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今年の日本経済はデフレ脱却でインフレ経済へ
昨年2023年は物価上昇、そして「インフレ」が大きな話題となった年でした。電気・ガスなどのエネルギー価格を始め食料品なども大きく値上がりし、私達の暮らしにも大きな影響がありました。
総務省の発表した消費者物価指数によると2021年には前年比マイナス0.2%でしたが2022年には2.5%と上昇、さらに2023年は3.2%と3%台に上昇しました。
いわゆるZ世代の方々からすると生まれた時からデフレ状態が続いてきており、インフレという言葉がピンとこない方も多いのではないでしょうか。しかし今年は消費者物価指数のさらなる上昇も予想され、人の動き・お金の動きが活性化し経済全体を押し上げる可能性を秘めています。
消費者物価指数の推移(前年比)
年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
前年比 | 2.7% | 0.8 | -0.1% | 0.5% | 1.0% | 0.5% | 0.0% | -0.2% | 2.5% | 3.2% |
<総務省「2020年基準 消費者物価指数」>
ますます高まる資産運用への関心
サラリーマンの方の給与は岸田内閣による呼びかけにより徐々に上昇の傾向にありますが、物価上昇率に追い付いていないので実質的にはマイナスが続いています。厚生労働省「毎月勤労統計調査(速報)」によると2023年11月の実質賃金は3%のマイナスとなり、2023年1~11月はすべてマイナスとなりました。こうした物価高により将来の生活についての不安も高まってきています。
政府は「自助努力」を推奨するようになり、2024年からは新Nisaがスタートしました。岸田総理は年頭の施政方針演説で、2000兆円を超える家計の金融資産を投資に向ける事で企業価値の向上や投資・消費の好循環を目指す事を表明しています。
筆者の周りの若い方々の中でも、今までまったく資産運用に興味関心がなかった方がiDeCoや新Nisaを始めるケースが多いなと感じます。つまり資産運用に興味関心を持つ方の裾野が2024年には一気に拡大する年となるのではないでしょうか。
実質賃金指数<前年同月比>の推移
2023年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
前年同月比 | -4.1% | -2.9% | -2.3% | -3.2% | -0.9% | -1.6% | -2.7% | -2.8% | -2.9% | -2.3% | -3.0% |
<厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果速報」>
どうなる老後、年金問題
日本では少子高齢化が進み、年金財政は厳しい状況となってきています。65歳以上の高齢化人口は拡大しています。2023年の敬老の日(9/18)にちなんで総務省から発表された統計によると総人口に占める高齢者人口の割合は29.1%と過去最高となりました。日本人の平均寿命は長寿化が進む半面、将来の年金不安が高まり「長生きリスク」に対処しなければならない状況となってきています。
年金支給年齢も1986年に60歳から65歳に引き上げられ高齢者の就業も多くなっています。高齢の就業者数は19年連続で増加し912万人となり、高齢就業者の割合は13.6%と共に過去最高となっています。日本の高齢者の就業率は主要国の中でも高い水準となっており、老後も働き続けなければいけない状況が現実となっています。
公的年金は2024年4月からは2.7%引き上げる事が厚生労働省から発表されました。年金の引き上げ率は将来の年金水準の確保のために給付額を調整する「マクロ経済スライド」により抑えられている事もあり、物価上昇率より低くなっており実質的にはマイナスとなっていると言えます。
日本では人口減少、高齢化がますます進むと考えられます。年金をめぐる状況は将来的には一層厳しくなる事も予想される事も資産運用への関心も高まると考えられます。
不動産投資と金利の行方は
将来の備えについての関心が高まる中で注目を集めているのは「不動産投資」です。特に区分所有のマンションの中でもワンルームマンション投資は少ない自己資金と毎月の負担も比較的少なく手軽に始められる事が特長です。
読者の皆様方は今後の金利の動向が気になると思われます。断定的な事は言えませんが、今年前半にはマイナス金利が解除される公算が大きいと思われます。但しマイナス金利が解除されたとしても金融緩和が維持される事には変わりはなく、解除後は金融機関の金利の「競争原理」が働き、不動産投資ローンなどの上昇率は小幅にとどまると予想されます。簡単に言うと「超低金利時代」⇒「低金利時代」に移行するというイメージです。つまり引き続き不動産投資においては良好な環境が続くと考えられます。
どうなる地価・建築費・マンション価格
インフレによる影響もあり不動産価格は都心部などを中心に上昇が続いています。東京都心部などではファミリーマンションの価格が上昇し、不動産経済研究所の調べでは2023年の東京23区の新築マンション価格が初めて1億円を超えました。
マンション価格上昇の要因として地価・建築費の上昇が挙げられます。地価は都心部を中心に上昇が続き、新型コロナ以前の状況に戻りつつある状況です。建築費はインフレによる建築素材の価格上昇に加え、人手不足により人件費も上昇しています。今後も景気の回復と共に不動産需要が高まり、マンション価格などの上昇が続く可能性があります。
但し価格が上昇する不動産・マンションは一定の条件があります。それは都心エリアや都心への交通利便性の高いエリアなどに限られるという事です。今後は資産価値の上昇するエリアと下落するエリアとの二極化が進む可能性もあります。
また好立地の土地は商業施設・オフィス・ホテルなどとも競合する場合もあり、地価・不動産価格もますます上昇する事も考えられます。
景気の回復により不動産賃貸市場の発展も期待される
今後の景気回復・インフレにより物価が上昇すれば不動産市場の活性化にもつながると考えられます。岸田総理は財界や企業に向けて賃金水準の上昇を呼び掛けています。10年間で年収500万円以上の方は465万人以上、年収1000万人以上の方も100万人以上も増えています。給与水準の上昇は住宅・マンション需要の拡大につながり不動産価格や地価の上昇が続く可能性もあります。
さらに不動産市場の活性化により、今後は賃貸市場にも波及し賃料相場の上昇などにもつながる可能性もあります。また女性の方の就業者も増加してきており、女性の方の目線のマンションの在り方も重要となってきています。
年収1,000万円超の方の推移
| 2012年 | 2022年 | 増加数 |
年収500万円超 | 約1233万8千人 | 1699万4千人 | 約465万6千人 |
年収1,000万円超 | 約172万3千人 | 約275万1千人 | 約102万8千人 |
<国税庁「民間給与実態統計調査」>
どうなる人口問題
日本の人口は減少傾向にありますが、人口が減少している時には人口が都市部に集中する傾向がみられます。これは企業・など経済が都市部に集中してくる事も要因です。
人口は二極化が進み、都市部で再開発が進み不動産価格が上昇している反面、交通利便性の悪いエリアでは「過疎化」「シャッター通り」「限界集落」などのキーワードに集約される人口減少問題も大きくなってきています。また高齢化のスピードにおいても、特に東京・名古屋・大阪・福岡などの都市部では都心部と郊外とでその差が拡大する傾向となっています。
人口において増加するエリアと減少するエリアの二極化が進む可能性があります。また人口に占める単身世帯の割合も増加してきており、今後のワンルームマンション投資は大都市圏などエリアの選定を見極めれば極めて有望と言えるのではないでしょうか。
今年注目すべき投資スポットは<東京・名古屋・大阪・福岡>
今後の不動産投資の注目すべき代表的な都市をいくつか見てみましょう。
<東京>
東京は日本の都道府県の中で最も人口が多く、企業・経済も多く集中しています。
2023年には「麻布台ヒルズ」「渋谷サクラステージ」「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」「東京ミッドタウン八重洲」「羽田イノベーションシティ」などを始め多くの大規模再開発が完成・開業しています。
さらに2024年以降も「高輪ゲートウェイ」駅前の「グローバルゲートウェイ品川」を始め、「新宿」「渋谷」「池袋」「東京」「日本橋」「六本木」「神宮外苑」など様々な大規模再開発が進行しています。
世界的な視点で見ても有望な都市であり、不動産投資の立地としても将来性の高いエリアです。
<名古屋>
「リニア中央新幹線」の開業が予定されている名古屋は駅前を中心に多くの高層ビルが建ち並ぶ近代的なオフィス街となっています。さらに今後は名古屋駅前に3棟のビルを建設する計画などが報道されています。また栄などの商業エリアでも再開発が進んでいます。
2023年10月1日現在の名古屋市の人口・世帯数ともに増加傾向にあります。
愛知県にはトヨタを始め大企業も多く集積し経済的な基盤も強い名古屋エリアも今後の不動産の需要は底堅いと予想されます。
<大阪>
大阪では「大阪・関西万博」が夢洲(ゆめしま)で2025年に予定されており、さらにIR(カジノなどを含めた統合型リゾート)が2030年頃開業と見られています。
「キタ」では「うめきた二期・グラングリーン大阪」が2024年に一部先行まちびらきとなり、全体開業が2027年に予定されています。また将来的にはリニア中央新幹線の開業も予定されており多くの再開発が進んでいます。
「ミナミ」でもインバウンドが回復しつつあり来訪者が増加、「なんば」駅などを中心とする大規模な再開発も進んでいます。
大阪の大動脈となる「なにわ筋線」も2031年の開業が予定されており、今後一層の発展が見込まれるエリアと言えます。
<福岡>
九州で最大の都市とも言える「福岡」は多くの魅力を持った都市です。空港に近いコンパクトシティであり、地理的には韓国や中国とも近く、歴史的も交流が進んでいました。総務省が2023年7月に発表した住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(同年1月1日現在)では人口増加数は市区別で全国一位となりました。
福岡市の中心部では「天神ビッグバン」が進んでおり2026年末までに約70棟のビルの建替えなどが予定されているほか、地下鉄七隈線が「天神南」駅から「博多」駅まで延伸されました。「博多」駅周辺では「博多コネクティッド」や、湾岸エリアでは「ウォーターフロントネクスト」などの開発も進んでいます。
今後も極めて将来性の高い都市と言えます。
<まとめ>
今後も将来のために資産形成法としてマンション投資がますます注目を集める可能性があります。但し立地の選定は重要となってきますので十分な見極めが必要となります。
また投資への関心が高まると同時に将来の不安や投資の過熱に付け込んだ「金融商品詐欺」も多発しています。不動産投資は長期に渡る投資ですので、マンションを購入したら終わりではなく建物管理や賃貸管理なども長期に渡って不動産会社との関係が続きます。マンションの立地も重要ですが、信頼できる不動産会社を選ぶ事も大切となってきます。
不動産業界は様々な技術が進み設備・構造なども進化してきています。脱炭素などGX(グリーントランスフォーメーション)によりゼッチマンションなども今後増えてくる可能性もあります。岸田総理はAI(人口知能)などを含めた科学技術の進歩を進める「イノベーション・スタートアップ」を進めており、不動産業界にも有効に活用されれば今後のますますの発展につながる可能性もあります。