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不動産投資の家賃保証には2つの意味がある
はじめに不動産投資の家賃保証には二種類の仕組みがあることを理解しましょう。一つは転貸と呼ばれるサブリース契約、もう一つは入居者向けの家賃保証です。
サブリース契約
サブリース契約とは不動産会社がオーナーから投資用物件を借り上げ、入居者に転貸する仕組みの契約です。家賃保証と呼ばれるのは空室時でも契約に基づき、賃料の一定割合の支払いを受けられるためです。
不動産会社に支払う利益分、本来の家賃より低い金額しか受け取れませんが、入居率に関わらず安定した収入が入り続けます。掃除や入居者との契約、クレーム対応など投資用物件の維持・管理まで一任できます。
通常の賃貸借契約はマンションの所有者と入居者間で交わされますが、サブリースは契約の当事者が管理会社になることが特徴です。オーナーは管理会社とマスター契約(特定賃貸借契約)を締結すれば、個別の入居者と契約を交わす必要はありません。
なお空室時に支払われる保証料金は固定で「賃料の85%〜90%」というように本来の家賃との差分で決まります。
入居者向けの家賃保証サービス
もう一つの家賃保証は、入居者が家賃を支払えないときに家賃保証会社が立て替える仕組みのサービスです。連帯保証人を立てずとも部屋を借りられるため、周囲に頼れる家族や友人がいない人にメリットがあります。
多数の入居者を募り、空室や家賃の滞納に備えられるオーナーにとっても価値がある仕組みです。入居者向けの家賃保証はあくまでも賃借人の都合による未払いに備えるサービスです。サブリース契約の転貸とは異なり、賃貸借契約の当事者が変わるのではありません。
家賃保証会社に支払う保険料は全額、入居者の負担です。物件の維持管理は自分で行う必要があるとはいえ、金銭的な負担が伴わないのは魅力です。契約の前に申込人の経済力を調査して、家賃の支払いが滞る可能性の低い人物をスクリーニングできます。
家賃保証(サブリース)契約を結ぶメリット
サブリース契約を交わすメリットは、入居状況に左右されず安定した収入を得られることと、煩雑な維持管理から逃れられることです。家賃保証のオーナーへの影響を具体的に解説します。
空室リスクに備えることができる
空室を解消できなくても収入が途絶えずに済むのは、サブリースの大きな魅力です。マンション経営では常に満室を維持できる状態が理想的ですが、一室も空きがない状態が続くのは現実的ではありません。
引越しや転勤など入居者の都合で解約を申し出られた場合、基本的にオーナーは要求を吞まざるを得ません。新しい人の募集をかけても内見や他の物件との検討に時間がかかり、家賃の支払いを受けるまで一定のタイムラグが発生します。
想定を超える数の空室は収支計画の実現可能性を低くせしめ、キャッシュフローの悪化による財政状態の逼迫を招きます。物件の購入に融資を活用していた場合、ローンの返済が滞る可能性もあり、オーナーにとって死活問題です。
サブリースは、不動産経営の成否を占う空室リスクを軽減できる有効な方法であることは間違いありません。
不動産会社に管理を一任できる
サブリース契約を交わせば、物件の管理に伴う煩雑な作業を自らしなくて済み、時間を節約できます。不動産の維持管理は家賃の回収やクレーム対応、雑草の除去、設備の修繕、大規模改修などすべきことが盛りだくさんです。
よく不動産投資は働かずに収入を得られる代表的な方法として語られますが、維持や管理を一人で担っては忙しない日々を迫られます。サブリース契約の多くが家賃の補償にとどまらず、物件の管理に伴う煩雑な作業を請け負うことがサービスに含まれています。
本業で忙しくて入居者の対応や清掃にかける時間がない、物件が遠方で中々立ち寄る機会がないという人でも気兼ねなくマンションやアパートを経営したければ、サブリース契約を検討してはいかがでしょうか。
家賃保証を組んだだけで安心してはいけない理由
サブリースを組めば、空室が発生しても安心だと考える人もいるでしょう。しかし、家賃保証があるからと胸をなでおろすのは早計です。サブリース契約は賃料の条件が不動産会社の一存で決まる上に、保証がない免責期間が設けられているためです。
マンション経営のリスクを家賃保証で解消しようと考えている人は、安心な仕組みとは断言できないことに目を向けなくてはいけません。
オーナーが保証金額を決められない
転貸する際の賃料はオーナーに決定権がなく、管理会社が提示した金額を受け入れなくてはいけません。空室リスクを避けたい気持ちが先行して、希望より低い賃料で妥協せざるを得ない場合もあるでしょう。
確かに収入がゼロと比べればリスクがない仕組みですが、マンション経営の自由度が著しく制限される契約の一種ともいえます。入居者が集まる自信があるなら、自分で設定した家賃を提示して直接徴収した方が利益になるでしょう。
更新で賃料を下げられる場合がある
当初設定した賃料が契約期間の間、永久的に続くとは限りません。サブリース契約は数十年単位で締結する場合が多いですが、1〜2年ごとに更新のタイミングがあります。
築年数の経過によって物件の価値が低くなるとともに、賃料が引き下げられるケースが少なくありません。契約時と同様、管理会社の一存で決まるため、基本的には、更新時に提示された金額に異論をはさむ余地はないと考えてください。
契約書の条項にも「一定年数の経過後、申出により賃料を変更する場合がある」と謡われています。家賃の性質上、下がることはあっても、上がることは非常に稀です。更新の度に減額請求を受けるわけではありませんが、空室の増加や近隣の賃料相場の下落がみられたときは危険な兆候です。
賃料が下げられたら、当初想定していた収支が狂い、経営計画の下方修正を余儀なくされるかもしれません。このため、サブリース契約を交わせば経営破綻はないと考えるのは甘いと言わざるを得ません。
管理会社が存続するとは限らない
管理会社が経営難に陥ったとき、空室時に頼りにしていた保証料が途絶える可能性があります。サブリース会社も民間の機関のため、資金繰りが悪化したら事業を縮小して、最悪の事態を未然に防止しなくてはいけません。
サブリース会社が倒産した場合でも、入居者から支払われた賃料を受け取る権利は無論オーナーにあります。しかし担当者が行方をくらましたり、連絡がつかなくなったりして回収にてこずるかもしれません。
サブリース契約が破綻した場合、オーナーは自ら入居者と接触し、賃料の回収に努める必要があります。賃貸借契約の締結や、二重払いのトラブルの回避に苦心を強いられるでしょう。
倒産による顧客への影響はサブリースに限った話ではないとはいえ、依頼先を選定する際は経営状態や財政力に問題がないか調査して未然にリスクに備えましょう。
免責期間に注意する必要がある
サブリース契約では多くの場合、賃料の賃料の保証を受けられない免責期間が設定されています。新築から数ヵ月間、退去から数ヵ月間などサブリース会社が定めた期間中に空室が発生しても収入にはなりません。
入居者が去った直後はサブリース契約を交わしたとはいえ、無収入の期間が生じることを意味します。短期間に何度も解約を申し出る人が出ると収入が途絶え、資金繰りの悪化に苦慮すると想定されます。
新しい入居者がすぐに決まったとしても、支払われる賃料はサブリース会社の利益です。免責期間は入居者の退去時だけでなく、入居可能時から数十日の間、設定される場合もあるためです。
合わせると概ね3ヵ月程度の期間になり、その間は問答無用でオーナーは家賃収入を得られません。免責期間はサブリース契約の必須事項ではないとはいえ、実際には多くのサブリース会社が設定しています。
契約の締結時は条項の有無に加えて、期間に問題はないか必ず確認しましょう。
不動産投資の家賃保証で失敗しないために
サブリースは不動産経営のリスクを減らす効果的な方法には違いありません。しかし、仕組みをよく理解していないと落とし穴にはまる危険があります。不動産投資の家賃保証で失敗しないための注意点を解説します。
期間満了後の運用方法を考えておく
あらかじめサブリース契約の期間が満了したときの運用方法を考えておきましょう。ひとたび不動産会社の手を離れれば、入居者との交渉から賃料の回収、物件の管理まで担わなくてはいけません。
必ずしも自分で全部やる必要はありませんが、マンション経営を諦めて物件を売却に出す、別の管理会社に業務を委託するなど戦略の検討が必要です。
煩雑な維持管理は手数料を支払えば、負担を免れます。重要なのは運用方針の決定は他でもないオーナー自身が下すことです。
長期にわたりサブリース会社に任せていた分、不動産経営のノウハウは身についていないでしょう。
家賃保証がなくなり空室リスクに自ら備える必要に迫られている状況も考慮して、マンション経営を続けるか、経済状態や時間的な余裕も考えて後悔ない判断をしなくてはいけません。
サブリース契約を解消したとき、突然自分で何から何まで考える必要に駆られて右往左往しないようにするには、事前の備えが重要です。
契約書の内容を隅々まで確認する
サブリース契約の内容を精査して、オーナーに不利な条項はないか、あったとしても受け入れられるか確認してください。トラブルが勃発したときに、自分が責任を抱え込むような事態に知らず知らずのうちに陥るのは問題です。
不動産会社の営業マンは「長期にわたり安心保証」とメリットばかり協調する傾向があります。聞こえの良い謡い文句につられて契約書をよく確認せずに契約を交わしたとき、不利を被るのはあなた自身です。
先述のとおり、サブリース契約では賃料の引き下げや免責期間の条項が含まれる場合が多く、主導権はオーナーにはありません。他にも、入居者からの敷金や礼金は不動産会社が受け取る、修繕を行う際は指定の業者のみなどの条件もよくあるパターンです。
一見賃料の設定は良心的でも、契約書をよく読んでみたらオーナーに不利な部分が多いと気付かされるときもあります。署名・押印する前に納得できない条項がないか必ず確認しなくてはいけません。
まとめ
家賃保証(サブリース)はオーナーが不利益を被る可能性もあるため、契約を交わす際は慎重にならなくてはいけません。
リスクを把握した上で利用するのであれば、高い満足度を期待できます。アセットテクノロジーは、賃貸管理や土地・建物の売買仲介を手がける大阪の不動産会社です。
長年のノウハウを活かし、空室リスクや入居人とのトラブルに至るまで手厚い包括的なサポートを信条としています。家賃保証で不安や疑問がある人はぜひご相談ください。