目次
タワーマンション節税とは?
タワーマンション節税(タワマン節税)とは、タワーマンションの市場価格と相続税評価額の差を活用することで、相続税の節税を図る方法のことを指します。
タワーマンションを所有することにより、相続税の課税対象となる財産の評価額を抑えることができ、結果として相続税の節税効果を得られるのです。
タワマン節税は、高額な資産を持つ人にとって有効な節税策の一つとして注目されています。
2012年頃からアベノミクスにより物件の価格上昇が起こり、2015年に基礎控除額が引き下げられたことで、タワマン節税のブームが巻き起こりました。
相続税とは?
相続税とは、亡くなった人(被相続人)から、相続や遺贈によって財産を取得した人(相続人)に対して課税される税金のことです。
相続税の課税対象となる財産には、不動産や現金、有価証券、非上場株式などさまざまなものが含まれ、相続した財産の金額に応じて税率が決まります。
相続税の税率は累進制となっており、相続した財産の金額が大きくなるほど、適用される税率が高くなります。
【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
タワーマンションの相続税評価額は、その市場価格と比べて低く抑えられる傾向があるため、この差を利用して相続税の節税を図ることができるのです。
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や家屋、償却資産などの固定資産を所有している人に対して課税される税金のことです。
固定資産税の税率は、各自治体によって異なる場合がありますが、原則として固定資産の価格に1.4%を乗じた金額が課税されます。
場合によっては、「新築住宅特例」などで減額措置(税額を減少させる措置)が適用されるケースもあります。
タワーマンションの場合、建物の評価額は通常のマンションに比べると高くなる傾向にあるため、土地と建物の固定資産税を平均すると、節税効果はあまり見込めないといえるでしょう。
固定資産税は、通常年4回に分けて納税します。納期は市町村の条例により定められます。
⇒【早見表で分かる】投資マンションの売却にかかる税金|税金対策も
タワーマンション節税の仕組み
タワーマンション節税を有効に活用するためには、その具体的な仕組みについて理解しておく必要があります。
ここでは、タワーマンション節税の仕組みを詳しく解説していきます。
相続税評価額が抑えられる
タワーマンションの一戸あたりの相続税評価額は、実勢価格と比べて低くなる傾向があります。
マンションの土地部分の相続税評価額は「マンション敷地全体の評価額 × 区分所有する敷地権の割合」で計算します。
タワーマンションの平均総戸数は通常のマンションに比べて多く、戸数が多いほど一戸あたりの敷地権割合は低くなるため、結果として土地の相続税評価額を抑えられるのです。
物件の実勢価格と相続税評価額の差が大きいほど、相続税の節税効果は高くなるといえます。
相続税評価額の計算例
タワーマンション節税の効果を具体的に理解するために、相続税評価額の計算例を見てみましょう。
例えば、実勢価格が1億円のタワーマンションがあったとして、このタワーマンションの相続税評価額が6,000万円になったとします。
相続税率が50%だとすると、実勢価格で計算した場合の相続税は5,000万円となりますが、相続税評価額で計算した場合の相続税は3,000万円となります。
つまり、この場合はおよそ2,000万円の節税効果が見込めることになるのです。
このように、タワーマンションの相続税評価額が実勢価格と比べて低く抑えられることで、相続税の大幅な節税が可能となります。
ただし、節税効果の大きさは物件の状況によって異なるため、専門家に相談しながら適切に判断することが重要です。
小規模宅地等の特例が適用される
タワーマンションを相続する際には、小規模宅地等の特例の適用を受けることで、さらに相続税の節税効果を高めることができます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅や事業用宅地等について、一定の面積まで相続税の課税価格を減額する制度のことです。
特定居住用宅地等の場合は、330㎡までは80%の減額措置を受けることができ、貸付事業用宅地等の場合は、200㎡までは50%の減額措置を受けることができます。
タワーマンションがこの特例の適用対象となる場合、相続税評価額から一定割合を減額することができるため、課税価格をさらに引き下げることが可能となるのです。
ただし、小規模宅地等の特例の適用にはいくつかの条件があります。
タワーマンションを相続する際は、これらの条件を満たしているかどうかを必ず確認しましょう。
2024年にタワーマンション節税のルールが改正
2024年1月1日以降、相続や贈与によって取得した区分所有形態のマンションの評価額計算ルールに変更が加えられました。
この改正により、タワーマンションを利用した節税効果が以前と比べて限定的になることが予想されます。
以下、ルールが変更された背景や具体的な変更内容、新しい計算方法について解説します。
評価方法改正の背景
タワーマンション節税は、これまで多くの富裕層に活用されてきた節税策でしたが、一部で過度な節税につながっているという指摘がありました。
国税庁は、実勢価格と相続税評価額の乖離が大きいタワーマンションについて、適正な評価を行うための見直しを進めてきたのです。
国税庁が公表した「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」では、マンションの相続評価額と市場価格の乖離率は、2018年で2.34倍まで拡大したとされています。
つまり、今回の改正は、タワーマンションの評価方法をより実勢価格に近づけるための措置といえます。
区分所有補正率の計算方法
改正後の評価方法では、タワーマンションの評価額を算出する際に、新たに「区分所有補正率」が導入されました。
区分所有補正率は、建物の階数や専有面積、立地などを考慮して決定されます。
【区分所有補正率の計算方法】
項目 | 計算方法 |
評価乖離率 | 評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220 ・A:一棟の区分所有建物の築年数 × △0.033 ・B:一棟の区分所有建物の総階数指数 × 0.239 ・C:一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階 × 0.018 ・D:一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195 |
評価水準 | 評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率 |
区分所有補正率 | ・評価水準 < 0.6:評価乖離率 × 0.6 ・0.6 ≦ 評価水準 ≦ 1:補正なし ・1 < 評価水準:評価乖離率 |
評価乖離率の計算式を基に評価水準を算出し、評価水準が0.6未満の場合は乖離が大きいと考えられるため、区分所有補正率の計算によって0.6まで相続税評価額が引き上げられます。
従来の評価方法と比べて、より実勢価格に近い評価額が算出されるようになったといえるでしょう。
タワーマンション評価方法改正の影響
タワーマンションの評価方法が改正されたことで、タワーマンションを利用した節税効果は以前ほど大きくは見込めなくなりました。
区分所有補正率の導入により、実勢価格と相続税評価額の差が縮小するため、節税額も限定的になるのです。
特に高層階で専有面積の広いタワーマンションは、区分所有補正率が高くなることから、節税効果が大きく減少することが予想されます。
ただし、タワーマンションによる節税自体が否定されたわけではありません。物件の選び方を工夫することで、一定の節税効果を得ることは可能です。
タワーマンション節税を検討する際は、改正後のルールを踏まえ、慎重に物件を選ぶ必要があるでしょう。
タワーマンション節税以外の対策が重要に
タワーマンション節税のルール改正により、以前と同じように大幅な節税効果を得ることが難しくなったため、他の対策方法との組み合わせがより重要になりました。
例えば、生命保険に加入して、相続税の課税対象額を減らすなどの対策が挙げられます。
生命保険金は相続税の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)が設けられているため、適切に活用すれば効果的な節税につながるのです。
また、生前贈与を行って相続財産そのものを減らすことも有効な対策の一つです。
贈与税の基礎控除を利用しながら、計画的に資産を移転していくことで、相続税の負担をある程度軽減できるでしょう。
さらに、自分自身で不動産投資の運用・管理を行い、余分な手数料やコストを抑えて資産を増やしていくことも重要です。
まとめ
この記事では、タワーマンション節税の仕組み、2024年の相続税評価額の計算ルール改正について解説しました。
改正により、タワーマンションを利用した節税効果は以前ほど大きくは見込めなくなりましたが、物件選びを工夫することで一定の効果は得られるでしょう。
今後はタワーマンション以外の節税対策、例えば生命保険の活用や生前贈与、自分での不動産投資の管理などとの組み合わせがより重要となります。
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