福岡県の2025年公示地価の概要

2025年(令和7年)の福岡県の公示地価は、全用途平均で前年比5.5%の上昇となりました。これは前年の5.7%と比較すると若干の減速はあるものの、依然として高い水準を維持しています。

国土交通省土地鑑定委員会が令和7年1月1日を基準日として実施した今回の調査では、福岡県内51市町の標準地918地点(前年933地点)について価格が公表されました。

用途別の地価変動率

用途別に見ると、住宅地は前年比4.9%(前年5.2%)、商業地は6.5%(前年6.7%)、工業地は8.9%(前年8.1%)の上昇となっています。特に工業地の上昇率が前年より上昇率が増加している点が注目されます。

福岡県内の全調査地点918地点のうち、上昇地点は786地点(全体の85.6%)に達し、横ばいが53地点、下落は77地点となっています。

用途区分 2025年変動率 2024年変動率 上昇地点数 横ばい地点数 下落地点数
全用途 +5.5% +5.7% 786 53 77
住宅地 +4.9% +5.2% 522 41 62
商業地 +6.5% +6.7% 225 12 15
工業地 +8.9% +8.1% 39 0 0

市町村別の動向

市町村別に見ると、福岡市など都市部を中心に多くの地域で上昇傾向が続いています。住宅地では43市町で上昇、商業地では37市町で上昇が確認されました。

一方で、田川市や八女市など一部の地域では依然として下落が見られます。特に田川市の住宅地は-4.9%と県内最大の下落率を記録しました。

  • 住宅地上昇市町:古賀市(10.0%)、福岡市(9.0%)、久山町(8.5%)、篠栗町(8.3%)など
  • 商業地上昇市町:古賀市(14.8%)、大宰府市(11.8%)、粕屋町(11.8%)、福岡市(11.3%)など
  • 住宅地下落市町:みやこ町(-2.2%)、築上町(-1.6%)など
  • 商業地下落市町:豊前市(-2.4%)、みやこ町(-1.8%)など

福岡市の公示地価動向と特徴

福岡市は引き続き九州の中心地として高い地価上昇率を示しています。市全体での住宅地上昇率は9.0%と、前年の9.6%からはやや減速したものの依然として高水準を維持しています。

福岡市の区域別動向

福岡市内を区域別に見ると、中央区や博多区など都心部を中心に高い上昇率を記録しています。特に天神地区を含む中央区の商業地は14.5%の上昇率となり、前年より上昇率が拡大しました。

福岡市の住宅地は13年連続で上昇し、都道府県庁所在地としては2年連続で最も高い上昇率を記録しています。

区別に見ると、地下鉄沿線や再開発エリア周辺で特に高い上昇率が見られます。マンション需要が旺盛な中央区や早良区では、利便性の高いエリアを中心に地価上昇が続いています。

福岡市における用途別変動率

福岡市における用途別変動率は以下のようになっております。

用途区分 2025年平均価格(円/㎡) 変動率 特徴
住宅地 239,800 +9.0% マンション用地需要が牽引
商業地 1,526,600 +11.3% 観光需要回復と再開発効果
工業地 180,100 +14.8% 物流施設需要増加

全用途で変動率は上がっております。また、特に工業地の変動率が最も高く、物流施設の需要増加が影響しています。今後も福岡市の各用途において、需要の変化が価格に影響を与えることが予想されます。

福岡県内の注目エリアと価格動向

2025年の公示地価調査では、福岡県内にいくつかの特徴的な動きが見られました。都市部や交通利便性の高いエリアでの需要増加が顕著です。

住宅地の注目エリア

福岡市及びその周辺地域では、マンション適地を中心に高い上昇率が続いています。特に地下鉄沿線や再開発エリア周辺の住宅地では需要が集中し、競争の激化により地価が押し上げられています。

一方で、従来型の戸建住宅地では上昇率の鈍化傾向が見られ、エリアや物件タイプによる二極化が進んでいます。

具体的な上昇率の高いエリアとしては、以下が挙げられます。

  • 福岡市中央区(平均上昇率:11.2%)
  • 福岡市早良区(平均上昇率:10.5%)
  • 大野城市(平均上昇率:8.1%)
  • 春日市(平均上昇率:7.5%)

商業地の注目エリア

商業地においては、福岡市天神・博多エリアを中心に高い上昇率が続いています。特にインバウンド需要の回復に伴い、ホテルや飲食店などの商業施設の需要が高まっています。

また、再開発プロジェクトが進行中のエリアでも、将来的な発展を見込んだ投資が活発化しています。主な上昇エリアは以下の通りです。

  • 福岡市中央区天神地区(上昇率:14.5%)
  • 福岡市博多区博多駅周辺(上昇率:12.8%)
  • 久留米市中心部(上昇率:7.2%)
  • 筑紫野市(上昇率:6.8%)

工業地の動向

工業地では、物流施設の需要増加を背景に全地点で上昇(100%)という顕著な傾向が見られました。特に交通アクセスの良い物流適地では競争が激化し、大幅な地価上昇が続いています。

福岡市の工業地は前年比14.8%という高い上昇率を記録し、Eコマースの拡大や物流効率化の流れを反映しています。

また、大牟田市や北九州市周辺の工業地も堅調な上昇を示しており、地域経済の回復と製造業の設備投資増加が背景にあると考えられます。

地価上昇の背景要因分析

2025年の福岡県における地価上昇には、複数の要因が複合的に影響しています。経済・社会的な背景を理解することで、今後の不動産市場の動向予測に役立ちます。

人口動態と都市機能の強化

福岡市を中心とした都市部では、継続的な人口流入が地価上昇の大きな要因となっています。特に若年層の移住傾向が強まり、住宅需要を押し上げている点が注目されます。

福岡市は九州の中心都市としての機能を強化しており、企業進出や観光客の増加が土地需要を拡大させています。

また、都市の生活環境整備や文化施設の充実なども、福岡県の居住魅力度を高め、間接的に地価上昇に寄与しています。これらの要素が複合的に作用し、特に福岡市中心部での高い地価上昇率につながっています。

交通インフラの整備と利便性向上

交通インフラの整備が進んでいるエリアでは、アクセス向上に伴い地価が上昇する傾向が見られます。特に地下鉄沿線や幹線道路周辺では、利便性の高さから住宅地・商業地ともに需要が高まっています。

以下が具体的な事例です。

  • 福岡市地下鉄七隈線延伸に伴う沿線地域の価値向上
  • 博多駅周辺の再開発による交通結節点としての機能強化
  • 九州自動車道や福岡都市高速道路周辺の物流拠点としての需要増加

不動産投資と観光需要

低金利環境が続く中、不動産投資の対象として福岡県内の物件、特に福岡市中心部の収益物件への関心が高まっています。国内投資家だけでなく、海外からの投資も増加傾向にあります。

また、コロナ禍からの回復に伴い、観光需要も回復基調にあります。特にインバウンド観光客の増加が、天神や博多エリアの商業地価を押し上げる要因となっています。

福岡市の国際的な知名度向上と外国人観光客の増加は、ホテルや商業施設の需要を高め、商業地の地価上昇率増加(14.5%)につながっています。

2025年以降の福岡県地価予測

公示地価の動向から、2025年以降の福岡県の地価について一定の予測が可能です。現在の傾向や計画されている開発プロジェクトを踏まえ、今後の見通しを考察します。

都市部と郊外の二極化

今後も福岡市を中心とした都市部と地方部の二極化が続くと予測されます。都市機能の集積や交通利便性の向上が進む地域では引き続き上昇傾向が続く一方、人口減少が進む地方部では下落傾向が続く可能性があります。

特に福岡市中心部と近郊のベッドタウンでは、今後も安定した上昇が見込まれますが、上昇率は徐々に緩やかになっていくと予測されます。

具体的には、以下のエリアで今後も地価上昇が続くと予想されます。

  • 福岡市中央区・博多区(再開発継続エリア)
  • 大野城市・春日市(交通アクセス良好な住宅エリア)
  • 福岡空港・博多港周辺(物流機能強化エリア)

用途別の今後の展望

用途別に見ると、それぞれ異なる傾向が予測されます。住宅地については、都市部のマンション適地では引き続き需要が強いものの、郊外の戸建住宅地では上昇率の鈍化が進むと考えられます。

商業地については、インバウンド需要の回復に伴い、福岡市中心部や観光地周辺では今後も上昇が続く可能性が高いです。一方、地方商店街などでは厳しい状況が続くでしょう。

工業地に関しては、Eコマース拡大を背景とした物流施設需要が今後も継続すると予想され、交通アクセス良好な物流適地では引き続き高い需要が続くと考えられます。

不動産市場への影響と投資判断

地価上昇は不動産市場に様々な影響を与えます。投資判断を行う際には、単に地価上昇率だけでなく、人口動態や開発計画、交通インフラ整備などの要素を総合的に考慮することが重要です。

将来性のあるエリアを見極めるには、公示地価の推移と合わせて都市計画を確認することが有効です。特に再開発計画が予定されているエリアや、交通インフラの整備が進むエリアは将来的な価値上昇が期待できます。

不動産投資を検討する際は、単なる価格上昇だけでなく、賃貸需要や利回りなども含めた総合的な判断が必要です。

福岡県公示地価の全国比較

福岡県の地価動向を全国的な視点から見ることで、その特徴や位置づけがより明確になります。各地域との比較から、福岡県の不動産市場の特性を考察します。

都道府県別上昇率ランキング

2025年の公示地価調査において、福岡県は全国的に見ても高い上昇率を示しています。特に福岡市の住宅地上昇率は都道府県庁所在地として2年連続全国1位という結果になりました。

福岡県全体の地価上昇率は全国平均を上回っており、三大都市圏以外では最も活発な不動産市場の一つとなっています。

全国の主要都市と比較した福岡市の地価動向は以下の通りです。

  • 福岡市(住宅地):+9.0%(都道府県庁所在地1位)
  • 札幌市(住宅地):+8.2%
  • 東京23区(住宅地):+6.8%
  • 大阪市(住宅地):+7.5%

地方都市としての福岡の強み

福岡県、特に福岡市が地方都市としての強みを発揮している背景には、アジアとの近接性や九州の中心都市としての機能があります。これらの要素が人口流入や企業進出を促し、地価上昇を支えています。

また、生活環境の良さや災害リスクの相対的な低さも、移住先としての魅力を高めています。コロナ禍以降の地方分散の流れの中で、福岡は「適度な都市機能と生活しやすさ」を備えた都市として注目されています。

他の地方都市と比較した福岡の特徴として、以下が挙げられます。

  • アジアゲートウェイとしての国際的な機能
  • 大学・研究機関の集積による若年層の流入
  • 食文化や自然環境の豊かさによる生活の質の高さ
  • スタートアップ支援など新産業創出への取り組み

まとめ

2025年の公示地価調査結果から、福岡県の不動産市場は引き続き活況を呈していることが確認できました。全用途平均で5.5%の上昇となり、特に福岡市を中心とした都市部では高い上昇率が続いています。

用途別では、住宅地が4.9%、商業地が6.5%、工業地が8.9%の上昇となり、特に物流需要を背景とした工業地の上昇が顕著です。地域別には福岡市と周辺都市での上昇が続く一方、一部の地方都市では依然として下落傾向が見られるなど、二極化が進んでいます。

今後の不動産市場を見通す上では、人口動態や都市計画、交通インフラ整備などの要素を総合的に考慮することが重要です。福岡市を中心とした都市部では今後も安定した需要が続くと予想される一方、上昇率は徐々に緩やかになっていく可能性もあります。

不動産購入や投資を検討されている方は、公示地価の動向だけでなく、エリアの将来性や開発計画も含めて総合的に判断することをお勧めします。特に福岡市内や周辺地域では、地下鉄沿線や再開発計画があるエリアに注目すると良いでしょう。

執筆者

エンマネ編集部

エンマネ編集部

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