2025年の静岡県公示地価が発表され、全体的な回復基調が鮮明になってきました。住宅地は17年ぶりに下落から脱却して横ばいとなり、商業地や工業地ではプラス成長が続いています。特に熱海市や長泉町などでは顕著な上昇が見られる一方、過疎化や災害リスクを抱える地域では依然として下落が続くという二極化が進んでいます。本記事では2025年静岡県の公示地価の最新動向と、今後の見通し、投資判断に役立つポイントを詳しく解説します。地域別・用途別の特徴を把握して、不動産取引や資産形成の参考にしてください。

静岡県の2025年公示地価の全体動向

2025年(令和7年)1月1日時点の静岡県公示地価が国土交通省から発表されました。県全体としては回復基調が鮮明になり、用途別で見ると興味深い傾向が現れています。

住宅地の県平均は±0.0%(前年-0.2%)となり、17年ぶりに下落から脱却しました。特に県央部や東部の都市部では回復が顕著である一方、過疎・高齢化が進む地域や津波リスクを抱える沿岸部・伊豆山間部では下落が続いています。

商業地については県平均で+0.6%(前年+0.2%)と上昇幅が拡大。静岡市や浜松市の中心商業地の回復と、熱海を中心としたリゾート需要が牽引役となっています。

工業地も県平均+0.8%(前年+0.5%)と堅調で、全地点が上昇または横ばいに転換したことが特筆されます。物流施設や自動車関連産業の投資が活発化していることが背景にあります。

静岡県の地域別公示地価動向

静岡県内でも地域によって地価動向には大きな差が見られます。県内の主要エリアごとに詳しく見ていきましょう。

静岡市(県庁所在地)の地価動向

静岡市内では区ごとに異なる傾向が見られます。住宅地において、葵区は+1.1%、駿河区は+1.0%と上昇幅が拡大しています。特に駅周辺の利便性の高いエリアや人気住宅地では需要が堅調です。

一方、清水区は-0.3%と依然としてマイナスながらも、下落幅は縮小傾向にあります。2023年の台風15号による浸水被害を受けたエリアでは地価が弱含みとなっている点に注意が必要です。

静岡市内の最高価格地点は、商業地では葵区呉服町2丁目6番8で、1,470,000円/㎡となっています。住宅地では駿河区曲金6丁目665番で、351,000円/㎡となっています。

浜松市(政令指定都市)の地価動向

浜松市の住宅地では中央区が+0.5%、浜名区が+0.1%と緩やかな上昇を示しています。特に旧浜北エリアが市全体の地価を支える形となっています。

しかし天竜区などの山間部では下落幅が拡大しており、市内でも地域による二極化が進んでいる状況です。中心部と郊外・山間部の格差が鮮明になっています。

浜松市内では駅周辺の利便性の高いエリアや、新東名高速道路のインターチェンジ周辺で需要が見られます。特に物流施設用地としての需要が工業地の価格を下支えしています。

伊豆半島・沿岸部の地価動向

伊豆半島では熱海市が突出した上昇率を示しています。住宅地で+1.4%、商業地に至っては+9.7%と県内トップの伸び率を記録しました。観光地としての人気回復とリモートワークの普及による移住需要が重なったことが要因です。

一方で東伊豆町(-2.1%)など、過疎化と災害リスクを抱える地域では下落が続いています。津波リスクの高い沿岸部では、災害リスクが地価に織り込まれる傾向が強まっています

熱海市では宿泊客数がコロナ前を超え、ホテルの新設が続いています。中心街では高額取引も見られ、リゾート地としての価値が再評価されている状況です。

富士山麓・東部内陸地域の地価動向

県東部の内陸地域では、長泉町が住宅地で+1.1%、御殿場市も住宅地の上昇幅が拡大しています。これらの地域は首都圏へのアクセスが良く、移住先としての人気が高まっています。

特に長泉町は子育て支援策が充実しており、首都圏への新幹線通勤も可能なことから、ファミリー層の流入が活発です。良好な住環境と交通利便性の両立が評価されています。

また新東名高速道路のインターチェンジ周辺では工業地の需要も堅調で、物流施設や製造業の投資が見られます。特にトヨタの「ウーブン・シティ」が計画されている裾野市周辺では、将来的な波及効果への期待から注目が集まっています。

静岡県の用途別公示地価動向

土地の用途によっても地価の動向は異なります。住宅地、商業地、工業地に分けて詳しく見ていきましょう。

住宅地の公示地価動向

静岡県の住宅地は全体で±0.0%と横ばいとなり、下落から脱却しました。上昇率が高い上位3市町とその要因は以下の通りです。

  • 熱海市:+1.4%(前年+0.6%)- 駅至近の高台立地に希少性があり、ホテル投資と別荘・移住需要が重なっています
  • 長泉町:+1.1%(前年+1.0%)- 子育て支援策と首都圏への新幹線通勤の両立でファミリー層が流入しています
  • 湖西市:+0.7%(前年+1.0%)-駅近くの自然豊かな環境と交通利便性が評価され、リモートワーク需要やセカンドハウスとしての需要が高まっています

住宅地の地価上昇には、利便性の高さや災害リスクの低さが重要な要素となっています。特に静岡県内では津波リスクの低い高台立地や内陸部の住宅地が選好される傾向が強まっています

一方で過疎化や高齢化が進む地域、特に山間部や災害リスクが高い沿岸部では、依然として需要の低迷から下落が続いています。

商業地の公示地価動向

商業地は県平均で+0.6%と上昇しており、上昇率が高い上位3市とその要因は以下の通りです。

  • 熱海市:+9.7%(前年+8.1%)- 宿泊客数がコロナ前を超え、ホテルの新設が続いています。中心街では高額取引も見られます
  • 長泉町:+2.0%(前年+2.1%)-
  • 三島市:+1.5%(前年+1.1%)-交通インフラの整備により、商業施設や店舗の進出が進んでいます。周辺エリアの開発が進み、新規開発プロジェクトも活発に進行しています

商業地では特に観光需要の回復が地価を牽引しています。熱海市では観光地としての人気再燃に伴い、商業地の価格上昇が顕著です。観光地としての魅力向上と宿泊施設への投資が地価上昇の好循環を生み出しています。

また静岡市や浜松市といった県内主要都市の中心商業地でも、コロナ禍からの回復に伴い人流が戻り、商業地の価値が見直されています。

工業地の公示地価動向

工業地は県平均で+0.8%と堅調に推移しており、全地点が上昇または横ばいに転換したことが特徴です。

特に新東名・東名高速道路のインターチェンジ周辺では物流拠点としての需要が高まっています。自動車関連産業の投資も活発で、県内の工業地の価値を下支えしています。

富士山麓のスマートインターチェンジ新設も波及効果をもたらしており、物流の効率化を求める企業からの需要が増加している点が工業地の地価を押し上げています。

トヨタが進める「ウーブン・シティ」などの次世代都市開発も、裾野市周辺の工業地に波及需要をもたらしています。先端技術の集積地としての期待が高まっています。

静岡県の公示地価に影響を与える要因

静岡県の地価動向には、様々な要因が複合的に影響しています。上昇要因と下落要因に分けて考察します。

地価上昇を加速させる要因

静岡県の地価上昇を加速させている主な要因としては、以下の点が挙げられます。

  1. 大型公共プロジェクトの進行:JR静岡駅南北再整備や東静岡新アリーナなどの大型公共プロジェクトが地価を押し上げています
  2. 観光需要の回復:熱海・三島などの観光地では観光客数の回復とホテル投資が活発化しています
  3. 物流拠点の需要:新東名・東名IC周辺での物流拠点投資や富士山麓スマートICの新設が波及効果をもたらしています
  4. 先端技術都市開発:トヨタの「ウーブン・シティ」など次世代都市開発による裾野市周辺の波及需要が生まれています

これらの要因は互いに関連しており、交通インフラの整備と産業投資の好循環が地価上昇をもたらしています。特に新幹線駅や高速道路ICの周辺では、アクセス性の高さを活かした開発が進んでいます。

地価下落リスク要因

一方で、静岡県の地価下落リスク要因としては以下の点が挙げられます。

  1. 災害リスク:台風・津波・浸水リスクが顕在化している地域では資産選別が進んでいます
  2. 建築コスト高騰:建築コスト高騰に伴う再開発計画の遅延(静岡市の古い商店街など)が影響しています
  3. 人口減少:過疎・高齢化の進む伊豆・遠州山間部での需要空洞化が続いています

特に災害リスクは地価に大きな影響を与えており、2023年の台風15号による浸水被害を受けた地域では地価の回復に遅れが見られます。津波リスクの高い沿岸部でも、リスクプレミアムが地価に反映される傾向が強まっています。

また少子高齢化と人口減少が進む地域では、不動産需要の構造的な低下が地価下落の要因となっています。特に山間部や交通アクセスの悪い地域では、この傾向が顕著です。

2025年以降の静岡県地価の見通しと投資判断

2025年以降の静岡県の地価動向を予測する上で、注目すべきポイントをまとめます。

注目すべき地域と指標

今後の静岡県地価を判断する上で観測すべき定量指標としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 静岡駅・浜松駅周辺のオフィス空室率と路面店空室率
  • 県内観光入込客数(熱海・伊豆・富士山麓)とホテル稼働率
  • 新東名・東名IC近接工業団地の分譲残区画率と賃料動向
  • 住宅着工戸数(静岡市・浜松市・東部3市)と坪単価推移
  • 災害リスク区域内の取引件数と価格差

これらの指標を総合的に分析することで、地価の将来動向をより正確に予測することができます。データに基づいた冷静な判断が重要です。

特に注目すべき地域としては、熱海市、長泉町、御殿場市、裾野市などが挙げられます。これらの地域では今後も地価上昇が期待できる可能性があります。

投資判断のポイント

静岡県内で不動産投資や住宅購入を検討する際のポイントは以下の通りです。

  1. 交通アクセス:駅や高速道路ICからの距離が価格の安定性に大きく影響します
  2. 災害リスク:津波・浸水リスクの低い地域を選ぶことが長期的な資産価値維持に重要です
  3. 開発計画:公共・民間の大型開発計画がある周辺地域は将来的な価値上昇が期待できます
  4. 人口動態:人口増加または安定している地域を選ぶことで安定した需要が見込めます

特に静岡県では災害リスクが地価に与える影響が大きくなっているため、ハザードマップなどで災害リスクを事前に確認することが不可欠です。津波リスクの高い沿岸部や、土砂災害リスクのある傾斜地では、将来的な資産価値下落のリスクを考慮する必要があります。

また「ウーブン・シティ」のような大規模プロジェクトの周辺地域では、開発の進捗状況を注視することが重要です。計画の実現に伴い、周辺地域に波及効果がもたらされる可能性があります。

まとめ

2025年の静岡県公示地価は、住宅地が横ばい、商業地と工業地が上昇と、全体的に回復基調が鮮明になりました。特に熱海市や長泉町などの人気エリアでは顕著な上昇が見られ、県内の地価動向は二極化が進んでいます。地価上昇の背景には、観光需要の回復、物流拠点の需要、大型公共プロジェクトの進行などが影響しています。一方で災害リスクや人口減少は地価の下押し要因となっており、今後も地域による格差は続く見通しです。不動産投資や住宅購入を検討される方は、交通アクセス、災害リスク、開発計画、人口動態などを総合的に判断し、長期的な視点で意思決定することをお勧めします。

執筆者

エンマネ編集部

エンマネ編集部

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