賃貸住宅管理業の登録制度は、賃貸物件のオーナーや入居者を保護するために設けられた重要な仕組みです。2021年に施行された賃貸住宅管理業法により、一定規模以上の管理業者には国土交通大臣への登録が義務付けられました。この制度により、管理業務の透明性が高まり、トラブル防止や信頼性の向上が期待されています。本記事では、賃貸住宅管理業の登録制度の概要から申請手続き、登録後の義務まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。これから管理会社を選ぶオーナーや、登録を検討している事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

賃貸住宅管理業とは制度の全体像と意義

賃貸住宅管理業登録制度は、賃貸住宅の管理業務を適正化するために創設された法的な枠組みです。この制度を理解することで、オーナーも入居者も安心して賃貸住宅を利用できるようになります。

定義と対象業務の整理

賃貸住宅管理業とは、賃貸住宅の所有者から委託を受けて管理業務を行う事業のことを指します。具体的には、建物や設備の維持保全、賃料や敷金などの金銭管理が主な業務として定められています。

この制度の対象となるのは、他者から委託を受けて基幹業務を行う事業者に限られます。自己所有物件のみを管理している場合は登録の対象外となるため、管理形態によって登録の要否が異なる点に注意が必要です。

賃貸住宅管理業が目指す目的

賃貸住宅管理業法は、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的確保を目的として制定されました。管理業務の適正化を通じて、オーナーと入居者双方の利益保護を図ることが重要な役割となっています。

特にサブリース契約に関するトラブルや、敷金精算を巡る紛争が社会問題化していたことが制度化の背景にあります。登録制度の導入により、悪質な業者の排除と業界全体の信頼性向上が期待されています。

法律の成立経緯と背景

賃貸住宅管理業の登録制度は段階的に整備されてきました。2011年には任意登録制度がスタートしましたが、登録率が低く十分な適正化が進まなかったため、法的な義務化が検討されるようになりました。

2021年6月には「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行され、管理戸数200戸以上の業者に登録が義務付けられました。この法制化により、賃貸管理業界は宅建業法と並ぶ本格的な規制の対象となりました

賃貸住宅管理業登録の対象と主要な要件

賃貸住宅管理業の登録制度では、一定の要件を満たす事業者に登録義務が課せられます。ここでは登録が必要な事業者の範囲と、具体的な登録要件について解説します。

登録が必要な事業者の範囲

登録が義務付けられるのは、委託を受けて管理する賃貸住宅が200戸以上の事業者です。200戸未満の事業者については登録は任意となりますが、信頼性をアピールするために自主的に登録する事業者も増えています。

管理戸数のカウント方法については、自己所有物件は除外され、集合住宅は一戸単位で数えます。サブリース契約を含む委託管理も対象となるため、事業形態に応じた正確な把握が求められます。

以下の表で登録義務の有無を整理します。

管理戸数 登録の要否 備考
200戸以上 登録義務あり 国土交通大臣への登録が必須
200戸未満 任意登録 信頼性向上のため登録を推奨
自己所有物件のみ 登録対象外 委託管理に該当しないため

人的要件の具体的基準

登録にあたっては、業務管理者を各事務所に1名以上配置することが求められます。業務管理者には一定の知識と経験が必要とされ、賃貸不動産経営管理士などの資格保有者が想定されています。

また、欠格事由に該当しないことも重要な要件です。破産手続中の者や暴力団関係者、禁錮以上の刑で一定期間を経過していない者が役員等にいる場合は登録が認められません

財産的基礎と書類要件

登録申請時には、事業を適正に運営するための財産的基礎があることを証明する必要があります。具体的には、一定の自己資本を有し、債務超過でないことなどの財務要件が設けられています。

書類面では、業務規程や契約書式、重要事項説明書式、苦情処理体制などの整備が求められます。これらの体制整備は登録後の業務運営にも直結するため、申請前に十分な準備を行うことが大切です。

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賃貸住宅管理業登録の申請手続きと流れ

賃貸住宅管理業の登録申請には、所定の書類を揃えて国土交通省に提出する必要があります。ここでは具体的な準備書類と申請の流れについて説明します。

登録申請の準備書類一覧

登録申請には複数の書類が必要となります。主な書類としては、登録申請書、誓約書、業務管理者の資格証明書類、財務諸表などが挙げられます。

以下に主な準備書類をまとめます。

  • 賃貸住宅管理業者登録申請書
  • 役員および業務管理者の誓約書
  • 業務管理者の資格を証明する書類
  • 直近の貸借対照表および損益計算書
  • 事務所ごとの業務管理者配置を示す書類
  • 登記事項証明書(法人の場合)

書類に不備があると審査が遅れる原因となるため、事前に国土交通省のガイドラインを確認しながら準備を進めることが重要です

申請の流れとスケジュール

申請手続きは、GビズIDの取得から始まります。オンライン申請システムを利用する場合は、事前にアカウントを作成しておく必要があります。

申請から登録完了までの一般的な流れは以下のとおりです。

  1. GビズIDの取得とアカウント作成
  2. 必要書類の収集と申請書類の作成
  3. オンラインまたは書面での申請書提出
  4. 登録免許税の納付(新規登録は9万円)
  5. 国土交通省による審査
  6. 登録完了と登録番号の付与

登録の有効期間は5年間で、更新時には別途手数料(書面18,700円、オンライン18,000円)が必要となります。

審査基準と審査期間の目安

審査では、欠格事由の有無、財産的基礎の確認、業務管理者の適格性などが確認されます。提出書類に基づいて要件を満たしているかが判断されます。

審査期間は通常2〜3ヶ月程度とされていますが、書類の不備や追加確認が発生した場合は延長される可能性があります。スムーズな登録のためには、申請前の書類チェックを徹底し、不明点は事前に地方整備局に確認することをおすすめします

賃貸住宅管理業登録後の義務と現場対応

登録が完了した後も、賃貸住宅管理業者にはさまざまな義務が課せられます。これらの義務を適切に履行することで、オーナーや入居者との信頼関係を構築できます。

事業報告や記録保存の義務

登録業者には、管理業務に関する帳簿の作成と一定期間の保存が義務付けられています。また、国土交通省への定期報告も必要となり、管理戸数や業務状況などを報告しなければなりません。

オーナーに対しては、年1回以上の管理状況報告が求められます。収支報告や修繕履歴、クレーム対応状況などを定期的に報告することで、オーナーとの信頼関係を強化できます。

主な義務項目を以下の表にまとめます。

義務の種類 内容 対象
重要事項説明 契約前に管理内容や報酬を書面で説明 オーナー
契約書交付 契約締結時に書面で内容を明示 オーナー
金銭の分別管理 預かり金と自社資金を分けて管理 全般
定期報告 年1回以上の管理状況報告 オーナー
帳簿作成・保存 業務記録の作成と保存 全般

業務管理者の配置と責任

各事務所には業務管理者を配置し、管理実務の適正化や従業員の指導監督を行わせる必要があります。業務管理者は賃貸不動産経営管理士などの資格を持ち、実務経験を有する者が担います。

業務管理者には、店頭への標識掲示や従業者証明書の携帯確認といった責任も課せられています。適切な人材を配置し、継続的な教育を行うことが、組織としてのコンプライアンス体制の基盤となります

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違反時の罰則と改善対応

登録義務があるにもかかわらず無登録で営業した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。これは非常に重い罰則であり、無登録営業のリスクの大きさを示しています。

登録後の義務違反についても、業務改善命令や業務停止命令、登録取消などの行政処分が下される場合があります。トラブルが発生した際には、国土交通省の地方整備局や日本賃貸住宅管理協会などの相談窓口を活用することで、適切な対応が可能となります。

以下は宅建業法との主な違いを比較した表です。

項目 賃貸住宅管理業法 宅地建物取引業法
主な対象業務 賃貸住宅の管理業務 不動産の売買・仲介等
規制形態 国土交通大臣への登録 免許制
義務発生ライン 管理戸数200戸以上 業として取引を行う場合
保護対象 オーナー・入居者 売主・買主・賃借人等

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まとめ

賃貸住宅管理業の登録制度は、管理業務の透明性を高め、オーナーと入居者の利益を保護するために設けられた重要な仕組みです。管理戸数200戸以上の事業者には登録が義務付けられ、重要事項説明や金銭の分別管理など、さまざまな義務が課せられています。

登録制度を正しく理解し活用することで、信頼できる管理会社を選定したり、自社の信頼性を高めたりすることが可能になります。賃貸住宅の運用を検討している方は、登録業者であるかどうかを確認することで、より安心な賃貸経営を実現できるでしょう。

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執筆者

アセットテクノロジー編集部

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