DXの浸透で今後の活性化が予想される賃貸マンション市場

DXの浸透で 今後の活性化が予想される賃貸マンション市場 新型コロナが世の中に出現して以来、時代の最先端を行くテクノロジーを駆使した様々なシステムが誕生し私達の経済活動・日常生活は大きな転機を迎えました。新しい時代の中でのDXと賃貸マンション市場について考察してみたいと思います。

この記事は約7分で読み終わります。

DXとは

ITなどの普及で多くの方がデジタルの恩恵を受け、仕事や生活も大きく変わってきています。さらに最近では「DX」というキーワードがありますが、これは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタル化による変容」となります。

デジタル化によって効率が良くなるだけではなく、会社や組織などの仕組みなども変わっていく事を意味します。

政府からもDXが推進されています。総務省では自治体のDX、経済産業省では企業のDXなどが推進されている他、さらにデジタル庁が2021年に発足しています。「デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します」とデジタル庁の概要にあるように、企業や行政など日本の様々な分野でもDXの普及が進むのではないでしょうか。

東京都でも2020年にDX推進のためのプロジェクトや「デジタルファースト条例」に基づいた「東京デジタルファースト推進計画」なども進められています。

スマホの普及でデジタル化が急速に普及

家庭における固定電話の契約が減少すると共にスマートフォン(スマホ)の普及率が急速に上昇しています。

総務省の情報通信白書によれば、2010年にはスマホの世帯普及率はわずか9.7%でしたが、2020年には86.8%と9割近くになってきています。 スマホの普及により電話やメールなどの通信の他に、買い物や飲食店での支払いもスマホで行う方も増え「脱現金」化も進んでいるのではないでしょうか。

先日筆者は東京ドームで巨人戦を観戦しましたが、今シーズンから東京ドーム内では現金が一切使えないシステムとなりました。スタンドで生ビールを購入する時も支払いはSuicaやスマホなどとなっており、以前のような風情がなくなってきている事は少し寂しいですが、これも時代の流れかなと感じました。

日々の生活でも、例えば銀行では通帳のインターネット化が進み紙の通帳の廃止や有料化にするケースも多くなってきました。スポーツ施設や映画を始め様々な予約ができたり、鉄道の定期券やお店などのポイントカードなどもスマホ化が進んでいます。

こうして様々な事がスマホなどでできるようになってきており、お財布を忘れてもスマホを持っていれば大体間に合うのではと感じます。つまり生活におけるDXが進んでいると言えます。

但し、大切な多くの情報が組み込まれているスマホを紛失したら大変な事になりますので、細心の注意をして欲しいと思います。

■スマートフォンの世帯普及率

<総務省「情報通信白書」令和3年>

行政のデジタル化も進む

こうしたデジタル化の波は行政にも及んでいます。年金手帳は2022年4月に廃止となりました。今後免許証などもデジタル化が検討されています。

2020年には河野規制改革相から行政手続きの押印の廃止の要請が出されました。そして行政における個人の特定を識別するための「公的個人認証サービス」や「マイナンバー(個人番号)制度」「電子署名」など様々なデジタル化も進み、手続きなども簡略化されてきています。

不動産投資なども含めた確定申告や給付金の申請などもインターネットでできるようになり、着々と行政のデジタル化が進んでいると言えます。

不動産業界でDXの恩恵は

このような中で不動産業界のDXも進行しています。 現在でも賃貸の部屋を探している方は現地周辺の不動産屋さんを何件も回って物件を探すなど時間と手間をかけるケースもあり、駅前には不動産屋さんが多くあります。

さらに不動産の契約は紙の書類が多く契約時には何枚もの書類に署名・捺印する必要があり、昭和の時代には賃料を払えば「賃料ノートにハンコを押す」という大家さんもおりました。連絡も全て電話か郵便・FAXなどで、ほんの数年前まで不動産業界はデジタル化があまり進んでおらず、本当に昔ながらの業界とも言えました。

しかし近年では不動産業界の中で広域的に物件を検索できるシステムも構築されていたり、インターネットでも多くの物件を探す事ができるようになってきています。

新築の分譲マンションなどでは、内見についてはVR(バーチャルリアリティー)を使って、現地に行かなくてもまるでその部屋の中にいるかのような体験もできようになってきています。 また駅から物件までの道のりや周辺の様子などもインターネットのストリートビューなどで見る事も可能です。

こうしたデジタル化で地方から東京に転入してくる方などが、地元で東京の賃貸物件選びができたり、また周辺の情報を詳しく収集する事もできれば時間と手間の節約となり、不動産市場の活性化にもつながってきます。

またマンションのドアなどもスマホを利用する「スマートロック」も普及してきており、実際の鍵を利用しなくても開錠できる機能も増え、内見がしやすくなっているケースも散見されます。

デジタル改革関連法が成立

不動産を所有する大家さんは高齢の方も多く、デジタル化に馴染んでいなかった事も不動産業界のデジタル化が遅れていた要因の一つとも考えられます。

しかしワンルームマンション経営をする若い世代の方なども増えている事や、賃貸の部屋を探す若い人のスマホ・PCの普及率が高い事などから、今後急速にデジタル化が進むのではないでしょうか。

不動産業界でもデジタル化が進んでいますが、実際の契約や重要事項説明などは、実際に当事者が立ち合いで行われていました。

しかし2021年に「デジタル改革関連法」が成立し、これにより「不動産契約」についてもオンライン化が可能となりました。

これに伴い宅建業法も改正され2022年5月からは契約時の契約書への押印が廃止され、重要事項説明や契約書なども紙でなく電子契約書で行う事が可能となりました。 つまり物件探し、内見、周辺環境の探索、契約、重要事項説明、入金など一連の流れが全てオンラインでできる時代となってきた訳です。

賃借人におけるDXのメリット

マンション経営をしている方にとっても、マンションを借りる方にとっても不動産のDX化によるメリットは大きいものがあります。

入居者を募集する際にも、貸す方からは自己所有の部屋がインターネットにより全国から検索できるようになれば、それだけ多くの人の目に留まる訳です。

また借りる方からは全国どこにいても好きなエリアの物件を検索でる事ができるようになります。 電子契約や重要事項説明などのシステムがあれば、地方の人も上京しないで契約が可能となりそれだけ契約しやすくなると言えます。例えば総務省の「人口移動報告」によると他の都道府県から東京都への転入者は2021年には約42万人もいます。

こうした多くの転入から多くの住宅需要が生まれます。転入人口には20代なども若い層が多いので、単身者向けのワンルームマンションなどがネットで検索できれば、その物件探しもよりしやすくなり、賃貸市場の活性化につながるのではないでしょうか。

マンション経営における賃貸管理もDXで可視化

今後もマンションの賃貸管理にDXが浸透してくれば、マンションの賃貸人にとってもメリットが多くあります。 入居者の募集を始め、賃料の管理や専有部分の設備機器の維持費などのメンテナンス費用、管理費や公租公課なども含めて一元的に管理できれば、マンション経営の可視化も進みます。

手間がかからない事が特長のマンション経営ですが、その財務内容についてもデジタル化によって把握しやすくなるでしょう。 また賃料についても周辺の相場なども把握しやすくなり、より実勢にあった家賃の設定なども可能となります。

さらにAI(人口知能)が適切な金額を提案したり、専有部分のメンテナンスなどもIoTなどで把握できるようになるかもしれません。 今後は賃貸管理会社もこうしたシステムを構築していく事も必要となってきます。

賃貸用のマンションではオーナー様がそれぞれ離れて住んでいますので、建物管理にしてもDXが進めば管理状況の把握や合意形成などもしやすくなってくるのではないでしょうか。建物管理がしやすくなればそれだけ物件の資産寿命も延びると言えます。

このように2022年5月からの不動産契約のDX化を契機に、スマホやPCによってオンラインの契約が広がったり、また賃貸経営のIT化が今後ますます普及する事でマンション経営も将来的により安定・拡充するのではないでしょうか。