オーナーチェンジ物件の購入時に入居者の追い出しはできる?

オーナーチェンジ物件の購入を検討している人のなかには、「すでにいる入居者に退去を促すことができるか」と疑問を感じる人もいるでしょう。手順を踏めば退去を求めることはできますが、入居者とのトラブルに発展するおそれがあることを知っておきましょう。 今回は、オーナーチェンジ物件における入居者の追い出しについて解説します。

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オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とは、借主(入居者)がいる状態で売りに出されている収益物件のことを指します。

アパートやマンションが一棟まるごと売りに出されることもあれば、区分マンションの1戸や戸建て住宅が売りに出されることもあります。

なお、オーナーチェンジ物件は貸主の権利・義務も物件とともに引き継がれます。敷金の返還義務や修繕義務なども新しいオーナーに課せられることになるので、契約前に細かな条件を確認しておきましょう。

入居者にとってはオーナーが変わるだけなので、引っ越しせずそのまま住み続ける人が大半です。

入居者の追い出しはできる?退去させるメリット

オーナーチェンジのタイミングにおける入居者の追い出しは、適切な手順であれば可能な場合があります。では、入居者を退去させることでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、オーナーチェンジ物件の購入時に入居者を退去させるメリットを紹介します。

悪質な入居者の退去でイメージアップできる

騒音・ごみ出しのマナー違反・ルールに則さない共用部利用など、クレームやトラブルのもとになる入居者を追い出すことで物件全体のイメージアップにつながるかもしれません。

一部の入居者のマナーが著しく悪い場合、ほかの入居者にマイナスの影響が出て退去が相次いだり、入居希望者の募集が集まらなくなったりするおそれもあります。

悪質な入居者を退去させてイメージアップを図れば、入居者増加を期待できます。

時代に合った賃料で入居者を募集できる

居住歴が長い入居者がいる場合、募集当時の安い賃料で住んでいるかもしれません。インフレなどでコスト上昇・物価高が起きているのであれば、追い出すことにより時代や周辺エリアの相場にあった賃料で入居者を再募集できます。

また、現在の入居者に退去を迫らなくても、オーナーチェンジに際して家賃交渉をすることも可能です。合意が得られれば入居者を再募集する手間なく、相場にあった家賃収入を得ることができます。

オーナーチェンジ物件で入居者の追い出しをするデメリット

オーナーチェンジ物件で入居者を追い出すのはメリットがある一方で、デメリットも存在します。メリット・デメリットの両面から慎重に判断していくことが重要です。

追い出しに費用がかかる

借地借家法第28条において、正当な事由がなければ入居者の追い出しはできません。過去に近隣トラブルがない入居者を追い出すことや、一方的な家賃引き上げのために入居者を追い出すことは禁じられています。

オーナーの都合により入居者を退去させる際は、引っ越し費用や立退料を支払う必要があります。オーナーが支払う項目として以下のものが挙げられます。

・引っ越し費用
・引っ越し先の物件の契約にかかる仲介手数料
・新しい物件の賃料と現在の賃料の差額(1~1.5年分)
・礼金および敷金

相場としては40万円~80万円程度ですが、必ずしも入居者が追い出しに応じるとは限りません。長時間かけて交渉しなければならず、相場以上の金額を支払ってどうにか納得してもらうケースもあります。

追い出しが終わるまでに時間がかかる

オーナーの事情による追い出しは入居者からの理解を得られにくく、説得や交渉に相当な時間がかかるかもしれません。

交渉が済んでから引っ越し先を決めてもらい、その費用や仲介手数料を計算しなくてはいけないため、長引けば1年以上かかる場合もあります。

場合によっては、入居者との交渉が決裂し裁判に持ち込まれることもあります。裁判になると2年以上かかることもあり、相当な時間と手間がかかることを覚悟しなくてはなりません。

そもそも法律は貸主よりも借主のほうを保護する条文が多く、裁判になるとオーナー側が不利になりやすいことも把握しておきましょう。

物件の評判が悪くなるリスクがある

追い出しの成否にかかわらず、入居者から嫌がらせを受けるおそれがあることを知っておきましょう。

「わざと夜間に騒音騒ぎを起こされる」「物件やオーナーへの誹謗中傷ビラを撒かれる」など、実害が出ることも考えられます。

また、入居者間でオーナーの悪評が出回ることで、追い出したい人以外の退去も相次いでしまうかもしれません。口コミサイトに悪い評判を投稿されてしまい、新しい入居者探しに支障が出ることもあります。

オーナーチェンジ物件で入居者の追い出しをする方法

最後に、オーナーチェンジ物件でトラブルなく入居者を追い出す方法を解説します。双方にわだかまりなく手続きを進めましょう。

賃貸借契約書に基づき契約を解除する

賃貸借契約書に基づいて契約を解除するのが、一般的な方法です。悪質な入居者の場合、住み方・言動・行動が下記に該当しないか確認してみましょう。

・近隣住民に迷惑をかけるおそれのあるペット(猛獣・毒蛇など)の飼育
・反社会的勢力の活動拠点や事務所としての利用
・大型の金庫など重量の大きな物品の搬入
・刀剣、銃、爆発物など危険物の製造・保管
・近隣住民への乱暴な言動により不安を与える行為
・家賃の不払い

入居時に交わした賃貸契約書であらかじめ禁止事項として定めていた場合、該当する行動を理由に追い出せる可能性が高まります。

ただし、家賃の不払いは1ヶ月程度では追い出し事由として弱いなど、内容によって正当性が認められる範囲が異なることに注意しましょう。家賃の不払いを理由に追い出す場合、最低でも3ヶ月以上の滞納が続き「常習性がある」と認められる必要があります。

賃貸契約書に具体的な滞納期間などを記載していても、不当と見なされれば裁判で無効とされるかもしれません。

賃貸契約更新のタイミングで追い出しをする

賃貸契約更新のタイミングで追い出しをすれば、スムーズに交渉が進む可能性が高いです。2年周期での更新が一般的なので退去まで最長2年かかってしまいますが、トラブルなく追い出したい際に検討してみましょう

その場合、更新時期の1年~半年前ごろから交渉し始めるのがポイントです。また、退去に応じてもらう代わりに退去時の原状回復費を免除するなど、多少のコストがかかります。

更新のタイミングで定期賃貸借契約に切り替える

賃貸契約更新のときに、定期賃貸借契約に切り替える方法もあります。定期賃貸借契約とは、賃貸借期間を定めてその後の契約更新がないことを特約とした賃貸借契約のことです。

入居者には更新時期の1年~半年前ごろから契約更新をしない旨を伝える必要があるものの、比較的追い出しやすい方法といえます。

ただし、普通借家から定期借家に切り替えられるのは、2000年3月1日以降に締結された賃貸借契約のみなので注意しましょう。それ以前の契約については、定期賃貸借契約に切り替えることができません。

まとめ

オーナーチェンジ物件で入居者を追い出すことはできますが、トラブル・クレーム・長期的な裁判に発展するおそれがあります。入居者を追い出すことによるメリット・デメリットの両方を把握しておきましょう。

可能であれば賃貸借契約更新の時期などを狙い、双方ストレスなく退去を完了させるのが理想です。