
目次
大阪と東京の不動産投資市場の共通点とは
(1)まず東京のマンション価格においては20年間の間に右肩上がりで推移してきており、2024年に東京23区のファミリーマンション平均価格が1億を超えるなど急上昇して今なお高止まり傾向となっています。
一方タワーマンションにおいては億ションというレベルを超え、10億円以上の超億ションの供給も一定数あるなどニューヨークやシンガポールなどの金融都市並みの価格水準のマンションも散見されます。
ちなみに筆者も驚きましたが、東京港区のタワーマンションの中に混在する30㎡ちょっとのやや広めのワンルームマンションはなんと3億円を超える水準となっています。
次に供給エリアにつきましてはタワーマンションなどの高級マンションは都心エリアにも多く供給されている一方、下町エリアや千葉・埼玉・神奈川など広域に供給されています。但し山手線の内側のタワーマンションは比較的供給が少なく、さらに人気が高まっている状態です。
投資用の30㎡以下のワンルームマンションにおいては都心エリアの供給戸数が劇的に減少し、東京の下町エリアや神奈川県エリアに供給エリアがシフトしています。その分都心の中古のワンルームマンションは引く手あまたであり、とても高い人気が続いています。
このようにワンルームマンションは供給エリアの拡散、タワーマンションは都心エリアに供給が続いています。
(2)大阪エリアのマンション価格について述べてみたと思います。筆者は2000年前半から大阪におけるワンルームマンション・ファミリーマンション・タワーマンションなどにおいて多くの講演や物件レポートを制作してきました。
2010年前後においては大阪のマンション市場では坪単価200万円の壁というものがありました。つまり坪単価が200万円を超えるとエンドユーザーから価格が高すぎるという認識を持たれ販売が思うように進捗しない状況が続いた訳です。
当時は大京のビオール大阪、N4タワー、ひびきの街ザ・サンクスタワーなどとても今から思えば値ごろ感があり低廉な価格の時代でもあった訳です。
ところがアベノミクス以降、野村不動産の北浜、住商建物の淀屋橋、京阪電鉄不動産の中津などの新価格タワーマンションが続々と発売され、現在では福島駅近くのタワーマンションにおいては、坪単価700万円を超える状況で、梅田北ヤード内のタワーでは坪1,000万円級の物件も存在します。
一方大阪市内のワンルームマンションは比較的穏やかな価格上昇となっており、新築のワンルームマンションでも2,000万円台で手が届く水準となっています。しかしながら今後は家賃収入の上昇に伴い、ワンルームマンションの価格も徐々に切りあがってくると予想します。
次に大阪エリアにおける供給動向ですが、高級タワーマンションなどは今も都心6区にも多く供給されていますが、新築のワンルームマンションは都心エリアの供給がかなり減少しています。それだけに大阪都心エリアにおける中古ワンルームマンションの存在価値が非常に高まっていると言えます。
このように東京と大阪における不動産投資市場はタイムラグはあるもののほぼ同じベクトルの方向に動いていると考えられます。
筆者が注目する大阪エリアの再開発
まずは何と言っても梅田の北ヤードでは「グラングリーン大阪」が順次開業しており、2027年春ごろの全体開業に向けさらに期待が高まっています。自然環境に配慮した緑地帯の設置や周辺の利便性の向上、関西を代表するファイブスターホテルの新設など急速に街のポテンシャルが上昇しており、大阪市内においてはまさに異次元の世界と進化していくと考えらえます。
さらに阪急阪神グループが「梅田ビジョン」を発表し、芝田1丁目再開発計画では阪急ターミナルビルと大阪新阪急ホテルの建て替え、阪急三番街の全面改修など阪急梅田駅周辺の再開発が進められています。以前筆者が大阪へ出張に行った際、梅田の阪急ホテルにたまに宿泊していましたが、当時はシングルでも1泊1万5000円程度で泊まる事ができましたが、現在ではとても手が届かない宿泊料金となっています。
次に注目されるのが中之島エリア、このエリアは元々日本銀行や大阪市中央公会堂などの公的施設が充実した元々ポテンシャルの高いエリアですが、さらに大規模区画整理事業により新たな都市機能を有する魅力ある街に進化していきます。
次にミナミですが、ミナミと言えばなにわ金融道、ミナミの帝王(竹内力さん主演)でも有名な街です。ミナミの帝王は30年以上前の古いテレビドラマですが、現在でも当時の街の雰囲気が色濃く残りつつ再開発も進んでいるというとても魅力的な街となっています。日本人のみならず世界中から街のファンが押し寄せており、とても活気づいています。
ミナミでも心斎橋や難波などで再開発が進んでいます。特にミナミは地価も新型コロナ前の水準となってきており、今後のインバウンドの動向などでは一層の発展も予想されます。
また大阪城周辺エリアも再開発が進み、官庁街が近く大阪「ヒガシ」としての存在感を強めています。現在湾岸エリアでは大阪・関西万博が開催中ですが、統合型リゾートIRが国際都市大阪としての大阪の存在価値をさらに高めてくれます。こうした影響もあり2025年の公示地価では大阪市の地価は商業地で平均で11.6%の上昇、大阪都心6区では13.6%もの上昇となりました。
オフィス賃料上昇がマンション賃料に与える影響とは
不動産投資においては収益力、貸す力がとても重要です。
例えば価格が5,000万円のマンションで月額賃料が20万円取れれば、表面利回りは4.8%となります。しかし家賃が20%下がって16万円になれば3.84%に下がる訳です。
家賃が下がるという事は不動産の稼ぐ力が低下し、資産価値も低下しやすくなる訳です。
住宅の賃料は住宅の資産価値そのもので動く面ももちろんありますが、むしろ周辺の不動産環境の影響をより受ける事があります。例えば大阪都心エリアのオフィス賃料はこの半年間で2%以上の上昇となっており、これは世界の主要都市の中でもトップレベルの水準となっており、シンガポール・ロンドン・NY・東京をしのぐ水準となっています。
オフィス賃料変動率
順位 | 都市名 | 変動率 |
1 | 大阪 | 2.2% |
2 | ムンバイ | 1.6% |
3 | 東京 | 1.0% |
4 | シドニー | 0.9% |
5 | ニューヨーク | 0.9% |
(変動率は全て 2024 年 10 月から 2025 年 4 月までの数値)
<一般財団法人 日本不動産研究所「第24回「国際不動産価格賃料指数」(2025年4月現在)」>
その背景には②で述べたように特に梅田の再開発により多くの企業が本社機能を移転し街がどんどん活性化しているからです。
大阪の事例とは異なりますが、筆者のオフィスのある東京都中野区中野駅周辺の再開発においてはキリンビールや栗田工業といった大企業が移転してきて、多くの就業人口が街の経済活動に大きな貢献をした訳です。
大企業に勤める方は収入も高く会社からの家賃補助など福利厚生も手厚く、多少賃料が上がっても影響は軽微な訳です。今後のオフィス賃料の動向は空室率など需給面からの算定だけではなく今後は欧米並みの物価指数に連動した賃料の動きが日本にも示される方向となる可能性が高まってきています。つまり物価上昇など景気回復と共に比較的短期のタームで賃料に影響を与える局面も予想されます。賃料水準が切りあがってくればマンションの価値はさらに高まる訳です。
大阪における万博と景気動向
大阪圏の景気は上昇傾向にあり、日銀大阪支店の景気判断では「緩やかに回復してきている」と景気の回復が10ヵ月連続となりました。個人消費や設備投資などの堅調な内需が関西経済全体の緩やかな回復を支えていると判断しているようです。
また「大阪・関西万博」の影響から宿泊や飲食などの来客の増加が景気にプラスの影響を及ぼしていると見ています。
関西国際空港では5月の利用者が287万人で前年同月より15%増加しました。このうち国際線の旅客数は19%の増加、外国人旅客は20%の増加と海外からの観光客が増加しました。
大阪観光局の発表によると大阪を訪れた訪日外国人は2024年には約1463万9千人と前年比47%もの大幅な増加となっています。25年の訪日外国人の目標を1600万人としており、こうした観光客が大阪のキタ・ミナミを始め各地に訪れる事で消費が増加し、大阪の経済は新型コロナ発生前のように大きく活性化する事も予想されます。
また大阪・京都のように外国人観光客の多い奈良県ではラグジュアリーホテルの開業が増えており、こうした施設の開業により近畿圏全体の発展にも繋がります。
大阪においては万博終了後も長期に渡って再開発の恩恵を享受できますので、これから不動産投資を始めようとする方々もまだまだチャンスがあると考えられます。
大阪府を訪れた訪日外国人数
| 2023年 | 2024年 | 2025年(目標) |
訪日外国人数 | 994万人 | 1463万9000人 | 1600万人 |
<大阪観光局>
大阪の転入超過人口と就業者数、地価との関係
住宅需要を検証するにおいて重要な指標に「転入超過人口」があります。これは他府県から流入する人口が流出する人口よりも多い事で、人口増加の要因ともなっています。
大阪府は転入超過となっており、転入超過数は全国の都道府県の中で第4位となっており、首都圏以外ではトップとなっています。
さらに大都市別に見ると大阪市も転入超過となっています。全国の21大都市(東京都特別区部及び20政令指定都市)の中で転入超過となっているのは12都市です。転入超過数を見ると大阪市は東京都特別区部に次いで2位となっています。
都市別 転入超過数ランキング
順位 | 都市 | 転入超過数 |
1 | 東京都特別区部 | 58,804人 |
2 | 大阪市 | 16,090人 |
3 | 札幌市 | 10,830人 |
4 | 横浜市 | 10,805人 |
5 | 福岡市 | 8,507人 |
<総務省「住民基本台帳人口移動報告 2024年(令和6年)結果」>
大阪市は転入超過が続いており10年連続の転入超過となっています。特に20歳代の転入超過数が増加しており、就業を機に大阪へ来る人が増えているようです。
大阪市の転入超過人口の推移
| 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
転入超過人口 | 13,762人 | 16,802人 | 7,893人 | 9,103人 | 12,966人 | 16,090人 |
<総務省「住民基本台帳人口移動報告 2024年(令和6年)結果」>
大阪市では転入超過人口が多いですが、こうした人口の流入と地価には密接な関係があります。
転入超過人口の多い都市の2025年公示地価の地価上昇率を見ていると、いずれの都市も地価上昇率が高い事が分かります。
転入超過人口の多い都市の地価上昇率
都市 | 地価上昇率 |
東京都特別区部 | 11.8% |
大阪市 | 11.6% |
札幌市 | 6.0% |
横浜市 | 7.2% |
福岡市 | 11.3% |
<国土交通省「令和7年地価公示」>
大阪の流入人口が多い事もあり大阪府の就業人口は増加傾向にあります。大阪府の就業者数は2024年には467万1千人となり前年比1.5%の増加です。男性1.2%の増加に対して女性は2.0%の増加で、女性の就業者数の増加が男性よりも多くなっています。こうした要因として女性の就業しやすい職種、企業が大阪に集まっている事、また大阪市では「OSAKA女性活躍推進事業」など女性の就業支援も行っているなど女性が就業しやすい環境がある事も挙げられます。
東京でも女性就業者の大幅な増加が見られています。今後は大阪でも女性の住宅需要が増加する可能性があります。
大阪府の就業者数(単位:千人)
| 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2024年の対前年比 |
就業者数 | 462万5千人 | 465万2千人 | 467万1千人 | 1.5%増加 |
男性 | 253万0千人 | 251万6千人 | 252万1千人 | 1.2%増加 |
女性 | 209万5千人 | 213万6千人 | 215万0千人 | 2.0%増加 |
<大阪府「大阪の就業状況 令和6年(2024年)年平均」>
大阪における最新地価動向
7月1日に大阪国税局より路線価が発表となりました。相続税や贈与税の基準となる1月1日現在の価格です大阪府の路線価は前年より4.4%の上昇となりました。現在の算出方法となった2010年以降で最高の伸び率となりました。
大阪府内の31税務署別の最高路線価は30地点で上昇となりました。このうち11地点で10以上の上昇となり、5地点では15%以上の高い上昇率となりました。
路線価が最も高かったのは「阪急うめだ本店前」で42年連続のトップで1㎡あたり2,088万円となりました。東京で言えば銀座にあたる超一等地と言えます。
上昇率が最も高かったのは新大阪駅近くの「淀川区宮原3丁目」の地点で18.5%の上昇となりました。
浪速区難波中2丁目で17.9%、西区江戸堀1丁目で17.6%の上昇となるなどキタ・ミナミを始め多くのエリアで高い上昇率となりました。
大阪府の税務署管内別 路線価上昇率ランキング
| 税務署 | 所在地 | 変動率 |
1 | 東淀川 | 淀川区宮原3丁目 | 18.5% |
2 | 浪速 | 浪速区難波中2丁目 | 17.9% |
3 | 西 | 西区江戸堀1丁目 | 17.6% |
<大阪国税局「2025年分(1月1日時点)の路線価」>
さらに国土交通省から発表された、都市主要部の地価動向である「令和7年第1四半期 地価 LOOK レポート」によると2025年4月1日時点の大阪市主要部の地価は9地点全てが上昇となりました。2022年7/1~10/1から大阪市の全ての調査地点は上昇が続いています。新型コロナ発生前の2019年頃にはキタや新大阪などのエリアで今よりも高い上昇率となっていましたので、今後の大阪の景気動向によってはさらに地価が上昇する可能性もあります。
今後期待される「なにわ筋線」による大阪経済の底上げ
2025年には大阪万博が開催されましたが、今後大きく期待できるプロジェクトとして「なにわ筋線」が挙げられます。
2031年に開業を予定しており、関西国際空港から大阪市の主要部であるミナミのなんばなどを通り、大阪駅までがより短時間でアクセス可能となります。
大阪市中心部が南北でつながる事により、周辺地域の活性化にもつながると考えられます。
新駅として中之島、西本町、南海新難波駅(いずれも仮称)なども建設される予定です。
なにわ筋線路線図
<資料:JR西日本>
https://www.westjr.co.jp/railroad/project/project16/
さらに大阪駅(うめきた地下)から十三駅を結ぶ新線「なにわ筋連絡線(仮称)」と、十三駅から新大阪駅を結ぶ新線「新大阪連絡線(仮称)」の2路線も計画されており、なにわ筋線と同じ2031年の開業を予定しています。
なにわ筋線との直通運転が予想されており、現在建設中のリニア中央新幹線と新大阪駅で接続する事により、大阪市内の交通利便性が飛躍的に向上するのではないでしょうか。
資料:大阪府「新大阪駅周辺地域都市再生緊急整備地域 まちづくり方針2022」
https://www.pref.osaka.lg.jp/o140030/daitoshimachi/shin-osaka/shin-osaka_houshin2022.html
大阪・関西万博やその後のIR(統合型リゾート)などの計画で湾岸エリアの発展に注目が集まっていますが、今後は大阪市内もなにわ筋線・リニア中央新幹線・新大阪連絡線・なにわ筋連絡線などで発展が期待されます。
特に新大阪や十三などの大阪北エリアは、うめきたとの相乗効果もあり今後大きな発展が期待できるエリアです。
梅田から北のエリアは大阪駅や大阪都心部などへの距離が近くアクセスも良好という利点があるにも関わらず、いままで注目度が低かったエリアです。東京で言えば東京の東側エリアなどにも相当します。
東京では都心周辺部でも都心へのアクセスの良いエリアは地価・不動産価格が上昇しています。今後は大阪でも大阪中心部の発展が周辺にも波及し広域的に人気が高まってくるのではないでしょうか。