不動産投資の赤字は悪くない?キャッシュフローを重視しよう

不動産投資をしていて、赤字になると誰しも焦ってしまうものです。しかし、すぐに改善が必要な赤字と、焦らなくても良い赤字があることをご存知でしょうか。 不動産投資のさまざまな場面で的確な判断を下すためには、経営状況を正しく理解することが大切です。今回は、不動産投資に関する赤字について解説します。

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不動産投資で赤字になるふたつのパターン

原則として「赤字」とは経費が利益を上回っている状況を指します。赤字と一口にいっても赤字になっている状況によって意味合いが変わります。

自分が置かれている状態を正確に知るためにも、赤字のパターンを把握しておきましょう。

帳簿上の赤字となっているパターン

ひとつは、帳簿上で赤字になっているケースです。キャッシュフロー自体は黒字であっても、損益計算書では赤字になっている状態とイメージするとわかりやすいでしょう。

所得税などの税金は帳簿上の所得に対して課せられるので、キャッシュフローが黒字でも帳簿上が赤字であれば課税されません。節税効果が見込まれるので、比較的メリットのある赤字といえます。

キャッシュフロー上の赤字となっているパターン

キャッシュフロー上で赤字になっているケースがあります。支出ばかりがかさんでしまう状態であり、遠くない将来に資金が枯渇するおそれがあります。

損益計算書上は黒字でも、キャッシュフロー上で赤字になることもあるので注意が必要です。一般的に「赤字」でイメージされるのは、キャッシュフロー上で赤字になっている状態が多いです。この場合は、早急な対策が求められます。

不動産投資で赤字が生じる5つの原因

不動産投資で赤字に陥る原因はさまざまです。不動産投資のリスクにまつわる代表的なものから意外なものまであります。ここでは、不動産投資で赤字が生じる5つの原因を解説します。

家賃収入よりもローン返済額が大きくなる

家賃収入よりローン返済額が大きくなることで生じる赤字です。入居者が少なかったり、想定より家賃を下げないと入居が集まらなかったりする場合、家賃収入が減ってしまいます。

不動産投資は、自己資金だけでなく金融機関から得た融資を活用するのが一般的です。毎月のローン返済額が家賃収入を上回ってしまった場合、当然ながら赤字になってしまいます。

赤字を避けるためには、当初の収支計画通りに投資を進められているか、定期的な確認が必要です。

空室の増加で家賃収入が減る

空室が増えれば、その分家賃収入が減ってしまいます。手元に入ってくる現金が減るので、キャッシュフロー上の赤字となってしまうのです。

空室が増える理由として、エリアの相場に対して家賃の設定額が高かったり、経年劣化で家が古くなり魅力を感じてもらえなくなったりすることが挙げられます。なかには、騒音などのマナー違反をしている入居者を避けるために、ほかの入居者が引っ越してしまうケースもあるようです。

空室が改善されなければローン返済も計画通りにできなくなるので、空室対策が必要です。

金利上昇による返済額の増大

変動金利でローンを組んだ場合、将来的に金利が安くなることもあれば高くなることもあることに注意しましょう。金利が上昇すれば、ローン返済額が増大して赤字になることがあります。

固定金利であれば金利は変わりませんが、契約時から金利が下がった場合、変動金利を選んだ場合と比べて損をしてしまいます。一方で、契約時から金利が上がった場合は得になります。

現在は低金利が続いているので変動金利を選択する人が多いですが、今後金利が上昇する可能性もゼロではありません。金利変動のリスクを考慮したうえで、収支計画やローン契約を進めましょう。

修繕費など突発的な支出の増大

修繕費など、突発的な支出が増大する場合も赤字に陥ることがあります。定期的な修繕はあらかじめ収支計画に盛り込まれるのが一般的ですが、地震・台風・水害などの天災や家事・事故などの突発的な出来事はいつ起こるかわかりません。

保険の範囲で対応しきれないなど、計画外の修繕を要する場合は、赤字が発生しやすくなります。

修繕費の増大を避けたいからと軽微な綻びを放置していると、不動産自体の価値や魅力が半減して入居者が減るおそれもあります。赤字を避けるためにも毎月の家賃収入から確実な修繕費を積み立てるなど、対策しておきましょう。

減価償却による費用の増大

減価償却による費用が増大し、赤字になることもあります。ローンの元金返済額と減価償却費が逆転し、手元に残っている現金と帳簿上の利益の差が大きくなってしまった場合、キャッシュフローが苦しくなるリスクがあります。

帳簿上では黒字でもキャッシュフロー上では赤字という状況になると、最悪の場合は黒字倒産するケースも考えられます。減価償却は節税効果の高い手法として知られていますが、過度な場合は健全な不動産投資を損なうおそれがあることを把握しておきましょう。

不動産投資に影響する悪い赤字を避けるコツ

不動産投資では、同じ赤字でも「節税効果のある比較的焦らずとも良い赤字」と「事業に影響する重大な赤字」が存在します。

重大な赤字を避けて不動産投資を続けるには、下記の対策を試してみましょう。

・管理会社を選び直す
・ローンの借り換えを検討する
・ローンを繰り上げ返済する
・投資物件を売却する

管理会社を選び直せば、入居者募集などのノウハウが変わり空室率を改善しやすくなります。少しでも金利が安いローンに借り換えたり、繰り上げ返済したりして金利負担分を減らすのも効果的です。

時には投資物件を売却するなど、思い切った赤字対策が求められることもあります。

前述した赤字の原因をひとつずつ摘むことができれば、クリーンな不動産投資が叶います。節税効果のために無理矢理赤字にすることなく運用できるよう、対策することが重要です。

まとめ

「不動産投資で赤字が出てしまうのは悪いこと」と考えてしまいがちですが、実は節税効果の高い赤字もあります。一方、そのまま継続していると確実に資金繰りが悪化する深刻な赤字もあり、自身が置かれている状況を正しく理解することが重要です。

家賃収入の減少や修繕費の増大など、一般的にイメージしやすい赤字要因だけでなく、金利の増大・減価償却の増大など思わぬ落とし穴があるかもしれません。

まずは赤字になる原因を知り、「悪い赤字」を避けるための対策をしていきましょう。収支計画づくりやローン契約の際はプロのアドバイスを受けるなど、万全の準備をしておくことが大切です。