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入居者から家賃値下げ交渉されやすいタイミング
入居者から家賃の値下げ交渉が入りやすいタイミングは、契約更新の時期です。
老朽化などを理由に「今の家賃に見合わないのでは」と感じる入居者が、更新をきっかけに家賃の値下げを交渉してきます。特に長年住んでいる入居者ほど、設備の老朽化を実感するタイミングが多くなる傾向です。
なかには、更新料を負担に感じるから値下げ交渉をするという人もいます。「更新料を支払ってまで住み続ける価値がないので、他の物件への引っ越しを検討する」という人が出てくるかもしれません。
長期間空室が続いている部屋への入居を検討する場合、最初から値下げ交渉されるケースもあるので覚えておきましょう。
家賃の値下げ交渉に応じるかどうかはオーナー次第
家賃の値下げ交渉に応じるかどうかは、オーナー次第です。設備の老朽化や長期的な空室をオーナー自身が課題に感じているのであれば、値下げ交渉に応じてでも安定した家賃収入を確保した方がよい場合もあります。
また、長期的に住んでくれている入居者の場合、お互いの信頼関係が築けていれば無理のない範囲で値下げすることもできます。
ただし、特定の部屋の家賃を下げたことを他の入居者に知られ、不要なクレームを招いてしまうこともあるので注意が必要です。
また、不動産投資ローン・管理費・固定資産税・修繕積立費の支払いに無理が生じるような値下げ交渉に応じるのは危険です。なかにはダメ元で値下げ交渉してくる人もいます。退去する可能性の低い入居者であれば、無理に応じる必要はありません。
値下げ交渉が起こりやすい物件の特徴
入居者から値下げ交渉されやすい物件には、ある特徴が共通していることが多いです。保有物件に下記のような要素がないかチェックし、あらかじめリスクを把握しておきましょう。
・立地が悪い(駅から遠い、バスの本数が少ない)
・築年数が古い
・物件の外観や設備の劣化が目立つ
・生活の利便性が低下している(商業施設の撤退・スーパーやコンビニがない)
・周辺物件の相場より家賃が割高
・日当たりが悪くなった(隣地に高層ビルが建った など)
・空室が多くなってきた
上記のような特徴がある物件は、家賃の値下げを交渉されるリスクが大きくなります。立地の悪さや生活の利便性などはオーナーの意思だけで改善できるものではありません。優良な入居者をキープするため値下げに応じるのもひとつの手段です。
一方、近々修繕工事を予定しているのであれば、設備の劣化を理由とした値下げ交渉には応じる必要はありません。
家賃の値下げ交渉をされたときの対処法
最後に、家賃の値下げ交渉をされたときの対処法について解説します。管理会社だけでなくオーナーの方針決めにも役立つので、参考にしてみましょう。
家賃の値下げ交渉が法的に有効か調べる
借地借家法第32条第1項では、以下のように定められています。まずは値下げ交渉が法的に有効か、調べてみることが大切です。
『建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、
当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。』
出典:「借地借家法」(e-Gov法令検索)
ここにおける「不相当」とは、下記のような事項を指します。
・固定資産税、都市計画税、物件管理費などが増減した
・土地や建物の評価額が増減した
・近所の類似物件と比べて賃料が割高な場合
一方で、「収入が減ったので」「仕送りする必要があり金銭的に苦しいので」などの個人的な理由での値引き交渉には、応じる義務がありません。
近隣の類似物件の相場を調べる
近隣の類似物件の家賃を調べ、相場を把握しておくことも大切です。不動産ポータルサイトで調べたり不動産会社に聞いたりすれば、誰でもおおよその相場は分かるのでチェックしてみましょう。
自分の物件が明らかに周辺の家賃相場より高くなっている場合、値引き交渉に応じておくのが得策です。応じないと更新のタイミングで退去されやすく、空室を招いてしまいます。リスクを含めて、慎重に検討しなくてはなりません。
反対に、周辺の家賃相場より安い家賃を設定しているにもかかわらず値引き交渉された場合、無理に応じる必要はありません。相場だけでなく需要・供給のバランスも調べ、競合となる物件の状況にも目を光らせておくのが理想です。
交換条件を提示する
家賃の値下げ交渉に応じる場合、交換条件を提示する方法があります。例えば、短期解約違約金を設定すれば、値下げ直後の退去を予防することが可能です。やむを得ず家賃を下げたにもかかわらず短期間で退去されてしまった場合、赤字になってしまう可能性があります。
オーナーだけが一方的に損しないよう、最低の入居期間を取り決めておくのが理想です。同じく、定期建物賃貸借とするのもひとつの手段といえます。
最低入居期間は、入居者募集にかかる広告費などのコストを試算してから決めるのがおすすめです。6ヶ月から1年程度の最低入居期間を設けたうえで、違約金は家賃1ヶ月相当額にするのが一般的です。
高額すぎると、消費者契約法により違約金の取り決め自体が無効になることもあるので、注意してください。
代替案を提示する
値下げ交渉に応じない場合でも、代替案を提示するのがおすすめです。一方的に入居者の提案を突っぱねてしまった場合、オーナーや管理会社に対する入居者からのイメージを大きく損ねてしまい、適切な管理に協力してもらえなくなる可能性があります。
例えば、入居希望者に対しては敷金など初期費用を減額したりフリーレント期間を設けたりするのがおすすめです。敷金を極端に安くしたり0円にしたりすることも可能ですが、退去時に原状回復費を実費で請求したことにより、かえってトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。
まとめ
家賃の値下げを交渉されることを嫌がるオーナーは多いですが、入居者を確保し安定したローン返済を叶えるには応じた方がよいケースも存在します。
大切なのは、オーナーだけが一方的に損することのないよう、条件の提示なども視野に入れながら丁寧に応じていくことです。判断に迷うときはプロの意見も参考にするなど、決断を焦らないことをおすすめします。