大阪エリア 基準地価に見る最新地価動向

2024年9月に基準地価(都道府県地価調査)が発表されました。 今回のデータから大阪エリアの最新地価動向について検証してみたいと思います。

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全国の地価動向

国土交通省が発表した2024年の基準地価によると、住宅地や商業地などの全用途の地価は全国平均で前年比1.4%の上昇となり3年連続の上昇となりました。全国平均では住宅地で0.9%、商業地では2.4%の上昇となりそれぞれ上昇率が拡大しています。

三大都市圏の地価を見ると、住宅地で3.0%、商業地で6.2%の上昇となり上昇率が拡大しています。

住宅地については低金利により住宅需要が堅調で特に大都市中心部などで地価が上昇しています。また人気のリゾート地などでも別荘やコンドミニアム、移住者用の住居などの需要が増加し高い上昇率となった地点もあります。

商業地については、特に都市部においては店舗・ホテルなどの需要が堅調であり、オフィス空室率の低下や賃料上昇などによる収益性の向上から地価上昇が継続しています。

またインバウンドの増加したエリアや再開発の進行しているエリアなどでも地価上昇が見られます。

基準地価

圏域別・用途別対前年平均変動率

 

住宅地

商業地

 

2023

2024

2023

2024

全国

0.7%

0.9%

1.5%

2.4%

東京圏

2.6%

3.6%

4.3%

7.0%

大阪圏

1.1%

1.7%

3.6%

6.0%

名古屋圏

2.2%

2.5%

3.4%

3.8%

三大都市圏

2.2%

3.0%

4.0%

6.2%

地方圏

0.1%

0.1%

0.5%

0.9%

<国土交通省「令和6年都道府県地価調査」>

表には入っていませんが、東北の物流の拠点である仙台などでは物流倉庫の需要拡大により準工業地域の地価も上昇しました。

大阪府の地価動向

大阪府の地価動向を見ると、住宅地では2.0%、商業地では7.3%の上昇となりました。それぞれ地価上昇率が拡大しています。

大阪府の中では大阪市の上昇率が高く、住宅地では2023年2.5%から2024年は4.5%に、商業地では同5.5%から10.6%と大きく拡大しています。

大阪市中心6区の地価上昇率はさらに高く、住宅地で6.6%、商業地で13.7%と平均で10%を超える上昇となりました。大阪市以外のエリアでも地価上昇率が拡大しています。

地価上昇は大阪の都心部を中心として大阪府全体に波及しているようです。

<基準地価>大阪エリア 地価変動率の推移

 

住宅地

商業地

 

2023

2024

2023

2024

大阪府

1.3%

2.0%

4.3%

7.3%

大阪市

2.5%

4.5%

5.5%

10.6%

中心6区

3.7%

6.6%

7.0%

13.7%

北大阪 

1.3%

2.4%

3.9%

5.5%

東大阪 

1.5%

1.9%

2.2%

2.5%

南大阪 

0.7%

0.7%

2.6%

2.8%

<国土交通省「令和6年都道府県地価調査」>

大阪市の中心6区:北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区

北大阪:豊中市、池田市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市、摂津市、島本町、豊能町、能勢町

東大阪:守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、門真市、東大阪市、四條畷市、交野市

南大阪:大阪市、北大阪、東大阪を除くその他の大阪府

大阪市の地価上昇と進む再開発・万博

ではここで大阪市の地価上昇の要因について述べてみたいと思います。

大阪市の地価上昇の要因としては、まず「万博」の開催や大阪都心部で進む「再開発」などが挙げられます。

大阪・関西万博

大阪では「大阪・関西万博」が2025年4月13日から10月13日まで開催されます。また会場となる「夢洲」では「統合型リゾート(IR)」の開業も予定されており大阪メトロ中央線が延伸され「夢洲」駅が2025年1月19日に開業の予定です。「夢洲」まではこの路線が唯一の鉄道ルートとなります。さらに大阪府と大阪市は「夢洲」へのアクセスについて新路線の整備を検討すると発表しています。JR桜島線や京阪中之島線の延伸なども検討されるようです。

今後はキタ・ミナミに次いで湾岸エリアが大きく発展する可能性もあります。

再開発「うめきた」

大阪駅北側の「うめきた」では、「グラングリーン大阪」の北街区のビルと公園エリアが2024年9月に先行開業しました。「うめきた公園」は東京ドーム1個分にも相当する広大な公園です。大阪都心部の真ん前にこのような巨大な公園が完成した事で大阪のイメージも大きく変わるのではないでしょうか。また11月に開業するオフィスビル「パークタワー」には大手企業が続々と入居を決めています。大阪では梅田周辺などではオフィス賃料も上昇しています。再開発により多くの企業が集積し、次の需要にもつながっています。

さらに南街区の複合ビルが2025年3月21日に開業すると発表されました。フードマーケットや飲食店、ファッション関係の店など55店舗が入り、「ホテル阪急グランレスパイア大阪」などのホテルや、MICE(国際会議や展示場)施設も開業し万博までに開業となりインバウンド需要の増加も期待されます。

再開発「梅田駅周辺」

2024年7月には「大阪」駅西側に駅ビル「イノゲート大阪」や複合ビル「JPタワー大阪」なども開業しています。「大丸梅田店」では2025年秋から大幅なリニューアルを行う事が発表されています。

梅田周辺の再開発に伴い、中之島など都心部周辺ではタワーマンションの建設なども進み地価上昇につながっています。

再開発「ミナミ」

大阪の「ミナミ」でも大規模な再開発が進行しています。「南海難波」駅前には広場が開業しイメージも新しくなっています。「なにわ筋線」の新駅「南海新難波」の開業も予定され、周辺では大型のビルの建設も予定されています。

また道頓堀の「くいだおれ太郎」で有名な「中座くいだおれビル」についても全面改装し2025年の開業が予定されています。

ミナミはインバウンドも多く訪れるエリアです。インバウンドの増加は地価上昇にもつながりますので、コロナ禍前の2019年にはミナミの「中央区日本橋1丁目」の地点は地価が前年比44.4%も上昇しました。道頓堀や宗右衛門町などもかつて大きく地価が上昇した経緯があります。

地価とインバウンドの関係は

次に大阪のインバウンドの動向について見てみましょう。

日本政策投資銀行(DBJ)と日本交通公社(JTBF)が2024年10月に発表した「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査2024年度版」によると訪日旅行者の7割が大阪万博への訪問を希望しており、今後来年にかけて大阪のインバウンドも大きく増加する可能性があります。

大阪の訪日外国人観光客は増加傾向にあり、大阪観光局の発表によると2024年に大阪を訪れる外国人客は1400万人となり、コロナ禍前の2019年を上回り5年ぶりに過去最高を更新する見込みです。円安による訪日需要の増加や、中国からの旅行客の増加などが要因であると見られています。関西国際空港の国際線の利用者も増加しており大阪中心部や湾岸エリアなどへのアクセス路線も重要となってきています。

大阪ではインバウンドの増加により百貨店の売上も全国でトップになっています。商業施設・店舗などの需要も増え、またサービス業の就業人口の増加なども地価上昇の要因となっています。

特に大阪ではホテルなど宿泊施設の需要も高まり宿泊費も上昇しています。筆者はよく大阪に出張に行きますが最近は予約を取るのも大変で、さらに宿泊費は昨年と比べて平日で1.5倍、週末ともなると2倍の感覚です。こうしたホテル宿泊費の上昇は周辺の地価の上昇にもつながります。

鉄道の発展も期待される大阪

夢洲までのアクセスに加えて、大阪では「なにわ筋線」の開業も予定されています。

うめきたの「大阪」駅から「中之島」「難波」「南海新難波」「新今宮」駅などを結ぶ路線です。大阪のキタ・ミナミなどを繋ぐ新たな重要路線となります。

さらに2037年に「リニア中央新幹線」の「新大阪」駅への延伸も予定され、「新大阪」駅周辺でも2030年代に甲子園3個分となる敷地の再開発が検討されています。

大阪の交通網は将来に向かって大阪市内のみならず広域的にますます利便性が高まると共に地価の上昇も予想されます。

大阪市区部の地価状況

次に大阪市の地価動向を区別に見てみましょう。

大阪市の住宅地では福島区が7.6%の上昇で上昇率一位となりました。

福島区は梅田の西側に位置する区で、「うめきた」にも隣接しています。「福島」「新福島」「野田」駅など都心へ近い駅も多くあり、梅田周辺の再開発が進む中で住宅地としての需要も高まっています。

2位は中央区で7.4%の上昇です。中央区は梅田の南側に当たるエリアで、「北浜」「天満橋」「心斎橋」「なんば」など多くのビジネス・商業エリアのある区です。就業が多く住宅需要も多いエリアです。

3位の天王寺区はなんばの東側、ターミナル駅である天王寺駅があり、通天閣や<ミナミ>にも近いエリアです。住宅地としての需要も多く地価上昇につながっています。

<基準地価>大阪市「住宅地」地価上昇率ランキング

順位

上昇率

1

福島区

7.6%

2

中央区

7.4%

3

天王寺区

6.7%

4

城東区

6.7%

5

淀川区

6.5%

6

鶴見区

6.5%

7

東成区

6.4%

8

都島区

6.2%

9

北区

6.0%

10

東淀川区

5.9%

<国土交通省「令和6年都道府県地価調査」>

大阪市の商業地では全区中6区が10%以上の高い上昇率となりました。

上昇率一位は西区で18.3%となりました。西区は阪神なんば線「九条」駅があるエリアです。心斎橋などのある中央区に西側に位置します。福島区、浪速区などは北区、中央区などと比較して割安感がある事から需要が増加し地価上昇となっています。

「なんば」「日本橋」などのある浪速区では14.1%の上昇となりました。なんば地区は、「外国人を含む観光客が回復して賑わいを取り戻し、投資環境が整っている」と国土交通省では分析しています。

<基準地価>大阪市「商業地」地価上昇率ランキング

順位

上昇率

1

西区

18.3%

2

福島区

15.0%

3

浪速区

14.1%

4

中央区

13.4%

5

北区

12.6%

6

大阪市

10.6%

7

淀川区

9.2%

8

阿倍野区

8.7%

9

東成区

8.3%

10

鶴見区

8.2%

<国土交通省「令和6年都道府県地価調査」>

大阪府価格上位ランキング

大阪府の住宅地で最も価格が高かったのは天王寺区「真法院町10-6」の地点となりました。「桃谷」駅や「四天王寺前夕陽ヶ丘」などを最寄りとする住宅地です。天王寺やミナミなどにも行きやすい交通利便性の高いエリアで、昔から高級住宅地となっています。

2位、3位も天王寺区となっており、天王寺区の住宅地としての人気が高まっている事が分かります。

<基準地価>大阪府 2024年基準地価 「住宅地」高価格順位

順位

所在地「住居表示」

地価

1

天王寺区

「真法院町10-6」

725,000円/㎡

2

天王寺区

「堀越町1-8」

587,000円/㎡

3

天王寺区

「清水谷町4-6」

565,000円/㎡

4

中央区

「玉造1-10-1」

560,000円/㎡

5

北区

「長柄中1-6-5」

542,000円/㎡

<大阪府「令和6年地価調査」>

商業地では北区「大深町4-20」(グランフロント大阪 南館)の地点が最も高く、ここが大阪市で最も地価の高い地点となります。

2位はミナミの「宗右衛門町7-2」の地点です。過去に大きく地価が上昇しており、今後インバウンドの増加により更なる地価上昇の可能性もあります。

3位は梅田の「大阪第一生命ビルディング」の地点、4位は南船場の「心斎橋フロントビル」などキタ・ミナミの商業・オフィス街の地価が高くなっています。

<基準地価>大阪府 2024年基準地価 「商業地」高価格順位

順位

所在地「住居表示」

地価

1

北区

 「大深町4-20」

(グランフロント大阪 南館)

23,900,000円/㎡

2

中央区

「宗右衛門町7-2」

(デカ戎橋ビル)

19,500,000円/㎡

3

北区

 「梅田1-8-17」

(大阪第一生命ビルディング)

18,700,000円/㎡

4

中央区

「南船場3-5-11」

(心斎橋フロントビル)

8,970,000円/㎡

5

中央区

「南久宝寺町3-6-6」

(御堂筋センタービル)

7,750,000円/㎡

<大阪府「令和6年地価調査」>

大阪府の地価上昇率のランキング

大阪市の住宅地では地価上昇率が最も高かった地点は福島区の「鷺洲5-6-56」で8.1%の上昇となりました。「うめきた2期」などから少し離れた地点ですが徒歩アクセスも可能なエリアで、再開発の影響で地価が上昇しています。

2位もキタとなる北区「長柄中1-6-5」で梅田の東側の「天神橋筋六丁目」が最寄りのエリアです。こちらも「梅田」へアクセスしやすいエリアとなっています。

3位は中央区の「玉造1-10-1」で大阪城の北側に位置します。

都心に近接したエリアの住宅需要が強く地価が上昇しています。

<基準地価>大阪府 2024年基準地価「住宅地」上昇率順位

順位

所在地「住居表示」

上昇率

1

福島区

「鷺洲5-6-56」

8.1%

2

北区

「長柄中1-6-5」

8.0%

3

中央区

「玉造1-10-1」

7.7%

4

天王寺区

「真法院町10-6」

7.4%

5

淀川区

「木川東3-3-21」

7.3%

<大阪府「令和6年地価調査」>

商業地では福島区の「福島6-20-2」が21.6%と大きく上昇しました。「うめきた」の西側、うめきた公園にも程近いエリアです。

2位は中央区の「難波3-4-16」、3位は浪速区「日本橋3-6-2」などがいずれも20%を超える高い上昇率となっています。

4位と5位は西区の地点となっており、4位の「西本町2-1-34」は「阿波座」と「本町」の間に位置し、「北堀江2-11-14」は「西長堀」と「四ツ橋」「心斎橋」などの間に位置します。いずれも中心商業地の周辺に位置し、地価も20%前後と大きく上昇しています。

<基準地価>大阪府 2024年基準地価「商業地」上昇率順位

順位

所在地「住居表示」

上昇率

1

福島区

「福島6-20-2」

21.6

2

中央区

「難波3-4-16」

21.1

3

浪速区

「日本橋3-6-2」

20.5

4

西区

「西本町2-1-34」

20.0

5

西区

「北堀江2-11-14」

19.7

<大阪府「令和6年地価調査」>

今後の地価動向は

大阪の地価はコロナ禍前までは増加するインバウンドを要因として大きく地価が上昇してきました。しかし新型コロナによる調整局面を迎えてその反動がありましたが、再び上昇局面を迎えています。

今後は大阪万博やそれに伴う「うめきた2期」の開業などの再開発を始め大阪各地で再開発が進行しています。今後もますますインバウンドの増加が予想されており、「なにわ筋線」「リニア中央新幹線」など重要幹線の開業も予定されるなど、大阪エリアでは経済・人流活性化の条件がそろっており、今後もオフィス・ホテル・商業施設・マンションなど土地の需要も増加する事が予想されます。

コロナ禍前までの地価水準への回復も予想されますが、大阪経済の発展によってはそれ以上の地価の上昇の可能性もあります。マンションなども用地不足から希少性も高くなってきており、今後ますます資産価値が高まる事も予想されます。

また就業人口の増加から住宅需要の大幅な増加も見込まれますので、賃貸需要に関しても今後は安定的に推移するものと考えられます。