トランプ&石破両政権が与える経済・不動産市場への影響とは

2024年もあっという間に冬の季節となり、足早に時間が過ぎていく時期となってきました。今年も国内外において様々な出来事がありましたが、今回のコラムでは4年ぶりに大統領の座に返り咲いたトランプ政権における経済・不動産に与えた影響と今後の日本経済、不動産市況に与える影響について石破新政権誕生の要素も含めて述べてみたいとおもいます。

この記事は約10分で読み終わります。

2017年のトランプ大統領の就任と米国経済

トランプ氏は今回、2回目の大統領就任となります。トランプ氏が最初に大統領となった際は、2016年11月8日の米大統領選で勝利し、翌年2017年1月20日に大統領として就任しました。大統領の任期は4年ですので2021年1月20日まで在任しました。

日本人から見た米国大統領の雰囲気が従来とあまりにもかけ離れた方で、驚きを隠せなかったのは周知の通りです。歯に衣着せぬ大胆な言動、さらに特筆すべきは不動産を中心とする実業家で「不動産王」と言われる位の方でありました。また国家非常事態宣言を発令しメキシコとの国境に壁を建設するなど突飛な行動でも世界の注目を集めました。

最初に第1次トランプ政権発足後の経済市況・不動産市況について検証してみたいと思います。

1次トランプ政権と米国経済の動き

トランプ大統領就任後の政策と経済の動きをざっと見てみましょう。

トランプ大統領は2017年に法人税率の一律21%の引き下げなど大型法人減税を実施しました。これは米国経済に効果があったと言われています。

しかし2018年には米中貿易戦争が始まり、米国と中国がお互いに高関税をかけあう事態となりました。その後、12月1日にアルゼンチンで行われたG20でトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談が行われ、米国の関税引き上げは猶予となりました。

2018年は米国経済は比較的順調で、実質成長率は前年比2.9%と、EUや日本などを上回り、失業率も低下していました。

しかし2020年の新型コロナの発生により、こうした経済環境の改善は帳消しになったとも言われています。

また米国消費者物価指数(CPI)の推移を見ても、トランプ大統領が在任中の2017年から2020年まではほぼ安定的に上昇した事が分かります。

米国消費者物価指数(CPI)の推移

消費者物価指数(CPI

2016

240.0

2017

245.1

2018

251.1

2019

255.7

2020

258.8

1982年~1984年=100

<資料:国際通貨基金>

米国金利と為替の動き

トランプ氏が最初に大統領となった時には大型減税や関税引き上げなどの他、大型のインフラ投資や財政再建などを公約としていたので、トランプ氏が大統領選で勝利すると景気上昇の期待から米国の金利は大きく上昇しました。米国の金利は開票前に1.7%台でしたが、開票後には2.5%程度にまで上昇しています。ドル高や株高も進み「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生しました。

2017年1月にトランプ政権が発足すると、一旦は金利が下がりましたが2017年の9月頃からは金利も上昇傾向となり、2017年12月には議会で減税法案が成立し、その後は金利は上昇傾向となりました。このように第1次トランプ政権では金利が上昇傾向にあったと言えます。

しかしトランプ大統領は金融緩和を求め、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長にパウエル氏を指名しました。金融緩和により景気向上やドル安誘導の狙いがありました。2019年には数回の金利の引き下げも実施されています。

為替は2016年は年末にかけて円安ドル高で推移していました。「トランプ・ラリー」後の2017年から2020年にかけては、おおよそドル安傾向で推移しました。

株価の動き

次に株価の動きを見てみましょう。

2016年にトランプ氏が大統領選に勝利すると米国の株価は上昇しました。前述した「トランプ・ラリー」と言われる現象です。

さらに2017年には税制改革により株価は上昇、特に情報系の株価が大きく上昇しました。

しかし2018年には米中貿易摩擦の影響により株価は下落傾向となりました。2019年には中国製品への関税の引き上げが導入され株式市場への影響が深刻化されましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)による連続利下げが行われ、この結果株価は上昇傾向となりました。

2020年には新型コロナが発生しましたが、米国では経済対策や金融緩和により株式市場は安定が見られていました。

このようにトランプ政権では結果的に株価の上昇となりました。

また新型コロナの発生は結果的にはハイテク株の上昇に結び付く事となりました。

不動産市況への影響は

では米国の不動産市場はどう動いたでしょうか。

トランプ大統領が就任した2017年頃も住宅価格は上昇傾向にありました。

但し2018年から2019年にかけての減税政策の中で、不動産購入税制の変更や中国からの不動産投資の減少などの影響もありましたが、長期的には住宅価格はゆるやかな上昇傾向となり、新型コロナ後は一層の価格上昇となりました。

住宅ローン金利は2019年頃まで5%程度でしたが、2019年の利下げにより金利は低下し、住宅需要の増加につながりました。

こうしたトランプ政権について過去を振り返って見ると、大型減税による経済効果、米中貿易摩擦と利下げなどありましたが、新型コロナ発生まで米国経済は順調に推移し、またコロナの影響も2020年にはそれほど発生していませんので、任期を通じて経済的には順調であったと考えられます。

2025年の第2次トランプ政権

2025年の大統領選ではトランプ氏が返り咲き

米国における2025年の大統領選挙においては一時ハリス氏優勢の局面があったり、混沌とした状況が続く中いつのまにかトランプ氏優勢の状況となり、結果だけを見るとトランプ氏の圧勝という結果になりました。

トランプ氏の当選により、様々な分野において動きが活発化してきています。日本の不動産業界にも大きな影響を与える為替の状況を見てみると、トランプ氏が当選する前からすでにトランプ氏当確を予想するかのように為替はドル高に向かいました。

現在では11月30日現在、1ドル=約150円ですが、トランプ氏の政策いかんによっては、インフレの先に起こる需要減退の影響を受けドル安円高の局面も予想されます。

為替の動向は不透明感が漂いますが、日本においていまだ実質賃金が上がらない状況で日銀の金利上げ幅も緩やかになる事が予想されますので、今しばらくは円安ドル高の状況が続き、

引き続き

①インバウンドの増加

②輸入物価の上昇

③海外からの日本への不動産投資への加速

のシナリオはある程度予測できるのではないかと考えます。

トランプ氏の掲げる政策は

トランプ氏が掲げる政策として法人税・個人所得税の減税が挙げられます。

米国の法人税が下がれば米国の多くの企業の財務内容は改善され収益企業の収益力が高まります。収益力が高まれば社員の給料を上げたり、設備投資を強化したりと経済の活性化に大きく寄与します。

さらに米国からみた海外の企業が米国本土に支店を移したり新たな外資系企業が拠点を移したりします。

そうなるとさらにそこから新しい雇用が生まれ、またオフィス需要なども高まり米国における特に都心エリアの不動産価格にも影響を与える事が予想されます。

また個人の所得税が下がれば、現在米国はインフレで物価も非常に高いですが、減税により購買力が高まり、消費にも良い影響を与える可能性を帯びています。

米国は何と言っても世界経済における「エンジン」の役割を果たしますので、米国経済の活性化は日本経済にも大きな影響を与えると考えられます。

関税引き上げの影響は

トランプ氏は米国第一主義、いわゆるアメリカファーストの意向を表明しています。

自国の経済、雇用を守るという事は当たり前と言えば当たり前ですが、関税強化により自国の経済・雇用を守るにしても「その程度」が大切と考えられます。

世界の国々で米国に多大な輸出をしている企業の代表的な国としてはドイツ・中国・日本が挙げられます。

特に自動車や製造業を中心に高額のものから、食品・一般耐久消費材など広範囲に及びます。

日本においても対米輸出における黒字額は近年でも右肩上がりとなっており、トランプ氏からも注視されています。

かつて1985年のプラザ合意の時も対米黒字が大きく膨らみ、日本は米国から円高政策を求められた事もありました。

関税を課す事により、関税があまり度を過ぎるとドイツ・中国・日本などの輸出産業にも影響を与えかねませんので、今後の石破政権の腕の見せ所ではないでしょうか。

移民対策

トランプ氏の政策の一つに不法移民の対策が挙げられています。

今回トランプ氏が当選した要因の一つに若年層・低所得者層からの支持が多かった事が要因の一つと言われています。バイデン政権のもとでは株価も上昇し、不動産も上昇し、消費者物価も思い切り上昇し、ハンバーガーが日本円にして約800円、ラーメン一杯が2,000円以上という驚愕の値上がりの中で低所得者層は耐え忍んで生活してきた訳です。

そこでトランプ氏は移民政策を敢行し米国民の「雇用を守る」という事を目的とした移民政策を立ち上げた訳です。但し移民政策により逆に人手不足という状況の陥り、賃金の上昇がインフレさらに高めてしまったら本末転倒の政策にもなりかねません。

このように新政権のもとではあらゆる課題・問題も山積していると思われますが、これは決して日本から見ても他人事ではなく、米国経済の動きが日本経済にも様々な視点から影響を受ける事になります。

日本の投資市場にも影響が及ぶ保護政策

トランプ政権においては全般的に保護政策が敢行されます。これは不動産業界でも同様で海外の投資家が米国不動産市場に算入したり投資をする場合、今後海外投資家への規制がされる事も可能性として残ります。その結果、日本の不動産市場が「キャピタルフライト」「アセットプロテクション」という視点から改めて日本、特に東京・大阪など大都市圏の都心部の不動産の投資が加速すると考えます。

日本の資産運用からみ見た影響は

ここでちょっと視点を変えて日本における資産運用という観点から述べてみたいと思います。

資産運用においては外的要因の影響を強く受ける資産運用(例えば、為替やFX)などと、外的要因の影響を比較的受けづらい内需型の資産運用に分ける事ができます。

健康的な生活を維持していく上で栄養のバランスが大切なように、これからの時代は資産運用のおいてもそのバランスが大切と考えます。

すべての資産運用を内需型にするのではなく、バランスが大切です。

例えば一つの方法として内需型の資産運用である不動産投資・マンション投資を中心にオールカントリーなどの世界的な株式投資、米国における投資信託などバランスよく投資する事が大切と考えます。

2025年1月20日に就任する次期トランプ大統領はお父様が元々不動産経営者で、その後を継ぎ、様々な不動産取引で成功しNYに50階のトランプタワーを立ち上げるまでのし上がった、まさに不動産王とも言えます。邪念ですが、傍から見ていて、不動産の価値が下がるような政策はしないのではないでしょうか(笑)

米国における不動産の価値が上がれば相対的に日本の不動産の価値に割安感が台頭してくるというシナリオも考えられます。

石破政権が与える経済・不動産市場への影響は

国民の賃金・所得アップへ

岸田政権の所得倍増計画もあり、2023・2024年の春闘における賃金アップはかつてない程でした。筆者のよく知っている大阪の不動産会社では学卒でなんと初任給が30万円という会社もありました。

世の中全体の賃金が上がる事は良いですが、依然大企業と中小企業との格差は残ります。

今年の夏、一時実質賃金がプラスに転じた時期もありましたが、実質賃金はマイナスの状況が続いています。石破政権においては賃金の持続的な上昇を目指すべく様々な政策を施します。

また現在議論されている手取りアップの税制改正が実現すれば国民の可処分所得が増え、消費増大に寄与します。

住宅業界においては年収が上がる事により住宅ローンの組める額が拡大し、賃貸市場においても家賃の上昇、あるいは賃貸住宅における住み替えなど住宅業界が活性化されます。

貯蓄から投資へ

この政策も岸田政権より受け継がれる政策ですが、石破政権ではここにさらにテコ入れする可能性があります。

但し筆者の持論としては、NISAやiDeCoへの投資拡大が結果的に可処分所得を減らすリスクもある事を認識すべきと考えます。

そこで同じ投資でも赤の他人の家賃収入からローンの元金を返済できる不動産投資への着目度がさらに上がるのではないでしょうか。

増税の可能性

石破政権においては法人税の増税や高額所得者への増税も視野に入っているそうです。

増税した分を子育て世代や所得の低い方々に還元するという事に立脚していますが、増税へのハードルは高いかと考えます。

但し不動産投資の場合には損益通算制度というのがあり、高額所得者ほど一般的には不動産投資において節税効果が高くなるというメリットもあります。