自主管理マンションとは?委託管理との違いやメリット・デメリットを解説

マンションの管理方法は、管理会社に委託せず全てを自分で管理する「自主管理方式」と管理業務全部を管理会社に委託する「全部管理方式」、自主管理と業務の一部を管理会社に委託する「一部委託方式」に分けられます。マンション管理は、専門の会社に委託するのが一般的ですが、なかには自主管理で運営しているマンションもあります。今回は、自主管理マンションの利点やリスクを踏まえ、投資効率にも関わる管理方法について解説します。

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マンションの自主管理とは

マンションの自主管理とは、マンションの管理を管理会社に委託せず、住民が自分たちで管理する形態のことです。

マンションを区分所有する場合、所有者で管理組合の組織が義務づけられています。そして建物の維持や管理を行っていくのですが、この維持や管理を外部に委託しないのが自主管理マンションです。

一般的に、会計帳簿の作成は住民で行い、植栽の手入れやエレベーターの保守管理などは、管理組合が直接専門業者に依頼する形となります。委託の場合は、マンション管理会社が管理を実施、あるいは業者に一部再委託を行います。

自主管理マンションは全体の6.8%

マンション管理は自主管理よりも、管理会社に業務を全て委託する「全部委託」や部分的に委託する「一部委託」が多いです。

国土交通省が実施した「平成30年度 マンション総合調査」によると、管理組合が全ての管理事務を行っているマンションはわずか6.8%にとどまりました。これは、管理組合が自ら管理業務を行うには、役員に大きな負担がかかることが背景にあります。

また、築年数が新しいほど自主管理の割合は低くなる傾向です。例えば、京都市が行った「令和元・2年度分譲マンション実態調査(途中段階)」では、築20年未満のマンションで自主管理を行っているマンションはゼロでした。

近年ではマンション建築後、ディベロッパーの関連会社がそのまま建物管理を行うという例が多いことが理由として考えられます。

一方で築年数が経過しているマンションに自主管理が多いのは、分譲当時管理会社自体が少数であったことが要因とみられています。また、長期間居住を続けるうちに住民のコミュニティが醸成し、管理会社を外して自主管理に移行したケースもあるようです。

出典:国土交通省「平成30年度 マンション総合調査結果(概要編)」

出典:京都市住宅審議会「令和元・2年度分譲マンション実態調査(途中段階)の概要」

自主管理マンションの利点

自主管理を行っている不動産オーナーは少ないものの、自主管理マンションにも利点があります。ここからは、自主管理を行うことで得られるメリットを見ていきましょう。

管理にかかる費用を抑えられる

自主管理では、マンション管理を全て自分たちで行うため、管理会社に対して管理委託費を支払いません。そのため、マンション管理にかかるコストを大幅に抑えることが可能です。

管理委託費は、管理する業務の幅によっても変動しますが、一般的には毎月管理会社へ支払いが生じます。管理会社でなくとも、掃除を組合内で分担し居住者が行えば、清掃会社への委託費を抑えることが可能です。

毎月の支出を抑えて負担を軽減できることは、不動産投資を行う上で大きな利点となるでしょう。

マンションの管理に対する意識が高まる

管理会社に委託している状態では、管理全体を管理会社に丸投げして安心してしまうことが大半です。自分のマンションでありながら、管理意識が低下し、マンションの現状を把握できていないことも珍しくありません。

実際に、管理全体を委託しているマンションでは、管理に対する意識低下が顕著にみられるケースも多いのです。

管理に対する意識が低いマンションでは、悪質な管理会社に委託して適切な管理がされていない状況でも、気付かずにそのまま管理委託費を払い続けていることもあります。

このような状態では、清掃が行き届かずマンションの環境が悪化したり、設備を適切に維持できなかったりするため、住人が退去してしまい空室損を招くこともあるでしょう。

しかし、自主管理マンションでは、管理業務を自分たちで行うため、管理に対する問題意識が高まります。マンションの些細な部分にも気付き、管理会社に委託するよりも細やかな管理が可能です。

住民間の交流を促せる

自主管理では、円滑な管理を行うために管理組合内の連携が欠かせません。そのため、必然的に住民同士の接点が増えます。

昨今、隣にどのような人が住んでいるかわからないマンションも多い中、住民同士の交流が活発になることで、自然災害が起きた際にも協力し合える体制が整うでしょう。

自主管理マンションにはリスクもある

管理費用を抑えられる点や細やかな管理ができる点、住民同士のコミュニケーション活性化など、利点も多い自主管理マンションですが、リスクもあることを理解しておかなければなりません。

自主管理の継続が難しい

マンションを自主管理するには、管理組合で理事会を組織して、それぞれに役割を振り分けます。自主管理組合では、住民の中から理事会メンバーを選出することとなるため、住民の高齢化が進めば、なり手不足に陥る恐れもあるのです。

また、理事会メンバーの選出では、マンションの居住者から意見を聞き出し、管理に反映させられるリーダーシップを持つ人が必要です。しかし、リーダーシップや管理能力を発揮できる人数が少なければ一部の人しか管理の詳細を知らない状態になります。特定の人に依存している状態では、円滑にマンション管理を行うことが困難になるでしょう。

物件の価値を低下させかねない

マンションの管理が適切に行われていないと、建物はもちろん設備の劣化が早まります。自主管理で、定期的な点検や適切な維持修繕が行えないと、マンションの見栄えが悪くなるだけでなく、設備の故障による発火や外壁の崩落事故などが発生する危険性もあるのです。

見栄えの悪さや事故発生の危険性が高まれば、マンションの資産価値の低下に繋がります。

自主管理が心配なら管理会社への委託を検討する

自主管理には良い面もあるものの、長い目で見るとリスクがつきまといます。自主管理が不安であれば、管理会社への委託を検討するのも一つの方法です。管理会社に管理を委託した場合に任せられる業務と得られるメリットをご紹介します。

入居者の管理を委託できる

管理会社に委託した場合、自主管理では管理組合が実施してきたことの大部分を管理会社に任せられます。例えば、住民が関係するトラブルや管理費の未納があると、自主管理なら管理組合が対処しなければなりません。しかし、管理会社に委託すれば難しい入居者対応も管理会社が行ってくれ、役員の負担を大きく軽減できます。

建物の管理を委託できる

管理会社には、入居者だけでなく建物の管理も委託できます。自主管理では、日常的な共用部の清掃や定期清掃を当番制としているケースもありますが、管理を委託すれば住民の負担を省けます。

また、管理を委託すれば、法定点検はもちろん日常点検や物件の不具合対応も任せられます。常に専門家目線でのチェックが可能なため、自主管理よりも早く不具合や問題点を発見できます。

自主管理から委託に変更も可能

現在自主管理を行っているマンションで、自主管理に限界を感じている場合は、委託管理に変更可能です。委託管理に変更すれば、専門知識や豊富な経験のある管理会社に任せられるのが大きなメリットで、マンションの資産価値の大幅な低下も防げます。

ただし、自主管理から委託管理に変更する場合には、管理費の増加を伴うケースも出てくるでしょう。そうなると、反対する所有者が出てくることも少なくありません。

費用負担が大きくなる場合には、管理組合が所有者に対して委託管理へ変更するメリットを十分に説明し、賛同を得ることが必要です。また、全部委託ではなく一部委託で費用を抑えることも有効といえます。複数の管理会社から見積もりを取り、現在のマンションの状況に合った委託方法をおすすめします。

下記の記事では管理会社の選び方や依頼可能な業務範囲を紹介しています。管理会社への委託を検討されている方はぜひ参考にしてください。

【不動産投資】管理会社の選び方!依頼できる業務の種類とは?

まとめ

自主管理のマンションは一般的に物件価格や管理費が割安なこともあるものの、管理状況によっては劣化が進みやすく、資産価値の低下リスクがあります。投資する際には、必ず管理が適切に行われているか、管理記録や物件状況を良く精査しましょう。

また、物件取得後に管理の問題点が明らかになった場合には、委託管理への変更を働きかけるなど管理組合に積極的に関わっていくことも重要です。