目次
『現金一括』で不動産投資を始めるメリット・デメリット
現金一括で不動産投資を始める場合のメリットやデメリットについて解説します。
現金一括で始めるメリット
不動産投資を現金一括で始めるメリットには、以下のようなものがあります。
購入できる物件の幅が広がる
現金一括であれば、購入できる不動産物件の幅が広がり、運用の選択肢が増えることがメリットの一つです。例えば、ローン査定に通りにくくなってしまうような年齢や年収などに左右される心配なく、物件を選択できるようになります。
また、自分の好きなタイミングで不動産投資を始めることができるので、慌てて物件を選ぶ必要なく、しっかりと精査できるのも現金一括購入のメリットです。
返済期間がない
返済期間がないことも、不動産物件を現金一括で購入するメリットのひとつです。ローン返済に毎月支出することがないため「借金を背負って運用している」という精神的負担も軽減することができます。
物件の購入代金が抑えられる
現金一括での購入は、不動産投資ローンを利用しないため金利も発生しません。不動産投資ローンを利用した場合に比べると、物件購入にかかるトータルの価格が安くなります。
仮に不動産投資ローンを利用すると、借入金に対する金利に加えて、事務手数料、保証料、収入印紙代、抵当権登記設定費用、司法書士手数料などさまざまな経費が発生します。
また、貸し倒れによるトラブルの心配もないため、売主との交渉次第で値引きを受けられることもあります。金利や各種手数料がかからないうえ、値引きも受けられれば、お得に物件を購入できます。
手続きが早く済む
不動産投資では、人気のある物件ほど購入者が早く現れるため、契約までのスピードが投資の成功を左右するケースも多くあります。
現金一括で不動産を購入すればローン査定を待つ時間を短縮でき、スピーディーに購入契約に踏み切ることが可能でしょう。
現金一括で始めるデメリット
不動産投資を現金一括で物件を購入し、運用を始める場合のデメリットについて紹介します。
手元の現金が大きく減る
不動産の購入金額は、数千万円~数億円単位になることが多く、手元の現金が大きく減ることがデメリットの一つです。
物件を購入する際に手元にある程度現金を残しておかなければ、急な出費に対応することができなくなるおそれがあります。
資産形成までに時間がかかる
不動産投資を現金一括で始めると、資産形成までに時間を要するため、投資に投じた資金の回収に時間がかかるデメリットがあります。
現金一括購入で不動産投資を行う場合、投じた資金に対してプラスのリターンを得るまでには、時間が必要になることを念頭に置いて投資を行うことが大切です。
レバレッジ効果が得られない
不動産投資を現金一括購入でスタートすると、資金に対してレバレッジ効果を得ることができません。レバレッジ効果とは「てこの原理」と呼ばれる投資手法のひとつです。
たとえば、600万円の頭金で1,400万円を借り入れてローンで投資をスタートすると、600万円の投入資金で2,000万円の物件を運用できる形になります。
現金一括購入では、物件の購入資金を全額賄う必要があるため、投資効率の面ではローンで不動産投資を行うよりも劣る場合があります。
『ローン』で不動産投資を始めるメリット・デメリット
ここでは、現金一括購入ではなく「ローン」を組んで不動産投資を始める場合のメリットとデメリットについて解説します。
ローンで始めるメリット
不動産投資をローンで始めるメリットには、以下のようなものがあります。
頭金があれば始められる
収益物件の販売価格は数千万円〜数億円程度です。現金一括払いの場合、自己資金の範囲で物件を絞り込まなくてはなりません。
しかし、ローンを前提に物件を探す場合、頭金さえ用意できれば高額な部屋やアパート一棟を購入することも可能です。そのため、現金が潤沢ではない方も、すぐに不動産投資を始められます。
頭金の目安は物件価格の2~3割が一般的です。属性に問題なければ、ローンの借入金と自己資金を組み合わせて物件を購入できます。
現金が少なくても始められる
不動産投資をローンで始めるメリットは、自己資金が少なくても始められる点です。頭金としてある程度の現金を準備する必要もあれば、全額ローンを組んでスタートできる場合もあります。
ローン審査の条件によっては、現金一括購入よりも投入資金を抑えてスタートすることが可能です。
金融機関からの信用度が高くなる
ローン審査に通過していることで、金融機関からの信用度が高くなるメリットがあります。
また、返済実績を積み重ねていくことで、より信頼されるようになるため、新たな借り入れも行いやすくなるでしょう。
ローンの費用を経費にできる
ローンを組んでいると、返済費用に金利が上乗せされます。金利は、経費として計上でき、課税所得を圧縮することが可能です。
レバレッジ効果が得られる
不動産投資はローンを組んで始めると、上述のとおりレバレッジ効果を得ることができます。少ない資金からでもローン審査さえ通過すれば、大きな金額で運用できる点がローンのメリットです。
団体信用生命保険へ加入できる
不動産投資をローンで始める場合、団体信用生命保険に加入することができます。団体信用生命保険は、加入者が亡くなった際にその後のローン支払いが免除されるものです。ローン完済前の不測の事態に備えられるメリットがあります。
ローンで始めるデメリット
ここからは、不動産投資をローンで始めるデメリットについて紹介します。
審査に時間がかかる
審査に多くの時間がかかる点がローンを組んで不動産投資を始める場合のデメリットです。ローン審査には、一般的に10日~2週間程度の期間が必要になります。
また、ローンへ申し込むための書類を用意する時間や手間もかかります。
提出書類は、一部の不動産会社が用意してくれる書類を除けば、融資申込者が自力で用意しなくてはなりません。具体的には不動産投資の事業計画書や、物件概要書(販売図面)、物件の家賃表(レントロール)などが挙げられます。
書類を揃えることや記載する内容の精査も審査期間に加えると、物件購入まで1か月以上かかるおそれもあります。
不動産の購入契約までに時間がかかることを念頭に、計画的に投資をスタートさせることが大切です。
金利や手数料がかかる
ローンの場合、不動産投資を現金一括で始めるのと比べて金利や手数料が発生します。返済にかかる費用負担を考えると、総支払額が現金一括よりも大きくなることに注意しましょう。
返済リスクや金利リスクがある
ローンを組んで不動産投資を始めると、返済リスクや金利リスクが発生します。返済リスクは、空室などが発生して家賃収入が得られなかった場合に、ローン返済が負担となるケースです。
また、金利リスクは変動型金利を選択してローンを組んでいた場合に、金利上昇によって負担が増加する可能性があります。
それぞれの方法で向いている人の特徴を紹介!
不動産投資を始める方法として、現金一括とローンそれぞれに適している人の特徴を紹介します。
現金一括の購入はこんな人が向いている!
現金一括購入による不動産投資は、以下のような人に適しています。
余剰資金が多くある人
現金一括で不動産を購入すると、多くの資金が減少するため余剰資金に余裕のある人に適しています。余剰資金が多ければ、余裕をもって運用できるでしょう。
融資が受けにくい物件の購入がしたい人
融資を受けにくい物件の購入を検討しているのであれば、現金一括購入の方が適しています。担保性が低いと判断されやすい再建築不可物件なども、現金一括であれば運用可能です。
リスクを減らして不動産投資がしたい
リスクを減らして不動産投資がしたい人にも、現金一括購入の方が適しています。現金一括購入には、ローン返済リスクや金利変動リスクなどもないため、安心して投資できるでしょう。
相続税の対策をしたい人
相続税対策をかねて不動産投資を行いたい人にも、現金一括購入の方が適しています。手元にある現金を不動産として残すことで、相続税の負担を軽減できるためです。
ローンの購入はこんな人が向いている!
ローンを組んで不動産投資を始める方法は、以下のような人に適しています。
収入が安定している人
ローンの審査は、収入が安定している人の方が通りやすいため、安定した収入を得ている人はローンでの不動産購入に適しています。
金融機関からの信用があり融資が受けやすい人
これまでにローンを返済してきた実績があるなど、金融機関からの信用がある人も融資が受けやすいため、ローンでの不動産投資に適しています。
レバレッジ効果が得たい人
レバレッジ効果を得て不動産投資をしたいのであれば、ローンを組むことをおすすめします。投資資金の回収も現金一括購入よりも早く済むので、検討してみると良いでしょう。
効率的に不動産投資がしたい人
効率的に不動産投資がしたい人も、ローンでの購入がおすすめです。手元の資金を頭金としてローンを組むことができるため、ローンを活用すれば複数の物件を運用することが可能です。
余剰資金があまりない人
余剰資金があまりない人にも、ローンを活用した不動産投資の方が適しています。ローンを組むためにある程度の頭金を準備する必要はありますが、急な出費が生じるなどのリスクに備えて手元にも資金を残しておくと安心して運用できるでしょう。
【不動産投資】現金一括とローン払い迷ったときの判断ポイント
現金一括とローン払いのどちらを選ぶべきか迷ったときは、メリット・デメリット以外の視点から判断することが大切です。判断ポイントとして、次の3つが挙げられます。
イールドギャップで判断する
イールドギャップとは、投資利回りと金利の差のことです。物件の実質利回りが金利よりも低いと、家賃収入が順調であっても赤字となるおそれがあります。
例えば 実質利回りが4%の物件を購入するとき、不動産投資ローンの金利が4%を超えていると利益は出ません。現金一括での購入を選ぶか、キャピタルゲイン(売却益)による黒字を狙って保有するかなどの戦略を立てる必要があります。
反対に実質利回り8%の物件を金利4%のローンで購入すると、4%のイールドギャップがあり、利益を期待できます。
不動産投資規模で判断する
不動産投資の規模も判断基準となります。複数の物件の購入を検討している方は、不動産投資ローンの利用がおすすめです。複数の物件で不動産投資をしている方の多くが、ひとつの物件で得た家賃収入を、ほかの物件のローン返済に充てています。
現金一括購入の場合、物件数が多ければ多いほど、一度の支払額は大きくなります。大金を支払って生活に支障が出れば本末転倒です。
不動産投資はあくまで資産を増やすために行うものです。キャッシュフローにリスクが生じる可能性がある場合は、不動産投資ローンを上手に活用して、手元に現金を残す方法も検討しましょう。
与信枠で判断する
イールドギャップは実際の利益が分からなければ、正確には判断できません。物件規模で判断に迷ったときは、与信枠も検討材料に加えましょう。
与信枠は信用枠とも呼び、投資家本人に対する融資の枠を指します。枠内の金額であれば、不動産投資ローンを借り入れて目当ての不動産を購入できます。一方、他のローンなどで与信枠を使い切っている場合は、次の資金計画が立てられず、物件購入費用も賄えません。
与信枠に不安がある方は、現金一括での購入を検討しましょう。現金一括なら、資金さえ用意できれば与信枠を使わずに済みます。
ただし、現金一括での購入時も物件代以外の費用がかかることを理解しておきましょう。例えば 購入した物件のリフォームやクリーニング、各種手続きなどの初期費用がかかります。万が一設備の故障などトラブルが生じたときのために、余剰資金も必要です。
まとめ
不動産投資は、現金一括購入でもローン購入でも、それぞれにメリットとデメリットがあります。そのため、自身の状況や資金量などに応じて、メリットが大きい方法で投資を始めると良いでしょう。