2024年から始まる新NISAとは。メリットと手続き方法を紹介

平成21年の創設以来、度々制度が改訂されてきたNISAにおいて、ついに恒久化(期限の撤廃)を含んだ改正がなされました。改正内容は、「投資なら他の手段にしよう」とこれまでNISAを選択肢から外してきた方にも充分響くものとなっています。 本記事では、2024年から始まる新NISAの概要やメリット、手続き方法などをご紹介します。

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新NISAの基本知識

メリットを解説する前に、まず新NISAの基本的な情報を把握しておきましょう。度重なる改正でどのように変化したのか、従来の制度との違いを解説します。

新NISAの導入背景

新NISAの制度が導入される理由は、貯金から投資への移行を促進することです。周知のように、日本の家計金融資産における現預金の割合は高過ぎる状態です。多くの方が、現在も資産の大半を現金または預金として保有しています。 2022年12月末時点での家計における金融資産の割合は、以下の通りです。

現金・預金

55.2%

保険・年金・定型保証

26.5%

株式等

9.9%

その他

8.4%

出典:日本銀行調査統計局「2022年第3四半期の資金循環」

上記の統計内容は、郵便貯金が10年で2倍になった時代(昭和55年4月、ゆうちょ銀行の定額貯金は年8%の最高水準の利率に達した)の感覚から脱しきれていないともいえます。現在及び今後の経済の動きを考えると、現金・預金が55%を超えているのは、将来的な不安が大きくなります。

現金・預金ではなく成長資産である株や投資信託にも資産を振り分け、家計の金融資産を増やす必要があるとの考えで行われているのが、新NISAをはじめとする施策です。

世界中で急激なスピードで物価が上がっており、現金として資産を保有していると、価値が目減りしていく状況でもあります。このような現金・預金の資産性が危ぶまれている背景から、NISAの制度はリニューアルすることとなりました。

新NISAと従来のNISAの違い

それでは、現行NISAと2024年以降の新NISAでどのような点に違いがあるのでしょうか。大きく変更されたポイントをあげると、次の5つがあげられます。

1.2つの枠が併用可に

まず一番大きな変更点としては、併用の可否に関するルールの変更です。今までのNISAは、下記の3つが設けられていました。

・一般NISA

・つみたてNISA

・ジュニアNISA

従来のルールでは、上記を併用して投資することはできない状況でした。

しかし、新NISAでは一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」という名称に変更となり、2つの枠を併用できるようになります。

ジュニアNISAについては、2024年以降に新規申し込み不可となる予定です。

2.制度の恒久化・非課税保有期間の無期限化

NISAの口座開設期間が恒久化され、非課税保有期間も無期限化が決定しました。

従来のNISA制度における投資可能期間(口座開設期間)は、一般NISAで2023年まで、つみたてNISAで2042年まででした。しかし、2024年から始まる新NISA制度では、期限が撤廃され恒久化=無期限に継続が可能となります。

また、非課税の保有期間についても一般NISAは最長5年、つみたてNISAは最長20年であったものが、新NISAでは無期限となる予定です。

3.年間投資枠の変更

年間投資枠についても変更がされ、今まで一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円が上限となっていました。

しかし、新制度において、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円と大幅に拡充されることになります。さらに前述のように各枠を併用できるため、合計で年間最大360万円の投資が可能となります。

これまでの一般NISAの年間投資枠と比較して、3倍となるほどの大幅な変更です。

4.非課税限度額の拡大

さらに各投資家が資産を増やしやすくなるように、非課税限度額も拡大されています。

これまでつみたてNISAは年間40万円×20年間=800万円、一般NISAは年間120万円×5年間=600万円という非課税の保有限度額でした。今後は成長投資の枠内で1,200 万円、つみたて投資の枠内では600万円と、保有限度額も大幅に引き上げられます。

5.売却の際の限度額

より活発に投資が行われるように、売却の際の限度額も改正がなされました。

これまでは、保有している商品を一度売却すると、非課税保有限度額は再利用できない仕組みでした。新NISAは売却した金額分の枠が再利用できるようになり、年間の投資枠内でまた投資を行うことができます。

新NISAの3つのメリット

これらの制度変更を踏まえて、新NISAの大きなメリットは以下の3つです。

成長投資枠とつみたて投資枠を併用可能

成長投資枠とつみたて投資枠が併用できるようになったことで、運用目的に合わせて投資枠を使い分けられるうえ、総投資額が引き上げられることで運用効率を高められます。

運用効率アップという点では、年間投資上限額が拡大されることもメリットです。単純に投資額を増やすだけでも、大きなゲインを生むことができるようになります。

非課税期間の延長による長期投資へのシフト

従来の一般NISAの口座開設期間は2028年まで、つみたてNISAの口座開設期間は2042年まででした。新NISAでは、前述のように制度が恒久化するため、口座開設期間の制限もなくなります。従来よりも長期的な視点に立った、大掛かりな資産形成も可能となります。

いつ始めても、また何年運用しても利益が非課税になる点で、より長期を見据えた運用が可能になるといえます。

また、期限を気にしていちいちロールオーバーしたり、売って新規の資金にしたりする手間が軽減されることもメリットです。

1,800万円の生涯非課税限度額が新設

生涯非課税限度額は、従来のNISAになかったものです。

成長投資枠で1,200万円、つみたて投資枠で600万円に達しても、売却した分の金額だけ再度買い付け可能となります。保有商品の売却と新規購入を考え、商品の入れ替えをしやすくなるメリットがあります。

一方、新NISAのデメリットとして以下のようなものがあげられます。

・損失が出た際に他の口座との損益通算や損失の繰越控除は不可(従来も同じ)

・現行とは別の制度のため、現行のNISAから新NISAへロールオーバーは不可

・成長投資枠の投資商品に制限や条件が付加された

・ジュニアNISAが廃止になる

旧制度と新NISAそれぞれの特徴を各項目でまとめると、下記の通りです(2023年6月22日時点)。

■現在のNISAと新NISAの違い

 

現在のNISA

新NISA

つみたてNISAと一般NISAの併用

不可

可能

制度が利用できる期間

つみたて:2042年まで

一般:2023年まで

無期限

年間投資枠

つみたて:40万円まで

一般:120万円まで

つみたて投資枠:120万円まで

成長投資枠:240万円まで

非課税期間

つみたて:最長20年間

一般:最長5年間

つみたて投資枠:無期限

成長投資枠:無期限

非課税投資枠の上限金額

つみたて:800万円(40万円×20年間)

一般:600万円(120万円×5年間)

買付残高1,800万円まで

(うち成長投資枠1,200万円まで)

※売却すれば1,800万円を上限に繰り返しNISAでの買付可能

出典:金融庁「NISAとは?」

新NISAを活用するための具体的な手法

制度の変更を踏まえて、新NISAを活用するための具体的な手法をご紹介します。

すでにNISAを始めている方はもちろん、新NISAに改正されてから初めて投資に挑戦する方も、まずはメリットを最大化するためのポイントを押さえておきましょう。

新NISAを利用するための手続き

新しいNISAと従来のNISAは、全く別の制度です。今までのNISA口座を新制度にロールオーバーするような形はとることができません。

したがって、すでに投資を始めていた方も新たに口座を開設して、新制度の申し込みを行う必要があります。

一見不親切なようで、実はメリットも隠れています。

新NISAを最大限に活用するためのヒント

新しいNISAとは別制度として扱うため、従来のNISAは2023年いっぱい申し込むことが可能なのです。よって新たに投資を始める方は、従来のNISAを申し込み、2024年以降に新制度のNISAも申し込むことが可能です。

資金的に余裕がある場合、新旧双方を利用すれば、非課税枠をフル活用できるというメリットに繋がります。

また、新制度では無くなってしまうジュニアNISAも活用できます。あらかじめジュニアNISAに申し込んでおき、終了するタイミングで成人しているのであれば、その他のNISAに買い替えることもできます。

新しいNISAのメリットを活かし、長期の投資計画を見越した運用と、商品の入れ替えの自由度を活かした運用の両方を意識しましょう。

まとめ

2024年から始まる新NISAの概要やメリット、手続き方法などを紹介しました。長期投資が可能になり、投資効率もアップした新制度のNISAは、移行期である今が検討に有利な時期です。

成長投資枠の投資商品に、制限や条件が付加されるなどのデメリットとなる点もあります。しかしメリットに注目すると、新しく挑戦を検討してみる価値はあるのではないでしょうか。