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確定申告とは
サラリーマンの方は毎月の給与から源泉所得税が引かれています。年末調整ではこの源泉所得税額と年間の所得税の差額を調整するもので、自分で税金の申告をする必要はありませんが、控除書類などの提出が必要となります。
基礎控除の他、扶養控除や配偶者控除、保険料の控除などが受けられます。まさに現在国会において控除の拡大について議論されていますので、より注目度が高まっていると言えます。控除が増えれば手取りが増えますので、手取りが増える事によって、より消費・経済の拡大が期待される訳です。
年末調整をすると源泉徴収票が発行されます。
これは1年間の個人における労働所得のいわば「通信簿」みたいな存在と言えます。
所得控除の例 雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除<資料:国税庁> |
サラリーマンの方で確定申告が必要な場合は
サラリーマンの方で確定申告が必要となるのは給与の額が年間2,000万円を超える方、2カ所以上から給与をもらった方や副業の所得が20万円を超える方などです。つまりサラリーマンの方でもマンション経営をしていて不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となります。
ちなみに令和5年においてはサラリーマンの方で年収が2,000万円を超えた方がざっと30万人もいらっしゃいました。景気拡大とともにこれから先も増えていくのではないでしょうか。
また近年では多くの企業で社員の方の副業を容認しており、それに伴い会社員の確定申告が増えつつあります。
確定申告書は国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成や送信ができます。また税理士に依頼した場合は、税理士費用は経費として計上できます。
サラリーマンの方で確定申告が必要な場合の例 ①給与の年間収入金額が2,000万円を超える人 ②1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人 ③2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人 など <資料:国税庁> |
マンション投資の確定申告
マンションなど不動産投資をしていて一定の賃料収入がある場合は、毎年正しい確定申告をする事が大切となります。
マンション経営をしている場合には家賃収入が入ってきますが、この家賃収入が不動産所得と勘違いする方もいらっしゃるようです。
税務上においては年間の家賃収入から必要経費を差し引いた分を「不動産所得」といいます。また不動産収入は賃料の他にも礼金や更新料なども入ります。敷金や保証金などのうち、後に返還を要するものは含まれません。
不動産所得が黒字の場合は税金の支払いが必要となります。逆に不動産所得が赤字の場合は、後で述べますが「損益通算」の対象となり、所得税の還付や住民税の軽減などにつながる事もあります。
投資マンションを購入する際には、実際にどの位の税負担、または税務効果があるかの目安を算出する事ができる場合もありますので、お住まいの近くの税理士さんなどにも相談してみる事もできます。
マンション投資の利回りキャッシュフローと税務上の経費
マンション投資の利回りを見る場合には、単純に賃料収入と物件価格を比較したものが「表面利回り」となります。これは例えば年間家賃収入が120万円、物件価格が3,000万円の場合、120万円÷3,000万円=0.04、つまり表面利回り4%となります。
賃料収入から年間の経費を差し引いた金額(NOI=「ネット・オペレーティング・インカム」)と物件価格を比較したものは「実質利回り」と呼ばれます。
「実質利回り」の場合は年間のキャッシュフローから算出しますが、税務上の経費は実際の支出と異なり、ローン返済の元金など経費とならないものや、減価償却費のように実際には支出がなくても経費となるものなどがあります。
マンション経営の損益通算とは
マンション経営が税務上赤字の場合は給与所得から差し引ける「損益通算」ができます。
初年度などは購入時の諸費用など経費が多くかかります。また実際には支出のない「減価償却費」などがあり、家賃収入から経費を引いた不動産所得が赤字となる事があります。
この場合に不動産投資の赤字分を給与所得など他の所得から差し引く事ができますので、これを「損益通算」と言います。
多くの所得税などを払っている方には節税となる事があります。特に高額所得者で多くの所得税を支払っている方には税金の還付も多くなるケースもあります。かつて中日ドラゴンズの落合選手が年収がプロ野球選手として初めて1億の大台に乗った時は大きな話題となりました。しかしその頃は所得税が70%、住民税が13%という時期もありました。つまりいくら稼いでもその大半が税金として消えていく訳です。そこで合法的な節税対策というものがより注目を浴びた訳です。
但し別荘などの貸付、また土地取得分のローン利息などは損益通算の対象となりません。
損益通算によって節税効果がある場合は、住民税や社会保険料などの減額の効果がある場合もあります。またマンション経営の中でリフォームをする際には例えばスペックの交換などで10万円以上のものは償却資産として扱われ、その単年の経費としては計上できない事などのルールがある事にも注意を払う事が大切です。
損益通算の対象とならないもの ①別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの ②不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額 <資料:国税庁> |
マンション経営の経費とは
会社などの経営では人件費などのかかった費用を経費として収入から差し引く事ができます。これと同じ様にマンション経営にかかった経費は不動産収入から差し引く事ができますので、それだけ税負担の軽減になります。
また不動産経営に関するものでも経費になるものとならないものがあります。
経費となる項目と内容について見てみましょう。
借入金の利息分
サラリーマンの方など個人が投資用マンションを購入した際に組んだローンにつきましては、ローンのうち利息部分が経費となります。
しかし利息分と言って土地部分は損益通算の対象とはならず建物部分の利息がとなります。
また個人ではなく法人が投資用不動産を所有した場合には土地及び建物、両方の利息が経費として計上できます。このような細部につきましては所轄の税務署に相談する事が大切です。
減価償却費
詳しくは⑦で述べますが、減価償却費は毎年の経費となります。減価償却費は毎年の支出を伴わない経費なので、税務上の経費を多くする事ができます。
建物の管理費・修繕費
マンション管理会社に支払う管理費、修繕積立金などは経費となります。
租税公課
マンション経営に関係する税金は経費となります。
不動産取得税・登録免許税・印紙税、固定資産税・都市計画税などです。ご自身の所得税や住民税などは不動産投資の経費とはなりません。
その他
その他、マンション経営に関係する費用は経費として計上できるものもあります。
実際にかかった現地視察の交通費、入居者募集のための費用や仲介手数料、情報収集のための資料代、不動産会社などとの打ち合わせ費用、税理士報酬、通信費などがあります。
建物にかける火災保険や地震保険なども経費となります。
減価償却とは
建物や設備などは取得した時に全額経費として計上できませんが、時の経過とともに一定期間に配分していきますので、この配分を経費として計上できます。マンションの建物部分を毎年分割して経費として計上できるもので実際には支出のない経費です。税務上の使用可能期間は法定耐用年数として定められています。土地部分は価値が減少しないので減価償却はできません。
一般的なマンションの構造である鉄筋コンクリート造の住宅は耐用年数は47年となっています。しかしこの年数は税務上のものであり、実際の耐用年数とは異なります。
また建物の付帯設備も減価償却資産となりますが、耐用年数は建物とは別に定められています。
住宅の減価償却の耐用年数
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
木造モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 | 47年 |
<資料:国税庁>
マンションの土地建物比率とは
マンション価格は土地部分と建物部分から構成されています。土地建物割合が分からない場合は、マンション価格にかかる消費税から算出できます。これはマンション価格のうち建物価格にのみ消費税がかかり、土地部分にはかからないからです。
マンション価格が3,150万円で消費税が150万円の場合、150万円÷10%で建物価格は1,500万円となります。つまりこの場合は土地1,500万円、建物1,500万円+消費税150万円という事になります。
損益通算は土地部分のローン利息は算入できませんので、建物比率が大きいマンションほど損益通算には有利となります。
建物比率が高いマンションとは、都心部など地価の高いエリアから少し離れた比較的地価の安いエリアの物件などが該当します。
これは建物の建築費は全国どこでも同じ仕様・条件なら同じですが、地価が高いエリアはそれだけ土地価格が多くなるからです。
確定申告の注意点
確定申告の期限
2025年(令和7年)分の確定申告書の提出期限は2025年2月17日から3月17日となっています。この期限を過ぎてしまうとペナルティが発生する場合もあります。
書類の補完
経費の領収書などの必要書類は、紛失しないようにまとめて保管しておく事が重要です。
税理士以外に確定申告の依頼はできない
自分で確定申告をしないで依頼をする場合には、税理士以外には依頼できません。これは無償であっても同様です。税理士以外に確定申告書類を作成してもらう事は税理士法違反になりますので注意が必要です。
不動産会社による税務相談会の利用も
確定申告の時期には税務署や市役所などで申告書作成会場が開かれますので、そこで相談しながら申告書の作成も可能です。
投資マンションを購入した不動産会社では、確定申告時期になると税務相談会を開催する場合があります。この場合は税理士が相談に乗ってくれるので安心です。
また税務署でも申告相談を開催している場合もありますので、お近くの税務署のホームページなどで確認してみて下さい。
最近はインターネットで申告する方も増えています。税務署のホームページから案内に従って自宅で確定申告書を作成できます。