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家賃収入があったとしても確定申告が不要な場合とは
本業または副業として不動産投資を行う場合、注意しなくてはならないのが確定申告です。確定申告で昨年度の1月1日から12月31日までの所得を報告することで、翌年に納める税金が正しく算出されます。
とはいえ、家賃収入があったとしても、確定申告が不要な場合があります。
具体的には、不動産所得が20万円以下の場合です。
所得とは、収入から必要経費を差し引いたものです。例えば、年間の不動産収入が60万円として、経費が40万円を超えた場合、確定申告は不要となります。不動産所得がマイナスだった場合、確定申告を行った方が節税となることも覚えておきましょう。
節税となる根拠は、損益通算という制度によって、不動産所得の赤字分を他の所得から差し引けるためです。所得額が少なくなる分、所得税の納付額を下げることが可能です。
また、他の給与所得や事業所得と損益通算してもなお赤字になる場合には、赤字分を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。
住宅ローンや事業用の融資を受ける際に、資産状況の確認の一環で、不動産の確定申告の写しの提出を求められる場合があります。年間所得が20万円以下なら確定申告は不要としつつも、手続きを済ませておく方が何かとメリットを得られます。
家賃収入の確定申告漏れがあった場合のペナルティ
家賃収入の確定申告漏れがあった場合のペナルティは、状況によって大きな違いがあります。ペナルティの内容は、下記のどちらに該当するかで大きく変わります。
・税務署の調査で発覚した場合
・自ら気づいて追加申告した場合
例えば、計算間違いや経費の計上漏れなど、自ら気づいてあとで申告を行った場合は、延滞税はかかるものの、それ以外のペナルティは有りません。
問題となるのは、税務署の調査によってバレた場合の追徴課税です。追徴課税には、以下のように複数の種類があります。
無申告加算税
そもそも確定申告自体を行っていなかった場合は、無申告加算税の対象です。
意図的かどうかを問わず、確定申告をしていなかった場合の無申告加算税は、本来の税額に以下の割合で加算されます。
納付すべき税額に対して50万円までの部分 | 15% |
納付すべき税額に対して50万円を超える部分 | 20% |
特徴は、税額50万円が一種のボーダーとなっていることです。申告漏れの金額が高いほうが、より多くの率で加算されるようになっています。
過少申告加算税
確定申告をしていても、意図的または計算間違いなどによって実際よりも少ない額での申告となっていれば、ペナルティの対象です。
税務署の調査や指摘によって、本来納める税額より少ない額で納税していたと判明すると、以下の割合で過少申告加算税が科せられます。
新たに納めることになった税金の部分について | 10% |
新たに納める税金が、既に納めた税金と50万円のうち多い金額を超えた部分 | 15% |
過少申告加算税も、申告と実際の金額の差が大きいほどペナルティの割合が大きくなる仕組みです。
重加算税
仮装や隠ぺいなど、「意図的に」確定申告していなかったり、少なく申告していたりした場合には、以下の割合で重加算税が発生します。
申告した税額が少なかった場合 | 納付すべき税額の35% |
無申告であった場合 | 納付すべき税額の40% |
重加算税は悪質な行為とする扱いで、最も重い追徴課税となります。
延滞税
確定申告の期限後に申告、修正申告を行った場合には、以下の割合で延滞税が発生します。
延滞税は悪質な要素がなくても、遅延した期間に応じて加算されます。
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで | 原則年7.3% |
納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後 | 原則年14.6% |
確定申告の期限は、一部の例外を除いて毎年3月15日が最終日です。うっかりミスで忘れていた場合も延滞税の対象となるため、注意しましょう。
刑罰
確定申告がなく、相応に悪質とみなされた場合は、さらに懲役や罰金などの刑罰が科されることもあります。刑罰は前科となり、勤務先からの解雇なども考えられます。
まれに、申告後に税務署から計算間違いの指摘が入ることもあります。うっかりミスだと判断されれば、「正しく書いてください」と注意される程度で済み、修正申告を提出して完了となるケースが多いようです。
家賃収入の確定申告手順とその注意点
続いて、家賃収入の確定申告の手順と、書類作成や提出の際の注意点を説明します。
家賃収入の確定申告手順とは?
確定申告の期間は、例年翌年の2月中旬から3月中旬に設定されます。下書きの用紙なども添付されているので、e-taxで提出する場合でも、初めての申告の場合は紙の様式も入手することをおすすめします。
用紙は、賃貸業の場合通常のAかBの様式を選び、収支内訳書は同封の不動産用を使用します。申告様式は毎年のように変更があるので、必ずその年のものを入手しましょう。遠方の場合はオンラインでダウンロードしたり、郵送してもらったりする方法もあります。
e-taxで申告を行う場合は、あらかじめマイナンバーカードとカードリーダーの準備が必要です。
確定申告における所得税とは所得税・復興特別所得税・住民税の3つの税を指します。それらを一度に申告して納税します。
初めての申告で、自分で提出する記入内容に不安がある場合、専門家への相談がおすすめです。各自治体に設けられた窓口で、担当者に質問をしながら申告用紙を埋めていくことができます。この際、事前に予約しておくことをおすすめします。
2年目以降の申告はほぼ同様の手順となり、難しいことはほとんどなくなります。スムーズに用紙の項目を埋めていけるように、日頃から「この経費はどの科目になるか」や、減価償却の計算方法を把握しておきましょう。
提出は紙の書類で記入する他、国税庁のホームページの確定申告書等作成コーナーで必要事項を入力してプリントアウトしたものを、最寄りの管轄税務署に提出します。
オンライン上では、e-taxでPCやスマートフォンから申告を済ませることもできます。
収入の計算方法と控除可能な経費
収入の計算については、以下の項目の合算となります。
収入となるもの | 家賃・名義書換料・承諾料・更新料・頭金・返還を要しない敷引や 保証金・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除代など |
控除可能な経費について代表的なものは以下の通りです。
経費となるもの | 税金(固定資産税や都市計画税、不動産を購入した時の不動産取得税、 また収入印紙代など) 減価償却費(建物の償却を経費として計上できる) 修繕費(部屋のクリーニング代や壁紙の交換、給湯器やエアコンの交換などの 機能維持目的のみ。グレードアップ目的は認められない) ローン金利(融資を受けて購入している場合の返済のうち金利部分) |
上記収入から経費を差し引いて、所定の様式に記入あるいは入力することで、納税額が計算されます。
家賃収入の確定申告をスムーズに進めるためのヒント
ここでは家賃収入の確定申告をスムーズに進めるためのヒントについて説明します。
不動産会社との連携を図る
不動産賃貸業の管理を委託している不動産会社は賃料・諸費用の収納や、修繕の業者手配を担当しています。不動産会社からどのような書類が届くかで、確定申告の負担度が左右されます。
事前に話し合って、スムーズな申告に繋がる関係性を構築しましょう。
不動産会社との連携は、賃貸物件を運営する観点からも重要です。担当者は工事業者や入居者の方などを通じて物件の状況を把握しているので、今後の修繕などについても、計画的に打ち合わせをする必要があります。
確定申告ソフトを利用して申告する
確定申告アプリを利用すれば、スマートフォンなどからでも記帳できます。
レシートの読み取りや、銀行口座との連携をすることで仕訳を自動入力するなど、効率的な日常の業務が可能です。申告時期になったら一気に書類をまとめて科目分けできるため、計算などの煩雑な作業がなくなります。
申告はe-taxを利用すれば、アプリのデータを活用してスマートフォンからできます。
まとめ
確定申告が不要なケースとはどのような場合か、申告漏れが発覚した場合どのようなペナルティが科せられるか、申告時の進め方などを解説しました。
確定申告は少々面倒な作業ではありますが、提出完了して納税額や還付額が確定すると、1年間の仕事の締めくくりを実感できます。
ペナルティなどを受けないよう、早めに準備をして正しく申告を行いましょう。