家賃収入にも確定申告は必要?判断基準と必要書類について

不動産投資やアパート経営などで得られる家賃収入は、20万円以上になる場合は確定申告が必要になります。確定申告の手続きを怠ると追徴課税が課されるリスクもあり、正しく理解しておくことが大切です。本記事では家賃収入にかかる税金や経費計上のポイント、住宅ローン控除との関係などを詳しく解説し、適切な申告手順と必要書類を紹介します。

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家賃収入確定申告の必要性

家賃収入が不動産所得となる理由

家賃収入は事業ではなくても「不動産所得」に分類されるため、給与所得や事業所得などとは扱いが異なる点が特徴です。物件を貸し出して得た賃料や共益費、更新料などは、すべて不動産所得として計算されます。不動産所得をしっかり理解しておくことで、確定申告の際の基礎が定まります。 家賃収入は源泉徴収がなく、自主的に申告する必要があります。そのため、所得金額の計算や必要経費の確認が自分で行わなければならず、複雑に感じる方も多いでしょう。ただし、制度を理解すれば適切な経費化や節税策も見つけやすくなります。 また、物件を複数所有している場合や同居人から家賃を徴収している場合など、収入構造が多岐にわたるケースがあります。こうした場合には、正確な帳簿管理と専門家への相談が重要になってきます。早めに対応し、スムーズな申告を目指しましょう。

20万円が判断基準

家賃収入の確定申告を考える際、多くの方が意識するのが「年間20万円」という数字です。これは所得税の申告義務の目安となる金額であり、総収入から必要経費を差し引いた後の不動産所得が20万円を超えると申告が必要となります。注意すべきなのは収入ではなく所得で判断される点です。 実際には、賃貸経営が赤字の場合でも費用を計上することで他の所得と損益通算できる可能性があります。たとえ不動産所得が赤字でも、申告をすることで節税を図れるケースが多々存在するのです。この点を見落とさないことで結果的に税負担が軽減されるでしょう。 一方で、収入全体が20万円以下の場合は確定申告が不要とされるケースもあります。ただし、申告を怠って後から追徴課税を受けるリスクを考えると、早めに必要書類を準備しておくことが良いでしょう。所得が微妙なラインにある場合には、まずは正確な数字を計算してみましょう。

家賃収入に課せられる主な税金

所得税の累進課税

家賃収入を得る際に必ず意識したいのが所得税です。この所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みとなっています。具体的には、課税所得金額に応じて5%から45%までの税率が適用されるため、正確な所得の計算が重要です。 不動産所得が大きくなるほど、高い税率が適用されます。もし十分な資金繰りを想定していないと、納税の段階で思わぬ出費に直面する可能性があります。もう一方で、適切な経費計上や控除を活用すれば、負担を抑えることも可能です。 課税所得を圧縮する手段としては、必要経費の充実化や青色申告特別控除の利用などが挙げられます。ここで正しい知識を持った税理士などの専門家の意見を取り入れると、より効率的な節税が期待できるでしょう。

住民税の一律税率

住民税は基本的に市町村民税6%と都道府県民税4%を合算した10%程度の一律課税とされるケースが多いですが、自治体ごとに微妙な違いがある点も覚えておきましょう。所得税と住民税は課税根拠が異なるとはいえ、どちらにも家賃収入が影響を及ぼすのがポイントです。 納付方法としては特別徴収と普通徴収があるため、自身の状況に合わせて選択する必要があります。会社勤めをしながら不動産所得を得ている方は、給与から天引きされる特別徴収に含まれるかどうかを早めに確認しておきましょう。 また、翌年に納付する住民税の額に反映されるため、家賃収入を得始めた初年度は想定外の支出を感じる方もいるでしょう。どのように申告して課税額が決まるのかを把握し、事前に資金繰りをシミュレーションすることが大切です。

家賃収入で経費計上できる項目

経費に認められる費用の例

不動産所得の計算上、家賃収入を得るために必要な支出は経費として計上できます。たとえば、固定資産税や都市計画税といった租税公課、修繕費や清掃費などの維持管理費、また火災保険や地震保険などの保険料が代表的な項目です。これらを正しく扱うことで課税所得を下げ、節税につなげることが可能です。 建物や設備の取得費用を数年にわたって分割して計上する減価償却費も有効な手段です。こうした仕組みを理解しておくと、大きな支出を一度に処理せずに、適切な年度で経費に反映できます。ただし耐用年数や計算方法に注意が必要なため、制度の詳細をしっかり把握しておきましょう。 ほかにも、賃貸管理に伴う交通費や通信費、専門家への報酬などを経費として計上できます。経費の対象となるかどうかを見極める基準は、「賃貸経営のために必要な支出かどうか」です。日常生活と混同しないよう、こまめにレシートや領収書を整理しましょう。

管理費や保険料の活用方法

物件の管理において管理会社へ支払う手数料や、入居者募集にかかる広告費、定期的な清掃費なども経費計上の対象になります。入居率を高めるために行う費用や、入居者満足度を向上させるための設備投資なども広い意味で経費に含まれる可能性があります。 火災保険や地震保険といった保険料は、万一のリスクに備えるための必須コストです。特に大きな被害が発生した際は保険金で補填できるため、物件オーナーにとっては必須の支出といえます。保険の種類や適用範囲を見比べ、最適なプランを選択することが大切です。 保険料は年払いや月払いなど支払いタイミングが異なるため、計上時期をしっかり管理することが重要です。年度をまたぐ支払いかどうかによって経費計上の仕方が変わる場合もあるため、帳簿上の処理を正確に行いましょう。

家賃収入で経費計上できない項目

対象外となる支出の代表例

家賃収入関連の経費は多岐にわたりますが、すべてが経費になるわけではありません。たとえば、借入金の元本返済部分は経費として計上できません。ローン返済のうち、利息部分だけが経費扱いになるので、この点を誤解しないように注意が必要です。 また、所得税や住民税などの個人が支払う税金自体は経費に含められない点にも留意しましょう。これらの税金を求められるのはあくまで収益に対する課税であり、その支払い自体を経費にすると二重計算が生じることになります。 不動産取得税や登録免許税などの一部の税金は経費に計上できるため、境界線をしっかり把握することが重要です。正しく仕分けすることで、過不足なく経費を算出でき、最終的な税金計算の精度が高まります。

プライベートとの区分に注意

賃貸経営をしていると、仕事用の経費とプライベートな支出が混在しがちです。たとえば、自家用車で物件の設備点検に行った場合に発生するガソリン代や駐車料金を、一部経費に入れるのは適切ですが、プライベートの利用分を除外しなければなりません。 プライベート用に購入した備品を経費に含めてしまうと、税務調査で指摘されるリスクがあります。実際に指摘を受けると追徴課税などのペナルティが課されるため、経費管理は慎重かつ明確に行う必要があります。 個人の携帯電話代やインターネット費用についても、賃貸事業に関連する割合のみが経費対象です。事業用と私用を分ける工夫ができると、後から領収書を見返したときに混乱が少なく済みます。管理のルールを決めておくと良いでしょう。

家賃収入の確定申告手続き

白色申告・青色申告の違い

家賃収入の確定申告には大きく分けて白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告は事前の届け出が不要で、比較的簡易な帳簿付けで済むため、初心者でもすぐに始めやすい点がメリットです。ただし、控除額がなく損失の繰り越しができないなどのデメリットもあります。 一方の青色申告は、申請手続きを経て複式簿記による記帳が求められます。その代わり最大65万円の青色申告特別控除が適用され、損失の繰越しができるなど大きなメリットがあります。将来的に大きな不動産投資を目指す場合は、青色申告のメリットを検討するとよいでしょう。 いずれを選ぶにしても、自身の投資規模や将来の展望を踏まえて分類することが大切です。青色申告の要件を満たすための帳簿づけなどを早期に習慣化すれば、のちの手間が大きく軽減されます。

申告に必要な書類一覧

確定申告を行う際は、まず申告書(一般的には確定申告書B)や収支内訳書(白色申告の場合)、青色申告決算書(青色申告の場合)を用意します。賃貸契約書や通帳の入出金明細、領収書なども証拠書類として必要となるため、早めの段階で整理しておくとスムーズに提出できます。 重要なのは、家賃収入が正しく把握できるかどうかを証明できる資料を漏れなく揃えることです。また、経費の根拠となる領収書や請求書がなければ、経費計上が認められないリスクもあります。提出期限が近づくと税務署も混み合うため、計画的に準備しましょう。 提出方法には、税務署へ直接持参する方法のほか、郵送やe-Taxによる電子申告などがあります。自分に合った提出方法を早めに選択し、不備なく提出することが大切です。期限を過ぎると延滞税や加算税が課される恐れがあるので注意しましょう。

家賃収入と住宅ローン控除

賃貸部分と自宅部分の区分

自宅と賃貸部分が一体となった物件を所有している場合、住宅ローン控除の適用に注意が必要です。住宅ローン控除は、あくまで自宅として使用している部分のローン残高に対して適用される制度であり、賃貸として利用している部分には原則適用されません。 具体的には、居住用部分と賃貸用部分の床面積割合を明確に把握しておく必要があります。賃貸部分の増改築やリフォームを行う際にも、住宅ローン控除の対象にならないケースが多く見られるため、設計段階で専門家と相談するのがおすすめです。 もし居住用部分と賃貸部分の仕切りがあいまいな場合は、税務上のトラブルになりやすいため注意が必要です。公的書類や図面で区分をきちんと示すことが、後々のトラブルを回避するポイントとなります。

控除が適用されないケース

賃貸に出している物件を自宅と見なして住宅ローン控除を受けようとするのは、法律上認められない行為です。また転勤などで一時的に物件を他人に貸し出している場合でも、一定の要件を満たさない限りは控除対象から外れるため、事前確認が欠かせません。 誤って控除を受けると、後から修正申告を求められたり、追加税額を支払うリスクが生じます。そのため、どの部分が居住用でどの部分が賃貸用なのか、曖昧なまま申告しないよう注意を払いましょう。もし不明点があれば早めに税務署や専門家に相談することが大切です。 住宅ローン控除は大きな節税効果をもたらしますが、不正利用にはリスクが伴います。対象要件を事前にチェックし、誤解のない申告を心がけることが、トラブル回避に役立つでしょう。

家賃収入の節税対策

青色申告特別控除を活用する

不動産所得における青色申告特別控除は、最大65万円まで所得を圧縮できます。適切な複式簿記と帳簿管理が必要ですが、それに見合ったメリットが得られるため、多くの不動産オーナーが導入を検討しています。通信費や管理費といった日常的な経費もしっかり記載しましょう。 また、青色申告を選択することで青色事業専従者給与や貸倒引当金など、追加の控除制度を利用できる点も魅力です。こういった制度は白色申告では利用できないため、多少の手間をかけても青色申告を選ぶメリットは大きいでしょう。 ただし、青色申告の適用を受けるためには税務署への申請と期限内の届出が必須です。必要な手続きを漏れなく行うことが重要です。書式の書き方などは、国税庁のウェブサイトで確認できるので活用してみてください。

損益通算と繰越控除の使い方

家賃収入が赤字の場合でも、不動産所得は損益通算を利用できる可能性があります。具体的には、給与所得や事業所得などほかの所得と赤字分を相殺することで、所得全体を圧縮できる点がポイントです。同じ年に適用できなかった損失も、条件を満たせば繰越控除として翌年以降に利用できる場合があります。 赤字を有効に活用できるかどうかで、最終的な税負担は大きく変わります。ただし、経費を過剰に計上しすぎると税務署のチェックが厳しくなるリスクもあるため、正確な帳簿管理が欠かせません。必要な領収書や契約書をしっかり保管しておきましょう。

家賃収入の経費計上時に気をつけたいポイント

領収書の保管と書類整理

経費計上を行うには、支払い内容を証明する領収書や請求書が欠かせません。これらは日付、金額、支払い先などが確認できる形で保管する必要があります。また、紙ベースだけでなく、電子データとして保存する場合にも国税庁が定める一定の要件を満たす必要があるので注意しましょう。 領収書がない場合でも、メモや日記帳などで詳細な記録を残すことができれば、経費として認められる可能性があります。ただし書面の裏付けが全くない場合は、税務署の審査で却下されることも多いため、可能な限り正規の書類を揃えておくのがベストです。 年末や確定申告直前になって慌てて書類を探し回るケースは珍しくありません。定期的に整理する習慣を持てば、スムーズに作業を進めることができ、漏れや重複のリスクを大幅に減らせます。

過度な経費計上のリスク

経費計上は節税の要となりますが、あまりにも過剰に計上すると金融機関からの信用を損なう恐れがあります。なぜなら、銀行や信用金庫などは借入申請の際に申告書を確認し、所得を審査の材料とするからです。過剰な経費計上で所得が低く見えると融資が受けにくくなることがあります。 また、税務調査で経費の実態が伴わないと判断されると、修正申告や追加納税を求められるリスクが高まります。結局は余計な手間や金額を負担することになるため、正当な経費とそうでないものをはっきり区別しておくことが大切です。 不動産投資を長期的に成功させるには、健全な財務状況を維持することが重要です。適切な範囲での経費計上と公正な所得把握は、信用力も高め、将来の投資展開をスムーズにする鍵となります。

まとめ

家賃収入が20万円を超える場合、確定申告の手続きを正しく行うことが大切です。所得税や住民税、必要経費の計上方法、住宅ローン控除の可否など、押さえるべき要点は多岐にわたります。青色申告による特別控除や損益通算を活用すれば、節税効果も期待できるでしょう。適切な判断基準を踏まえて書類の準備と管理を行い、期限内に申告を完了させることで、後々のリスクや手間を減らすことが可能です。ぜひ専門家や税務署の情報を参考に、無理なくスムーズに確定申告を進めてください。