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不動産価格の将来予測では、多くの方が不安を感じています。
特に、2025年問題による市場への影響を心配する声が増えているのが現状です。
この記事では、2024年の現状分析と今後の展望をはじめ、不動産価格の変動要因、売却や購入のタイミングを見極めるヒントを詳しく解説します。
2025年以降の不動産市場がどのように変化するのか、エリアごとの特徴や価格変動の可能性を知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
2024年時点では不動産価格は上昇傾向
2024年の不動産価格は、緩やかな上昇傾向を維持しています。
首都圏における中古マンション価格は、2023年8月時点で前年同月比10.0%増を記録しました。この背景には、低金利環境の継続や都心部での根強い住宅需要があります。
また、国土交通省が発表している不動産価格指数を見ると、マンション価格は2010年を基準値として2024年には約2倍の水準まで上昇しています。都市部における人口集中や、利便性の高い物件への需要増加が、価格上昇を後押ししている印象です。
さらに、建築資材の高騰や人件費の上昇も、新築物件の価格に影響を与えています。その結果、中古物件の価格上昇の要因になっているのも現状です。
不動産価格が上昇している理由
ここでは、不動産価格が上昇している理由を詳しく解説します。
建築コストが高くなっている
建設業界における資材価格と人件費の上昇は、不動産価格全体を押し上げている大きな要因です。
国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2020年度以降の建設工事費は急激な上昇カーブを描いています。特に2023年には木造住宅と非木造住宅の両方で、2015年度を基準として20%以上の上昇が見られました。
この背景には、ウクライナ情勢による資材価格の高騰や、円安の影響による輸入建材の価格上昇があります。また、建設業界の人手不足も深刻化しており、人件費の上昇が工事費全体を押し上げている要因といえるでしょう。
結果、新築物件の価格上昇は避けられない状況です。中古物件市場にも、さまざまな影響を及ぼしています。
インバウンド需要が高まっている
訪日外国人の急増も、不動産市場に大きな影響を与えています。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年9月の訪日外客数は287万2,200人で、前年同月比31.5%増を記録しました。2019年の同月と比較すると、26.4%の増加となっています。
観光客の増加は、都市部の商業不動産価値を押し上げ、宿泊施設や商業施設の需要回復につながっています。円安基調が続くなか、外国人投資家による日本の不動産投資も活発化しており、大阪市中央区の道頓堀地区や岐阜県高山市などの人気の高い観光地エリアでは、地価の上昇が顕著です。
加えて、東京都浅草地区や鎌倉市、長野県白馬村といった主要な観光地でも、不動産価格は堅調な上昇を続けています。
世界情勢による影響
世界情勢の変動は、日本の不動産市場に大きな影響を及ぼしています。
特に2022年以降のウクライナ侵攻は、エネルギー価格の高騰と建築資材の供給不足を引き起こしました。これにより建設コストが上昇し、新築物件の価格に反映される結果となっています。
また、円安の進行によって輸入建材の調達コストが増加し、建設費用の更なる上昇を招いています。
こうした状況は新築物件の価格上昇を通じて、中古物件市場にも影響を与えています。さらに、地政学的なリスクの高まりを背景に、安全資産としての日本の不動産への注目度も上昇している最中です。
なかでも、都市部の優良物件には投資資金が国内外から流入しています。
金融緩和のインフレによる影響
2013年以降続く金融緩和政策も、不動産市場に大きな影響を与えています。
市場に供給された潤沢な資金は、不動産投資を活発化させ、価格上昇の原動力となりました。
特に、都心部のマンション価格はバブル期を超える水準に達していますが、現在の住宅ローン金利は0.3%〜0.4%程度と、当時と比べて格段に低い状況です。この低金利環境下では、1億円の借入れでも月々の返済額は約25万円程度で済むため、購入しやすい環境が整っています。
ただし、2024年3月の日銀によるマイナス金利政策解除以降、金利上昇の兆しも見られるため、今後の不動産市場への影響が注目されています。
今後の不動産が抱える2025年問題の影響
ここでは、今後の不動産が抱える2025年問題の影響を詳しく解説します。
団塊世代が高齢化することで人材が不足する
2025年度の労働力不足の問題は、団塊世代が高齢化することで人材が不足する懸念があります。
総務省のデータによると、生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少を続け、2025年には7,170万人まで落ち込む見通しです。特に、建設業界では深刻な人手不足が予想され、新規の建設プロジェクトの遅延や供給減少につながる可能性があります。
また、高齢化率は上昇を続けており、2025年には75歳以上の後期高齢者が国民の5人に1人を占めると予測されています。
この人口構造の変化は、不動産市場全体の需給バランスを大きく変える要因になる可能性があります。不安視されている建築作業員の不足は、工期の長期化や建設コストの上昇を招くため、新築物件の供給にブレーキをかけるかもしれません。
社会保険費や医療費のアップ
2025年問題による社会保障費の増加は、避けられない状況です。
年金、医療保険、介護保険などの社会保障費用は、高齢者人口の増加に伴って急速に膨らんでいくでしょう。なかでも、高齢者向けの老齢年金や介護保険の支出は大きな割合を占めています。したがって、現役世代の負担増加は避けられません。
政府はこの状況に対応するため、増税や福祉サービスの見直しを迫られる可能性があります。その結果、個人の可処分所得が減少し、不動産購入に充てられる資金も制限されると予想されます。
さらに、社会保障費の増大は国の財政を圧迫し、不動産市場を支える各種の住宅支援策にも影響を及ぼすかもしれません。
このような経済環境の変化は、不動産価格の下落リスクを高める要因です。
空き家が増えて不動産価格が下落する
2025年度には、空き家問題がさらに深刻化する可能性があります。
国土交通省の発表によると、2018年時点で349万戸だった空き家は、2025年には420万戸まで増加する見込みです。特に、地方都市では人口減少が著しく、若年層の流出が続いているため、空き家の増加ペースが加速しています。
この問題は不動産の供給過多を引き起こし、価格の下落を招く要因です。
管理が行き届かない空き家は、防犯上のリスクや景観の悪化、害虫・害獣の発生など、地域の住環境にも悪影響を及ぼしています。さらに、周辺の不動産価値も低下させる傾向にあり、地域全体の不動産市場に連鎖的な影響を与える可能性があるでしょう。
2023年には空き家に関する法律が改正され、行政による代執行なども可能になりました。しかし、急激な増加を防ぐのは困難な状況です。
相続のための不動産売却が増加
団塊世代が75歳以上となる2025年には、相続不動産の市場への流入が加速すると予想されています。
この世代が所有する不動産の多くが相続の対象となり、相続税の支払いのための売却も増加するでしょう。
特に、都市部から離れた地域では、相続人が居住地として活用する可能性が低いです。したがって、売却を選択するケースが多くなると考えられます。
また、複数の相続人がいる場合は遺産分割の協議が難航するため、不動産が適切に管理されないまま放置されるリスクも高まっています。
相続税の納税義務が発生した際、多くの相続人は現金での支払いが必要です。しかし、資金が不足している場合は、不動産の売却を余儀なくされます。
このような状況は不動産市場における供給過多を引き起こし、価格の下落圧力となる可能性があります。
不動産需要が下がる
2025年以降の不動産需要は、人口減少と高齢化の進展により、全体的に減少傾向に向かうと予測されています。
統計データによると、生産年齢人口は2025年に7,170万人まで減少する見込みです。1995年のピーク時と比べると、約1,400万人の減少を意味します。
需要の低下は地方都市や郊外で顕著になると考えられ、利便性の低い物件から順に価格下落の影響を受けやすくなるでしょう。また、高齢者の増加に伴い、大きな一戸建てから利便性の高いコンパクトな住居へのシフトが進むことで、従来型の住宅需要が更に低下する可能性があります。
加えて、若年層の晩婚化や非婚化の傾向も、新規の住宅取得を減少させる要因です。
このように、人口動態の変化は不動産需要を構造的に低下させる方向に作用すると予想できます。
現状2025年になっても急激に不動産価格が低下する心配はない
2025年問題の影響は確実に存在するものの、急激な不動産価格の暴落は考えにくい状況です。
日本は世界第3位の経済大国であり、首都の東京は世界有数の規模を誇る都市です。そのため、都心部のマンション価格が半額近くまで下落するような事態は想定しづらい状況にあります。
また、不動産市場の変化は徐々に進行するため、地域ごとに異なる影響が現れると予想されます。
都市部の利便性の高い物件は、引き続き一定の需要が維持される可能性が高く、価格の安定性も期待できるでしょう。さらに、インフレの進行や建築コストの上昇は、不動産価格の下支え要因として機能すると考えられます。
ただし、金融政策の動向や経済環境の変化は注視しなければいけません。
まとめ
不動産価格の今後を予測すると、懸念材料はいくつかあります。
なかでも、2025年問題による市場への影響は、もっとも大きな不安要素といえるでしょう。
しかし、2025年を迎えても、急激な不動産価格の暴落は考えにくい状況です。
都市部で人気のある物件は、変わらずに一定の需要が維持される可能性があります。だからこそ、適切な物件管理を徹底すべきです。