2023年基準地価と最新名古屋エリアの地価動向

名古屋エリアは東京・大阪などに並ぶ日本の三大都市圏の一つであり大きな経済圏を持つ都市です。2023年の基準地価(都道府県地価調査)から最新の名古屋エリアの地価動向を検証してみましょう。

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名古屋圏の地価は上昇に

2023年の基準地価では三大都市圏の地価は上昇となり、新型コロナからの影響から脱しつつある事が分かります。

名古屋圏は住宅地で2.2%、商業地で3.4%の上昇となりそれぞれ3年連続の上昇となりました。

日銀の発表した10月金融経済動向では、愛知、岐阜、三重の中部3県の景気判断を「持ち直している」としています。自動車産業などが堅調であり、また個人消費も宿泊需要などの回復が続いています。

こうした名古屋エリアの景気の回復につれて。地価も上昇している傾向が鮮明となってきています。

特に不動産投資において需要の多い商業地における地価上昇がより拡大している事が分かります。

三大都市圏の地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2022

2023

2022

2023

全国

0.1%

0.7%

0.5%

1.5%

東京圏

1.2%

2.6%

2.0%

4.3%

大阪圏

0.4%

1.1%

1.5%

3.6%

名古屋圏

1.6%

2.2%

2.3%

3.4%

三大都市圏

1.0%

2.2%

1.9%

4.0%

<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>

愛知県の地価上昇率は拡大

名古屋圏の地価動向を県別に見ると、愛知県では住宅地で2.4%、商業地で3.7%とそれぞれ地価上昇率が拡大しています。

愛知県は景気の回復とともに地価の上昇傾向が見られます。特に「名古屋」駅周辺や「栄」などの再開発や住宅需要の増加なども地価上昇の要因となっています。

名古屋市中心部では再開発によりオフィスビルが増加していますが、需要も多くオフィス賃料は上昇傾向にあり、こうした事から商業地の地価も上昇傾向にあります。

また長久手市の愛・地球博の跡地の「ジブリパーク」や、将来的には「リニア中央新幹線」の開業などでも名古屋エリアに注目が集まっています。

三重県では住宅地では0.1%の下落となりましたが、前年0.6%の下落から下落率が縮小しています。また商業地は横ばいから0.8%の上昇へとなりました。

広域的にも地価の回復が進んでいる事が分かります。

名古屋圏の県別 地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2022

2023

2022

2023

愛知県

1.8%

2.4%

2.5%

3.7%

三重県

△0.6%

△0.1%

0.0%

0.8%

<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>

愛知県の地域別地価動向、名古屋市などが高い上昇率

愛知県の地価動向を地域別に見ると、<住宅地>では名古屋市が3.9%と前年の3.1%から上昇率が拡大しています。

名古屋市の<商業地>は5.3%と前年の4.4%から引き続き上昇率が高く、土地や不動産の需要が高まってきている事が分かります。

西三河地域でも<住宅地>で2.6%、<商業地>で4.0%の上昇となるなど地価上昇は名古屋市の周辺にも浸透してきています。また<商業地>では西三河エリアが上昇しており安城市が9.5%、刈谷市が7.8%と高い上昇率となりました。安城市は「ららぽーと安城」が2025年に開業予定となり人気が高まっています。安城市、岡崎市ともにトヨタ自動車のある豊田市も近く住宅需要も高まっており、さらに法人賃貸需要も高まる事も期待されます。

東海市の住宅地は8.4%と高い上昇率となり、名古屋市などへの通勤圏の住宅需要も近年高まってきているようです。

愛知県の地域別 地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2022

2023

2022

2023

愛知県  

1.8%

2.4%

2.5%

3.7%

名古屋市

3.1%

3.9%

4.4%

5.3%

尾張地域

1.1%

1.4%

0.7%

1.7%

西三河地域

1.8%

2.6%

2.2%

4.0%

知多地域

0.9%

2.3%

△0.3%

1.5%

尾張地域:一宮市、瀬戸市、春日井市、津島市、犬山市、江南市、小牧市、稲沢市、尾張旭市、岩倉市、豊明市、日進市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、あま市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、扶桑町、大治町、蟹江町、飛島村

西三河地域:岡崎市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、知立市、高浜市、みよし市、幸田町

知多地域:半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町

<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>

名古屋市の地区別の地価動向、都心周辺部に地価上昇が波及

名古屋市の区別の地価動向を見ると、<住宅地>では中区が10.2%と最も高い上昇率となりました。中区は「栄」「伏見」などの名古屋市の中心的商業地域のあるエリアで、再開発が進行しており前年の8.4%から上昇率も拡大しています。名古屋中心の発展に伴い周辺エリアの住宅需要が活性化していると考えられます。

2位は「南区」の6.9%です。JRや名鉄本線などで名古屋駅にもアクセスしやすい立地にあります。3位は「熱田区」の6.8%で、中区に隣接し「イオンモール熱田」などの商業施設もあり交通・生活利便性の高いエリアです。また熱田神社や公園なども多く住環境も優れていると言えます。名古屋市では中心部からその周辺に住宅需要が高まっている事が分かります。

<商業地>では千種区が8.8%とトップとなりました。千種区は中央本線「千種」駅東側で、「今池」「池下」などの駅のあるエリアです。今池や吹上などは繁華街としても栄えています。閑静な住宅街や緑も多いエリアで住宅地の地価上昇率も4位となりました。地下鉄の駅も多く名古屋中心部までアクセスしやすい立地にあります。今後インバウンドや国内消費の増加などからますますの発展が期待できるエリアです。さらに商業地のマンション用地需要も多く今後も地価上昇が予想されます。

2位の熱田区は名古屋中心部にアクセスしやすい立地にあり住宅地・商業地ともに上昇しています。

3位の東区は栄、久屋大通などの東側にある区で、名古屋中心までのアクセスが優れています。2023年の公示地価では東区の「久屋大通」駅に近い「泉1丁目」の地点が10%以上の上昇率となっています。現在も地価上昇が続いている事がうかがえます。

このように商業地でも名古屋の中心地及び周辺の地価が上昇してきています。

名古屋市の区別地価上昇率ランキング

 

住宅地

 

 

商業地

 

順位

上昇率

 

上昇率

1位

中区

10.2%

 

千種区

8.8%

2位

南区

6.9%

 

熱田区

7.3%

3位

熱田区

6.8%

 

東区

7.0%

4位

千草区

6.1%

 

中川区

6.7%

5位

中村区

5.8%

 

中村区

6.2%

6位

東区

4.9%

 

南区

5.9%

7位

緑区

4.0%

 

中区

5.6%

8位

中川区

3.8%

 

瑞穂区

5.4%

9位

瑞穂区

3.8%

 

西区

5.1%

10位

西区

2.9%

 

北区

4.7%

<国土交通省「令和5年都道府県地価調査」>

地点別 地価上昇率ランキング

愛知県の地価上昇率ランキングを見てみると、<住宅地>では「名古屋市中区錦1丁目」の地点が16.4%と高い上昇率でトップとなりました。「伏見」「丸の内」駅などに近い立地で現地はマンションが建設されています。今後はこうした都心部のマンション価格の上昇の可能性もあります。錦エリアは大きな繁華街もあり「栄」や「名古屋」駅にも近く、都心部の発展に伴い住宅需要も増加してきていると考えられます。

2位は「千種区橋本町2丁目」の地点です。名古屋市営地下鉄東山線・名城線「本山」駅に近い立地にあります。東山線では「栄」や「名古屋」駅などに直通で、「名古屋」駅までわずか16分と交通利便性が高いエリアです。

3位は「中村区則武2丁目」の地点で、名古屋駅の西側に位置し名古屋駅までも徒歩圏のエリアです。マンションが建設されているエリアで、名古屋駅へ至近の立地であり住宅地としても需要・人気も高くなっていると考えられます。

4位には東海市の地点がランクインしています。交通利便性が高く名古屋駅周辺に比べて地価が安いので住宅地としての需要も増加してきているようです。

<商業地>では「中区錦2丁目」の地点が14.7%の上昇で1位となりました。住宅地1位と同じ「錦」エリアで地価が大きく上昇しています。「伏見」駅や「丸の内」駅に隣接したエリアでオフィス、マンション共に用地需要が高まっていると考えらえます。

2位は「中村区名駅南2丁目」の地点です。「名古屋」駅や「ささしまライブ」駅にも近くオフィスビルや学校、高層マンションなどが建設されているエリアです。

3位は「池下一丁目」の地点で「池下」駅と「覚王山」駅の昼間に位置します。名古屋市営地下鉄東山線で「今池」「栄」「名古屋」などに直通で交通利便性の優れたエリアです。

愛知県 地価変動率ランキング

<住宅地>

順位

所在地

上昇率

1位

名古屋市中区「錦一丁目3番28号」

〔プラセシオン名古屋伏見〕

16.4%

2位

名古屋市千種区橋本町2丁目 13 番 2 外

15.8%

3位

名古屋市中村区則武2丁目2201番「則武二丁目 22 番 2 号」

〔プレサンス名古屋 STATION〕

15.4%

4位

東海市高横須賀町5丁目56番

14.9%

5位

名古屋市中区丸の内1丁目735番「丸の内一丁目7番39号」

〔Full Casa 丸の内〕

11.4%

「 」は住居表示、( )は区画整理事業の仮換地番号

<令和5年愛知県地価調査>

愛知県 地価変動率ランキング

<商業地>

順位

所在地 「住居表示」

上昇率

1位

名古屋市中区錦2丁目1901 番「錦二丁目19番1号」

〔名古屋鴻池ビルディング〕

14.7%

2位

名古屋市中村区名駅南3丁目308番2「名駅南三丁目3番44号」〔株式会社淺沼組名古屋支店〕

12.6%

3位

名古屋市千草区池下1丁目 413 番「池下一丁目4番15号」

〔泰明ビル〕

12.4%

4位

名古屋市東区泉2丁目2 1 1 0 番外「泉二丁目21番25号」

〔高岳院ビル〕

12.3%

5位

名古屋市中川区八田町1812番

〔セントケア八田〕

11.8%

「 」は住居表示

<令和5年愛知県地価調査>

地点別 価格上位地点ランキング

愛知県でも土地の価格の高い地点はどこでしょうか。

愛知県の<住宅地>で最も地価が高いのは「中区錦1丁目」の地点で1㎡当たり163万円となりました。 錦エリアは住宅地・商業地ともに地価上昇率が高く、名古屋市中心部の発展と共に地価も高額化しています。2位は「丸の内1丁目」で「丸の内」駅に近い立地です。

3位は「東海市橦木町3丁目」の地点となりました。東海市は名古屋市中心部へのアクセスの良さから人気が上昇し、価格も上昇している事が分かります。

住宅地の高価格地点は3位の橦木町を除き、1~5位まで10%を超える高い上昇率となっています。名古屋市都心部などの住宅地の需要が大きく増加していると考えられます。

<商業地>では「中村区名駅3丁目」で「名古屋」駅前の「大名古屋ビルヂング」の地点が1㎡当たり1,920万円と1位になりました。2位は「中村区名駅4丁目」となり、名古屋駅周辺の地価が高い水準である事が分かります。名古屋駅前では多くの再開発により高層ビルが多く建設されており、さらに駅前広場の整備やささしまライブ地区への歩道なども検討・進行しており将来への期待も高まっています。

3位は「中区錦3丁目」の地点です。このエリアは錦三(きんさん)とも言われる中部地方最大とも言われる繁華街が形成されているエリアです。新型コロナが5類に移行され、国内はもとより海外からのインバウンド期待が高まる中で、こうした繁華街の地価も上昇しています。

価格上位ランキング

<住宅地>

順位

所在地 「住居表示」

価格

1位

名古屋中区錦1丁目 324 番 1

「錦一丁目3番 28 号」

〔プラセシオン名古屋伏見〕

1,630,000円/㎡

2位

名古屋中区丸の内1丁目 735 番

「丸の内一丁目 7 番 39 号」

〔Full Casa 丸の内〕

800,000円/㎡

3位

東海市橦木町3丁目 4 番

632,000円/㎡

4位

名古屋中村区則武2丁目 2201 番

「則武二丁目 22 番 2 号」

〔プレサンス名古屋 STATION〕

600,000円/㎡

5位

名古屋千草区橋本町2丁目 13 番 2 外

492,000円/㎡

「 」は住居表示

<令和5年愛知県地価調査>

価格上位ランキング

<商業地>

順位

所在地 「住居表示」

価格

1位

名古屋中村区名駅3丁目 2701 番外

「名駅三丁目 28 番 12 号」

〔大名古屋ビルヂング〕

19,200,000円/㎡

2位

名古屋中村区名駅4丁目 601 番 1 外

「名駅四丁目 6 番 23 号」

〔第三堀内ビル〕

11,800,000円/㎡

3位

名古屋中区錦3丁目 2412 番

「錦三丁目 24 番 20 号」

〔坂種ビル〕

8,400,000円/㎡

4位

名古屋中村区椿町 1 09 番 1 外

「椿町 1 番 16 号」

〔井門名古屋ビル〕

7,040,000円/㎡

5位

名古屋中村区名駅3丁目 2605 番

「名駅三丁目 26 番 6 号」

〔THIRD KHビル〕

6,850,000円/㎡

「 」は住居表示

<令和5年愛知県地価調査>

今後も将来性の高い名古屋エリア

以上見てきたように、名古屋駅前や栄などの中心部の地価が大きく上昇、またその周辺部及び名古屋中心部への交通利便性の高いエリアなどの地価が上昇しています。

さらに東海市、安城市、岡崎市など名古屋市周辺部の地価も上昇してきており、広域的に住宅需要が広がっている事が分かります。

名古屋駅周辺は「都市再生緊急整備地域」にも指定されており、大規模な再開発も進行しています。リニア中央新幹線の開業も控え、名古屋都心部から周辺部にかけての地価上昇は今後も続く可能性があります。