家賃滞納中の入居者は追い出し可能?適切な対処法とは

入居者に家賃を滞納されると、オーナーに入ってくる収入が途絶えてしまいキャッシュフローを大幅に悪化させてしまいます。 今回は、家賃滞納中の入居者を法的に追い出すための方法とポイントを解説します。どのような場合に実行できるかにも触れるので、家賃滞納に頭を悩ませている方のご参考になれば幸いです。

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家賃滞納者の追い出しで業者を利用するのはリスクが大きい

長期間家賃の滞納が続くと、新しい入居者も募集できずオーナーにとっては大きな痛手です。解決策として家賃滞納者の追い出しに特化した、いわゆる「追い出し屋」という業者を使うこともできますが、あまりおすすめできません。

一定の費用を支払えば、ほぼ確実に入居者を追い出してくれるメリットがありますが、法的措置を取らない強引な手法に出ることもある業者が大半です。安易に利用すると、かえってオーナーにリスクが生じます。

2009年には、追い出し行為を行った管理会社が元入居者から訴えられ、敗訴するという事例が起きました。直接嫌がらせ行為をした管理会社だけでなく、オーナーにも賠償責任があると認められています。

追い出し屋を使うことで、同じことが起きてしまう可能性はゼロではありません。十分にリスクがあることを前提に、検討する必要がありそうです。

滞納された家賃は法的措置で回収するのが適切

家賃を滞納されて困ったときは、手間とお金がかかっても法的措置を取るのがおすすめです。正しい手順を踏めば、滞納分の家賃を回収できるだけでなく、強制退去による合法的な追い出しができるかもしれません。

滞納家賃を回収するためのステップは、下記の通りです。

1.口頭もしくは書面で連絡する

2.管理会社に相談する

3.連帯保証人に連絡する

4.内容証明郵便で契約解除を通告する

5.明け渡し請求訴訟を起こす

最初は単純な支払い忘れや、残高の調整ミスという可能性もあるので、未払い家賃があることを通達するのみに留めましょう。悪意を持って家賃滞納をしている前提で厳しい連絡をしてしまうと、かえってオーナーと入居者間の関係性が悪くなってしまいます。

さらに悪い口コミで評判を落とされたり、嫌がらせをされたりして、その後の入居者が集まりづらくなるケースもあります。通達しても支払いがなければ、管理会社からの督促を行いましょう。それでも解決しなければ、連帯保証人に連絡します。

連帯保証人でも解決できない場合、最終通告として内容証明郵便を発送します。内容証明郵便では「期日までに支払いがなければ賃貸契約を解除する」旨を伝えることができ、法的な証拠としても活用できます。

最終的には、簡易裁判所や地方裁判所で明け渡し請求訴訟を起こし、判決が出たら強制退去を求めます。

強制退去には50万円程度の費用がかかる

強制退去にかかる費用は入居者の人数や荷物量により異なりますが、最大で50万円程度です。単身で荷物が少なければ10万円程度で済みますが、家族がいたり荷物が多かったりすれば、その分費用がかさみます。

汚部屋やゴミ屋敷になっていて特殊清掃が必要な場合や、長年の喫煙により全室壁紙の張り替えが必要な状態であれば、さらに費用がかかるかもしれません。

内容証明郵便の発送や訴訟を起こす以上、弁護士への依頼費用も必要です。弁護士費用は、着手金に10%前後の報酬金を加えて30万円~90万円程度になるのが一般的です。

裁判にかかる費用は原則として入居者が支払いますが、家賃滞納中であることを考えると支払い能力がない可能性もあります。残念ながら、請求してもそのまま踏み倒されてしまうケースも出てきます。

滞納家賃を回収するために押さえておきたいこと

家賃滞納が発生したときは、家賃収入が途絶えることに対する不安や誠実な対応をしてもらえないことに対する憤りで、冷静な判断がしづらくなるものです。しかし、感情で対応してしまうとオーナーの方が不利になる可能性があるので注意しておきましょう。

ここでは、滞納分の家賃を回収するために押さえるべきポイントを解説します。

家賃滞納と認められる期間

家賃滞納と認められる期間の目安は、最低でも3ヶ月前後です。人によっては給料日の関係で1ヶ月程度支払いが遅れてしまったり、忙しくて一時的に忘れてしまっているだけだったりするケースもあります。

ほかにも、家賃を支払う意思はありながらも、失業や傷病などで支払い能力をなくしている可能性も考えられます。そのため、通常の家賃支払い期限から数日~1週間程度の滞納では、法的措置をとるほどの滞納と認められにくいです。

ただし、3ヶ月を超える滞納があり、かつ解決する見込みがない場合、しかるべき手段を踏めば請求や追い出しが可能です。入居者の事情も考慮しながら、確実な手段を踏んでいきましょう。

請求できる延滞損害金の利率

延滞料として、家賃のほかに延滞損害金を上乗せして請求できる場合があります。延滞損害金の利率は上限14.6%と定められているので法外な設定はできませんが、もし損害金が得られるのであればオーナーとして大きな支えとなります。

ただし、設定した利率が適用されるのは賃貸借契約書に詳細が記載されている場合のみなので、注意が必要です。賃貸借契約書に記載されていない場合、法定利率である5%で一律計算されます。(オーナーが不動産投資を事業にしている場合は6%の適用)

記載がなくても延滞損害金そのものは請求できますが、利率が変わることだけ理解しておきましょう。

家賃滞納の時効は基本的には5年

家賃滞納の時効は基本的に5年間であり、5年以上前に滞納された家賃は請求できない可能性が高いです。滞納分を回収するのであれば、まずは5年以内を目安に行動していきましょう。

ただし、状況によって5年以上の期間が経っていても請求できることがあります。

滞納家賃(家財の保管費用や延滞損害金含む)の支払いを求める裁判を起こしている間は時効が中断(リセット)されるので、その期間は除外して考えて問題ありません。万が一裁判が長引いても、その期間中に時効を迎えて請求できなくなることはないので安心してください。

なお、裁判を起こしている場合の時効は、判決から10年に延長されます。場合によっては入居者に支払い能力がなく、10年かけてゆっくり回収しなければいけないこともあるので、あらかじめ覚悟しておく必要があるでしょう。

まとめ

家賃滞納は、オーナーにとって非常に頭の痛い問題です。手間も時間もかけて対応しなければいけないことに、大きなストレスを抱えてしまうケースは少なくありません。

しかし、確実かつ安全に滞納家賃分を回収し、可能であれば追い出しまで完了させたいのであれば、法的手段に頼るのがおすすめです。まずは通常の家賃督促から実行してみましょう。