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ペット可物件の需要は高い
2021年に一般社団法人ペットフード協会が実施した調査によると、ペット飼育を阻害する要因に下記のような住居問題があると分かりました。
・集合住宅(アパート・マンションなど一戸建てではないもの)に住んでいて、禁止されているから
・家や庭が狭いから
・ご近所に迷惑がかかりそうだから
回答者のなかには、ペットを飼育し始めてから禁止であったことを思い出してトラブルになったり、鳴き声に苦情がきたりした例もあるようです。調査結果から「本当はペットを飼いたいのに住まいの問題で飼えない」と感じている人が多いことが分かります。
また、犬・猫ともに室内飼いが多く、特に猫は全体の8割程度が室内飼いであることも分かっています。現代社会でペットを飼うには、飼育が許可されている快適な住環境が必要不可欠なのです。
参考:一般社団法人ペットフード協会「令和3年全国犬猫飼育実態調査」
ペット可物件で不動産投資するメリット
高い需要があることから、ペット可物件の運営は十分魅力的です。しかし投資である以上、需要だけではなく、収益に結びつくメリットも重視しなくてはなりません。
ここからは、ペット可物件で不動産投資するメリット・デメリットを解説します。あえてターゲット層を絞り込むメリットからチェックしてみましょう。
競合との差別化ができる
ペット可物件は競合との差別化を図りやすく、ペットを飼育中の家庭や今後飼育を検討している家庭へ確実にアプローチできます。
現状はペット可物件の供給量は非常に少なく、都市部でも下記の通りわずかです。「ペット可物件が見つからず困っている」という人を集客でき、収益が見込めます。
東京都世田谷区 | 賃貸物件数 | うちペット可物件数 |
ワンルーム | 25,032件 | 2,416件 |
1LDK | 14,044件 | 3,090件 |
2LDK | 4,672件 | 1,050件 |
3LDK | 3,092件 | 706件 |
大阪市天王寺区 | 賃貸物件数 | うちペット可物件数 |
ワンルーム | 2,638件 | 453件 |
1LDK | 4,876件 | 383件 |
2LDK | 935件 | 165件 |
3LDK | 659件 | 130件 |
某住宅情報サイト(※2022年12月10日時点のデータ)
一見ターゲットが狭いように感じられるかもしれませんが、高い付加価値をつけられます。築年数や間取りが近い競合と差別化できることから高い集客効果が見込めることがメリットです。
家賃を高く設定しやすい
高い需要が見込める「ペット可」の条件は家賃に反映させやすい要素でもあります。多少、立地が悪かったり築年数が経過したりしている物件でも「ペット可」にすることで集客力アップを見込めます。
付加価値があるため家賃を高く設定しやすく、同じエリア・同じ間取りの物件と比べて高い収益を上げられるのです。壁紙交換や臭い取りなど原状回復に手間がかかることを考慮し、敷金を高めに設定できることもメリットといえます。
長期入居が期待できる
ペット可物件は非常に限定されているので長期入居が期待できます。すでにペットがいる家庭は、引っ越しのたびに下記のような悩みがつきまといます。
・希望エリアにペット可物件が見つからない
・散歩のルートが変わってしまう
・近隣住民に受け入れてもらえるかわからない
リスクを冒して何度も引っ越すより、良い物件が見つかりさえすれば長く安定して住みたいと考える人が多いのです。入居後のサポートを万全にしていけば、安定した家賃収入が見込めます。
ペット可物件を運営するデメリット
前述の通り、ペット可物件は入居者側・オーナー側ともに多くのメリットを得られます。一方で、ペット可物件にはデメリットも存在します。
トラブルリスクを軽減しつつ順調に不動産投資をするためには、良い面に加えて注意すべき点も理解しておくことが重要です。メリットだけでなくデメリットにも目を向けながら物件を選定していきましょう。
鳴き声や異臭がクレームの原因になる
ペットの種類によっては、鳴き声・異臭がクレームの原因になるケースがあります。ペットの鳴き声が響いたり、ペットによる物音が夜中に伝わったりすることも想定しておきましょう。
さらに、ペット可物件といっても入居者全員が動物好きとは限りません。ペット飼育中の家庭同士でもクレームが発生することがあるので、適切に対処できる知識が必要です。
特にオーナーチェンジ物件の場合は、既存の入居者から理解を得なければなりません。既存の入居者のなかには「ペット不可」という前提がある上で入居している方もいます。そのような方の理解を得るのが難しい場合もあります。
原状回復費用が高くなりやすい
ペット可物件は、退去時の原状回復費用が高くなりやすいのがデメリットです。ペット飼育をしていると、臭いが壁紙に染み付いたり糞尿で汚れてしまったりするのはある程度避けられません。躾をしていても本能的な行動まで制限できるとは限らず、柱を噛んだり畳をひっかいたりすることもあります。
次の入居者が快適に過ごせる部屋にするためにも、原状回復費用が高くなりやすい点は覚悟しておきましょう。また、段差に配慮してリフォームする、床材をペットに合わせて変えるなどの場合は、初期費用が高くなる可能性もあります。
入居者のターゲットを狭めてしまう
ペット可物件は飼育中・飼育検討中の方に安定した需要がある一方、動物嫌いな方がターゲットから外れてしまうのがデメリットです。家賃も高くなりやすいので、「あえてペット可物件に住む必要はない」と感じる方もいます。
幅広いターゲットにアプローチしたい時や、そもそも人口数が限定されているエリアに「ペット可物件」は向かない可能性もあるので注意が必要です。周辺地域の様子も入念に下調べしてから、ペット可物件にするか判断することが大切です。
ペット可物件で不動産投資するときのポイント
ペット可物件で不動産投資を始めるときのポイントは、下記の通りです。
・家賃・敷金を高めに設定する
・原状回復条件をこまかく決めておく
・最初からペット可となっている物件を購入する
・ペット飼育前提の設備を整える
・ペット飼育に関する規定を決めておく(大きさ、種類など)
退去が続いたり、原状回復費用がかさんだりした場合のリスクに備えて、家賃や敷金は高めに設定しておきましょう。ペット可は物件に求められる条件のなかでも需要が高い傾向なので、相場より多少高額でも入居者が集まる可能性があります。
また、最初からペット可となっている物件を購入することで、既存の入居者から反発されるリスクを避けられます。
他にも、ペット用の足洗い場を設置したり飼育に関する規定を決めたりと、入居後の不便さを感じさせない対策が必要です。
原状回復の条件は揉めやすいポイントでもあります。ペットを飼うと、どうしても壁や床などの傷が目立つケースが多いからです。匂いを除くクリーニング代も必要になるため、他のペット可物件も参考にあらかじめ細かく決定しておきましょう。
まとめ
ペット可物件の数はまだまだ少なく、ペット連れで引っ越す人の悩みの種となっています。ターゲットは限定されていても需要が高いので、不動産投資用物件を選ぶ際に検討してみましょう。
運用の際は、ペットの種類・大きさ・原状回復費用など細かな条件を決めておくことをおすすめします。集客力だけでなく入居後の住みやすさにも配慮し、満足度の高い物件になるよう工夫することが運用を成功させるコツです。