不動産投資に頭金は必要?頭金が必要なケースや支払うメリットについて

不動産投資に興味はあるものの、まとまった資金が必要なのではと不安な人もいるかもしれません。不動産投資ではどのくらいの頭金が必要になるものなのでしょうか。 この記事では、不動産投資における頭金の目安、頭金を支払ったときのメリットやデメリット、フルローンとの比較について解説します。

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不動産投資で頭金が必要なケースとは

不動産投資のすべてのケースで頭金が必須なわけではありません。頭金が必要になるのは、以下のようなケースです。

・希望の融資額に満たないとき

・融資引き締めのタイミングと重なったとき

希望の融資額に満たない場合

不動産投資で金融機関のローンの利用を申し込むと、金融機関において審査が行われます。審査の対象になるのは、立地や築年数、賃料相場といった物件情報のほか、年収などの申込者自身の属性です。

審査では、融資の可否とあわせて融資限度額が決まります。

金融機関の審査次第では、ローン利用の申込時に希望した金額の満額が融資されるとは限りません。希望額の融資が叶わず、融資限度額が必要金額より低くなる場合は頭金が必要です。

融資引き締めのタイミング

日本銀行による金融政策など、市況や政策によって金融機関が融資の引き締めを実施することがあります。また、不動産の供給過多や不動産投資の増加による価格高騰などが発生したときも、各金融機関の判断によって、融資引き締めが実施されやすいです。

融資引き締めが行われているタイミングでは、融資が下りにくくなります。これまでなら問題なく融資が下りていた額でも、引き締めにより希望額の融資が下りないこともあります。融資引き締めのタイミングに重なり、融資額が不足したときは、頭金の準備が必要です。

不動産投資に頭金はどのくらい必要?

申込者の返済能力や物件から得られる将来的な利益の予測など、さまざまな観点から審査が行われます。不動産投資で頭金がどのくらい必要かは、申込内容によって幅があります。物件価格の1~2割を頭金の目安にしておくと良いでしょう。

 しかし、必要な頭金については明確な計算式が存在するわけではありません。申込者の年収や属性、物件の状態のほか、金融機関ごとの判断に委ねられています。

不動産投資で頭金を払う3つのメリット

不動産投資において、頭金を支払うことは融資を受ける際だけでなく、不動産運用を通して得られるメリットにもつながります。ここでは3つの代表的なメリットを紹介します。

1.ローン審査に通りやすくなる

不動投資において融資額の決定には、投資家個人の属性や返済能力、物件に対する評価など、さまざまな項目があります。これらの項目は、金融機関が「融資額を返済できる人物」であるという信用材料になります。融資には金融機関の信用を得ることが重要なのです。

その点、頭金があれば自己資金力の証明にもなり、金融機関の信用につながります。

ローンの返済額と利息額が減る

融資を受ける際に支払う頭金が多いほど、ローン返済の負担を軽減できます。頭金を支払えば、それだけローンの元本は少なくなり、元本の減少に応じて、利息額の削減にもつながるためです。

ローン返済額を削減できれば、不動産運用益が手元に残る割合が大きくなります。その分を修繕費用に回したり、ローンの繰上げ返済にも利用できるなど、不動産の運用における選択肢が広がります。

金利変動のリスク対策になる

ローン金利は、政府の政策や日銀の判断によって変動します。金利が上昇すると、それに伴って ローン返済額の負担は大きくなるのです。しかし、頭金投入によってローン元本を小さくすることで、金利上昇の影響を最小限に抑えることができます。

現在は低金利の時代だといわれていますが、今後の経済動向によって金利が上昇する可能性は十分に考えられます。実際に、2022年12月には日銀が金融政策を見直し、長期金利目標の上限を、0.25%から0.5%まで引き上げました。

2024年の4月に日銀総裁の交代が行われるため、現状の金融状況が見直される可能性も考えられます。見直しに伴い、金利が緩やかに上昇していく可能性を考慮する必要があるのです。

先を見通しづらい経済動向による不動産運用への影響を小さくするためにも、頭金は有効な手段であるといえます。

不動産投資で頭金を支払うデメリット

不動産投資における頭金の投入は、金利上昇対策やローン審査通過の可能性を高めてくれる重要な手段であるといえます。しかし、これらのメリットの裏側には、デメリットも存在することも把握しておかなければなりません。

頭金を支払うことにおいて、代表的なデメリットは3つあげられます。ここからは、その3つのデメリットについて、下記で詳しく紹介します。

レバレッジ効果が弱まる

レバレッジ効果とは、少ない資金でより大きな収益を得ることを指します。自己資金と借入金を併用することで、利回り以上の収益が期待できるという考えです。金融機関から融資を受けることは、このレバレッジ効果を高めるために必要な手段といえます。レバレッジは以下の計算式で算出できます。

借入額÷自己資金=レバレッジ比率(倍)

例えば、500万の自己資金で5,000万の不動産を購入した場合、レバレッジは10倍となります。この際、自己資金を1,000万まで増額させると、レバレッジは5倍にまで下がるのです。

レバレッジ効果は自己資金が少ないほど高くなります。不動産投資において、レバレッジ効果を求める場合には。頭金が大きくなると、レバレッジ効果は弱まってしまうことを把握しておく必要があります。

資金的余裕が弱まる

頭金は自己資金から用意することになるため、資金的な余裕は少なくなります。

不動産を運用していると、修繕積立金では間に合わないような突発的な補修・修繕も頻繁に発生します。このような事態に対応するため、自己資金を頭金とは別に用意する必要が出てくるため、資金繰りが苦しくなる可能性もあります。

不動産投資の開始時期が遅くなる

頭金は、できれば不動産購入価格の2割程度を用意した方が良いでしょう。例えば、5,000万円の不動産を購入するなら2割の1,000万円程度の頭金が必要となります。

しかし、多額の頭金をすぐに用意するのは困難です。頭金を用意するには数年かかります。言い換えれば、その分、不動産投資の開始時期が遅くなるデメリットがあります。

不動産投資で自己資金を抑える方法

不動産投資で頭金を用意するのには、多くのメリットがあります。しかし、頭金が多くなれば、用意に数年かかるなどのデメリットもあるため、できれば抑えたいところです。

ここでは不動産投資で自己資金を抑える方法について見ていきましょう。

少額で始められる不動産投資を選ぶ

不動産投資は、大きな金額が必要なものばかりではありません。少額でできるものもあります。そこで自己資金を抑えるために「少額で始められる不動産投資を選ぶ」のも有効です。

少額で始められる不動産投資には、不動産クラウドファンディングや不動産小口化商品などがあります。

不動産クラウドファンディングは、クラウドファンディング業者が見つけてきた物件に、複数人で投資する商品です。不動産小口化商品は、不動産を小口化して少額から投資できる商品です。

どちらも数万円から数百万円程度でできるものがあるため、不動産1棟を購入するよりも投資額を抑えることができます。

諸費用を抑えられないかチェックする

不動産投資で必要な資金は不動産の購入価格だけではありません。諸費用にかかる金額も少なくありません。そこで、不動産投資で自己資金を抑えるためにも諸費用を抑えられないかチェックします。

諸費用の中でも、特に「不動産仲介手数料」と「司法書士報酬」は、金額が高くなりますが業者や司法書士と交渉することで、金額を抑えられる可能性もあります。

資産価値の高い不動産を選ぶ

資産価値の高い不動産を選ぶことで、不動産から得る収益により、自己資金を増やすことも可能です。資産価値の高い不動産とは「収益価値がある物件」と「売却価値がある物件」のことです。

収益価値が高ければ、毎月の収入が増加しますし、売却価値の高い物件であれば、売却時に大きな収入を得ることができます。

頭金なしのフルローンについて

不動産投資で頭金を支払う良し悪しについて説明しましたが、頭金のないフルローンについてはどうでしょうか。フルローンのメリットやリスクについても解説します。

フルローンとは

フルローンとは、頭金を入れずに物件価格全額のローンを組み、全額を融資でカバーすることです。

ただし、融資の対象となるのは物件価格に限られます。不動産会社へ支払う仲介手数料、登記に関わる登録免許税や印紙税などの諸費用は自身で準備しておかなくてはなりません。

フルローンのメリット

フルローンのメリットは、まとまった資金の用意がなくてもすぐに不動産投資を始められることです。手元に資金があるときは、物件のリノベーションなどに資金を注ぐこともできます。

また、頭金を支払ったときと比べて、レバレッジ効果を高められるのもメリットのひとつです。自己資金を消費せず、他人資本(金融機関からの融資)だけで大きな収益を得ることが見込めます。

フルローンのリスク

フルローンのデメリットは、頭金なしでローンを利用したいと思っても、ローン申込者の希望だけでは実現できないことです。融資をする金融機関もリスクを背負うことになるため、フルローンの審査は頭金があるときより厳しくなります。

金融機関の審査次第ではありますが、年収や社会的地位などの属性が良い、物件の利回りが良い、不動産投資の実績があるなど、好条件でなければフルローンでの融資は難しいでしょう。

ほかにも、フルローンにすると毎月の返済金額が高くなる、返済期間が長くなるといった問題が挙げられます。

タイミングを見計らい物件を売却したくても、ローン残債があることで売却できないなど適切な出口戦略が実行しづらくなります。

まとめ

不動産投資で頭金を準備することは、金利リスク回避などの面でメリットがありますが、不動産投資の特長であるレバレッジ効果は薄れてしまいます。

レバレッジ効果を高めるのであれば、フルローンを利用するのもおすすめです。ただし、フルローンの審査に通過するには高いハードルがあります。

また、フルローンをすると毎月のローン返済金額が増えるデメリットもあるため、無理のない範囲で不動産投資を行うようにしましょう。