公務員の不動産投資がバレるとどうなる?許可が必要・不要なケースを紹介

昨今の不動産投資ブームの影響で、会社員のみならず公務員にも賃貸経営を始めたい人が目立ち始めました。 しかし官僚や県庁・市役所の職員は、業務の公益性から副業に対して厳しい制限を受けるのも事実。 公務員の不動産投資は完全に禁じられるのではなく、事業に該当しない小規模なものは原則、本人の自由に始められます。 事業とみなされる大規模なマンション経営でも届出をして、許可を受ければ問題ありません。 この記事では、公務員の不動産投資の可否とバレると被るリスクを紹介します。副業でマンションを経営したいけど勤務先に黙って始めて良いか迷っている人はぜひご一読ください。

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公務員の不動産投資は法律で制限を受ける

民間企業に勤めるサラリーマンは就業規則に不動産投資を禁ずる旨の規定があれば、マンション経営を諦めざるを得ません。

一方で公務員の場合、さまざまな法令で職務専念義務が定められています。官僚や県庁、市役所の職員の副業を制限する規則を確認しましょう。

人事院規則

人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)では、営利目的の企業や団体で役員や顧問、評議職の職を兼ねる他、自ら経営に携わることを禁じています。

例外として以下のいずれにも該当する場合、権限がある職員の承認を受けることで従事できます。

  • その職員の官職と営利企業との間に特別な利害関係が発生する恐れがない場合
  • 兼業しても職務の遂行に問題がないと認められる場合
  • 法の精神に反しないとして人事院が定めた場合

国家公務員法103条、104条

国家公務員法103条(私企業からの隔離)では営利目的の私企業の経営や、国家公務員との兼業を制限しています。

企業や団体で利益を挙げる目的で役職に就く他、自ら主体的に企業を経営する行為が対象です。

国家公務員法104条(他の事業又は事務の関与制限)では103条で規定した営利企業以外で要職に就くことを制限しています。

非営利団体で役員職に就く、または運営に携わる際には内閣総理大臣および所轄庁の長の許可がない限り、従事できません。

地方公務員法38条

地方公務員法38条(営利企業への従事等の制限)は地方公務員が営利企業や団体、その他団体の役職に就いたり、運営に携わり報酬を得たりする行為を制限しています。

国家公務員法103条、104条と規定の内容は変わりません。

公務員でも許可をとれば不動産投資に従事して問題ない

公務員は他企業の役員との兼業や経営に携わる行為が厳しく制限を受けるとお分かりいただけたでしょうか。しかし副業や不動産投資の場合、完全に禁止される訳ではありません。

公務員のマンション経営の可否に関する基本事項を紹介します。

無許可の賃貸経営がバレると懲戒処分の可能性あり

官僚や県庁・市役所の職員が賃貸経営を始めた事実が職場に漏れた場合、懲戒処分になる可能性があります。

実は不動産投資は副業には該当しません。資産運用の一種にあたるため、職場に打ち明けずに行っても原則問題にはなりません。

しかし事業的規模に該当する、スケールの大きな投資では話が別です。

詳しくは後述しますが、不動産事業のオーナーとして他の企業の経営権を有する立場だと判断されるため、職務専念義務を規定した国家公務員法103条や地方公務員法38条に抵触します。

法律違反となれば口頭注意だけでは済まず、減給や出勤停止、懲戒免職の処分を受ける可能性があります。実際に無許可で賃貸マンションを経営して、家賃収入を得ていた職員が懲戒処分を受け、メディアで報じられるケースが後を絶ちません。

事業的規模に該当すると許可が必須

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)で禁ずる「自ら営利企業を営むこと」について、政府は通達で基準を示しています。

具体的には不動産の賃貸が以下の規模に該当する場合、当該事業の経営は自営にあると判断します。

  • 独立家屋の賃貸について、家屋の数が5棟以上であること
  • (独立家屋以外の賃貸について)貸与可能な区画の一部分の数が10室以上であること
  • 土地の賃貸について、賃貸契約の数が10以上であること
  • 賃貸にかかる不動産に映画館や劇場、ゴルフ練習場などの娯楽・遊戯施設が備わっていること
  • 賃貸にかかる建物が旅館やホテルなど特定の用途に供すること

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について

また、不動産の賃貸にかかる家賃収入が年間500万円以上の場合も事業的規模に該当します。

500万円を超えるかの判断は経費を控除した利益を基準にするのではなく、純粋な家賃収入が対象となることに注意が必要です。

公務員が不動産投資の許可を得る際は、上長に対して「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」を提出します。書式は人事院のホームページからダウンロードできます。

許可が必要なケース

明確な意図をもって賃貸マンションの事業を営むつもりがなくても、年間収入500万円、物件5棟・部屋数10件以上の基準を超える場合があります。

やむを得ない状態だと認められれば、上長の承認を受けることで不動産投資を続けられる可能性が高くなります。

相続で賃貸物件を譲り受けた場合

一つは、相続で被相続人が所有する物件を譲り受けたケースです。たとえ事業的規模に該当したとしても、相続放棄や物件の売却という個人的な判断を強要する訳にはいきません。

父親や祖父の死亡で大規模な賃貸マンションの所有者になったときは、迷わず職場に報告しましょう。

本来なら副業禁止規定に抵触する状況でもやむを得ない事情があると判断され、賃貸経営を続けられる可能性が高いです。

自宅兼賃貸の併用住宅に居住する場合

転勤や結婚による引越しをきっかけに、住んでいる賃貸物件を第三者に又貸しするケースです。

別の物件を借りる資金を捻出するため、家賃収入で補填しようと考えるパターンが該当します。

転勤命令は原則個人が拒むことはできません。今の場所に住めなくなり新たな住まいを探す必要もあるなら、やむを得ない状況にあると判断できます。

一時的な事情で事業として家賃収入を得る目的がなくても、職場に届け出て許可を受けることには意味があります。

相続で賃貸物件を譲り受けたときと同様、仕方がない事情があるとみなされ、承認される可能性が高いです。

許可が不要なケース

承認申請書を提出せずに不動産投資を始めても問題がないケースもあります。

直属の上司の承認を得るかどうかは個人の判断に委ねられますが、誰にも告げずに賃貸マンションを経営しても法律違反に問われる可能性は低いです。

公務員が所属先の許可なく、不動産投資を行っても良いケースは次のとおりです。

事業に満たない規模の場合

事業的規模に該当する5棟10室、年間家賃収入が500万円を下回る規模でマンションを経営するパターンです。

戸建て住宅はマンションやアパートの2室分だとみなされます。例えば戸建てを3件、賃貸マンションの4部屋を貸している場合、5棟基準は下回っても10室基準に抵触します。

戸建てとアパート・マンションの両方を保有する人は、意図せず事業的規模を上回らないよう配慮が必要です。

5棟10室未満の不動産投資では65万円の青色申告特別控除や、家賃滞納時の損失計上が認められません。

節税の観点では不利に働く場合もあるため、職場にバレたくないだけで小規模な経営をするのはおすすめできません。

維持管理を管理会社に委託する場合

物件の清掃や雑草の除去、入居者対応などの維持管理を管理会社に依頼する場合、許可は不要です。

公務員自ら時間をかけて雑務を担うわけではなく、本業に支障を来たす可能性が低いためです。

仲介手数料の支払いは必要とはいえ、気軽に副業投資を始めるなら管理会社の活用は検討した方が良いでしょう。

投資先の選定や事業拡大の相談相手になるプロは心強い存在です。管理会社次第では提携先から大規模修繕業者の紹介を受けられます。

勤務先に不動産投資の副業がバレる理由

事業的規模を下回る許可をとる必要がないケースでは職場の誰にも告げず、秘密裡に賃貸経営を始めたいと考える人もいるでしょう。

法律や規則に抵触しないとはいえ、本業以外で収入を得ていると周囲にバレれば、不満を抱く同僚がいないとは限りません。

無駄な人間関係のトラブルを防ぐためにも、不動産投資がバレるシチュエーションを把握し、リスクを未然に防ぎましょう。

住民税の特別徴収

住民税を特別徴収に変更したことで勤務先に副業を疑われる場合があります。

特別徴収とは自治体から送付される納付書を使って自分で納税する行為を表し、給与から源泉徴収される普通徴収と反対になる言葉です。

本人からすれば、給与所得に不動産所得が上乗せされて住民税の額が変わることを懸念しての対応です。

しかし今まで他の職員と一緒の方法を続けてきたにもかかわらず、突如変更を申し出たために勤務先に怪しまれるかもしれません。

損益通算で不動産所得の赤字と給与所得の黒字を相殺すると課税所得が減ります。

特別徴収で所得税の金額は隠せても、勤務先が把握する所得と異なれば、副業に気付かれるリスクがあります。

同僚による密告

飲み会やランチでマンション経営を始めたと同僚に打ち明けてバレるパターンです。

簡単に気を許した、またはうっかり口が滑った自分が悪いともいえるため、勤務先では本当に信頼できる人間以外に投資の話はしないと肝に据えましょう。

赤の他人に思えても、実際にどこでつながりがあるか分かりません。職場以外の友人や知人に話をするのも最小限にとどめ、極力家族以外には秘密にすることをおすすめします。

SNSの投稿

Twitterやfacebook、LINEグループでの投稿を職場の人にみられ、噂になるパターンもよくあります。

匿名のアカウントでも誰が見ているか分からないため、不動産投資の話題を出すのは禁物です。

どうしても誰かに話したいときは鍵付きのアカウントを介して発信し、フォロワー以外の目に入らない工夫をしましょう。

まとめ

厳しい職務専念義務が課される公務員の不動産投資は、会社員以上に細心の注意が必要です。禁止ではありませんが、事業的規模に該当する場合、勤務先への申告が必須。

万一怠ってマンション経営を始めたと上司にバレたときは懲戒処分を受けるリスクがあります。

規則に従い、所定の手続きを遵守すれば公務員が不動産投資を始めても問題ありません。

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