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不動産投資は自己破産するリスクがある
不動産投資の運用成果に対しては、投資家自ら責任を負います。大きな負債を負い、返済できなくなった場合には、自己破産しなければならない可能性があります。
不動産投資はインフレに強く、不動産価値は株式のように大きく値下がりしないメリットはありますが、初期投資や修繕費用など大きな支出を伴います。
不動産投資のリスクは、慎重な物件選びや節税対策で軽減できます。しかし知識と経験の豊富な専門家からのアドバイスを参考にしたとしても、リスクがゼロになるわけではありません。
自己破産は、ローンを返済できなくなった場合の選択肢の一つです。引き落とし口座に入金し忘れたなど、1ヶ月の滞納であれば良いですが、2ヶ月も3ヶ月も滞納すれば金融機関からの催促は厳しくなります。
金融機関は引き落としが確認できなければ、ハガキで通知し、一定期間を過ぎると、督促状を送付し、電話確認も行います。決まった手順を踏み、それでも返済が確認できなければ、債権回収業者に債権を売却して、そのあとの処理を委任するという流れです。
債権回収業者は融資物件を競売にかけ、資金を回収します。一般的に競売では市場価格より安く売買されますので、借金が残る可能性があり、残債が多く、返済できる見込みがない場合は、自己破産を裁判所に申し立てます。
ただし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、任意売却(任意整理)や個人再生という様々な方法があるため、状況に合わせて選択していきましょう。
不動産投資で自己破産に至る3つのケース
不動産投資で自己破産に至るのは下記の3つのケースです。
・不動産をローンで購入している
・高額な不動産を購入した
・不動産選びに失敗している
それぞれについて詳しく解説します。
不動産をローンで購入している
不動産投資ローンを組むと、少ない資金で大きな資産を得られる、レバレッジ効果が期待できるため、利用する方は多いです。不動産をローンで購入している場合、毎月一定額の返済が必要になります。しかし、入居者がいない不動産では、利益が得られないため、ローンの返済が厳しくなります。
ローンの返済ができなくなった結果、自己破産する方も少なくないです。
また、不動産投資で組むローンは高額なため、金利が少しでも高いと、利息額が高くなり、月々の返済額が高くなります。特にオーバーローンやフルローンは金利が高く設定されます。そのため、不動産をローンで購入する場合は、キャッシュフローを見据え、空室リスクや月々支払える金額なのかを考慮して購入しましょう。
高額な不動産を購入した
高額な不動産=利回りが良いとは限りません。
実際は、家賃相場がそれほど高くないことで入居者がいても赤字になってしまうことがあります。赤字を回避するために元が取れる家賃設定にすると入居がいなくなるといった負の連鎖を引き起こし、破綻してしまう可能性があります。
適正価格で不動産を購入するためにも、相場をしっかり見極めてから不動産を購入しましょう。
不動産選びに失敗している
不動産投資を成功させるために、重要なのは入居者を途絶えさせないことです。
駅チカや大学の近く、人気エリア、新築物件など選ぶ基準は様々ですが、選び方を失敗すると入居者が集まらず、投資に失敗してしまう可能性が高くなります。
不動産投資を失敗しないようにするためには、エリアや間取り、築年数、過去の入居情報などを吟味するようにしましょう。
不動産投資で自己破産に追い込まれてしまう流れ
不動産投資を始めるのであれば、できる限り自己破産は避けるべき事態です。しかし、当初の計画からズレてしまうとキャッシュフローが悪化、ローンの返済が滞り、物件が差し押さえられ、自己破産を余儀なくされるケースもゼロではありません。
ここでは、不動産投資で自己破産に追い込まれてしまう流れを解説します。
空室率の上昇にともない家賃収入が減少
不動産投資で自己破産に追い込まれる多くのキッカケは、空室率の上昇にともなう家賃収入の減少です。
当初の計画通りに入居者が集まらず、家賃収入が減ってしまいます。
空室率を想定した実質利回りによるシミュレーションをしていたとしても、長期間の空室は自己資金を圧迫させてしまうでしょう。
また、設備の故障による修繕費用、災害による損失などさまざまな要因でキャッシュフローが悪化してしまいます。
しかし、家賃収入が減少したからといってローンの返済は止まりません。家賃収入で足りない分は自己資金を使って返済を行います。
自己資金がなくなりローンの返済が滞る
空室期間中のローン返済は自己資金でまかないます。しかし、長期間の空室に耐えられず自己資金がなくなってしまうとローンの返済が滞ってしまうでしょう。
貯金を切り崩し本業の給与所得などを返済に充てていたとしても、家賃収入を返済計画に加えていた場合、いずれかは生活に支障がででしまいます。
最終的には自己資金が底をつき、ローンの返済が滞ります。
金融機関から督促状や催告書が届く
ローンの返済が滞ると金融機関から督促状が届きます。
督促状には支払期日が記載されており、滞納したローンの支払いを求められます。
督促状の支払いに応じない場合、「支払いがなければ法的措置を行う」旨が記載された催告書が内容証明で送られてくるケースもあるでしょう。
督促状や催告書の要求に数ヶ月間応じないと金融機関は返済不能とみなし、債権を債権回収会社に移行します。債権会社に移行後は、今までのように分割での返済ができなくなり、残金の一括返済を命じられます。
物件が差し押さえられ、競売にかけられる
債権会社からの一括返済に応じない場合、抵当権の設定された不動産は差し押さえられてしまいます。
債権会社は債権を回収するために不動産を競売にかけて売却します。競売が実施されるまでには時間がかかるため、その間に任意売却も可能です。
ただし、競売によって売却される場合、相場以下で売り出されるケースが大半のため、売却費用をローン残債から差し引き、残りは返済しなければいけません。
残債の返済
競売によってローン残債を完済できなかった場合、債権会社から返済を求められます。
残りの残債についても、月々の分割払いはできず、一括での返済が一般的です。
一括返済に応じられれば残債はゼロになり、ローンの完済となります。
残債の返済が難しい場合は自己破産を余儀なくされる
残債の一括返済が難しい場合、自己破産を余儀なくされるケースがほとんどです。
月々の返済さえも難しい資産状況であれば、ローンから売却費用を差し引いた残債の一括返済は難しいでしょう。
その結果、自己破産の選択を余儀なくされてしまいます。
なお、自己破産をする場合は、裁判所で破産手続きと免責手続きを行います。
自己破産手続きの流れ
自己破産手続きは、債務者自身で裁判所へ申し立てが可能です。しかし、提出する書類の作成や裁判所とのやりとりなど専門的な知識を要するため、弁護士へ依頼するのが一般的です。
弁護士へ自己破産手続きを依頼する場合の流れは以下のようになります。
- 弁護士との面談
- 債権会社へ受任通知書を送付
- 債務の総額を確定
- 管轄の地方裁判所へ自己破産申立書の提出
- 裁判所で破産審尋を受ける
- 財産がない場合は同時廃止にて破産手続きの完了
- 一定以上の財産がある場合は現金化して債権者に配当
- 裁判所で免責審尋を受ける
- 免責許可の決定
自己破産にはさまざまな手続きが必要になりますが、基本的に弁護士へ依頼すれば債務者の代理として対応してくれます。
なお、手続き開始から完了までの期間はケースバイケースですが、1ヶ月~1年ほどが目安です。
また、自己破産手続きの依頼は司法書士にも可能ですが、書類作成のみとなり代理として申し立てができないため、債務者本人が手続きを進める必要があります。
自己破産にかかる費用
やむを得ず自己破産を選択する場合、裁判所に支払う予納金が必要です。また、弁護士などに手続きを依頼すると別途報酬も必要になります。
ここでは、自己破産にかかる費用を解説します
裁判所に支払う予納金
自己破産をする場合、裁判所へ予納金の支払いが必要です。手続きに必要な費用となっており、支払いがなければ自己破産ができません。
ただし、自己破産手続きの際に裁判所に支払う予納金の金額は、財産がない場合(同時廃止)とある場合(管財事件)で異なります。
それぞれのケースで必要になる予納金は以下の通りです。なお、管轄の裁判所によって予納金の金額は前後します。
財産がない場合(同時廃止)
財産がなく同時廃止となる場合の費用は以下の通りです。
申立手数料 |
1,500円 |
郵便切手 |
4,400円 |
官報公告費 |
11,859円 |
合計 |
17,759円 |
出典:裁判所(東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所)
財産がなく同時廃止となる場合、2万円以内で済む場合がほとんどです。
財産がある場合(少額管財事件)
財産があり少額管財事件となる場合の費用は以下の通りです。
申立手数料 |
1,500円 |
郵便切手 |
4,400円 |
官報公告費 |
18,543円 |
引き継ぎ予納金 |
20万円~ |
合計 |
230,343円~ |
出典:裁判所(東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所)
財産がある場合は、破産管財人への報酬などが含まれる引き継ぎ予納金が必要になるため、同時廃止と比べると高額になります。
弁護士などの専門家への報酬
自己破産の手続きは弁護士などの専門家への依頼が一般的です。
報酬額は事務所によって異なりますが、弁護士への依頼費用は30~80万円ほどが相場となります。
また、報酬の一括払いが難しい場合は、分割払いに対応している事務所もあるため、依頼する前に確認しておきましょう。
不動産投資で自己破産した後はどうなる?
不動産投資でローンを返済できなくなり、自己破産を選択した場合、どのような影響があるかを知っておくと、不動産投資の見極めや判断が早くなります。
ここでは不動産投資で自己破産した場合の影響について解説します。
借金の支払い義務がなくなる
不動産投資では収入額や支出額が大きいため、債務も高額になりがちです。数千万円以上の残債がある場合は、自己破産してやり直した方がメリットは大きいでしょう。自己破産が裁判所で認められると、借金の支払い義務は免除されます。
ただし、税金など債務ではない費用は免責されないので注意が必要です。
信用情報機期間と官報に登録される
自己破産したという情報は、信用情報機関に記録されます(「ブラックリストに載る」と表現されることもあります)。
信用情報機関には、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、
全国銀行個人信用情報センター(KSC)があり、それぞれ取り扱っている情報は異なりますが、返済状況など一部の情報は共有しています。
登録される情報と登録期間は信用情報機関によって異なり、たとえば、JICCの債務整理や破産申立に関する情報は契約終了後(または契約継続中)5年以内、KSCの破産情報は、破産手続開始決定等を受けた日から10年以内となっており、登録されている間はクレジットカードの審査に影響が及びます。
また、信用情報機関だけでなく、官報にも登録されます。官報とは、各政府や省庁が発表する公文や公告などを掲載する新聞のようなものです。
官報には、破産手続きの内容や氏名が掲載され、インターネットでも直近30日間の掲載分が閲覧できます。しかしながら、官報への掲載は債務者へ知らせるためのものであり、悪用目的での利用は規約で禁じられています。官報に載ることは避けられませんが、周囲の人に知られる可能性はほとんどありません。
財産のほとんどが処分される
借金返済可能な状態では、裁判所に自己破産を認めてもらえません。
そのため、自己破産をする場合は、99万円以上の現金や20万円以上の資産(車や自宅、貴金属など)は処分されます。
ただし、最低限の財産は手元に残るため、最低限の生活は可能です。
資格が失効される
自己破産をすると、一部の資格が一定期間、失効します。
例えば、次のような資格が該当します。
・公認会計士や弁護士などの士業
・警備員
・公証人
上記のような仕事をしている方は、失業してしまうリスクがあることを理解しておきましょう。
保証人や連帯保証人に借金が請求される
自己破産をすると、保証人や連帯保証人に借金の支払いが請求されます。基本的に一括請求となります。
しかし、自己破産はあくまでも破産申告をした本人の返済義務がなくなるだけです。つまり、借金の一括請求に応じられない場合は、保証人や連帯保証人も連鎖的に自己破産をしなければいけない事態に陥ってしまいます。
自己破産を選択する場合は、保証人や連帯保証人になってくれた方への影響があることを覚えておきましょう。
不動産投資で自己破産を防ぐための7つのポイント
不動産投資に失敗することもあります。不動産投資のリスクをあらかじめ想定して対策すれば、リスクを軽減することが可能です。ここでは自己破産を防ぐためのポイントをまとめて紹介します。
不動産をフルローンで契約しない
不動産投資では、自己資金が十分にあってもローンを活用することで、資金回収期間を短縮できるメリットがあります。しかし、不動産の購入費用を全額ローンでまかなってしまうと、ローンの返済額が大きく、返済期間も長くなり、返済できなくなるリスクは高まります。
投資物件を売却してもローンが残る場合もありますので、これからローンを組む場合は借り過ぎに注意しましょう。
立地選びを慎重にする
投資物件が想定どおりの収益を上げられる理由は様々で、その一つに立地の良さがあります。
好まれる立地条件はターゲットにする住民層によって異なります。一般的に駅近の物件や駅までの交通の便が良い物件は人気があります。子育て世帯であれば、周辺環境の良さや生活関連施設(スーパーマーケットやクリーニング店など)へのアクセスの良さ、学生であれば学校までのアクセスの良さが重視されます。
立地条件が良いほど需要は高く、家賃は下がりにくい傾向にあります。逆に、立地条件が悪ければ、家賃を下げて入居者を募集しなければならず、場合によっては空室となります。
立地条件は物件購入前に確認しなければなりませんので、慎重な立地選びが重要です。加えて、周辺環境は少しずつ変化する可能性がありますので、将来を見越した判断も必要です。
相場価格を押さえておく
家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)で十分な利益を得るためには、いくらで物件を購入するか、という点が重要になります。相場より高値で購入しても、購入価格に合わせて家賃を設定できるわけではありませんので、相場を把握して物件を決めなければなりません。
また、相場価格どおりの物件であっても、思うような家賃収入を得られない可能性も考えられます。相場価格とともに、家賃相場も調べておくと良いでしょう。
諸費用は想定以上に設定しておく
不動産投資では、物件売買時だけでなく、保有時にも費用がかかります。保有時の費用のうち、管理費や固定資産税は予測どおりになりやすく、修繕費やリフォーム代は想定どおりにならないことがあります。
修繕費やリフォーム代、ハウスクリーニング代などの経費も、物件購入時に見積もる必要があります。しかし、築年数のわりに排水管が痛んでいたり、クーラーなどの設備が故障したりと、想定外の不具合でより高くつくことがあります。
物件の修繕等に柔軟に対応できるよう、諸費用は想定以上に設定しておきましょう。
入居率を上げるための対策を行う
不動産投資において自己破産に追い込まれる原因の多くは、空室率の上昇にともなう家賃収入の低下です。
そのため、キャッシュフローの悪化によって自己破産に追い込まれる前に入居率を上げるための対策が重要になるでしょう。入居率を上げて家賃収入を確保できれば、修繕費や広告費がかかったとしてもキャッシュフローが安定してローンの滞納を防げます。
入居率を上げるための主な対策は以下の通りです。
・内外装のリフォーム・リノベーションを行う
・最新設備を導入する
・セキュリティ面を強化する
・広告費をかけて物件の露出度を上げる
・フリーレントをつける
・家賃を下げる
基本的には、入居者が魅力を感じられるような物件づくりが大切です。入居者のニーズにあった物件となれば、おのずと入居率はアップするでしょう。
また、物件づくりと同時に広告費をかけることも大切です。費用面の負担は大きくなるものの、多くの方に物件を認知してもらうためには必要な対策となります。
そのほか、家賃を下げることも入居率アップにつながります。ただし、家賃を下げると将来的な収入低下が懸念されるため、周辺物件と比較しながら無理のない範囲で検討しましょう。
任意売却で不動産を手放す
不動産はローンを完済しなければ売却できません。ただし、任意売却を利用すればローンを完済しなくても売却が認められます。
売却には債権である金融機関との合意が必要ですが、一般的な不動産売却と同じ流れで売却できるため、難しいことは一切ないです。
任意売却をする際は、実際に物件の売却を担当する不動産会社選びが重要になります。
任意売却については、詳しくは一般社団法人全日本任意売却支援協会のホームページでご確認ください。
ローンの借り換えを検討する
ローンの返済が難しい場合は、借り換えの検討がおすすめです。ローンの借換えとは現在借りている金融機関から他の条件の良い金融機関に変更することを指します。
わずかでも金利が下がれば月々の返済額を抑えられる可能性があるため、ローン滞納のリスクは低下するでしょう。
ただし、ローンの借り換えには手数料などが発生するため、トータルコストを考慮したうえでの検討が必要です。
また、ローンの借り換えは必ずできるものではありません。資産状況や物件の状態によっては借り換えを断られる可能性があるため、複数の金融機関に相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
不動産投資で自己破産に追い込まれる原因の多くは、家賃収入の減少や費用の増加です。不動産投資を始めた当初の計画からズレてしまうとキャッシュフローが悪化し、ローンの返済が難しくなってしまいます。
不動産投資にはリスクがあるため、自己破産に追い込まれてしまう可能性はゼロにはできませんが、収入を少なく、費用を多めに見積もった計画を立てておけば、万が一の変化にも対応しやすくなるでしょう。
また、不動産投資を成功させるためには、物件選びや管理など不動産に関する知識やノウハウが必要不可欠です。自分自身が知識やノウハウを学ぶことも大切ですが、安定した入居率実現をサポートしてくれる不動産管理会社への委託も自己破産につながるリスクを下げてくれるでしょう。
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