし新型コロナの影響により2020年は上昇率が縮小、2021年には下落となりましたが、2022年には再び上昇へと転じています。

商業地は商業施設や商店の他にホテルやオフィスビル、さらに投資用の不動産などが建設される事が多いエリアです。今後、インバウンドなど観光需要が回復してくれば、こうしたエリアの地価の回復が進み、再び高い上昇率となる可能性もあります。

また2022年の基準地価では京都市の下京区の商業地が5.3%と高い上昇率となっています。その要因としては田の字エリアでも京都駅に近く、また区内でも再開発が進んでいる事も考えられます。

2022年の大阪圏の商業地の地価上昇率はトップ10の内、京都府が6地点となり、1位は阪急京都線「大宮」駅前の地点となり地価上昇率は12.9%となりました。京都エリアの地価回復が進んでいる事が分かります。

基準地価

京都市の地価変動率の推移

 

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

住宅地

0.4

0.6

1.0

2.0

2.0

0.1

△ 0.1

0.6

商業地

3.8

6.5

10.3

12.5

11.5

1.4

△ 0.4

2.5

(単位:%)<国土交通省「都道府県地価調査」より作成>

基準地価

京都市各区の地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2021

2022

2021

2022

京都市

△ 0.1

0.6

△ 0.4

2.5

北区

△ 0.6

0.4

△ 0.2

3.8

上京区

1.8

2.3

△ 0.6

2.0

左京区

△ 0.5

0.5

0.0

2.4

中京区

0.5

1.6

0.0

1.8

東山区

△ 0.2

1.1

△ 1.8

2.2

下京区

1.4

1.8

0.3

5.3

南区

1.2

2.1

△ 1.1

2.5

右京区

△ 0.5

△ 0.2

0.2

2.6

伏見区

△ 0.6

0.1

△ 2.1

0.8

山科区

△ 0.5

0.1

0.0

0.3

西京区

0.8

1.2

0.6

2.4

(単位:%) <国土交通省「令和4年都道府県地価調査」より作成>

2022年基準地価

圏域別地価上昇率上位地点<大阪圏>

順位

基準地番号

都道府県

基準地の所在地

変動率

1

下京5-8

京都府

京都市下京区大宮通四条下る四条大宮町19番ほか1筆

12.9

2

下京5-4

京都府

京都市下京区堀川通綾小路下る綾堀川町310番1

12.4

3

長岡京5-1

京都府

長岡京市開田4丁目506番4

9.3

4

下京5-12

京都府

京都市下京区五条通堺町西入塩竈町387番1ほか1筆

8.2

5

芦屋5-2

兵庫県

芦屋市業平町13番

8.0%

6

箕面5-3

大阪府

箕面市船場東3丁目1番1

7.3%

7

港5-1

大阪府

大阪市港区弁天4丁目12番27『弁天4-12-8』

5.9%

8

堺堺5-5

大阪府

堺市堺区向陵中町2丁86番『向陵中町2-4-16』

5.8%

9

右京5-1

京都府

京都市右京区西院巽町2番ほか3筆

5.7%

10

下京5-2

京都府

京都市下京区新町通七条下る東塩小路町727番5

5.3

太字は京都府

<国土交通省「令和4年都道府県地価調査」より作成>

京都の再開発

京都では再開発も進んでいます。

規制緩和などで再開発を促進する「都市再生緊急整備地域」には京都駅周辺地域の162haと京都南部油小路沿道地域などが指定されています。

ここでは京都駅周辺地域の再開発について見てみましょう。

都市再生緊急整備地域(京都府)

都市

地域

面積

京都市

京都駅周辺地域

※ H25.7.12 名称変更(旧名:京都駅南地域)

162ha

京都南部油小路通沿道地域

213ha

<内閣府「都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域の一覧」より作成>

<内閣府「都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域の一覧」より引用>

https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/kinkyuseibi_list/index.html

京都駅周辺の再開発が進む

京都の玄関口である「京都」駅周辺の再開発が進んでいます。

JR西日本山陰線の「京都駅」と「丹波口間」駅の間に「梅小路京都西(うめこうじきょうとにし)」駅が2019年に開業しました。

「京都」駅前の「イオンモールKYOTO」が松下電器工場跡地地区に2010年に開業、「京都鉄道博物館」が2016年に開館した他、多くのオフィスビルやホテル、公共施設などが次々と開業しています。

今後や「京都中央郵便局」を2029年に高層複合ビルへ建替える計画があります。駅前のバスターミナルも一部移設される予定です。日本郵政のビルは東京駅前や名古屋駅前などにもあり、いずれも大きなオフィスビルとなっています。但し「京都」駅周辺の景観もありますので、超高層とはならない予定のようです。

「京都」駅東側では2023年に市立芸術大(西京区)と銅駝美術工芸高が移転開校の予定です。また京都駅東南部では「チームラボ」のアートミュージアムが2024年に完成予定です。「京都」駅周辺の最新の文化的な発展も期待できます。

アフターコロナに備えホテルの新規開業も進む

また京都市ではホテルの建設も続いています。「京都」駅近くでは外資系ホテル「デュシタニ京都」が2023年開業予定の他、京都では「シックスセンシズ京都」「バンヤンツリー東山京都」「リージェント京都」「ヒルトン京都」などのブランドホテルが2024年に開業、「カペラ京都」「シャングリ・ラ京都二条城」などが2025年に、帝国ホテル「京都・祇園ホテル計画」が2026年の開業の予定など、今後のインバウンドの回復に備え多くのホテルの開業が予定されています。

京都市ではMICEを推進

また京都市ではMICE(※)を推進しています。新型コロナ発生前の2019年までは年間約300件以上の国際会議が京都市で開催されていました。2020年には減少しましたが今後新型コロナによる規制の緩和が進めばMICE開催が増え、参加者も増加する事が期待されます。

※MICEとは:M(Meeting/ミーティング),I(Incentive tour/インセンティブツアー),C(Convention/コンベンション),E(Event/イベント・Exhibition/エキシビション)の4つの頭文字をとった造語です。

京都市の国際会議開催回数

 

2017

2018

2019

2020

開催件数

306件

348件

383件

28件

参加者数

140,253名

156,076名

190,834名

29,954名

<公益財団法人京都文化交流コンベンションビューロー「2020京都開催の国際会議」より作成>

https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000257/257294/toukei2020.pdf

京都は世界的な観光都市であり今後のインバウンドの復活が期待されます。また企業・大学も多くあり経済的な発展も期待できるエリアです。建築規制も厳しく建物の希少性の高い京都では、今後も不動産の需要が高く資産価値は落ちづらいと考えられます。