不動産投資は、老後の安定した収入源として注目を集めています。
将来の年金受給額が減少する可能性があるなか、安定的な家賃収入を得られるためには有効な投資のひとつです。
金融庁の報告によれば、夫婦で95歳まで生きた場合、2,000万円の資産の切り崩しが必要だといわれています。しかし、令和元年の厚生年金の平均受給額は約14万円、国民年金は約5万円にとどまり、老後の生活を年金だけで賄うのは厳しい状況です。
この記事では、不動産投資が年金対策に有効な理由、始め方のポイント、具体的な手順を解説します。年金対策として不動産投資を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
不動産投資が年金対策に有効的な3つの理由
ここでは、不動産投資が年金対策に有効的な3つの理由を詳しく解説します。
家賃収入が継続的に入るため老後の資金を補える
不動産投資の特徴は、入居者から定期的な家賃収入を得られる点です。
株式投資や暗号資産と異なり、相場の変動に左右されにくく、安定収入を期待できます。
土地は供給が限られた貴重な資産です。適切な管理を行えば、長期間にわたって価値を維持できます。
また、インフレ下では現金の価値が目減りしますが、不動産はインフレに連動して価格や家賃が上昇する傾向です。
家賃収入は入居者がいる限り続くため、老後の年金を補完する収入源として期待できます。ローン返済中は収支が厳しい時期もありますが、完済後は家賃収入の多くを手元に残せるでしょう。
レバレッジ効果によって少ない自己資金でも始められる
不動産投資は、銀行からの融資を活用できる数少ない投資手法です。
数百万円の自己資金で数千万円規模の物件を購入できるため、投資効率が高くなります。
例えば、3,000万円の物件を購入する際、頭金600万円で残りを銀行融資で賄うやり方も可能です。家賃収入でローンを返済しながら、資産を築いていけます。
ただし、少額から始められる株式投資とは異なり、銀行の審査を通過しなければいけません。それでも安定した収入があれば、融資を受けられる可能性は十分にあります。
レバレッジ効果については以下の記事をご覧ください。
→これから不動産投資を始める人へ|レバレッジ効果について解説
運用の手間がかからない
不動産投資は、管理会社に委託すれば運用の手間を大幅に軽減できます。
管理会社は入居者の募集から賃料の回収、建物の維持管理まで一括して対応します。株式投資のように日々の相場チェックや売買判断は不要で、長期的な視点で運用できるのがメリットです。
さらに、委託費用は家賃収入から支払う計画となるため、自己資金を追加する必要もありません。入居者とのトラブル対応や夜間の緊急連絡にも対応してもらえるため、本業や私生活に支障をきたさない魅力もあります。
管理会社に委託できる業務は、以下の記事をご覧ください。
→【全解説】管理会社に委託できる業務やメリット・管理会社の選び方
年金対策のために不動産投資を始めるポイント
ここでは、年金対策のために不動産投資を始めるポイントを詳しく解説します。
無理のない収支計画を立てる
不動産投資で成功するには、収支計画を明確にする必要があります。
毎月の家賃収入から、ローン返済額や管理費、修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引いた手取り額を正確に把握しましょう。
物件の購入価格や借入額は、返済負担が重くならない範囲に抑えるべきです。空室による収入減少や予期せぬ修繕費用にも備えて、余裕のある計画を立てます。
また、家賃収入の30%程度を修繕費や空室対策の予備費として確保してみてください。年金受給開始までにローン完済を達成できれば、老後は安定した不労所得を得られるでしょう。
不動産投資の運用中に発生するリスクを把握しておく
不動産投資には、空室や家賃の下落、建物の老朽化など、さまざまなリスクが伴います。
入居者が見つからない期間は収入が途絶え、ローン返済や固定費の支払いが負担になるため注意が必要です。
さらに、築年数が経過すると、大規模修繕や設備の更新費用が発生する可能性もあります。旧耐震基準の物件では、耐震改修工事が必要になるケースもあるでしょう。
不動産投資はこれらのリスクを事前に把握し、対策を講じなければいけません。
万が一のトラブルに備えて最低限の自己資金を確保しておく
不動産投資では、予期せぬ事態に備えた資金準備が欠かせません。
収入が途絶えても、数ヶ月は経費を賄える程度の自己資金を確保しましょう。
例えば大規模修繕や設備更新には、多額の費用がかかります。建物の築年数や状態を考慮し、計画的に修繕積立金を積み立てるべきです。
また、家賃滞納のリスクにも備えるためには、保証会社の利用も検討するとよいでしょう。
その他、火災保険や地震保険など、必要な保険にも加入してください。災害による建物の損壊や事故が発生した際の補償を確保すれば、安定した運用ができます。
予備費は最低でも家賃収入の6ヶ月分を手元に残しておくのが理想です。
余裕があれば不動産投資ローンを繰り上げ返済して金利上昇リスクに備える
不動産投資ローンの返済期間は、一般的に20〜30年と長期にわたります。
期間中は金利が上昇するリスクがあるため、収支に余裕がある場合は繰り上げ返済を検討しましょう。
毎月の支払い額を減らすか、返済期間を短縮するか、目的に応じて適切な選択を行います。
早期完済を実現できれば、総支払額を抑えられるほか、金利上昇リスクも軽減できます。ただし、繰り上げ返済には手数料がかかる場合があるだけでなく、節税効果が減少するため注意が必要です。
収支状況や将来の資金計画を踏まえて、適切な返済方法を選択しましょう。
ローン返済後の家賃収入はすべてが利益になるわけではない
ローン返済が完了しても、不動産投資には継続的な支出が伴います。
固定資産税や都市計画税、建物の経年劣化に伴う修繕費用も必要です。
また、管理会社への委託費用や火災保険料なども、定期的な支出です。築年数が進むと、空室率が上がり家賃を下げざるを得ないケースも増えてきます。
さらに、将来的な大規模修繕に備えて、修繕積立金も継続して確保する必要があります。エレベーターや給排水設備の更新には多額の費用がかかるため、築30年程度で建物全体の大規模修繕の検討が必要になるでしょう。
出口戦略も考えておく
不動産投資を始める際は、将来の出口戦略も検討しましょう。
物件を長期保有して家賃収入を得続けるか、一定期間後に売却するか、相続資産として活用するかなど、選択肢はひとつではありません。
物件の価値は築年数が進むと低下し、維持管理費用は増加する傾向です。売却を考える場合は、物件価値がある程度維持される時期を見極めるようにしてください。
相続を想定する場合は、路線価や固定資産税評価額を確認し、税負担も考慮に入れます。
また、物件の立地や築年数によって売却のしやすさが変わってきます。出口戦略を事前に検討しておけば、計画的な投資が可能です。
年金対策のための不動産投資を始める流れ
ここでは、年金対策のための不動産投資を始める流れを詳しく解説します。
収支目標を決める
不動産投資を始めるにあたって、まずは具体的な収支目標を設定しましょう。
現在の年金受給見込み額と老後に必要な生活費から、不足分を算出します。家賃収入でどの程度の金額を補いたいのか、明確な目標を立ててください。
物件価格と頭金の設定、毎月のローン返済額は、目標に基づいて決定します。過度な借入は返済負担が重くなるため、収入の30%程度を返済額の目安とすべきです。
管理費や修繕積立金、固定資産税なども考慮に入れ、手取り収入を正確に試算します。空室や家賃下落のリスクも想定し、余裕を持った収支計画を立てましょう。
収益物件を探す
目標が定まったら、条件に合う物件を探します。
立地条件は投資の成否を左右するため、駅からの距離や生活利便施設へのアクセス、周辺の開発計画などを入念に確認しましょう。
また、人口動態や賃貸需要、物件の築年数や構造、設備の状態も重要な判断材料です。価格と家賃収入のバランス、利回りの水準も入念にチェックしてください。
不動産投資会社に相談する際は、複数社を比較検討し、顧客目線で丁寧な説明をしてくれる会社を選びましょう。
頭金金の用意やローンの審査を受ける
物件が決まったら、頭金の準備とローンの審査手続きに入ります。
一般的な頭金の目安は、物件価格の2〜3割です。自己資金が少ない場合は、住宅金融支援機構の融資も検討できます。
ローン審査では年収や勤務年数、他の借入状況などが確認されます。返済比率は年収の30%以内に抑えるのが望ましいです。
ただし、審査基準は金融機関によって異なるため、複数の金融機関に相談するとよいでしょう。
収益物件を購入する
物件購入の契約は慎重に進めます。重要事項説明書や売買契約書の内容を細かく確認し、不明点は必ず質問してください。
他にも建物の状態や修繕履歴、法的制限なども入念にチェックします。
また、契約時には手付金の支払いが必要となり、残金は決済日に支払います。
所有権移転登記も併せて行い、固定資産税や都市計画税の精算も行いましょう。
管理会社を選ぶ
物件の運用をスムーズに進めるためには、信頼できる管理会社の選定が欠かせません。
管理会社は入居者の募集から賃料回収、建物の維持管理まで幅広い業務を担います。手数料の水準や提供されるサービス内容を比較検討しましょう。
また、入居者募集の実績や空室対策の提案力も、選定基準です。24時間対応の緊急連絡体制や、定期的な建物点検の実施状況も確認してみてください。
運用開始
管理会社との契約が完了したら、いよいよ運用開始です。
入居者の募集条件や家賃設定は、市場相場を踏まえて決定します。入居者が決まったら、賃貸借契約の締結や火災保険へ加入しましょう。
その後は毎月の収支管理を徹底し、修繕積立金も計画的に確保していきます。建物の状態を定期的にチェックしつつ、必要な修繕は早めに対応するよう心がけてください。
また、入居者からの要望や苦情にも適切に対処し、長期入居につなげましょう。
まとめ
不動産投資は、年金対策に有効な手段のひとつです。
厚生年金の平均受給額約14万円、国民年金約5万円では老後の生活を十分に賄えない可能性が高いため、必要性は高いといえるでしょう。
ただし、成功するには入念な準備と計画が欠かせません。収支計画を立て、リスク対策を講じ、適切な物件と管理会社を選ぶ必要があります。