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利回りの最低ラインの目安は「5%〜10%」
不動産投資における利回りの最低ラインとして挙げられるのが5%または10%です。最低でも5%をクリアしていない場合、積極的に投資する人は少ないでしょう。
ただし、妥当といえる最低ラインは、物件のあるエリアや物件の状態などによっても変わります。物件の立地や築年数などを含め、総合的な見地から利回りが妥当かどうか判断することが大切です。
利回りの最低ラインに違いが出やすい代表例として、次の2つのパターンがあります。
・都心は低く、地方は高い
・新築は低く、中古は高い
それぞれ、なぜこのような違いが出てくるのか説明しますので、ポイントを把握し物件の見極めに活かしましょう。
都心は低く、地方は高い
不動産投資における利回りは、物件のあるエリアが都心であるほど低く、地方になるほど高くなる傾向にあります。当然、利回りの最低ラインも都心ほど低くなるのです。
このような違いが出るのは、物件の購入価格は都心に近いほど高額になるものの、家賃相場については、都心と地方を比較しても大幅に差が出ることはないからです。
基本的に利回りは、物件の購入価格と家賃額によって決まります。例えば、家賃額が同じであるなら、物件の購入価格によって利回りに影響があります。
物件の購入価格 | 不動産投資の利回り |
高額 | 低い |
リーズナブル | 高い |
以上のとおり、都心と地方においては、家賃はほぼ変わらない一方で物件価格の相場の差が大きいため、利回りにも違いが出てきます。
新築は低く、中古は高い
不動産投資における利回りは、新築の物件では低く、中古の物件であれば高くなる傾向にあります。
これも都心と地方の物件で利回りの差が出るのと同様、物件価格の差によるものです。
新築物件は、中古物件に比べると物件を購入するときの費用が高額になります。もちろん新築物件は中古物件に比べて、多少は高い家賃を設定できますが、中古物件との購入時の価格差をカバーするほど家賃を高く設定することはできません。
あまり家賃を高く設定し過ぎると、今度は入居者を集めるのに難航するようになり、利益を出すのが難しくなるからです。
その結果、新築の物件においては、中古物件よりも利回りは低くなってしまうのです。
不動産投資の目的によっても最低ラインは異なる
どの数値を利回りの最低ラインに設定するかは、不動産投資の目的次第で異なります。中・長期的な視点で収益を上げたい場合と、短期的に利益を得る目的である場合とでは、利回りの最低ラインの考え方を変える必要があります。
①中・長期的な視点で収益を得たい場合(インカムゲイン)
インカムゲインとは、資産を保有していることで得られる利益のことです。不動産投資であれば、物件を保有している期間に得られる家賃収入がインカムゲインに当たります。
中・長期にわたって収入を獲得するインカムゲインの場合、利回りが低くても需要がある都心や駅近物件・新築を購入したほうが、安定して賃料を得やすくなります。都心の駅近にあり、生活環境が整っている地域にある物件は、賃貸の需要が多くなるからです。
このような理由から、インカムゲインでは、利回りが低い物件の方が安定した収入が見込めるため、最低ラインは低めで設定しても良いでしょう。
②短期的に収益を得たい場合(キャピタルゲイン)
キャピタルゲインとは、資産を売買し、その値上がり幅で得られる利益のことです。不動産投資においては、購入した物件を売却したときの差益が該当します。
物件を短期間で売却し、キャピタルゲインを得ることが主な目的であれば、利回りにこだわるよりも、すぐに買い手がみつかる物件かどうかで判断することが重要です。
売却しやすさを追求し、立地が良く設備や環境が整っている物件を選ぼうとすると、利回りという点では低い物件になりがちだからです。
このような理由から、キャピタルゲインの投資なら、利回りの最低ラインはあまり重視せず、物件を検討することがポイントとなるでしょう。
【不動産投資】最低ラインを見極めるための4種類の利回り
不動産投資において最低ラインを見極めたいときは、4種類の利回りについて考える必要があります。物件の収益性を見極めるためにも、以下の4項目をチェックしておきましょう。
表面利回り
表面利回りは、「グロス利回り」と呼ばれることもあります。物件価格に対してどの程度家賃収入を期待できるか算出する手法です。物件情報で単に「利回り」と表記される場合は、一般的に表面利回りを指しています。
表面利回りの計算式は、次の通りです。
表面利回り=(想定される年間家賃収入÷物件の購入価格) |
満室状態をベースにすることが多く、スピーディーに物件の収益性を判断したいときや最大化の範囲を見定めたいときに役立ちます。
ネット利回り
ネット利回りは、「実質利回り」、「NOI(Net Operating Income)利回り」と呼ばれることもあります。家賃収入から経費を差し引いた利益が、物件価格のうち、どの程度を占めるか計算する手法です。
計算する際は、差し引く経費の項目に注意してください。登記にかかる手数料や不動産会社に支払う仲介手数料など購入時にかかる諸費用はもちろん、定期的に発生する都市計画税・管理費・修繕積立金等も含まれます。
ネット利回りの計算式は、下記の通りです。
ネット利回り=年間家賃収入-年間経費÷物件の購入価格+購入時諸経費 |
営業純利益をベースにパーセンテージを算出する方法のため、空室リスクや経費も加味できることがポイントです。
投下資本利回り
投下資本利回りは、「ROI(Return On Investment)利回り」と呼ばれることもあります。事業活動のために投じた金額がどの程度の利益を生み出すか計算する手法であり、不動産投資以外のビジネスでも多分に活用されています。
前述したネット利回り(NOI利回り)は、実質的な現金での手出しがないことから、減価償却費や修繕積立費が加味されていません。一方の投資資本利回り(ROI利回り)では、計算式に含む点が異なります。
投下資本利回りの計算式は、下記の通りです。
投下資本利回り=(年間家賃収入-年間経費)÷購入総額(物件価格+諸費用)×100 |
時間の経過とともに物件の価値が目減りすることも含めて、詳しい利回りを計算したいときに便利な手法です。
総合収益利回り
総合収益利回りは、最終的に売却することも視野に入れて利回りを計算する手法です。物件の所有期間全体における賃料収入と維持管理コストを計算し、収支総額に売却収益を加えることで、トータルでの収益を試算できます。
総合収益利回りの計算式は、下記の通りです。
総合収益利回り=所有期間全体の収益(賃料収入-維持管理コスト+売却収入)÷投資した自己資金金額 |
総合収益利回りを参考にする場合、不動産売却(物件を手放す)タイミング次第で譲渡所得税および住民税が大きく異なることに注意しておきましょう。
譲渡所得税は、長期の場合税率が20%、短期の場合は税率が39%と大きな開きがあります。なかには総合収益利回りにかかる譲渡所得税対策として、取得から5年以内に売却する前提で物件選びをする投資家もいます。
最低ラインを考えるときは表面利回りとネット利回りを重視しよう
前述のように、不動産投資に関する利回りは複数の種類や考え方があります。最も手軽かつスピーディーな種類は、公開されている物件情報から試算できる表面利回りです。
投資用物件であればあらかじめ情報公開されていることが多いため、専門知識がなくとも表面利回りであれば計算できます。
収益性をより詳しく知りたいときは、ネット利回りの考え方を採用しましょう。万が一、空室が長く続いたときのリスクを算出しやすく、投資を始めてから「思っていた収益と違った」と後悔する事態を防げます。
まずは表面利回りを計算し、良さそうだと思える物件があればネット利回りを計算して検討する流れが理想です。ネット利回りを正確に計算できるかどうかが、投資成否の分かれ目となります。
【不動産投資】利回りの最低ライン以外の指標も参考にしよう
利回りは物件ごとに投資可否を判断する際の重要な指標ですが、利回りだけで物件の収益性や将来性を判断するのは危険です。
一見すると高い利回りであっても、立地が極端に悪く入居率が期待できないケースなど、落とし穴が隠れている物件も存在します。魅力的な物件が必ずしも利益をもたらすわけでないため、慎重に判断しなくてはなりません。
利回り以外の指標として、イールドギャップを参考にする手法も存在します。
イールドギャップとは、ネット利回りと金融機関からの借入に対する金利の差を表すものです。例えばネット利回り5%の物件であっても、金利2.5%の融資で購入すれば、十分な収益が期待できます。
ネット利回りに対してイールドギャップが大きければ大きいほど、獲得できる収益が増加します。不動産投資では、イールドギャップ3%程度を目安に据え、検討材料にしましょう。
まとめ
利回りの計算には、「表面利回り」「ネット利回り」「投下資本利回り」「総合収益利回り」と4つの考え方が存在します。周辺環境やイールドギャップも含めて検討していけば、収益性の高い投資につながります。
利回りやイールドギャップの算出方法に不安がある場合は、不動産会社など専門家のサポートを受けることも大切です。専門家から得られる情報やエリアごとの再開発情報なども参考にしながら、多角的に利回りや収益性を考えていくことが不動産投資を成功に導きます。