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不動産投資の出口戦略とは
不動産投資においては、物件購入が入口、物件を売却するなどして手放すことが出口としてたとえることが多いです。
元々軍事用語であった出口戦略は、「いかに損失を抑えながら撤退するか」という合理的な考え方を意味します。不動産投資の出口戦略においても、最終的に物件を手放す際に、資金の流出をできるだけ防いで資産を守ることを考えなければなりません。
相続にせよ売却にせよ、出口戦略を見誤ると大きな損失を招く場合があります。遠い先の話と放置することなく、不動産投資の入口に立った時点で出口を想定しておくことが大切です。
【物件別】不動産投資における出口戦略のパターン
不動産投資における出口戦略にはいくつかのパターンが想定されます。特に物件の規模や種別は、出口戦略を考えるうえで重要なキーポイントとなるでしょう。
それでは、物件の種類ごとに、不動産投資における出口戦略のパターンを紹介します。
ワンルームマンション
都心部をはじめ、一人暮らしの多い地域で人気の物件がワンルームマンションです。比較的手頃な購入価格ということもあり、投資先として人気があります。出口戦略としては、家族で住むには手狭などの理由から、売却が選ばれる傾向があります。
ただし、単身者の需要は新しい物件に集まりやすいため、ワンルームマンションは資産価値の下落スピードが早めです。そのため、10~20年など、できるだけ短期間で売却に動くことが出口戦略の成功につながります。家賃収入と売却価格を合わせた金額が購入価格を上回ったときが検討のタイミングです。
ただし、このパターンは新築物件に当てはまるものです。中古のワンルームマンションはすでに価値が下がり始めている状態であるため、新築マンションより短期間で売却したほうがよいでしょう。
アパート
アパートの出口戦略はさまざまです。投資先として規模が小さいため、アパートとして売却するほか、更地にして土地を売却する方法もあります。さらに、新しく建て替えて投資を続ける、自身の自宅を建てるなど、選択肢は多いでしょう。
しかし、アパートはほかの物件よりも入居者の需要が変化しやすく、出口戦略のタイミングを読む難しさがあります。周辺の環境変化や大規模開発などで需要がなくなってきたと感じたら、すぐに行動を起こすことが大切です。
マンション
ファミリー向けのマンションは、ワンルームマンションやアパートよりも、入居期間が長く、空室率が低いという傾向があります。長期間安定した家賃収入が期待できるため、投資を続けることが出口戦略というパターンも多いようです。
一方で、立地や環境によっては資産価値が下がりにくいので、リタイアを考えたタイミングで高額な売却益を狙うのもおすすめです。
売却のほかにも、自宅として利用する、子や孫へ相続するといった出口戦略が考えられます。
戸建て
戸建て物件も、ファミリー向けマンションと同じく、保有し続ける投資家が多い傾向にあります。マイホームを求める人たちからの需要が高いため、賃貸のほか、土地として売却することで大きな利益を得られるでしょう。
入居者が一組だけなので、出口戦略を実行するときに入退去にかかる手間や負担が少ないのも、戸建てのメリットといえます。
場所によっては、民泊や別荘として活用し、新たなビジネスを始めることも可能です。
不動産の売却前にやっておくべきこと
不動産は手軽に売却できるようなものではありません。不動産会社にすべて任せる方法もあります。しかし、安値で売ってしまったり、売却に手間やコストが掛かってしまったりして、のちに後悔してしまうおそれもあります。
納得のいく取引ができるよう、不動産売却前にやっておくべきことを3つ紹介します。
相場を調べる
不動産会社に査定を依頼する際は、必ず事前に相場を調べておきましょう。というのも、相場が不明のままでは、不動産会社の査定が適切かどうかの判断ができないからです。中には、提示額が相場よりも低いおそれもあるため、注意が必要です。
不動産の相場を調べる手段として、無料の一括査定サービスがあります。一括査定サービスは、複数の不動産会社に査定を依頼でき、価格を比較検討できます。
また、不動産ポータルサイトで、築年数や間取りなどの条件を照らし合わせ、似ている不動産の売り出し価格を参考にするのもおすすめです。
不動産をいくらで売却したいか決める
売却したい価格をあらかじめ決めておくことも重要です。いくら条件の良い物件であっても、タイミングによってなかなか売れないケースも珍しくありません。また、不動産会社から値下げを提案されることも考えられます。物件が売れない焦りから、相場以上の値下げに踏み切ると、後悔してしまうことも考えられます。
「売却価格は○○万円から○○万円の間」と事前に決めておけば、値下げを提案された際も応じるか否か判断しやすくなります。
不動産売却の期間を決める
不動産の売却価格と合わせて、期間を決めておくことも大切です。不動産会社に依頼して不動産を売却する場合、引き渡しが完了するまで3~6ヶ月ほどかかります。基準を参考にしながら不動産売却の期間を設定しておくとよいでしょう。
売却を急ぎたい場合は価格を安くするなどの工夫が必要です。相場、もしくはそれ以上の希望価格で売却したい場合は、売却までの時間を要することを考慮しておきましょう。
不動産を売却する方法3選
不動産の売却と一口でいっても、売却方法はさまざまです。ここでは、売却方法を大きく3つにわけて紹介します。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った方法を選びましょう。
不動産会社を仲介して売却する
最も一般的な方法として、不動産会社と売買契約を結んで売却する方法が挙げられます。
営業活動を不動産会社に依頼できるため、自分で買い手を探す手間がかかりません。また、条件の良い買い手が見つかれば、高値で売れる可能性もあります。
契約方法には、以下の3つのタイプがあります。
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
それぞれの違いは以下のとおりです。
| 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
複数の不動産会社との契約 | 複数の不動産会社と契約を結べる | 契約は1社のみ | 契約は1社のみ |
契約期間 | 規定なし(一般的には3ヶ月程度) | 最長3ヶ月 | 最長3ヶ月 |
レインズへの登録義務 | 登録義務なし | 契約から7日以内 | 契約から5日以内 |
自身で買い手を見つけた場合の対応 | 仲介なしで売却可能 | 仲介なしで売却可能 | 違約金を支払う必要あり |
販売状況報告の規定 | 規定なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
一般媒介契約では、複数の会社と契約できるため、買い手を見つけやすいメリットがあります。その反面、積極的な営業をかけてもらえない場合もあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、契約が1社に絞られるぶん、積極的な営業活動をしてもらいやすい傾向があります。ただし、売却価格や時期は会社の力量によって左右されるため、会社選びは慎重に行わなければなりません。
どのタイプを選んだほうが良いのかわからない場合には、不動産会社に相談をしながら決めましょう。
不動産会社に直接売却する
不動産会社は買い手との仲介を依頼できるだけでなく、直接物件を購入してもらえるケースもあります。不動産会社が購入した物件は修繕やリフォームを経て、新たな買い手に売却されます。
この場合、売却先を見つける手間が省けるため、急いで売却したい人におすすめです。ただし、相場価格より下回ってしまうケースが多く、不動産会社との価格交渉が必要となります。
個人間で売却する
不動産会社を仲介せずに、個人間で売却する方法もあります。不動産会社の仲介を介さないことで、仲介手数料や消費税などのコストを省けるのがメリットです。また、個人売買は、知り合いや親族と取引をするケースが多く、スケジュールや条件の調節もしやすくなります。
しかし、個人間での売却はトラブルが発生しやすいため、なるべく専門家や弁護士を通じて取引するほか、専門的なサポートがある個人間取引専用のサイトを活用することも検討しましょう。
出口戦略で成功するための5つのポイント
出口戦略は、漠然と思い描くだけではなく、具体的かつ現実的に考えておかなければなりません。不動産投資の出口戦略を成功させるポイントを5つ紹介します。
1. 物件を安く購入する
需要の高いファミリー向けマンションを所有している場合でも、10年後、20年後も現在と同じ状況が続いているとは限りません。そのため、長期間所有するつもりであっても、不動産投資を始めるときには売却を視野に入れて物件選びをしておきましょう。
売却価格が低すぎると、家賃収入を合わせてもマイナス収支になってしまうおそれがあります。
そこで、大切なのが適切なコストで物件を購入することです。相場に見合わない価格で購入すると、その代金が無駄な出費になってしまったり、売却時に思わぬ安値がついてしまったりするなどの事態を招くこともあります。
近隣の競合物件をリサーチするなどして相場を把握するなど、自分で物件の価値を見極める努力が大切です。そのうえで、不動産会社や家主と交渉し、できるだけ購入価格を抑えましょう。
2. 売却時期や条件を決めておく
出口戦略として売却を考えるなら、将来的に周辺の相場や物件の状態がどのように変化するかを想定し、資産価値が大きく下がる前のタイミングを狙う必要があります。
とはいえ、こうしたニュースを常に追い続けるのはなかなか大変です。その場合には、不動産会社に売却の見積り額を出してもらい、希望に合う金額なら売却するといった方法をとるのも良いでしょう。
また、家賃収入の総額や空室率など、売却に動く条件をあらかじめ決めておくのもおすすめです。
3. 売却にかかる費用を把握しておく
売却で失敗したと感じる理由のひとつに、売却代金ばかりを意識して、売却にかかる諸費用を考えていなかった、というものがあります。
不動産会社への仲介手数料や印紙代、ローンを組んでいる場合は抵当権抹消登記費用など、不動産の売買には多額の費用がかかります。これらを差し引いた金額が売却益になるため、売却価格によっては想定していた利益が出ないケースもあるのです。
また、不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得として所得税が課税されます。譲渡所得税は5年を区切りとして所有年数によって税率が大きく変動します。
所有年数5年超だと20.315%ですが、5年未満だと39.63%と、およそ2倍の譲渡所得税がかかってしまうのです。あわせて、2037年までは2.1%の復興特別所得税が加算されます。たった1日の差で課税額が大幅に増えることもあるので注意しましょう。
4. 空き室がない状態で売却する
投資用の不動産を購入するのは同じ投資家であることがほとんどです。投資家は、その不動産がどれだけの利益をもたらすかを示す「利回り」を判断して購入を検討するため、利回りの高い状態で売却することが重要です。
不動産の表面利回りは「年間の家賃収入÷購入金額×100」で求められます。つまり、満室の状態が続くほど、高利回りで収益性の高い物件として高値がつきやすいのです。
しかし、空室が多く利回りが低いと、買い手が現れたとしても金融機関から融資を受けられないおそれがあるため注意が必要になります。
不動産は入居者がいる状態でも売却可能です。入居者のいる状態で売られている物件のことを「オーナーチェンジ物件」と呼びます。購入後、すぐに家賃収入が発生するほか、入居者募集に必要な手間も省けるため、不動産投資家に多くのメリットがあります。
また、オーナーチェンジであれば、入居者の退去にともなう交渉の手間や立退料などが省けるため、費用の負担軽減にもつながります。
5. リフォームしてから売却する
入居者からの需要があれば、不動産は高く売れます。中古物件でもリフォームすれば、資産価値を高められ、高い需要を生み出す可能性があります。
ただし、リフォームにはお金がかかります。リフォーム費用を回収したうえで利益を出せるほどの需要をもたらすのか、損益分岐点の見極めは重要です。何が必要でどこをリフォームすべきか、不動産会社など経験あるプロに相談しておくとよいでしょう。
まとめ
不動産投資の出口戦略によっては、それまでに得た家賃収入を失うほどのロスを生むリスクもあります。物件を購入する時点で、最終的にどのようなゴールを目指すべきか、具体的に検討しておくことが大切です。
また、出口戦略として売却を選ぶときには、タイミングや条件など、高く売るためのポイントを逃さないことも重要です。売却時にかかる諸経費や税金などの支出も忘れずに押さえておきましょう。