ふるさと納税は、自治体への寄付を通じて地域貢献ができるだけでなく、税金の控除を受けられる魅力的な制度です。
しかし、控除を受けるためには確定申告が必要な場合があります。特に初めて利用する方にとっては、手続きの流れや条件が分かりにくいこともあるでしょう。
この記事では、確定申告が必要なケースや控除の仕組み、手続き方法について詳しく解説します。
ふるさと納税とは何か?
ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄付を行うことで、税金の控除を受けられる制度です。
寄付金のうち2,000円を超える部分について、原則として全額が所得税と住民税から控除されます。
生まれ育った故郷や応援したい地域に貢献できるだけでなく、自治体から特産品などの返礼品を受け取ることも可能です。
ふるさと納税は、地域間格差の是正や地方創生の観点から注目されており、多くの人々に活用されています。
ふるさと納税の税制度については、以下の記事でも詳しく解説しています。
ふるさと納税をしたら確定申告が必要?
ふるさと納税を利用して税金控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。
確定申告は、寄付金控除を申請することで所得税の還付や住民税の軽減を受ける手続きです。
特に、1年間に6自治体以上に寄付した場合や、医療費控除や住宅ローン控除など他の控除を申請する場合には、確定申告が必須となります。
一方で、給与所得者で寄付先が5自治体以内の場合は、『ワンストップ特例制度』を利用することで確定申告を省略可能です。
ワンストップ特例制度では住民税からのみ控除されますが、手続きが簡便で多くの人に利用されています。
確定申告が必要な場合は、寄付金受領証明書や源泉徴収票などの書類を準備し、期限内に手続きを行うことが重要です。
ふるさと納税で控除される税金は?
ふるさと納税の控除対象となる税金は主に2種類あり、それぞれ異なる方法で控除が行われます。
ここでは、ふるさと納税によって控除される税金の種類とその仕組みについて詳しく解説します。
所得税
ふるさと納税による所得税の控除は、寄付金額から2,000円を引いた金額に所得税率を掛けた額が対象となり、確定申告を通じて適用されます。
所得税率は課税所得に応じて5%〜45%の7段階で設定されており、高所得者ほど多くの控除額が受けられる仕組みです。
ただし、控除対象となる寄付金額には、総所得金額等の40%を上限とする制限があります。
還付金は確定申告後1~2カ月で指定口座に振り込まれ、寄付者の負担軽減が期待できます。
住民税
ふるさと納税による住民税の控除は、『基本分』と『特例分』の2種類で構成され、基本分は、寄付金額から2,000円を差し引いた金額の10%が控除されます。
一方、特例分は、寄付金額から2,000円を引いた残額に『90%-所得税率』を掛けた金額が控除額です。ただし、特例分の控除には住民税所得割額の20%という上限が設定されています。
控除は翌年度の住民税から差し引かれ、月々の住民税支払い負担が軽減される仕組みです。
確定申告の方法
初めて確定申告を行う方でもスムーズに進められるよう、必要な準備や手順を分かりやすく解説します。
ここでは、申告書の作成方法や提出方法、期限について詳しく見ていきましょう。
必要書類を準備
確定申告には以下の書類が必要です。
- 寄付金受領証明書(寄付先自治体から送付)
- 源泉徴収票(勤務先から取得)
- 還付金を受け取るための銀行口座情報
- マイナンバーカードまたは番号確認書類と身元確認書類
事前に必要書類を揃え、申告時にすぐ利用できるようにしておきましょう。
申告書の作成
ふるさと納税の確定申告書は、オンラインまたは手書きで作成できます。オンラインの場合、国税庁の『確定申告書等作成コーナー』を利用すると便利です。
寄付金控除の入力欄に、寄付先自治体名や寄付金額を記載し、源泉徴収票や還付金受取口座情報を入力することで、自動的に計算されます。
一方、手書きの場合は税務署で配布される用紙や国税庁サイトからダウンロードした書類に必要事項を記入します。
申告書の提出
ふるさと納税の確定申告書は、以下の3つ方法で提出できます。
- 電子申告(e-Tax)
- 郵送
- 持参
電子申告は、国税庁の『e-Tax』システムを使用し、マイナンバーカードまたは利用者識別番号でログインして送信します。
電子申告は手続きが簡単で、還付金の処理も早い点がメリットです。
作成した申告書と必要書類を封筒に入れ、住民票のある地域を管轄する税務署に送付します。返信用封筒を同封すれば、控えに収受印を押したものが返送されます。
また、税務署に直接訪問して提出することも可能です。受付窓口で確認してもらえるため、不備があった際もその場で対応できます。
e-Taxについては、以下の記事で詳しく解説しています。
⇒不動産投資の確定申告はe-Taxが便利!具体的な申告方法を解説
提出期限
ふるさと納税に関する確定申告の提出期限は、寄付を行った翌年の2月16日から3月15日までです。
期間内に申告書を提出することで、所得税の還付や住民税の控除が適用されます。なお、3月15日が土日祝日にあたる場合は、翌営業日が締切となります。
一方、還付申告の場合は、寄付を行った翌年の1月1日から5年間提出が可能です。期限内に申告できなかった場合でも、過去に遡って手続きを行える制度です。
ただし、還付申告を行う際も必要書類の準備が求められるため、早めの対応が推奨されます。
期限を守ることでスムーズな控除手続きが可能となるため、計画的に進めましょう。
ふるさと納税に関するよくある疑問と回答
ふるさと納税は、多くの人に利用されている制度ですが、その仕組みや手続きについて疑問を持つ方も少なくありません。
ここでは、ふるさと納税に関するよくある質問とその回答をわかりやすく解説します。
Q.確定申告を忘れた場合はどうなりますか?
ふるさと納税の確定申告を忘れた場合でも、まだ控除を受けられる可能性があります。
確定申告書の提出期限から5年以内であれば、『更正の請求』という手続きを行うことで寄付金控除を適用できます。
手続きにより、所得税の還付や住民税の軽減を受けることが可能です。更正の請求を行う際には、寄付金受領証明書や源泉徴収票など必要書類を揃え、税務署に申請します。
また、還付申告の場合も同様に、寄付翌年の1月1日から5年間提出が可能です。
ただし、期限を過ぎた場合は早めに対応することが重要です。詳細は最寄りの税務署に相談しましょう。
Q.ワンストップ特例制度の利用後、確定申告が必要になった場合は?
ワンストップ特例制度を利用した後に確定申告が必要になった場合、特例申請は無効となり、全ての寄付について確定申告で寄付金控除を申請する必要があります。
確定申告を行う際には、各自治体から発行される『寄付金受領証明書』を準備し、確定申告書に寄付先の名称や寄付金額を正確に記載してください。
特例制度の無効化に伴う追加手続きは不要で、確定申告が優先されます。例えば、医療費控除や住宅ローン控除など他の控除を申請する場合も同様に確定申告が必要です。
ワンストップ特例制度を利用していた場合でも、確定申告を行うことで所得税と住民税の両方から控除を受けることができます。
Q.ふるさと納税と住宅ローン控除を同時に受けることはできますか?
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用可能ですが、注意点があります。住宅ローン控除は所得税から優先的に控除され、控除しきれない分が住民税から引かれます。
一方、ふるさと納税の控除は確定申告を行う場合、所得税と住民税の両方に適用されます。
ふるさと納税の寄付金控除が先に所得税に適用されることで、住宅ローン控除で控除できる所得税額が減少する可能性があるため注意が必要です。
回避するためには、『ワンストップ特例制度』を利用する方法がおすすめです。この制度ではふるさと納税の控除が住民税のみとなるため、住宅ローン控除の影響を受けません。
ただし、住宅ローン控除1年目の場合や寄付先が5自治体を超える場合は確定申告が必要です。事前にシミュレーションを行い、最適な方法を選びましょう。
Q.ふるさと納税の控除上限額を超えた場合はどうなりますか?
ふるさと納税の控除上限額を超えた寄付については、控除の対象外となり、自己負担となります。
控除上限額は年収や家族構成、その他の控除状況によって異なるため、事前にシミュレーションを行い、自分の上限額を把握しておくことが重要です。
特に、複数の自治体に寄付する場合は合計金額が上限を超えないよう注意しましょう。
上限を超えた分も寄付として自治体支援にはなりますが、税金控除の対象外となる点に留意してください。
Q.寄付金受領証明書を紛失した場合はどうすればいいですか?
寄付金受領証明書を紛失した場合は、寄付先の自治体に問い合わせて再発行を依頼することができます。
証明書がないと確定申告で寄付金控除を申請できないため、早めに対応することが大切です。
また、ふるさと納税ポータルサイトを利用して寄付した場合は、マイページから証明書の再発行手続きを行える場合もあります。
再発行には時間がかかることがあるため、申告期限に間に合うよう余裕を持って手続きしましょう。
まとめ
ふるさと納税は、寄付を通じて地域貢献と税金控除を両立できる制度です。
控除を受けるには原則として確定申告が必要ですが、給与所得者で寄付先が5自治体以内の場合は『ワンストップ特例制度』を利用することで手続きが簡略化されます。
確定申告では、所得税と住民税の控除が適用され、寄付金受領証明書や源泉徴収票などの書類が必要です。手続きや注意点を理解し、最大限に活用しましょう。