2025年公示地価の総合概要

2025年の公示地価調査結果によると、大阪(大阪府)・名古屋(愛知県)・福岡(福岡県)では大都市部を中心に地価が上昇傾向にあります。これら三大都市では、再開発プロジェクト、インバウンド需要の回復、交通インフラ整備などを背景に地価が押し上げられています。

特に注目すべきは、都心部の地価高騰により近郊エリアへ需要が波及する現象が顕著になってきたことです。この傾向は三都市に共通しており、価格帯のバランスを取る形で不動産市場が動いていると言えるでしょう。

三大都市に共通する地価上昇の要因

三大都市の地価上昇には、いくつかの共通要因があります。まず大きな影響を与えているのが大規模再開発プロジェクトです。大阪の「うめきた2期」や万博関連開発、名古屋駅周辺再開発、福岡の「天神ビッグバン」など、都市の中核エリアで進む大型プロジェクトが地価を押し上げています。

次に、交通インフラの整備も重要な要因です。なにわ筋線計画が進む大阪、リニア中央新幹線の開業を控えた名古屋、福岡市の桜並木駅新設など、新駅や新路線の開業が周辺地価に大きなインパクトを与えています。特に駅周辺エリアでは、将来の交通利便性向上を見越した投資的需要が地価を牽引しています。

さらに、コロナ禍からの回復に伴うインバウンド需要の増加も商業地価の上昇に貢献しています。特に観光客が多く訪れる繁華街では商業地価の急騰が見られます。加えて、都心の地価高騰により、手頃な価格帯を求める需要が周辺自治体へと流出する現象も共通しています。

大阪府・大阪市の地価動向

大阪府の2025年公示地価では、住宅地・商業地ともに上昇傾向が続いています。大阪府全体の住宅地は前年比+2.3%、商業地は+7.6%の上昇となりました。特に大阪市内では、住宅地が+5.8%、商業地が+11.6%と高い上昇率を記録しています。

大阪市の地価上昇の主な要因

大阪における地価上昇の主な要因としては、インバウンド需要の復調が挙げられます。特にミナミエリア(中央区・浪速区)の商業地価が二桁の上昇を示しています。住宅地については都心回帰の流れを受けて大阪市内が好調な一方、郊外のニュータウンでは横ばいや下落の地点も見られます。

2025年の大阪・関西万博やうめきた2期の開業への期待が継続的に地価を下支えしており、特にインフラ整備が進むエリアで顕著な上昇が見られます。うめきた2期周辺や万博会場へのアクセスが良好なエリアでは、将来の発展性を期待した先行投資的な動きが活発です。

大阪市の区別地価動向

大阪市内の区別地価動向を見ると、住宅地の上昇率では浪速区が+9.7%と最も高く、城東区が+8.6%、西区が+8.4%と続いています。浪速区は以前は商業地として栄えていましたが、住環境として見直されている傾向があります。

商業地の上昇率では、浪速区が+14.3%と最も高く、中央区が+14.2%、西区が+13.9%と続いています。特に浪速区と中央区はインバウンド需要の回復が著しく、商業地価の上昇を牽引しています

住宅地

商業地

順位

上昇率

上昇率

1

浪速区

9.7%

浪速区

14.3%

2

城東区

8.6%

中央区

14.2%

3

西区

8.4%

西区

13.9%

大阪市の高価格エリア

大阪市内の住宅地で最も価格が高い地点は、福島区「福島3-1-55」で1㎡あたり135万円(前年比+8.0%)となっています。利便性の高い都心部の住宅地が高い評価を受けています

商業地では、北区「大深町4-20」(グランフロント大阪南館周辺)が1㎡あたり2,430万円(+3.0%)と大阪市内で最も高額な地点となっています。次いで中央区「宗右衛門町7-2」が2,350万円/㎡(+9.8%)と高い価格を形成しています。

住宅地

商業地

順位

所在地

価格(円 /㎡)

所在地

価格(円 /㎡)

1

大阪市福島区福島3丁目13番2
「福島3-1-55」

135万円

大阪市北区大深町207番外
「大深町4-20」
(グランフロント  大阪 南館)

2,430万円

2

大阪市天王寺区上汐4丁目4番2
「上汐4-4-25」

100万円

大阪市中央区宗右衛門町46番1外
「宗右衛門町7-2」
(デカ戎橋ビル)

2,350万円

大阪市の地価上昇率が高いエリア

地価上昇率が特に高い地点としては、住宅地では城東区「中央2-9-19」が+10.5%と二桁の上昇率を記録しています。商業地では、中央区「道頓堀1-6-10」が+22.6%、福島区「福島6-20-2」が+22.1%と極めて高い上昇率を示しています。

道頓堀エリアはインバウンドの回復に伴い商業需要が急増しており、これが地価の大幅上昇につながっています。また、福島区は梅田に近接しながらも比較的割安だったエリアが急速に見直されている状況です。

住宅地

商業地

順位

地点

上昇率

地点

上昇率

1

城東区中央2丁目12番1

10.5%

大阪市中央区道頓堀1丁目37番外

22.6%

2

北区紅梅町125番

10.2%

福島区福島6丁目20番2

18.8%

愛知県・名古屋市の地価動向

愛知県・名古屋市では、2025年公示地価で住宅地・商業地ともに上昇傾向が続いています。前年平均変動率について愛知県全体の住宅地は前年比+2.5%、名古屋市内は+3.6%の上昇となりました。商業地については、愛知県全体で前年比+4.0%、名古屋市内では+5.0%と住宅地を上回る上昇率を記録しています。

名古屋市の地価上昇の主な要因

名古屋における地価上昇は4年連続となりましたが、建築費の高騰などにより上昇率はやや縮小傾向にあります。地域別に見ると、名駅周辺や栄周辺などの都心部が特に高価格帯を形成しています。

特に今池など比較的大規模な再開発が行われた地区では上昇率が高くなっており、再開発効果が地価に直接反映されています。 また、長久手市や大府市といった名古屋郊外にも住宅需要が拡大していることが特徴的です。

名古屋市の区別地価動向

名古屋市内の区別地価動向を見ると、住宅地の上昇率では熱田区が+8.4%と最も高く、続いて中村区が+5.2%、千種区が+4.8%となっています。熱田区では交通利便性の高さと比較的手頃な価格帯が人気を集め、大きな上昇率につながっていると考えられます。

商業地の上昇率では、千種区が+8.9%と最も高く、熱田区が+7.0%、中村区が+5.7%と続いています。千種区は今池エリアの再開発効果が大きく影響していると見られます。

住宅地

商業地

順位

上昇率

上昇率

1

熱田区

8.4%

千種区

8.9%

2

中村区

5.2%

熱田区

7.0%

3

千種区

4.8%

中村区

5.7%

名古屋市の高価格エリア

名古屋市内の住宅地で最も価格が高い地点は、中区「栄2-6-127」で1㎡あたり195万円(前年比+2.6%)となっています。次いで東区「泉1-5-26」の161万円/㎡(+6.6%)が続きます。

商業地では、中村区「名駅4-7-1」(ミッドランドスクエア周辺)が1㎡あたり1,950万円(前年比横ばい)と名古屋市内で最も高額な地点となっています。リニア中央新幹線の開業を控え、名駅周辺の商業地価は高止まりしている状況です。

住宅地

商業地

順位

所在地

価格(円 /㎡)

所在地

価格(円 /㎡)

1

中区栄2丁目612番
「栄2-6-127」

195万円

名古屋市中村区名駅4丁目701番1外
「名駅4-7-1」
(ミッドランド スクエア)

1,950万円

2

東区泉1丁目502番東区
「泉1-5-26」

161万円

名古屋市中村区名駅4 丁目601番1外
「名駅4-6-23」
(第三堀内ビル)

1,210万円

名古屋市の地価上昇率が高いエリア

地価上昇率が特に高い地点としては、住宅地では熱田区「高蔵611番」が+10.6%、千種区「桐林2丁目37番」が+10.3%と二桁の上昇率を記録しています。商業地では、千種区「今池1丁目805番」が+14.2%と最も高い上昇率を示しています。

今池エリアは大規模な再開発が進行中であり、これが地価上昇の大きな要因となっています。また、熱田区は名古屋の中でも比較的割安だった地域が見直されている傾向にあります。

住宅地

商業地

順位

地点

上昇率

地点

上昇率

1

熱田区高蔵町611番

10.6%

千種区今池1丁目805番外

14.2%

2

千種区桐林町2丁目37番

10.3%

千種区姫池通3丁目7番

13.8%

福岡県・福岡市の地価動向

福岡県の2025年公示地価では、住宅地・商業地ともに10年連続の上昇となりました。福岡県全体の住宅地は前年比+4.9%、商業地は+6.5%の上昇となっています。特に福岡市内では、住宅地が+9.0%、商業地が+11.3%と高い上昇率を記録しています。

福岡の地価上昇の主な要因

福岡における地価上昇の主な要因としては、福岡市内への人口流入と継続的な再開発が挙げられます。東区箱崎地区(旧九大キャンパス跡地再開発)や博多駅周辺で特に高い伸びが見られます。

中心部の地価高騰を受けて、近郊の古賀市などへ住宅需要が波及する現象も顕著になっています。 また、大濠公園周辺の高級住宅街は過去10年で地価水準が2.3倍になるなど、富裕層の需要が特に強いことも特徴です。

福岡市の区別地価動向

福岡市内の区別地価動向を見ると、住宅地の上昇率では博多区が+12.1%と最も高く、早良区が+9.6%と続いています。博多区では箱崎キャンパス跡地の再開発計画が進み、将来の発展を見越した投資的需要が顕著になっています。

商業地の上昇率では、早良区が+12.7%と最も高く、東区が+12.5%、城南区が+11.7%と続いています。これらの地域は、都心周辺部として再評価が進んでいるエリアと言えます。

住宅地

商業地

順位

上昇率

上昇率

1

博多区

12.1%

早良区

12.7%

2

早良区

9.6%

東区

12.5%

3

中央区

8.9%

城南区

11.7%

福岡市の高価格エリア

福岡市内の住宅地で最も価格が高い地点は、中央区「大濠1-13-26」で1㎡あたり131万円(前年比+14.9%)となっています。大濠公園に面した高級住宅地として、継続的に高い評価を受けています。

商業地では、中央区「天神1丁目」が1㎡あたり1,210万円(+2.5%)と福岡市内で最も高額な地点となっています。天神エリアは「天神ビッグバン」と呼ばれる大規模再開発が進行中であり、商業地価の高止まりが続いています

住宅地

商業地

順位

所在地

価格(円 /㎡)

所在地

価格(円 /㎡)

1

大濠1丁目13区133番
「大濠1-13-26」

131万円

天神1丁目96番1外

1,210万円

2

今泉2丁目24番2
「今泉2-1-40」

93万円

博多駅前3丁目46番2外
「博多駅前3-2-1」

810万円

福岡市の地価上昇率が高いエリア

地価上昇率が特に高い地点としては、住宅地では東区「箱崎6-11-1」が+19.3%と非常に高い上昇率を記録しています。商業地では、東区「箱崎3-13-15」が+21.1%と極めて高い上昇率を示しています。

箱崎エリアは九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発計画が進行中であり、これが地価の大幅上昇につながっています。今後も再開発の進捗に伴い、周辺地価への影響が続くと予想されます。

住宅地

商業地

順位

地点

上昇率

地点

上昇率

1

東区箱崎6-11-1

19.3%

東区箱崎3-13-15

21.1%

2

博多区三筑1-3-8

16.1%

博多区竹丘町2-1-11

18.0%

三大都市における地価上昇のポイント

大阪・名古屋・福岡の三大都市では、いくつかの共通点や各都市特有の特徴が見られます。これらを理解することで、今後の地価動向をより深く把握することができるでしょう。

再開発の波及効果

三大都市に共通しているのは、大型再開発が行われるエリアだけでなく、その周辺地域の地価も上昇する傾向にあることです。大阪ではミナミ(道頓堀・心斎橋)のインバウンド需要やうめきた2期再開発による梅田が、名古屋では今池ガスビル跡地開発の今池エリアやリニア開業への期待による名駅周辺が、福岡では天神ビッグバン、博多コネクティッド、箱崎キャンパス跡地開発が地価上昇を牽引しています。

大規模再開発は単にそのエリアだけでなく、周辺のインフラ整備やイメージ向上にもつながり、より広範囲の地価上昇効果をもたらしています。 再開発進行エリアでの不動産投資は、周辺への波及効果も考慮した戦略が効果的です。

インフラ整備のインパクト

交通インフラの整備も、三都市の地価動向に大きな影響を与えています。大阪のなにわ筋線(2028年予定)・JR大阪駅地下ホーム開業、名古屋のリニア計画・地下鉄延伸構想、福岡市の西鉄新駅(桜並木駅)などの開発が周辺地価を押し上げています。

交通インフラの整備は長期的な都市発展の基盤となるため、その効果も継続的です。特に新駅開発は、直接的な利便性向上に加え、周辺の商業施設や住宅開発を促進する効果があります

インバウンド需要の影響

コロナ禍からの回復に伴い、訪日外国人が増加していることも地価上昇の重要な要因です。特に繁華街ではテナント賃料が上昇し、商業地価が急伸しています。大阪では道頓堀の地価が+22.6%、福岡でも博多区中心部が二桁上昇するなど、その影響は顕著です。

名古屋でも栄・今池周辺で観光商業施設需要が回復傾向にあります。インバウンド需要は今後も継続的に拡大すると予想され、特に観光地や繁華街の商業地価への影響が続くでしょう。

周辺自治体への需要拡大

三大都市に共通する現象として、都市中心部の地価高騰により、郊外や近郊都市への移住需要が高まっていることが挙げられます。具体的には、大阪北摂エリア(豊中市・池田市)、名古屋近郊(長久手市・大府市)、福岡近郊(古賀市・新宮町)などで住宅地価が上昇しています。

この現象は、中心部の高騰に伴う自然な市場調整と見ることができます。郊外エリアでは交通インフラの充実や生活利便施設の整備が進み、都心へのアクセスの良さと相対的な価格の手頃さが評価されています。

今後の地価動向予測と投資戦略

大阪・名古屋・福岡の三大都市における地価動向を踏まえ、今後の見通しと投資戦略について考察します。各都市の特性を理解し、中長期的な視点で不動産市場を捉えることが重要です。

大阪の今後の展望

大阪では、2025年の大阪・関西万博、うめきた2期開業、そして2028年予定のなにわ筋線開業など、大型プロジェクトが相次いでいます。これらの効果で、梅田エリアを中心に地価上昇が続くと予想されます。

特に万博会場周辺のベイエリアは、インフラ整備と共に開発が進み、中長期的な価値向上が期待できるエリアです。 また、インバウンド需要の継続的な回復により、ミナミエリアの商業地価も堅調に推移するでしょう。大阪市内の住宅地では、特に交通利便性が高く、かつ相対的に手頃な城東区や浪速区などに注目が集まると予想されます。

名古屋の今後の展望

名古屋では、2027年に予定されているリニア中央新幹線の開業を控え、名駅周辺を中心とした開発が一層加速すると予想されます。名駅から栄エリアへの開発波及も進んでおり、都心部の地価上昇は継続するでしょう。

リニア開業後の東京-名古屋間の時間短縮効果を見越した投資戦略が有効です。特に今池などの再開発エリアや、まだ割安感のある熱田区などは今後の上昇余地が期待できます。また、長久手市や大府市など名古屋近郊の自治体も、相対的な割安感から需要増加が見込まれます。

福岡の今後の展望

福岡では、「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」に代表される大規模再開発と九州大学箱崎キャンパス跡地開発が進行中です。これらの効果で、福岡市中心部の地価上昇は今後も継続すると予想されます。

特に箱崎エリアは再開発の初期段階にあり、今後の価値上昇余地が大きいエリアと言えます。また、福岡市の人口増加傾向は当面続くと見られ、住宅地需要も堅調に推移するでしょう。福岡市では再開発の進捗と人口流入のバランスを見極めながら、適正価格での投資タイミングを見極めることが重要です。

三都市共通の投資ポイント

大阪・名古屋・福岡に共通する投資ポイントとしては、交通インフラの整備が計画されているエリアへの先行投資が挙げられます。新駅開発や路線延伸は、その発表だけでも周辺地価に影響を与えることがあります。

また、大規模再開発の周辺エリアも注目すべきです。再開発されているエリアは既に地価に織り込まれている場合が多いですが、その波及効果が及ぶと予想される周辺地域には上昇余地が残されていることがあります。インバウンド需要の恩恵を受けるエリアや、都心に近く相対的に割安感のあるエリアも、中長期的な投資先として検討する価値があるでしょう

まとめ

2025年の公示地価調査結果から、大阪・名古屋・福岡の三大都市では地価上昇が継続していることが確認できました。各都市に共通するのは、大規模再開発、交通インフラ整備、インバウンド需要回復などを背景とした商業地価の上昇と、都心回帰による住宅地価の上昇です。また、中心部の高騰に伴う周辺自治体への需要波及という現象も見られます。

今後の不動産市場を考える上では、各都市の特性と将来計画を踏まえた中長期的な視点が重要になります。大阪では万博やうめきた2期、名古屋ではリニア開業、福岡では継続的な再開発プロジェクトなど、各都市固有の要因を理解した上で投資判断を行うことが求められます。地価上昇が続く現在の市場環境では、適正価格での投資タイミングを見極めるとともに、将来の発展可能性を見据えたエリア選定が成功の鍵となるでしょう。

執筆者

エンマネ編集部

エンマネ編集部

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