不動産クラウドファンディングのデメリットとリスク回避のコツを紹介

近年、不動産クラウドファンディングに乗り出す投資家が増えています。クラウドファンディングは少額から始められて、比較的ハードルが低い投資方法です。ただし、不動産クラウドファンディングにもデメリットは存在します。損をしないよう、リスクを回避する方法を押さえておきましょう。今回は、不動産クラウドファンディングのデメリットと、リスクを回避するコツを紹介します。

この記事は約8分で読み終わります。

不動産クラウドファンディングとは?

「不動産クラウドファンディング」とは、事業者が複数の投資家から資金を集めて不動産を取得し、運営する投資方式のことです。得た利益は、出資額に応じて事業者から投資家へ分配されます。

不動産投資には、投資家本人が不動産を購入して運営する「現物不動産投資」や、証券会社を介して投資する「REIT」などの種類もあります。現物不動産投資は、高額な初期費用が必要で、建物の維持管理にも手間がかかる点がデメリットです。また、REITは元本割れリスクなどに対する保証がありません。

一方、不動産クラウドファンディングは少額投資が可能です。運用もすべて事業者に任せられるため、管理の手間がかかりません。比較的高い利回りが期待できるファンドが多いことも魅力です。

このことから、従来のデメリットを払拭する第3の投資方法として注目されています。

不動産クラウドファンディングで注意すべきデメリット

初心者からでも始めやすく、メリットの多い不動産クラウドファンディングですが、デメリットもあります。

ここからは、不動産クラウドファンディングのデメリットをみていきましょう。

元本割れのリスクがある

不動産クラウドファンディングは、不動産投資と同様に元本割れのリスクが生じます。空室が埋まらずに家賃収入が少なくなってしまった場合、配分される利益も少なくなります。配分された利益が出資した額を下回った場合、結果的に損をする「元本割れ」を起こす可能性があることを知っておきましょう。

稀なケースですが、事業者が倒産して債務不履行(デフォルト)に至ることも考えられます。実際には、優先劣後方式を採用している案件も多いので元本割れをするリスクは低く抑えられます。

優先劣後方式とは、出資金を投資家と事業者で分けて扱う方式のことです。優先出資者を投資家、劣後出資者を事業者、この2つに分かれます。不動産運用において損失が発生した際は、劣後出資者の事業者から損失が補填される仕組みです。そのため出資者は元本割れになるリスクを抑えられます。

途中解約できない場合が多い

不動産クラウドファンディングの場合、途中解約できないケースが多いです。あらかじめ運用期間(投資期間)が決まっている案件が増えており、期間中の途中解約は原則としてできないでしょう。

一部の案件は途中解約できますが、事務手数料が発生する可能性もあります。

不動産クラウドファンディングを始める際は、あらかじめ途中解約できるか、途中解約に伴う事務手数料の相場に合っているかなどを調べて、事前に対策することが不可欠です。

人気の高いファンドは投資できない場合がある

人気の高いファンドは他の投資家からの注目度が高いため、必ずしも投資できるとは限りません。注目度の高い案件は募集開始から数秒で枠が埋まったり、クリック合戦になったりすることもあります。

特に、プロの不動産投資家や日頃からリアルタイムで情報をキャッチできる環境にある人と対等に渡り合おうと思っても、競争に負けてしまう可能性があります。そのため、あらかじめ目星をつけておいた場合でも100%クラウドファンディングに参画できる保証はありません。

次の手を常に準備し、想定通りいかなかった場合の手段も確保しておくことが大切です。

金融機関からの融資は期待できない

不動産クラウドファンディングが目的である場合、金融機関からの融資を得ることはほとんど期待できません。自己資金のみで投資する必要があり、融資を利用して自己資金以上に投資をすることはできないのです。

すでに多額の自己資金がある人にとっては、不動産クラウドファンディングが有効な手段になるケースが多いですが、融資をして大きな投資をしたいと考えている人には向いていません。

また、少額の自己資金のほとんどを不動産クラウドファンディングに費やすのは万が一の元本割れリスクに対応できず、決して効率が良いものではありません。リスクを良く理解したうえで、不動産クラウドファンディングに手をつけるべきかどうか検討しましょう。

節税効果は期待できない

不動産クラウドファンディングで得た分配金には、税制の優遇措置が適用されません。現物投資であれば損益通算で優遇措置が受けられますが、不動産クラウドファンディングにはこの制度がないのです。

節税の一環として不動産投資を検討している人には、クラウドファンディング形式はおすすめできません。節税を意識したいのであれば現物投資に切り替えるか、もしくは不動産以外の投資手法を選ぶなど対策したほうが良いでしょう。

流動性が低い

先述したとおり、不動産クラウドファンディングでは途中解約できないことが多いため、流動性が低い商品といえます。不動産における流動性とは、売買のしやすさのことを指します。

不動産価格の変動があったとしても自由に売却できないため、注意が必要です。

とはいえ、現物不動産投資でも流動性が低くなるケースはあるため、不動産クラウドファンディングだけの話ではないことを念頭に置きましょう。

リスクを上回る不動産クラウドファンディングの魅力

不動産クラウドファンディングはデメリットだけでなく、メリットも大きい投資方法です。新しい不動産投資として注目される3つの理由をみていきましょう。

少額で不動産投資を始められる

不動産クラウドファンディングは、1万円からでも投資ができます。投資家が自ら物件を購入する必要がなく、現物不動産投資より始めやすいのが魅力です。また、ホテルやオフィスビルを対象とするREITとは違い、幅広い種類から物件を選んで投資できます。

ただし、不動産クラウドファンディングの最低投資金額は、事業者によって異なります。少額だと得られる利益が少ないため、慣れてきたら増資を検討するとよいでしょう。

高い利益が期待できる

一般的に、不動産クラウドファンディングは銀行預金やREITより利回りが高めに設定されています。6~8%など利回りの高いファンドを取り扱う事業者が多い傾向です。

利回りが大きいほど分配金が増えるため、高い利益が期待できるでしょう。

手間がかからない

投資に手間がかからないのも、不動産クラウドファンディングの魅力の1つです。インターネットを介して事業者を探し、簡単に投資できます。

また、物件管理はすべて事業者が行うため、待っているだけで利益が得られます。物件の修繕、売却もすべて事業者におまかせでよく、維持管理のために自己資金を用意しておく必要もありません。

不動産クラウドファンディングに向いている人の特徴

不動産クラウドファンディングに向いているのは、次の特徴にあてはまる人です。投資のメリットとデメリットを比較して、自分に向いているのか慎重に判断しましょう。

小額で不動産投資をはじめたい人

不動産クラウドファンディングは、少額で不動産投資を始めたい人に向いています。現物不動産投資を始めたくても多くの資金を用意できない人、若い投資家におすすめです。

不動産クラウドファンディングは比較的少額で始められて面倒な手間がかからないため、知識や経験のない不動産投資初心者、お試しで不動産投資をしてみたい人にも向いています。不動産クラウドファンディングで物件を見極める目を養ってから、本格的な現物不動産投資にチャレンジしても良いでしょう。

副業の投資で手間をかけたくない人

不動産クラウドファンディングは手間をかけずに利益が得られるため、本業の合間に投資ができます。副業としての投資に手間や時間をかけずに稼ぎたいときの選択肢となるでしょう。

安定した利益を得たい人

不動産クラウドファンディングの利益は、出資額に左右されます。出資額が少ないとハイリターンは望めないとはいえ、わずかでも利益を得られれば良いなら問題ありません。不動産は価格変動のリスクも受けにくいため、コツコツ投資をして定期収入を得たい人に向いています。

不動産クラウドファンディングでリスクを軽減する方法

最後に、不動産クラウドファンディングでリスクを軽減する方法を紹介します。デメリットを最小限に抑えつつ利益の最大化を図りたいときは参考にしてください。

分散投資でリスクを最小限に抑える

分散投資を行い、リスクや損害を最小限に抑えることが大切です。

不動産クラウドファンディングでは、複数の運営会社に登録して分散投資することが可能です。万が一空室率が高くなり収益性を確保できない場合でも、トータルでのリスクは大幅に抑えられます。

また、元本割れするなど大きなトラブルが起きた場合でも、自己資金に与える影響が少なくなります。金融機関による融資が期待できない以上、生活費を十分に確保したうえで余裕のある投資をすることも意識してみましょう。

運営会社の情報を調べたうえで登録する

運営会社の情報は入念に調べてから会員登録しましょう。

サービスや保証内容は運営会社ごとに異なるため、投資家の損失を軽減させる仕組みがあるかチェックすることが大切です。特に優先劣後出資やマスターリース契約に関する項目には目を通し、条件の良い運営会社を選定するよう意識します。

また、実際に運営会社の担当者と対面し、授けてくれるノウハウ・ナレッジ・知識の厚さや対応の丁寧さをチェックしましょう。

複数の運営会社の情報を集めておけば、比較・検討するときにも便利です。運営会社ごとの違いを可視化し、判断材料として役立てていきましょう。

ファンド情報も細部まで確認することが大切

人気案件だからといって無理に焦らず、ファンド情報は細部まで確認しましょう。投資エリア・物件の種類・運用期間などを確認し、投資する側の事情に合っているファンドを選ぶのが理想です。

例えば、運用期間が長すぎると管理しきれないと感じるのであれば短めの運用期間を掲げているファンドを選びます。

人気のあるファンドが自分にとって理想のファンドであるとは限りません。「1秒を争う戦いだから」「人気があるから大丈夫だろう」と安易に信じず、ニーズに合うかを第一に考えましょう。

まとめ

不動産クラウドファンディングは、自己資金を使い手軽かつ小規模に不動産投資したい人におすすめの手法です。一方で、少なからず元本割れのリスクが生じる、途中解約できないなどのデメリットもあります。節税効果はほとんど期待できず、金融機関からの融資も受けられません。投資に乗り出す場合はあらかじめ運営会社やファンドの情報を調べて、慎重に検討しましょう。