不動産投資ファンドの仕組みが知りたい!どんな種類があるの?

不動産投資というと、所有または購入した不動産を個人や法人に貸し出し、賃貸収入を得る投資方法が一般的です。この場合、高額な金銭や不動産投資ローンの契約が必要になるイメージを抱く方も多いでしょう。 しかし、不動産投資ファンドを利用すれば少額からでも不動産投資ができます。今回は、不動産投資ファンドの仕組みと種類、ファンドを利用するメリットやデメリットについて見ていきましょう。

この記事は約8分で読み終わります。

不動産投資ファンドとは

不動産投資ファンドとは何か、よく知られている現物不動産投資と何が違うのか、概要を説明します。

不動産投資ファンドの仕組み

不動産投資ファンドとは、投資家からお金を募って、集めたお金で不動産を取得し、不動産の運用で発生した利益から、配当収入として投資家に分配する仕組みをいいます。

不動産投資ファンドが不動産の運用で収益を上げ、さらに投資してもらうには投資物件の選定や売却時期など、分析をもとにした運用が必要です。このような運用のコストは投資家の出資額から捻出されます。

不動産投資ファンドが投資する物件は、住宅に限らず、オフィスビルや商業施設、ホテルなど多様なのが特徴です。

現物不動産との違い

不動産投資ファンドは、投資家から集めた資金を原資に不動産に投資する方法であるため、現物不動産のように投資家ひとりが多額の資金を用意する必要はありません。投資にかかる額が少額で済みます。

ただし、不動産投資ファンドへの投資では運用コストや運用会社への報酬などが必要です。現物不動産への投資と比べて利回りが低くなることがあります。

さらに現物不動産との違いとして挙がるのが、不動産の運営や管理です。現物不動産は投資家自身、または委託先が不動産の管理などを行いますが、不動産投資ファンドはファンド運営者が運営や管理を行います。

不動産投資ファンドの種類

不動産投資ファンドは、不動産投資信託(REIT)と不動産特定共同事業の大きく2種類に分けられます。

不動産投資信託(REIT)

不動産投資信託(REIT)とは、投資家から募った出資金で、不動産投資法人が不動産を複数取得し、運用して、その収益を投資家に分配する金融商品です。

資金の集め方によって、以下の2種類に分けられます。

公募ファンド

公募ファンドは、証券会社や銀行で取り扱われるファンドです。証券会社や銀行で、投資信託口座を開設すれば、誰でも買付や売却ができます。基準価額が1日単位で公開され、売買の際にはその基準価額が適用される仕組みです。

株式と同じように証券取引所で上場しているファンドもあります。株式と同様に、証券会社を通じて好きなタイミングで売買できます。また、需要と供給の関係で値動きするのも特徴で、同じ日でもタイミングにより売買価格は異なります。

私募ファンド

私募ファンドは、特定の法人や機関投資家にのみ販売されているファンドです。プライベートファンドとも呼ばれ、証券会社や銀行では取り扱っていないため、資金を募る対象者は狭く限定されています。ハイリスクハイリターンの運用をめざす商品が多く、運用者の裁量の範囲が大きいことも特徴のひとつです。

不動産特定共同事業

不動産特定共同事業は、不動産特定共同事業法に基づいて行われるもので、不動産を小口化した金融商品です。一口数万円など、不動産を複数の口数に分けて投資家に販売し、投資家は口数に応じて分配金を得ます。

不動産特定共同事業とあるように、ファンドが不動産の所有者になるのではなく、複数の投資家が共同で不動産を所有するのが特徴です。

任意組合型、匿名組合型、権利を事業者に貸し出す賃貸型の3つのタイプがあります。

任意組合型

任意組合型は、投資家が事業者と任意組合契約を締結し、物件の管理運営を行う方法です。投資家は持分比率に応じて、物件を共同所有します。不動産から得られる家賃収入などの利益は、持ち分に応じて配分されます。

投資家は現物不動産の一部を所有していることになるため、投資にはまとまった金額の資金が必要です。また、登記費用や税金も負担しなければなりません。

匿名組合型

匿名組合型は、投資家が事業者と匿名組合契約を締結して出資する方法です。事業者は投資家が出資した資金で物件を購入して管理や運営を行い、収益金を投資家に配分します。

投資家は出資を行うだけで、物件を所有することはありません。そのため、投資家は登記費用や税金も負担せずに済みます。また、最低投資額が1万円から数万円程度と低めで、数年程度の短期間でも行えるのが特徴です。

賃貸借型

賃貸借型は、複数の投資家が物件を共同で購入し、事業者と賃貸の委任契約を締結する方法です。事業者が不動産を賃貸物件として管理運用し、そこから得られた収益を投資家に配分します。

投資には、任意組合型と同様にまとまった金額の資金が必要です。

不動産投資ファンドを利用するメリットとデメリット

不動産投資ファンドに投資するメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。

メリット

不動産投資ファンド利用のメリットは以下のとおりです。

・少額から始められる

・追加購入できる

・専門家が運用してくれる

・資産を分散できる

・換金性が高い

それぞれ詳しく説明していきます。

小額から始められる

少額でも不動産投資できるのが、不動産投資ファンドのメリットです。現物不動産への投資だと多額の資金が必要ですが、1口数万円や数十万円など、少額から投資をスタートできます。不動産投資を始めるハードルが高くないのが不動産投資ファンドの特徴です。

追加購入できる

不動産投資ファンドなら、現物の不動産と違って一括投資する必要はありません。最初は少額投資で様子を見て、後から追加購入することもできます。

毎月少しずつ買い増していくようなやり方をすれば、リスクの時間分散も可能です。

専門家が運用してくれる

不動産投資ファンドは、運用会社が不動産の管理や運用を行います。不動産投資のノウハウがある投資のプロによる運用になるため、不動産投資のノウハウが少ない投資家にとっては安心感があるでしょう。

また、運用や管理を任せることになるため、投資家自身が不動産の維持管理などを行う必要がありません。管理業務などの手間を省けます。

資産を分散できる

現物不動産で分散投資しようとすると多額の資産が必要ですが、不動産投資ファンドなら少額でも複数の不動産に分散投資できます。分散投資のメリットは、ひとつの不動産の価格が下落しても、ほかの投資物件で損失を補えることです。

REITの複合型や総合型に投資すると、異なる種類の不動産に分散投資できます。

換金性が高い

不動産投資ファンドの金融商品は少額で取引できるため、換金性が高い点もメリットに挙げられます。不動産投資ファンドの中でも、REITは上場されていることから、取引がしやすく、特に換金化しやすいです。

デメリット

不動産投資ファンド利用のデメリットは以下のとおりです。

・分配金が少なくなりやすい

・融資を受けられない

・商品数が限られている

・運用方針を自分でコントロールできない

それぞれ詳しい内容を見ていきましょう。

分配金が少なくなりやすい

不動産投資ファンドでは、不動産売買や賃貸による収益が、そのまま投資家に分配されるわけではありません。運用会社への報酬、運用コストなどが差し引かれ収益が分配されます。

現物不動産の投資で不動産管理会社に管理を委託するときなどもコストはかかりますが、不動産投資ファンドのほうがコストはかかりやすいです。

結果として、現物不動産に投資するよりも利回りが低くなってしまうことがあります。

融資を受けられない

不動産投資ファンドでは、共同で物件を所有して利益を分配する方法もあります。しかし、自分自身が物件の所有者になって不動産を運用する現物不動産の投資とは違って、共同所有では融資を受けることができません。

現物不動産でローンを組むことによるメリットは、少額の資金で高額の不動産を運用できるレバレッジ効果です。

不動産投資ファンドでは、現物不動産への投資のように、融資を活用したレバレッジ効果を得られないデメリットがあります。

商品数が限られている

不動産投資ファンドの中でも、不動産小口化の商品は商品数が限られています。魅力的な商品があっても、なかなか購入できないのがデメリットです。

運用方針を自分でコントロールできない

不動産投資ファンドは、管理や運用を運用会社が担ってくれるため手間がかからない点はメリットではありますが、一方で管理や運用方針はすべて運用会社が決めることになります。

家賃の値上げや修繕計画など、投資する不動産について、運用方針を自分でコントロールできません。運用方針に重点を置きたいのであれば、不動産投資ファンドを利用する前に、実績や運用方針を確認しておくことをおすすめします。

不動産投資ファンドにおける3つのリスク

不動産投資ファンドを利用する際には、次のようなリスクも認識しておく必要があります。

運営のリスク

ファンドの運営はプロが行いますが、必ずうまくいくとは限りません。状況によっては、期待した利益額に到達せず、逆に損失が出たりするおそれもあります。

損失がひどい状況だと、運営元が倒産するおそれもあるため注意が必要です。運営元が倒産した場合、ファンドが所有する物件を売却して、投資家に償還することになります。投資した金額は一部のみが戻ってくるケースがほとんどです。

商品のリスク

不動産価格は変動するため、不動産投資ファンドが所有している物件の価値も下がる可能性があります。

地価が長期的に下落するような状況になると、利益を得るどころか損失が出てしまうこともあります。いわゆる元本割れの状態です。

金融商品によっては元本保証が設けられているものもありますが、ほとんどの不動産投資ファンドは元本保証がありません。

投資物件のリスク

不動産投資ファンドの分配金の原資は、主にファンドが所有している物件から得られる家賃や賃料収入です。そのため、不動産の価値が下がって十分な家賃や賃料が得られなくなると、分配金も下がります。

物件価値が下がる要因には、築年数の経過、自然災害や社会情勢の変化などです。また、周辺地域の家賃相場が下がると、空室が増えたり家賃を下げざるを得なくなったりすることもあります。

まとめ

不動産投資ファンドは少額から不動産投資ができる方法です。現物不動産の投資と比べて、少額の資金でも始められる、換金性が高いなどのメリットがありますが、利回りが低くなりやすいなどのデメリットもあります。

不動産投資を始めるなら、自分自身の投資スタイルに合った方法を選択しましょう。