家賃の値下げ交渉をされたらどうする?管理会社の正しい対処法とは?

管理会社や不動産を所有するオーナーは、可能な限り家賃の値下げをしたくないのが本音です。しかし、入居者から値下げ交渉されるケースは珍しくありません。「入居者が見つからない(もしくは入居者が退去してしまう)くらいなら、値下げ交渉に応じた方が良いかも」と感じることもあるのではないでしょうか。今回は、値下げ交渉が起きた時の理想的な対処法について解説します。

この記事は約7分で読み終わります。

入居者から家賃値下げ交渉されやすいタイミング

入居者から家賃の値下げ交渉が入りやすいタイミングは、契約更新の時期です。

老朽化などを理由に「今の家賃に見合わないのでは」と感じる入居者が、更新をきっかけに家賃の値下げを交渉してきます。特に長年住んでいる入居者ほど、設備の老朽化を実感するタイミングが多くなる傾向です。

なかには、更新料を負担に感じるから値下げ交渉をするという人もいます。「更新料を支払ってまで住み続ける価値がないので、他の物件への引っ越しを検討する」という人が出てくるかもしれません。

長期間空室が続いている部屋への入居を検討する場合、最初から値下げ交渉されるケースもあるので覚えておきましょう。

 値下げ交渉に応じるメリット

値下げ交渉に応じると多くのメリットを得られます。もちろん、全ての申し出を受け入れる必要はありませんが、メリットがあるなら前向きに検討しても良いでしょう。値下げ交渉によって、どのようなメリットを受けられるのかご紹介します。

長く住んでもらえる可能性が高まる

賃貸を運営する上で最も重要なのは、入居者に長く住んでもらうことです。長く住んでくれる人が多いほど、家賃収入は安定します。家賃交渉の受け入れを行えば、オーナーとしての信頼感を得られるため、入居者に長く住んでもらいやすくなります。

もちろん、何でもお願いを聞いてもらえるという印象を持たれても良いわけではありません。信頼されるのと軽くみられるのは意味が違います。家賃の値下げ交渉は受け入れたとしても、それ以外の部分では毅然とした態度を示すようにしましょう。

新しい入居者を募集しなくても良い

値下げ交渉を断り、退去に繋がってしまうと新しい入居者を募集しなくてはいけません。新しい入居者が自然に集まるケースは少ないです。なぜなら、物件を探している方の多くが、不動産のポータルサイトを利用しており、そこに掲載されていない物件は見つけることが困難なためです。

入居者を集めるには、そのようなサイトを活用して宣伝を行わなくてはいけません。掲載費用がかかるものの、必ず入居者が見つかるとも限りません。値下げ交渉を受け入れれば、これらの手間や費用がかからないので、結果的にプラスになる可能性があるのです。

退去による損失を防止できる

値下げ交渉の結果、退去に繋がってしまうと家賃収入が途絶えてしまいます。すぐに入居者が見つかれば良いですが、うまくいかないケースも多いでしょう。入居者が見つからない状態が長期間続くと、家賃収入を得ることができません。

空室リスクを回避するために、値下げ交渉を受け入れるのは一つの手段といえるでしょう。損益についての計算を行い、どちらの方がメリットが大きいか検討してみてください。

 値下げ交渉に応じるデメリット

値下げ交渉に応じるにはデメリットもあります。メリットとデメリットを比較した上で、どちらを選択するか判断しましょう。

収入が減る

最も大きなデメリットは収入が減ってしまう点といえます。特に現在の家賃収入で賃貸の運営がギリギリ成り立っているような場合は、収入が減ると大きな打撃を受けてしまいます。そのまま運営が成り立たなくなる可能性もゼロではありません。

現在の収入と照らし合わせて家賃交渉を行うべきか判断しましょう。メリットだけで判断して家賃の値下げを受け入れてしまうと、赤字経営になってしまう可能性があります。

一度下げてしまうと元の家賃には戻らない

一度家賃を下げると元の家賃に戻すことはできません。入居者が納得してくれれば別ですが、家賃の値下げ交渉を行ったのにも関わらず、家賃を元に戻すという提案を受け入れてくれる可能性は低いでしょう。

そのため、値下げ交渉には慎重になる必要があります。現在の収益で考えると問題がないような場合でも、将来を考えると経営に影響が出てしまうかもしれません。

色々な観点から家賃の値下げ交渉を受け入れるべきかどうか判断してください。

他の入居者が不満を抱く可能性がある

一部の入居者だけ値下げ交渉を受け入れると、他の入居者が不満を抱いてしまうかもしれません。結果として他の入居者の家賃も値下げする必要が生じたり、退去に繋がったりする可能性があるので注意しましょう。

交渉してきた入居者だけではなく、その物件を利用している入居者全員に対して影響がある問題です。値下げ交渉を受け入れることで、どのような影響が出るのかよく考えるようにしてください。

値下げ交渉が起こりやすい物件の特徴

入居者から値下げ交渉されやすい物件には、ある特徴が共通していることが多いです。保有物件に下記のような要素がないかチェックし、あらかじめリスクを把握しておきましょう。

・立地が悪い(駅から遠い、バスの本数が少ない)

・築年数が古い

・物件の外観や設備の劣化が目立つ

・生活の利便性が低下している(商業施設の撤退・スーパーやコンビニがない)

・周辺物件の相場より家賃が割高

・日当たりが悪くなった(隣地に高層ビルが建ったなど)

・空室が多くなってきた

これらの特徴がある物件は、家賃の値下げを交渉されるリスクが大きくなります。立地の悪さや生活の利便性などはオーナーの意思だけで改善できるものではありません。優良な入居者をキープするため値下げに応じるのも一つの手段です。

一方、近々修繕工事を予定しているのであれば、設備の劣化を理由とした値下げ交渉には応じる必要はありません。

家賃の値下げ交渉をされた時の対処法

家賃の値下げ交渉をされた時の対処法について解説します。管理会社だけでなくオーナーの方針決めにも役立つので、参考にしてみましょう。

家賃の値下げ交渉が法的に有効か調べる

借地借家法第32条第1項では、以下のように定められています。まずは値下げ交渉が法的に有効か、調べてみることが大切です。

『建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった時は、契約の条件に関わらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。』(2023年7月現在)

出典:「借地借家法」(e-Gov法令検索)

ここにおける「不相当」とは、下記のような事項を指します。

・固定資産税、都市計画税、物件管理費などが増減した

・土地や建物の評価額が増減した

・近所の類似物件と比べて賃料が割高な場合

一方で、「収入が減ったので」「仕送りする必要があり金銭的に苦しいので」など個人的な理由での値引き交渉には、応じる義務はありません。

近隣の類似物件の相場を調べる

近隣の類似物件の家賃を調べ、相場を把握しておくことも大切です。不動産ポータルサイトで調べたり不動産会社に聞けば、誰でもおおよその相場は分かるのでチェックしてみましょう。

自分の物件が明らかに周辺の家賃相場より高くなっている場合、値引き交渉に応じておくのが得策です。応じないと更新のタイミングで退去されやすく、空室を招いてしまいます。リスクを含めて、慎重に検討しなくてはなりません。

反対に、周辺の家賃相場より安い家賃を設定しているにも関わらず値引き交渉された場合、無理に応じる必要はありません。相場だけでなく需要・供給のバランスも調べ、競合となる物件の状況にも目を光らせておくのが理想です。

交換条件を提示する

家賃の値下げ交渉に応じる場合、交換条件を提示する方法があります。例えば、短期解約違約金を設定すれば、値下げ直後の退去を予防することが可能です。やむを得ず家賃を下げたにも関わらず短期間で退去されてしまった場合、赤字になってしまう可能性があります。

オーナーだけが一方的に損しないよう、最低の入居期間を取り決めておくのが理想です。同じく、定期建物賃貸借とするのも一つの手段といえます。

最低入居期間は、入居者募集にかかる広告費などのコストを試算してから決めるのがおすすめです。6ヶ月から1年程度の最低入居期間を設けたうえで、違約金は家賃1ヶ月相当額にするのが一般的です。

高額すぎると、消費者契約法により違約金の取り決め自体が無効になることもあるので、注意してください。

代替案を提示する

値下げ交渉に応じない場合でも、代替案を提示するのがおすすめです。一方的に入居者の提案を突っぱねてしまうと、入居者からのイメージを大きく損ねてしまい、適切な管理に協力してもらえなくなる可能性があります。

例えば、入居希望者に対しては敷金など初期費用を減額したりフリーレント期間を設けるのがおすすめです。敷金を極端に安くしたり0円にすることも可能ですが、退去時に原状回復費を実費で請求したことにより、かえってトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。

まとめ

家賃の値下げを交渉されることを嫌がるオーナーは多いですが、入居者を確保し安定したローン返済を叶えるには応じた方が良いケースも存在します。

大切なのは、オーナーだけが一方的に損することのないよう、条件の提示なども視野に入れながら丁寧に応じていくことです。判断に迷う時はプロの意見も参考にするなど、決断を焦らないことをおすすめします。