これから不動産投資を始める人へ|レバレッジ効果について解説

投資についての知識を増やすなかで、よく目にする言葉のひとつに「レバレッジ」があります。不動産投資においてもレバレッジを活用した運用は行われていますが、安易に利用せずしっかりと内容を理解しておくことが大切です。 今回は、レバレッジとはなにか、不動産投資におけるレバレッジを活用した運用方法や、レバレッジを活用して不動産投資を行った際に得られる効果について紹介します。

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「レバレッジ」ってどんなもの? 

レバレッジとは、直訳すると「てこの原理」を表す言葉で、少ない力で大きな効果を出すことを意味しています。

投資の世界でもよく耳にする言葉であり、少ない資金を元手にして大きな利益を出すことについて「レバレッジを利用した投資」と呼ばれます。

不動産投資におけるレバレッジとは、ローンを組んで自己資金以上の価格を物件購入に充て、利益を得ることです。

レバレッジは、一般的に株式やFX(外国為替証拠金取引)における証拠金を利用した取引を意味する言葉としても知られていますが、不動産投資では、証拠金という概念はありません。

株式やFXなどは融資を受けられない一方で、不動産投資では融資を受けられることから、他の投資より大きなレバレッジ効果が見込めることがあるのです。

不動産投資で融資を利用すべき4つの理由 

融資を受けてローンを組むのは借金を負うことであり、抵抗感をもつかたもいるでしょう。

しかし、不動産投資においては積極的に融資を利用した方が良い場面が多くあります。不動産投資で融資を利用した方が良い理由は以下の4つです。

・少ない資金で不動産投資が始められる 

・家賃から返済するので返済負担ゼロ

・金融機関からの信用が築ける

・団体信用生命保険の効果が高くなる

ここでは、それぞれの具体的な理由を解説します。

少ない資金で不動産投資が始められる

高額な不動産をキャッシュで購入できる人は多くありません。しかし、ローンを利用すれば、手持ち資金が不動産購入資金に満たない場合でも不動産投資をスタートできます。

とくに会社員や公務員など、社会的に安定した仕事として知られる職業に従事している場合には、金融機関の融資審査に通過しやすいことがあります。

「自己資金が少なくて不動産投資ははじめられない」と考える方も、一度融資を選択肢のひとつとして検討してみると良いでしょう。

家賃から返済するので返済負担ゼロ

基本的には、ローンを利用して購入した物件から得られる家賃収入をローン返済に充てるため、金銭的な負担がゼロになることもおすすめの理由のひとつです。

ただし、空室や滞納などで家賃が得られない期間が発生すると、自己資金から返済しなくてはなりません。

たとえば、空室を埋めるためにリフォームを施したり、家賃を下げたりすると支出の増加や収益の減少につながるでしょう。

また、購入者本人が居住しない投資用物件の購入には、住宅ローンを利用することができません。そのため、不動産投資用の融資を受ける必要があります。

不動産投資ローンは金利が高めに設定されているため、返済計画を慎重に立てることが大切です。

安易に「ローンで不動産投資をスタートすれば良い」と考えるのではなく、きちんと計画に基づいた判断で余裕をもって投資をはじめる必要があります。

投資規模を拡大しやすい

不動産投資ローンを利用すれば、自己資金以上の物件購入ができるため、投資規模を拡大しやすくなります。

また、金融機関からの融資次第では自己資金以上の資金で投資ができるため、物件の買い増しをする際にも、短期間で購入につなげられます。

不動産投資ローンは、返済期間や融資審査のハードルなどに対する考慮から、若いうちにはじめた方が審査を通過しやすいといわれています。

また、買い増しの際には不動産に関するノウハウが蓄積されていることが予想されるため、融資を受けやすくなることがあります。さらに、返済実績をつむことができていれば、金融機関から信用が得られて、優良顧客として融資を受けられることも、投資規模を拡大しやすい理由といえます。

団体信用生命保険の効果が高くなる

団体信用生命保険(団信)とは、不動産投資ローンを組む際に契約者が加入する保険です。契約者が死亡したり、事故などで高度障害が残ったりして返済不能になった場合、保険金から残金が完済され、物件も家族に残すことができます。 金融機関から融資を受けるとき、団信への加入が求められるケースが多くあります。投資家本人に万が一のことがあった場合、家族に負債なしで自己資金よりも大きな収益物件を残せる団信は、不動産投資ローンを組んでいるからこそ得られるメリットです。

不動産投資におけるレバレッジ効果の具体例 

不動産投資において、レバレッジ効果はとても大きいものです。具体的にはレバレッジを効かせて不動産投資を行う場合と、自己資金でスタートするケースにはどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、自己資金1,000万円かつ物件の利回りも同じ条件で仮定し、シミュレーションした運用例について紹介します。

自己資金100%の場合

まずは、自己資金100%で運用をはじめたケースのシミュレーションです。

【条件】
・物件価格:1,000万円
・利回り:10%

このケースでは、年間収入が以下の金額になります。

【年間収入】
1,000万円×10%=100万円

ローンを利用する場合

次に、自己資金1,000万円の人が不動産投資ローンを活用して投資をスタートした場合の例について紹介します。

【条件】
・物件価格:3,000万円
・利回り:10%
・借入金:2,000万円(金利3%)

このケースでは、自己資金をもとに2,000万円の融資を受けることで、3,000万円の物件を購入することができました。結果、以下のような収益計算になります。

【年間収入】
・年間利息(初年度):2,000万円×3%=60万円
・年間収入:(3,000万円×10%)-60万円=240万円

シミュレーションから分かること

シミュレーション結果からわかることは、ローンを利用した方が高い収益が見込める物件を所有できる点です。

ローンを利用すれば自己資金の2~3倍の投資が可能になるため、より多くの収益が期待できます。

また、自己資金と同額の物件を購入する場合でも、ローンを利用すれば手元に多くの資金を残すことができるため、余裕をもって運用をはじめられるのも特徴です。

ただし、上述のシミュレーションには、空室リスクや金利の変動などが含まれていないため、必ずリスク面を考慮したうえでの投資計画を立てる必要があります。

レバレッジをかけた不動産投資をする前に知っておくべきこと

融資を受けて自己資金以上の物件を購入し、レバレッジ効果を高めた不動産運用をするには2つの注意点があります。それぞれについて下記で詳しくご紹介します。

融資には審査通過が必要

金融機関で融資を受けるには、審査に通過する必要があります。金融機関は申込者の信用情報に加え、投資物件の内容も調査したうえで、融資額を決定します。

住宅ローンの審査では、申込者本人の勤務先や借入状況といった信用情報が重視されます。しかし、不動産投資ローンの審査では、個人の信用以上に投資物件の収益性が重視されるといわれています。また、申込者の不動産投資に対する考えを聞かれることもあります。

クレジットカードや公共料金などの支払いに気を付けることは当然ですが、融資の審査を考慮したうえで物件を選び、不動産投資の計画などを伝えられるよう準備しておくことが大切です。

リスクレバレッジの許容範囲を知る

不動産投資の魅力はレバレッジの高さにありますが、レバレッジが高くなるほどリスクも高くなります。

収益物件の購入金額に占める借入金の割合が大きくなると、金利が上昇したときに月々の返済額に与える影響が大きくなり、物件の利回りよりも金利が上回ってしまうケースがあります。

また、不動産の空室リスクも考えなければなりません。不動産の価格が安いからと、人口が少ない地域の物件や地域の需要とマッチしない間取りの物件などを購入すると、空室リスクは大きくなります。

物件を購入するには、レバレッジに付いてくるリスクを把握し、自身がどこまでリスクを負えるか決めておく必要があります。

レバレッジ効果に関する注意点

レバレッジ効果の高い不動産投資を行う際の注意点には、以下の4つが挙げられます。 ・逆レバレッジに注意する ・借入リスクに注意する ・金利上昇リスクに注意する ・利回りの下落に注意する それぞれについて詳しく紹介します。

逆レバレッジに注意する

レバレッジ効果を利用した不動産投資を行う場合、逆レバレッジに注意する必要があります。逆レバレッジとは、自己資金と借入金を併用して不動産投資を行った結果、自己資金内で不動産投資を行う場合よりも収益が減ってしまうことです。

逆レバレッジの要因となるのは、金利の上昇や利回りの低下が挙げられます。金融機関から融資を受けたうえで不動産投資を行う場合、手元に残る収益は、家賃収入からローン返済額を差し引いた差額です。例えば、不動産購入後に、ローンにかかる金利が上昇すると、毎月のローン返済の負担が大きくなり、手元に残る収益は減ってしまいます。

また、不動産の利回りが低下した場合においても、家賃収入が少なくなるため手元に残る収益は小さくなります。

金融機関から融資をうけたうえで不動産投資を行う場合、手元に残る収益は家賃収入とローン返済額の差額になります。

借入リスクに注意する

資金の借り入れにはリスクが伴います。不動産投資において、代表的なリスクとして知られているのが空室率の上昇です。保有する物件が高い入居率をキープできる保証はありません。

入居率に併せて、家賃収入は変動します。しかし、融資を受けている場合、毎月一定額を返済しなければならず、返済額が家賃収入を超えてしまう可能性も考えられます。その場合は、自己資金から捻出しなければならず、最悪の場合、返済できなくなるおそれもあるのです。

借入リスクを少しでも減らすためには、物件を選ぶ際に物件情報だけではなく周辺エリアの利便性や将来性も考慮したうえで、空室リスクの小さい物件を選ぶことが大切です。

金利上昇のリスクに注意する

金融機関から融資を受けたうえで不動産投資をする場合、ローン返済期間は長期わたるケースが多いです。また、不動産 投資ローンの多くは半年ごとに金利を見直す変動金利であり、返済期間中に金利が大幅に上昇する可能性があります。

逆レバレッジの説明で触れたように、金利上昇は収益に大きな影響をもたらします。現在は超低金利時代といわれていますが、今後の経済動向によって金利が上昇する可能性は十分に考えられます。

不動産投資のために融資を受ける際は、ある程度の金利上昇を予測したうえで、無理のないローン返済の計画を立てることが大切です。また、金利上昇の影響を受けない固定金利に切り替えたり、金利上昇のタイミングでローンの借り換えを行ったりすることも、ひとつの手段であるといえます。

利回りの下落に注意する

建物の経年劣化や不動産価格が下がると、物件の利回りは購入当初よりも下落します。逆レバレッジの項で見たように、利回りの下落は家賃収入の低下につながり、収入に占める金利の支払いが増えてしまいます。

利回りが下がらないようにするには、物件選びの際に不動産価格が安定している地域に注目したり、物件の空室率上昇を防ぐために修繕をしたりする必要があります。また、ローンを借り換えて金利を下げることも考えましょう。

不動産投資のレバレッジ効果を高めるには 

不動産投資において、レバレッジ効果を高めるポイントは次の2つです。

・低金利のローンを利用すること

・利回りを高めること

一方で、不動産投資の最大の懸念材料は「空室リスク」です。入居者がつかなければ、低金利ローンを利用して利回りを高めても家賃収入そのものが得られません。

そのため、レバレッジ効果を引き出すためには、まず物件選びの段階で慎重に検討することが大切です。

また、空室リスクだけでなく、家賃滞納、突発的な修繕の発生、金利上昇、火災や地震などの災害による影響など、さまざまな要因で利回りが変動します。

不動産投資をはじめる際には、失敗を防ぐためにもレバレッジ効果を狙うだけでなく、物件選びについてシビアにシミュレーションすることが大切です。

まとめ

不動産投資におけるレバレッジは「不動産投資ローン」を活用する投資スタイルを指すものです。

物件を購入する資金は確保できますが、返済していく必要があるため、リスクを許容できる範囲で余裕をもった運用が必要になります。

まずは実際の運用益などをシミュレーションして算出し、リスク要因なども考慮したうえで、慎重に不動産投資をはじめることが大切です。